第百五十九話 女子会
メルザはがばっと起きるとルインがベッドに居ないので、慌てて周囲を見回す。
「ルイン? ルインー? どこだー? あれ? おかしいな」
「ココットー! ここっ」
「ココットか? ルイン見なかったか?」
「ココット! ここっ」
パモの言葉は仕草や表情でなんとなくわかるが、ココットは表情が変わらない。
「よくわからねー。どこいったんだ? いつも突然いなくなってよ……」
「あらバカ弟子、起きたの? 気分はどう?」
「ライラロ師匠? ルイン見なかったか? 俺様はもうだいじょぶだ」
「リルとフェドラート連れて幻魔神殿に行ったみたいよ。それよりあんた、こっちの
部屋に来なさい。女子会やるわよ、女子会!」
「じょしかい? それって喰えるのか?」
「女同士で集まって美味しい物食べたり話したりするのよ。早く着替えてきなさい。
そこに寝間着用意したから。今夜はこっちの部屋で寝るのよ」
「よくわからねーけどわかった、行くよ! このヘンテコな服に着替えるのか。
なんかはずかしーな」
メルザはライラロから渡された服に着替える。
上手くボタンがかけられず、一つずつずれているが、本人は余り気にしていない
様子だった。
「あら、メルザ。調子はどう?」
「ご主人様、その服ずれてるわ。直してあげるね」
「おう、ありがとなサラ! もうちょっとふつーの言い方で呼んでくれ!」
「お姉ちゃん、可愛いー!」
ボタンをかけ直すと、ライラロが持ってきた大量のお菓子に手を付け始める。
全員年頃の女性。甘い物には目が無い。
メンバーはファナ、サラ、ライラロ、マーナ、メルザだ。
「それで、あんたあのでかい鳥どうやって出したわけ?」
「うーん、俺様にもよくわからねーんだ。内からぼわーっと出る感じで」
「相変わらずの表現ね。何とかならないのかしら」
「かなり強い幻獣よね、あれ。妖魔の国では見る事がまず稀よ」
「地上にだっているとは思えないわ。確かライラロさんが以前ガラポン蛇が幻獣って
言いましたよね」
「ええ、それもどうせバカ弟子が出したのよ。そうに決まってるわ。非常識だし」
「俺様はバカじゃねえ! とっても賢いのだ!」
全員でワイワイと話していると、ルインたちが戻ってきた。
「あれ、大勢で珍しいな。何してるんだ?」
「あんた、身体はもう平気なの? 見たらわかるでしょ。女子会よ! 男はあっち
行ってなさい!」
「えー、ルインはいいじゃない。ねえ?」
「そうね。ルインはいいんじゃない? 女みたいなものでしょ?」
「え? 男だよ?」
「突然いなかったから心配したぞ! 俺様よくわからねーけどルインも一緒がいいな」
「悪いが、リルたちと話があるんだ。今後の事とかも考えないといけないし」
「あんたは本当に真面目ねぇ。こりゃ苦労するわ。ベルディスとは違う意味で」
「ん? 何か言ったか?」
「何でもないわ。早く行きなさい」
首を傾げながら部屋を後にするルイン。
「それでどうなの? ルインとは。もう結婚の約束したの?」
「な!? 何言ってるんだ師匠。そんな事するわけねーだろ!」
「それもそうね。私の方が先だわね」
「僕、ニーメちゃんに結婚しようね! って言われたよ!」
『えー!』
一番進んでいるのはニーメとマーナだった。
マーナ以外全員がくっと崩れ落ちる。
「……話を戻すけど、バカ弟子の幻魔術に適した杖をここで探さないとね。
あんた幻術より幻魔招来で戦うスタイルを確立しなさい」
「カクリツ? 美味いのか?」
「この町のお店ってどこも杖だらけよね。探すの大変そう」
「私も妖魔の力を失ってるから、何とかしないといけないのよね。お兄ちゃんと
封印できる奴探しにいこうかしら」
「ついでに依頼もこなせばいいし、ルインが本調子になるまでは私たちで頑張りましょう」
「俺様たちの団だしな! 頑張ってお金も稼いでたまにはルインに何か買ってやらねーと」
「それはいいわね。私たちもらってばかりでプレゼントなんてろくにした事ないわ」
「あら、私は熱いチューをプレゼントしたわよ」
「なんですって?」
「……俺様もその……したぞ」
「ファナは一歩出遅れね」
更に崩れ落ちるファナ。今度は私も! と心に誓う。
「いけない。また脱線したわ。それでね。この町で強化した後の話なんだけどね。
キゾナ大陸はかなりモンスターが強いのよ。全員強くなってから行かないと危険だわ」
「そうなんですか? この辺りのモンスターだってかなり強く思えるのに」
「妖魔の国にも相当なのがいるわ。私は戦い慣れてるから、守ってあげてもいいのよ?」
「自分で戦えるようにちゃんとなるわよ。私も幻魔神殿でジョブコンバートはするつもりだし」
「俺様ももっともっと強くなりてーんだ。フェル様の術ももっと上手く使いたいし、先生の
術も使えるようになりてーしよ」
「皆向上心があってよろしい。私も手ほどきするから頑張りましょう!」
「僕も戦えたらなー。この世界のこと、もっと勉強するね!」
女子会は多いに盛り上がり、夜遅くまで皆語らうのだった。