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第百五十三話 傭兵依頼斡旋所【レンズ】

 食事処に行くとライラロ、サラ、ファナ以外全員いた。

 あの三人は寝不足でやっぱ寝てるな。


「皆お早う。今日は少し忙しくなりそうだ。カッツェルの悪人共を突き出しに行くの

と、傭兵依頼斡旋所ってとこに行って仕事を受けようと思うんだ。幻妖団メルの地上

初仕事ってとこかな?」

「地上の素材などに興味がある。俺とニーメは素材採集をしたいのだが、そういった

依頼はあるのか?」


 珍しくやる気に満ちているアルカーンさん。つまりは時計関連だろうな。


「多分ありますね。今はモンスター退治が多そうですが、アルカーンさんが一緒なら

ニーメも安心です。よろしくお願いします」

「ああ。二人で時計用の素材を採取しよう」

「綺麗な色を出すための素材も欲しいです!」

「そうだな。それもいい。実に楽しみになってきた」

「あ、あのー。あんまり遠くには行かないで欲しいなー……」


 アルカーンさんは強さとしては安心だが、教える内容としては不安が残る。

 後で釘を刺しておこう。


「じゃあ僕とフェドラートは町内での仕事を引き受けるよ。モンスター退治もいいけど、面白

い町に来たし、色々なお店に顔出ししてみたいんだよね」

「昨晩二人で話し合い、そうする事にしました。

問題は起こさないようにするのでご安心ください。メルザさん。くれぐれも礼儀作法は忘れない

ように」

「お、おう。さじはこう使うんだったな。だいじょぶだ。大分慣れたぞ」


 メルザに作法を教えてくれて本当に有難うございます。

 笑顔が怖いです! 


「あの三人はまだ寝てるし、ライラロさんは勝手に行動するだろうから俺とメルザで

モンスター退治するか」

「おー、そうしよう。もっと上手く一緒に戦えるようになりてーしな!」


 さじを握った手を上に持ち上げる。

 フェドラートさんの笑顔がますます怖くなる。下しなさい! 

 メルザが注意されるのを後目に食事を済ませ、食後は警備隊の詰め所へ向かうことに。



 ――詰所に着くと、アルカーンさんに出してもらったカッツェルの町長とカルト兄弟を突き出す。

 こいつらはファナの毒で麻痺させたうえで、ミドーから解放して縄で縛り上げた。


「カッツェルの町を散々荒らしていた奴らです。住民一同よりカッツェルに来させない旨を

条件に処遇をこちらに任せたいんですが。少なくとも数十年はカッツェルの町に近寄れない

ようにして頂きたい」

「おお、あなたたちですか! 町を救った英雄と言うのは。早馬でフー・トウヤ様から

報せを受けておりあす。町は酷い状態だったと。この町の牢屋に入れてベッツェンのライ

デン近衛隊長へ引き渡します! 後日報酬が支払われると思いますので代表の方のお住ま

いを……」

「少し辺鄙な所に住んでいるので、幻妖団メル宛に、この町にいる間に受け取りは可能で

すか? ルールーって宿屋にしばらく滞在しているので」

「わかりました! 急ぎ先方に知らせておきます!」


 これで一つ厄介ごとが解決したな。

 他にも向かわねばならないところがある。

 昨日門番に聞いた仕事を引き受けるための斡旋所だ。


 ――そこは傭兵依頼斡旋所【レンズ】というらしい。

 大きめな町にはこれと同じような斡旋所があり、あちこちで依頼を受けれるらしい。


 小説でいう所のギルドの様なものか。あれは個人やパーティで仕事を受ける場所だが、ここは

そもそも傭兵のみ仕事を受けれる。身元が分からない人間を不信用で雇ってくれる場所はこの地上

には無さそうだった。

 だからこそ、メルザやファナ、ニーメのような孤児が辛い立場にあったのかもしれない。

 全員で中に入り受付に直行する。

 足を引っかけられたりじろじろ見られたりといったイベントは発生していない。

 傭兵しかいない場所だから当然か。変な事したら直ぐにばれるだろうしな。


「初めて見る方ですね。身分証の掲示を」

「こちらです」

「幻妖団メル? ガーランド所属の部隊ですか。団員はそちらの方々で全員ですか?」

「いや、三人程まだ寝てるんだ。後からライラロ、ファナ、サラってのが……」

「ライラロですって? あのガーランドのライラロさんで間違いないですか?」

「え、ええ。そんなにしょっちゅういる名前じゃないと思うので間違いないと思います」

「よかった。頼りになる方が来てくれて。すみませんこちらの話です。えーと団長さんは

あなたですか? こちらのご利用が初めてでしたら説明をさせて頂きたいのですが」

「団長はこちらのメルザ・ラインバウトです。話は俺も一緒に聞いていいですか?」

「俺様がメルザだ! 話はよくわからねーからルインが聞くぜ」

「承知しました。私受付のエージェって言います。説明しますね」


 レンズでは世界規模で仕事を受け、報告出来るらしい。

 マジックアイテムで受注、完了報告がどの斡旋所でも出来るようで

直接同じ場所に報告しなくても、依頼は達成出来る。

 報酬はお金とポイントで支給され、複数の傭兵が所属する。

 傭兵団としての格が高ければ、緊急的に起こった依頼を指令されたり、侵入禁止エリアへの

踏み入り許可や、危険なダンジョンへの立ち入りも可能となるらしい。


 以前出現したギルドーガやギルドグマも緊急案件の類だろう。

 大規模な傭兵団はそれぞれ中規模、小規模の傭兵団を持ち、ガーランドも複数の傭兵団

から構成されている。

 格はそれぞれ個別の傭兵団で違う。

 格は肩書で表され、傭兵団名の前に来るらしい。


 そんな俺たち傭兵団の肩書は……駆け出し幻妖団メル。

 なんか小学生みたいな名前になってしまった。

 ひよことか新顔とか下っ端よりはマシか。

 格が上がった時ランダムで命名されるようだ。


「こんなところですね。何か質問はありますか?」

「溜まったポイントはどうなるんですか?」

「ポイントは格を上げたりアイテムと交換出来ます。仕事を行わないのに格が上がったら

おかしいでしょう? それとお抱えの団がポイントを稼げば所属する上位の

団……つまりあなたたちで言うガーランドにもポイントがわずかに入ります。その代わり

仕事をしている団にはちゃんと上位の団は報酬金を払う仕組みになっていますけどね」


 つまりポイントは主に傭兵団の功績に直結。余ってたらアイテムに交換可能。

 依頼とは別に功績を称える仕組み。良く出来ているな。

 ガーランドにも依頼をこなすだけでサポートした事になる。

 軍所属じゃないから気楽でいられるし有難いな。


「他に気になる事がなければ、早速依頼を受けていかれますか?」

「ああ、それぞれ別行動で複数受けたいんだが問題ないか?」

「ええ。ではこちらにメンバーのお名前を」

「ちょっと待って下さい。大切な話を忘れてました!」


 まだアルカーンさんもフェドラートさんもこちらで幻妖団メルに入るとは聞いていない。

 フェルドナージュ様から派遣されてる人材だしいいのだろうか。


「構わん。どうせ弟も妹もいるしな。研究もこちらの方が捗る。近いうち家を売り領域に

移り住む予定だ。嫌とは言わさん」

「構いませんよ。地底ではフェルドナージュ様の直属ですからあちらで仕事がある時は

参加できませんが、地上では同行出来る機会も多いでしょう。今のところ、私は領域に

住めませんが」


 あっさり了承された。よかった! 


「すみません、ありがとうございます。名前書きますね」

「現在モンスターが大量に発生していますから、討伐依頼が多めです。受けてもらえると

助かります!」


 いきなり討伐依頼をアピールされた。

 俺たち駆け出しなんですけど。

 先ほど食事中話していた通り、別々の仕事を引き受ける事にした。

 俺とメルザが受けたのは、アズラウルの浜辺というこの町近くの浜辺に打ち上げら

れた、海洋生物の調査及び討伐。

 報酬は結果次第が殆どだな。

 報酬が固定されてるという事は、内容もほぼ固定だし、討伐依頼は未知数な敵が多い

から、報酬を決められないのか。


「それじゃ皆、初仕事気をつけて行こう」

『おー!』


 俺たちはそれぞれ別方向へと出発した。

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