第百四十八話 ルイン&メルザVSカルト兄弟
中央付近で芝居を打っている俺とシュウさんとメルザ。
「シュウと互角にやってるって奴はあいつか」
「珍しい武器使ってるな。一応剣士か」
「そうらしいす。自分は報告に来ただけなもんで詳しくはしりやせん!」
「お前は仲間だった女の方を追え」
「へい!」
やっとお出ましか。他に四人ほどいるな。
見るからにやばい剣持ってるごつい二人組がカルト兄弟か。
オカルトとは無縁そうだ。
「……シュウさん、あっちの四人いける? リルと二人で」
「……いけると思います」
「塀の方に飛ばしてください。リルを出しますから」
「はっ! くらえ!」
「グッ……」
わざと塀の影に吹き飛ばされ、視界から消える俺。
封印の中で聞いていたのか、リルはすっと外へ出ると地中へ潜る。
ピーグシャークの技だな。封印していたのか。
あまり街中でモンスターの技を使いたくはないが、リルならうまくやるだろう。
「ふう、おいあんたらも手伝ってくれよ」
「いいだろう。貴様中々腕が立つようだな。取り立ててやってもいいぞ。ただそうだな。
後ろの女は俺に寄越せ」
ゆっくりとこちらに近づいてくるカルト兄弟。
頃合いかな……さて。
「やるわけねーだろ! 俺の主はメルザただ一人だけだ! 行くぞ三人とも!」
「ああん? どういうことだてめぇ」
言葉を待たずメルザが術を発動する。
「主として権限を行使。
火、邪、蛇の斗。改元せし三つの理。
燃流出乃、邪流出乃、巳流出乃を我が下に」
メルザは右手で円を描きながら詠唱した。
火以外見たことのないエレメンタルを創造している。
火エレメンタルからは燃臥斗が、邪エレメンタルからは
邪の小さい剣が二本、巳エレメンタルからは無数の蛇が飛び交う。
フェルドナージュ様に教わった影響でメルザの技がやばい。
カルト兄弟もすこぶる怯んでいる。
後ろの四人はかなりたじろいでいる。その隙をリルがついて呪術をかけて恐慌状態にした。
シュウさんが突撃して奥での戦闘が始まる。
「さぁこっちも戦ろうか、オカルト兄弟!」
「カルト兄弟だ、舐めるなぁーーー!」
カルト兄弟の片割れが上空に飛翔する。もう一方は右から展開する。
空中の邪剣が片割れに飛来し、右には蛇が展開される。
右回りの敵はメルザに遠いからいいとして、上空が問題だ。
「一気に飛ぶぜ!」
蛇佩楯の跳躍をいかして奴の更に上空へ飛ぶ。
「なっなんだと!? バーバリアンである俺より上を行くというのか」
奴の頭より上に飛んだ俺は、そのまま奴の顔面を蹴り、吹き飛ばす。
「妖赤星の針!」
右周りにメルザを狙うカルトの片割れに、赤いニードル状の針を飛ばす。
こいつは使い勝手がいい。数を打てる。威力はそれほどでもないが、刺されば効く。
「ちっ兄者。こいつやりやがる。まじでいくぜ」
「ぺっ。油断したが攻撃は大して効かねえな」
そのまま地面に無傷で着地する。痛くない!
あいつらが何か言ってるが、着地しても怪我をしない喜びを嚙みしめている俺には聞こえない。
「立て直して第二ラウンドといこうか」
「なぁ俺様も覚えた必殺技出していいか?」
「あ、ああ。ほどほどにな」
カルト兄弟は再びクロスしながらジグザグにやってくる。
「蛇剣乱舞!」
メルザがそう叫ぶと、巳エレメンタルが放出した無数の蛇の口から剣が出る。
おいおいおい! フェルドナージュ様のやばい技だろそれ!
蛇一体一体は小さいけどそれはやばい。やばすぎる。
「くそっ! こんな術使いは初めてだ。俺が受ける。お前はあの術使いを止めろ!」
飛来する二本の邪剣を剣で躱される……あっちが兄か。
弟は前進する道がないため上空へ飛翔している。
「妖赤星の小星!」
赤いキラキラした星を思わせる波動が奴を襲う。
「ガハッ。痛ぇ! 畜生!」
倒れた弟を放置し、メルザの応戦を補助しようとした……が、攻撃態勢に入ったメルザの
術が飛来する。
「燃刃斗」
火エレの燃臥斗とメルザ燃刃斗を同時に叩き込まれバッタリと倒れた。
「流石は我が主」
「えっへん!」
ある意味五対二だしな。恐ろしい技を覚えたものだ。
実体のある蛇剣と実体のない邪剣か。物理的な攻撃が効かない
敵にも対応できる強い技だ。
俺たちは久しぶりに共闘し、カルト兄弟を倒した。
「ミドー、こいつら捕縛できるか?」
「シュルー」
巨大蛇のミドーを出し、倒れたカルト兄弟に巻き付かせる。
シュウの方に回ろうと思ったが、あちらも傷一つ無く二人に両断されていた。
後はこいつらのアジトに行って町長をとっちめるだけだな。