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第百四十五話 冒険の始まりはいつも

 ――あれからしばらく出発の準備をしていた。

 今日がついに旅立ちの日だ。


 俺たちはトリノポートの最も東にあるジャンカの森から、南周りにカッツェルの町

を経由して最西端の港町ロッドを目指す。

 

 そこから船でキゾナ大陸に渡り、古代樹の図書館へ向かう。

 一緒に行く幻妖団メルのメンバーはメルザ、俺、ファナ、ニー

メ、リル、サラ、アルカーン、フェドラート、ライラロ、ココットとマーナ。


 ミリルとルー、パモは師匠たちと留守番がてら洞窟に行くらしい。

 レウスさんも骨なので連れていけない。友達だ! といいながら

ふらふらと出ていかれても困るからな。

 

 何人かは幻妖団メルの団員ではないけどついてきてくれる。


 ちなみに……冷凍保存可能なアーティファクトは領域で冷凍庫代わりに使用している。

 持ち歩くより設置したらとても便利になった。

 神の空間はキャンプ用にメルザに持たせる。

 準備に抜かりはない。いよいよ出発だ。


「それで、ぞろぞろとこの人数で歩いて行くわけ?」

「違いますよライラロさん。まずはジャンカの森に出ましょう」


 そう言うと、全員でジャンカの森に出る。

 俺はフェルドナージュ様から賜った指輪を操作する。

 

 すると……巨大な蛇の乗り物が目の前に現れる。

 この指輪、二通りの使用方法がある。


 一つは巨大蛇が一緒に戦ってくれる……らしい。怖くてまだ使用していない。

 そしてもう一つ。蛇型の乗り物になる。

 

 外見の美しい巨大蛇の上に乗ると、しゅるしゅると動きだした。


「実に美しい。羨ましい限りだ。ビノータスの首一つでこれほどの者を貰えるとは

運のいい奴め」

「そうですよね。出来れば主人公っぽい乗り物だとよかったんですが」

「早いー! それに獣が怖がって逃げてくよ。すごい!」 


 ニーメが興奮して見ている。

 ライラロさんはちょっと呆れているようだ。無理もない。俺自身呆れている。

 ジャンカの森を南下するのは初めてだ。

 見たことがないモンスターなども多数いる。

 木々や花々も非常に美しいが、凶悪そうなモンスターもいるな。


 今の俺には相手ではないと思うが、初めてジャンカの森へ訪れていた時、こちらに

来ていたらやばかったな。 一時間程南西に進んだだろうか。

 リルとサラとファナは俺の中で封印休みしている。

 

 メルザは新しい土地にウキウキしているようだった。

 アルカーンとフェドラートさんは何やら話し込んでいる。


「ちょっとストップだ。目の前にでかい岩があって邪魔だ」


 そう言うと、俺は蛇から降りてカットラスを抜き構える。


「妖赤星の突!」


 カットラスで斬るのではなく、勢いよく貫く。

 ずぶりと肉を切るように岩に剣が刺さる。

 そのままクロスするように切り伏せると、岩はずずーんと音を立てて砕けた。


 今のところ俺の赤星、範囲は狭いが貫く力に強い。

 ベルローゼさんの黒星と比較するなら、方向性が違うので比較は難しい。

 メルザと一緒だからオペラモーヴも使えるけど、あちらは自傷する。

 メルザが近ければ威力は比較にならないほど強いのだが。

 その点赤星は妖術だ。使いすぎると妖力不足で疲れる。 

 再び蛇に乗ると道を進みだした。


「少しは出来るようになったな。まだまだのようだが」

「努力しているようですね。ベルローゼも実は関心しているのですよ。

私の出番が少なくなれば、体力を温存出来ますし、これからも精進してくださいね」

「そういえばお二人の力はまだ拝見したことが無かったですね」

「力は使わないに越したことはないからな。特に俺の場合は時計製作に向けられるべき力だ」

「私も戦えはしますが、学問の方が好きですね。弱いとは言いませんが、ベルローゼの方

が上ですよ」


 明らかに強者が纏うソレを両者共に持っている。道中は心配ないだろうな。


 ――旅を続ける事二日。休憩時は、神の空間を使用し、ようやくカッツェルの

町らしき場所に到着した。


「ライラロさん、ここですか?」

「ええ。以前来た時よりさびれているわね」


 リルとサラ、ファナも出てきて伸びをする。


 君ら、いいなー……俺もあの中に入ってみたい。

 本末転倒だが。

 宿屋を探し歩いていると、変な奴らが話しかけてきた。


「兄ちゃんたち、随分といい身なりじゃねえか。上玉も連れてやがるな」

「おいおいなんだ。線の細い綺麗な面した奴ばかりじゃねえか。気に入らねえな」

「そんなひ弱な奴らより、俺たちと遊ぼうぜ、お嬢さんたち」


 きたーーー! 定番イベント。しかもセリフがモブのそれだ。

 こういう輩はどこの世界にも付き物だ。実にいい。

 有難うございます。


「何だ、この汚い生物は。知り合いか?」

「品がまるでありませんね」

「気安く見ないでくれるかしら?」

「うわ、不細工。醜いわ。わたし鳥肌が立っちゃった」

「面白い生物だね。ちょっと実験してみたいな」

「上玉ってなんだ? 喰えるのか?」

「まとめて水に沈めていいかしら? いいわよね?」


 皆さん個性豊かな切り替えしで大変面白いです。


「えーとおじさんたち、ここの住民ですか? 関わると多分命がありませんけど」

「あーん? なんだてめぇは。弱そうなガキが。お前死んだぞ?」

「野郎は土に埋めちまいな。女はさらえ!」


 一斉に掛かってくる。ノロい、ノロノロしてる。


「妖封動の術」


 フェドラートさんが指揮棒みたいなの振って動き止めた。

 雑魚全員が動けずにいる。


「なんだこれは!?」

「動けねぇ! もう少しで触れるのに、くそ!」


 いいセリフ。八十点! 


「呪術不幸の言霊」

「うぎゃあああああ、なんだこれは。ひっ!? 悪魔、悪魔だ! 悪魔が来やがった!」


 雑魚一に呪術が掛かり恐慌した。


「燃斗ナイフ試してみたかったのよね。燃斗!」


 雑魚二が燃え上がる。


「触りたくないわー。邪術釣り糸」


 雑魚三が灰色の糸で吊るしあげられる。


「消えろ。時雨の回廊」


 雑魚四に小雨が降り注ぎ氷結していく。彼が一番可哀そう。


「お終い。水竜の息」


 全員流されてどこかに行ってしまった。


「赤星! 俺の赤星の出番は!?」


 皆さん手を払ったりしている。

 折角のモブ退治イベントが! 伝説のワンシーン、体験できなかったよ……全員

すっきりした顔をしてらっしゃる。

 しかし街中で堂々と人さらいする輩が出るとは。

 治安がかなり悪いようだ。

 俺は少しモヤモヤしたまま、安全な宿探しを続けた。

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