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第百四十三話 メルザのお買い物と衣替え

 メルザが俺の前に来る。どうしたんだろう? フェルドナージュ様は帰ったのか? 


「ルイン、ここにいたのか。ちょっと俺様に……その付き合ってもらいてぇ場所があるんだ」

「構わないが、フェルドナージュ様はいいのか?」

「もう帰ったぞ。それでその……フェル様に町のいい店の話を聞いてよ。行ってみたくて」

「あのフェルドナージュ様がお店を? それは気になるな」


 それを聞いたファナとサラが反応する。いつの間に来てたんだ。


「私も行くわ。女子の直感がびびっときたわね」

「なら私も。抜け駆けは許さないわよ」

「え? え? その、ルインと……」

『さぁ行きましょう!』


 そう話をしているとミリルもやってきた。


「あら、皆さんこちらでしたのね。お久しぶりですわ」

「ミリルじゃないか。お父さんの説得は済んだのかい?」

「ええ。本日よりわたくしも、幻妖団メルの一員ですわ! 皆さん

よろしくお願いしますね」

「おお! ミリルの部屋も用意しないとな! けどこれから買い物に行くんだ。ミリルも行くか?」

「いえ、私は荷物を置きに行って参ります。長旅で疲れたので

温泉をお借りしても?」

「ああ、いつでも入ってくれて構わないよ。そういえばリルとレウスさんが見当たらないけど

どこにいるんだ?」

「畑でカカシと喋りながら農業してたぞ。すごく楽しそうにしてたな」


 おしゃべり好きの妖魔と骨とカカシが農作業か……完全に畑でハロウィンパーリーじゃないか。


「じゃあメルザと俺とパモとファナとサラで行くか」


 俺たちは領域からフェルス皇国側へ出る。

 見慣れた妖兵エリアではなく、妖民エリアへと向かう。

 町の西側だがこっちに来るのは初めてだ。

 城には属さない民がいるエリア。

 落ち着いている雰囲気だな。


「おお、黒星ベルローゼ様のお弟子さんだ! 

なんという威風堂々した佇まいだ! ベルローゼ様の波動を感じる!」

「羨ましい。あのベルローゼ様に手ほどきを受けるなんて」


 ……まずい。ベルローゼさんの影響ですっかり有名だ……。

 サラの後ろに隠れる。この中で一番背が高いのはサラだ。

 といっても俺より高くはないんだが。


「あら、街中で……そんなにくっつきたかったのね」

「ちょっとルイン。何してるのかしら?」

「え? 何かしてるのか? 俺様も混ぜてくれよ!」

「隠れてるんだよ! 街中で目立たないように! ただでさえ美少女三人と

可愛いマスコット連れてるんだから目立つのに!」


 さっさと先を急ごう。三人を押すようにして前へ進んだ。

 パモは肩の上に乗せてある。


「おー、ここだ。ちゃんと着いた」

「ちゃんと着かない予定だったのね、メルザ……」

「あら、私のいきつけのお店じゃない。初めてルインに会った時も

新しい洋服買ったばかりだったのよね。懐かしいわ」


 そういえばあの人形の家でサラに会った時、そんな話をリルにしてたな。

 ムーラって呼ばれてた人形の家も懐かしい。

 モラコ族のムーラさんと違ってだいぶ怖いスプラッターハウスだったのを思い

出し、身震いする。

 衣類装飾品の店【サラリア】か。大きい店だ。

 店内に入ると、ずらりと衣類が置いてある。

 中には軽鎧や装飾品なども売られている。

 金属系の刺繡などが入った物も多く、質の高さが伺える。

 当然女性陣の目はキラキラしている。

 ふと、俺の目に一着の胴着が目に留まった。

 これ、夢幻闘舞じゃない? 下の方に縫い合わせた後がある。

 確か俺の装備は売ったと聞いたけど、ここにだったのか。

 それに一度ぶった切られた装備など、呪いアイテムだろう……俺は

装備を見て大きくため息をついた。


「なぁなぁ、ルイン。これ似合う……かな?」


 そう聞いてくるメルザは、紅色の玉が無数にある白いワンピースを

着ていた。とっても愛らしくていい! 


「ああ、よく似合うと思うぞ。メルザの髪色にぴったりだ」

「そうか!? じゃあこれ買う!」

「買ってやるから他の見てきなよ。メルザはあんまり物欲が

無いから、たまには買ってやらないとな」

「いいのか? 嬉しい! それじゃ装飾品見てくる!」


「にはは」と笑いながらバタバタと違う所を見に行くメルザ。

 こういう所は本当に可愛い女の子なんだよな。


「あら、ルインが買ってくれるって本当?」

「やった! 初めての贈り物ね。いっぱい選びましょ!」

「え、あの、ちょっと……」


 俺が何か言う前にささっと選びに行くファナとサラ。

 懐は温かいが、ちょっと心配。男はこういう時こそ笑顔でやり過ごすべきと

前世で習った。

 結局メルザは紅玉ワンピースと杖に装着するグリップのような物

と紅ラインの入った靴下。


 ファナは装飾の入った白色のブラウスと短いスカートとイヤリング。

 サラは背中側がだいぶ開いた黄緑色の服と短いスカートとネックレス。

 パモは水かけおりのネックレスがぼろぼろだったので

新しくパルーム族のイラストがかかれたネックレスを買ってやる。


 それよりなんで皆さん丈がそんなに短いスカート類なんですか? 


「お会計金貨五十二枚です」


 高っ! とは言えないので払う。

 妖民エリアの物なので、アーティファクトではないが、どれも一級品なのだろう。

 全員満面の笑みでした。お金で買えない価値があるものを手に入れたぞ! 


 帰り道にこれはブドウでは!? と思われるスタッフィーと言う果物に出会う。

 食べてみると正にブドウのそれ。

 また料理の幅が広がると思い、パモに詰めれるだけ詰めて買って帰った。


「買い物、付き合ってくれてありがとな! おまけに買ってもらっちゃった。へへっ」

「だいぶ高かったけど、本当に良かったの……? でもこれでサービスできるかな」

「あら、あなたの足じゃサービスにはならないんじゃないの?」

「なんですって?」

「なによ!」

「ちょ、ここで言い争うなって。帰ってもまだまだやることあるし、メルザはフェド

ラートさんの講義があるんだろ?」

「そうだった! やべー、急いでかえらねーと!」


 バタバタと走るメルザを皆で追い、俺たちは帰路に着くのだった。

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