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第十三話 ゴサクの願い事

「あそこだ、おーいゴサクー!」


 メルザは何もない畑のような場所に走りながら手を振る。

 俺も後を追いながら周りを見渡すが、特に何も見当たらない。

 また未知の生物でもいるのか? 小さすぎて見えないやつとかか? 


「メルザ、何もいないような気がするんだが」

「失礼なやつじゃのぅ、どこを見ておる。目の前におるじゃろ」

「うわ、かかしがしゃべった!? しかも顔がハロウィンのカボチャだ!」


 俺は完全にスルーしていた。どうなってるんだこの世界は。


「よう、ゴサク。元気してたか? 何も変わらないなお前は」

「元気じゃよ。変わったといえばほれ、ちょっと顔のつやがよくなったじゃろ?」


 ゴサクは「ふぇっふぇっふぇ」と笑っている。

 カボチャのつやなんてよくわからない……どうやって生きてるんだこの生命体は。


「今日は何しにきたんじゃ? そこの若いのはお主の知り合いか? 

この前は無事に三夜の町に辿り着けたかの?」

「町には行けたんだけどよ。道がまたわからなくて教えてくれよ!」


 三夜の町というのか。

 俺は自己紹介し、ゴサクにこれまでの話をした。


「そうかそんな事が。わしは見ての通りここから動けん。

一緒に行って案内してやりたいがこの足ではな」


 そういうと恨めしそうにゴサクは自分の足下を見る。

 ゴサクの地面に刺さっている木らしきものを確認すると、少しひび割れているのがわかった。


「前に飛んできたときに痛めてしまってな。この状態じゃ自分で引っこ抜くこともできなくて

困っておるのだ」

「痛そうだな、治してやろうか」


 メルザがそういいながらゴサクを見る。


「気持ちは嬉しいが、この足は特別でな。幻薬でないと治らんのよ。

それにわしは地面から出ると体力が削れてしまう。土にいるのがお似合いなんじゃよ」


 メルザは俺の方をちょっと見て目配せする。

 確かに幻薬が一個あるな。メルザがあげたいなら使ってやろう。


「なぁえっと……ゴサクさん? 俺たち幻薬持ってるからその足治してやるよ。

メルザも治したいって言ってるし

代わりと言っちゃなんだが色々教えて欲しいんだ」

「それは本当か!? 幻薬なぞこの辺りでは手に入らぬというに。

それとわしを呼ぶときはゴサクじゃなくていいぞ。

その呼び名はお嬢ちゃんが勝手にそう呼んどるだけだ」


 メルザ……まぁいいか。俺は幻薬を取り出して使用する。


「じゃあカボチャのカオをしてるからカカシでどうだ?」

「よくわからんがそれでいい。おお、すっかりよくなったわい」


 カカシはよっこいしょと 地面からずぼっと抜けた。

 空中に浮いてらっしゃる……これ以上は驚くまい。

 この世界でこれは普通なのだろう。


「おうゴサク! よかったじゃねーか出られて。

ついでによ、おめー動くと体力削れるんだろ? これつけてると

ずっと回復するらしいぞ。ゴサクにやるよ」


 そういってメルザは俺のくくりつけてる短剣を指さす。

 パモも羽手を出して渡す素振りをする。


「なんと、それはもしや落月の短剣か!? わしが飛び回り探していたものを

まさかおぬしたちが持っているとは。確かにそれさえあればわしも自由に行動できるが、よいのか?」


 俺はメルザの腰から紐を外すとそれをカカシにぶら下げてやった。


「決めたぞ、わしはおぬしらについて行く。きっと役にたつぞ。

ただ、火には弱いから十分気を付けてくれぃ」


 こうしてゴサクことカカシは俺たちの仲間になった。



「さて、それじゃ改めて三夜の町に行きたいんだが案内してもらえるか?」

「その前にわしの刺さっていた地面の下を掘り返してくれるかの。せめてもの礼じゃ。町の中で役に立つじゃろう」


 言われた通りカカシのいた地面を掘ると、少し大きめの皮袋がでてきた。


 中にはレギオン金貨八枚、銀貨二十枚、銅貨二十枚入っていた。

 

 ガラポン洞窟で手に入れた物と合わせて銀貨と銅貨はそれぞれ

二十五枚になる。有難く頂戴した。


「ここで倒れた者や、お供えしていった者のお金を集めて

おいたんじゃ。ふぇっふぇっふぇ」


 どうやって地中に埋めたのかはわからないが、なにせ宙に浮くくらいだ。カカシなら出来るのだろう。

 新たに仲間も増え、俺たちは三夜の町を目指す。



 ――――それから二時間程歩いただろうか。

 道中は変わった生物や草、木、花に溢れていたが、なるべく見なかった事にする。

 早く行かなければ帰り道が夜になってしまうからだ。

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