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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第四章 全ては我が主のために

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第九百九十八話 皇子メーズリック君

 シフティス大陸への航路は主に海路を利用する。

 ルインズシップ改は空海両用であり、海上移動容易い。

 目的地へ到着するまで時間もさほど要さずに向かえるのは、高い文明と技術を併せ持つことができた、ヤトカーンとフェネクスのお陰だ。

 ――シフティス大陸、アースガルズ国に到着すると、出迎えてくれたのはコーネリウスだった。

 既に伯爵位から侯爵位となり、摂政の大半を担っている。

 ――アースガルズ皇帝、メイズオルガ卿前。

 場内へ案内される最中は、兵士が慌ただしく行動しているような足音が聞こえた。


「ルイン殿。此度の招待、大変うれしく思う。また、献上品の数々。感謝の極みである。堅苦しい挨拶など不要だ。楽にして欲しい」

「メイズオルガ卿。感謝します。少々慌ただしいご様子ですが、何かありましたか?」

「ふふっ。君は本当に見えているように語るな。なに、息子がはしゃいでいるだけだ。気に障ったら許してくれ」

「いいえ。それなら我が娘たちも同様です。では、挨拶を」

「うむ? まだ六つと聞いたが挨拶が出来るのかな?」

「はい。カルネ、クウ、ルティア。順番に挨拶して」

「カルネ・ラインバウトです。ツインより少し背の高い皇帝。お初にお目にかかります」

「うっ……俺が気にしていることを」

「はっはっは。この子がメルザ女王の娘か。しっかりしている」

「クウカーン・ラインバウトです。あの、皇帝陛下。皇子さまは優しいですか?」

「そうだな……誰に似たのか気性が激しいが、優しい子だよ。友達になってやってくれるか?」

「はい!」

「ルティア・ラインバウトですわ。皇帝陛下! ああ、素敵な響き……っぴょ」

「ううん……語尾はベルディアに似ていて少し変わってますが、気にしないで下さい」

「ふむ。この子は随分と美しい髪をしている。皇子が虜になってしまうかもしれんな」

「はっはっは。よかったなルティア。皇子に気に入られるかもしれないぞ?」

「皇子じゃなく、皇帝がいい……ぴょ」


 玉の輿より本命皇帝、か。本当に大人びた子供だな。

 さて、挨拶も済んだし、子供たちはコーネリウスに預けて城見物でもさせておこう。

 

 ここアースガルズは、以前多くの領区に分かれていたが、現在はそれらすべてが取っ払われている。

 一度は滅びかけた国だが、現在は他国との関係も改善され、商売も盛んに行われている。

 シフティス大陸は西と東で大きく分かれている上、神風により上空からの移動は困難。

 だが、神風橋とは別にさらに大きな橋の建設を行うことにより、東の国々との貿易が開始されてから、人々の生活は格段に良くなった。

 さらに南側にあるラインバウト大陸とも盛んに貿易を行い、両国家の関係は親密なものとなっている。

 ミレーユがメイズオルガ卿の腹違いの妹であるが、彼女自身は既に王位を破棄。

 立場上は外交官という形を取っているが、自由奔放に暮らしている。

 ……メイズオルガ卿の訪問は、そんなミレーユにくぎを刺す意味もあるのだろう。

 失踪してしまった前皇帝については知る由もないが、メイズオルガ卿の統治も素晴らしいものだ。

 今回持参した引き出物の数々も、自分たちの使用目的ではなく国民たちに大半が振る舞われる。

 私利私欲にかられることなく、広く民を愛し統治する。

 賢王だからこそシフティス大陸に住まう多くの者がアースガルズへと集まっているのだ。

 

「さて、ゆっくりと対談していたいところだが、そろそろ向かおうか」

「……メイズオルガ卿。大変失礼だとは思っておりますが、俺は……」

「ああ、分かっている。世界を救った英雄、ルイン殿へ全員敬礼を」

『敬礼ッ!』


 恥ずかしいな。敬礼されてもその仕草は見えないのだが。

 これで俺の役目は終わりだ。

 おっと、皇子にだけは挨拶しておこう。


「メイズオルガ卿。卿のご子息は?」

「今すぐ旅立つのか? せめて一度ルーン国に寄ってはもらえないか?」

「申し訳ありません。あちらで企画事を手配してあります。俺はこれ以上の潜在は危険。だからこそ妻にも散々連れていけと言われました。これからベリアルと共に、ミーミルの森へ向かいます」

「そうか。メーズリック! こちらへ来て挨拶をなさい。お前の大好きな英雄だ」

「お父上ーー! あの女がいじめるんですー!」


 大声を上げながら玉座前へ来たのはメイズオルガ卿第一皇子、メーズリック君だ。年齢は五歳。

 カルネの一つ下だ。カルネたちはコーネリウスに連れられて城を見物していたはずだが……。


「雑魚。イルナより弱い。無力」

「お姉ちゃん、つおすぎる!」

「ううーん。残念だけど好みじゃない……っぴょ」

「カルネ。一体何をしたんだ?」

「勝負を挑まれた。勝ったら勝手に泣いた」

「はっはっは。さすがは英雄の子。お前も相手が悪かったな」

「ひっく。たまたま調子が悪かっただけなのにぃー!」

「ほら。それよりも英雄に挨拶をしなさい」

「は、初めまして。この国を救った英雄様……?」

「済まない。目が不自由でね。初めましてメーズリック君」

「……あの。目が見えないってすごく辛くないのですか?」

「ん? そうだな。辛く無いよ。沢山の楽しいことがある。沢山やれることがある。それはすごく幸せなことだと思わないか?」

「でも……上手く歩けないし、剣だって持てないでしょ?」

「はっはっは。果たしてそうかな? メイズオルガ卿。木剣はありますか?」

「ああ。これはもしかして英雄殿の剣舞を見られるのかな?」

「剣舞ではありませんが、少しだけメーズリック君の相手を。せっかくの鈴狼流派ですからね」

「木剣を三本用意してくれ。一本は皇子の練習用だ」

『はっ!』

「えっ? でも……危ないんじゃ……」

「あなた相手ならカルネでも勝てる」

「なんだとぉ! 見くびるなぁ! ちゃんと毎日練習してるんだぞ!」


 ふう。全く子供ってのは可愛いな。

 この子はカルネたちといい友達になってくれるだろう。

 そんな子供に少しでも伝えてやりたい。


「あ、あの。本当に危ないですよ。ちゃんとした剣術習ってるんですから」

「大丈夫だ。俺はこの場から一歩も動かないし、君に木剣を当てたりはしないから」

「む……分かりました。でやぁーーー!」


 五歳……か。五歳とは思えない、いい突進力だ。

 それに靴がアーティファクトだろうか。さらに……「我が意思の力を持ち我に力を与えよ。万物ありておおいなる風を身にまとわん。ウィンドクラッド!」


 風の魔術、初歩だが適切に使えている。

 素晴らしい。きちんと修練を積んでいる証拠だ。真面目に頑張っているんだな。

 ミレーユにも少し見習ってほしいものだ。

 メーズリック君は一刀両手持ちで飛び上がった。

 飛んだ高さは俺の顔面にも届くくらいだ。

 

「食らえ!」

「いやいや。お見事」


 木剣二本をもらったが、一本を腰に差して二本指で木剣を受け止めた。

 そのまま後ろに少し傾けてみる。

 そのまま上手く着地するように後方へぐっと押す。

 さらに追撃で足への攻撃を木剣で反対側へ誘導。

 もう一度飛び上がって胴体へのナギ払いを再び二本指で止める。

 

「我が銀狼流はあらゆる武器を使いこなす。そして年齢性別問わず誰でも習得すれば確実に強くなる」

「くっそーー! 一撃も当たらない!」

「そして、たとえ木剣でも……はっ!」


 腰に差していた一本の木剣を上へ投げた。

 

「バネジャンプ」


 そして上空へ飛び上がり、その木剣を真っ二つに斬り裂く。


「……すっげーー」

「たとえ木剣でもこの通り。君は思い切りもよく、攻撃も理に叶っている。修練を積めば強くなるだろう」

「銀狼流……あの。弟子入り出来ますか?」

「歓迎しよう。ルーン国に到着したら……そうだな。イルナカーンというカルネのライバルがいるんだ。その子に聞いてみるといいさ。頑張るんだよ」

「はい! あの、失礼なこと言ってすみませんでした」

「構わないさ。五つなのに礼儀正しく、いい子だ。俺の子供たちとも仲良くしてやってくれ」

「はい! う……でもこいつは……」

「弱卒。ツインに負けて悔しそう」

「ふ、ふん。英雄に花を持たせたんだ!」

「この子……もうそんな言葉を覚えているのか」


 こうしてメイズオルガ卿に挨拶を済ませた俺は、引っ付いて離れないカルネを抱っこして、眠ってしまったクウとルティアをヤトカーンに預けた。

 ルインズシップ改はそのまま本国に戻り、ミーミルの森へはベリアルと共に向かう。

 そこが俺の住処だ。

 忘れ去られた氷の森。

 ……強すぎる自分の力を抑えるための特訓を続けるために。

はい。これが実際のルインの現状部分です。

文字通り力の制御が上手く出来ていなかったルインは、この森で現在も修行中。

夫婦は離れてしまっていますが、時折帰宅して色々と作業をこなしているんですね。

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