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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第四章 全ては我が主のために

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第九百九十六話 カルネ、クウカーン、ルティアを連れて

 稽古をつけた場所から少し離れた場所にいたベリアルの下へと向かう。

 この稽古場には休憩スペースがあり、団子屋モギの支店もある。 


「準備は出来てるぜ。ったく、出発前に稽古つけてやるってのはおめえらしいが、あんまり待たせるんじゃねえ」

「悪いなベリアル。その分しっかり団子は食えたんだろう?」

「まぁな。たらふく食ったが腹八分目ってとこだ」

「二百皿も平らげておいてよく言うだ!」

「ナナー。おめえはいちいちルインにちくるんじゃねえ。土産買ってこねえぞ」

「別にいいだ。買ってこなかったら団子も無しだ」

「うっ……冗談だ。ちゃんと買ってきてやっからよ」

「二人とも。それよりカルネはどこだ?」

「王女様ならあっちでイルナちゃんと勝負してるだ」

「またか……」


 イルナはリルとカノンの間に生まれた子供でカルネをライバル視している女の子。

 妖魔と遊魔の間に生まれた子供で高い素質はあるのだが、結構なおっちょこちょい。

 リルにもカノンにも性格は似ていない気がするが、一体誰に似たんだろうな。

 フェルド家の血筋にそういったやつがいたのかもしれない。


「二人とも準備はいい?」

「うん、ビュイ姉さま」

「結果、同じ。不動。無意味」

「もう! やる前からそういうこと言わないでっていつも言ってるでしょぉ!」

「よーい、どん!」


 声は俺が立っている場所から離れた場所から聞こえた。

 徒競走……か? 一瞬突風が過ぎ去った気がしたが気のせいだろう。

 そして俺の足元にしがみついている一人の少女を抱き上げる。


「勝った。ツイン、待ちくたびれた」

「えーっと……せめてゴールで待っててやったらどうなんだ?」


 ぶっちぎった後そのまま俺の方へ走ってきたようだ。

 トボトボとこちらへ近づいてくるもう一人の足音と、気付かれないようにこっそりと接近しようとしている者がいる。


「ビュイ。いくら音を消して近づいても、気配がまるわかりだぞ。ほら」

「わわっ。持ち上げるな! 恥ずかしいだろ!」

「ビュイ、ずるい。カルネより先」

「うわっ。王女様落ち着いて! ルイン、はーなーせー!」

「ナナー。ビュイ。いつもカルネたちを見ててくれてありがとう。イルナもおいで」

「はい……ルイン叔父様。どうやったらカルネちゃんに勝負で勝てるのか教えて下さい……」

「ううむ。カルネは俺が言うのもなんだが頭も体力も能力も基準が高すぎる……イルナはイルナの良いところを伸ばしていけばいいんじゃないか? お前はカノンという絶滅危惧種、遊魔の血を引いているんだ。そうだな……カルネ。今度けんけんぱで勝負してみるといい」

「けんけんぱ。やる。でも、カルネは負けない」

「ううっ……本ッ当にいつか負かしてやるんだからね! 叔父様とカルネちゃんはお出かけするんでしょ? いいなぁ……」

「ああ。イルナもリルたちとフェルドナージュ様のところへ出かけるんだろう?」

「だってぇ。叔母様の家はルーン国から直ぐだもん。あたしもシフティス大陸に行ってみたいー!」

「そのうち連れてってくれるさ。それに遊びで行くんじゃないんだ。メイズオルガ卿のご子息に面会だよ。こちらに招待する件も兼ねて、だ。イルナも新しい洋服と帽子を買ってきてやるから、いい子にして待ってるんだぞ」

「本当? わぁーい! カルネちゃん。戻ってきたらまた違う勝負考えておくから!」

「無駄。無謀。でも受けて立つ」

「やれやれ……」


 イルナをナナーたちに任せると、竜型のベリアルに飛び乗る。

 ベリアルはもう、鳥の形態へは変化しない。

 足の不自由な俺のために、専用の鞍をつけている。

 外すのは人型に戻るときだけだ。だが、気ままな竜の姿がいいらしく、ほぼドラゴントウマの姿のままだ。

 ――ここは海底第二層。修練エリアとして確立され、様々な仕掛けがある。

 二層と一層は上へと昇る乗り物で繋げられており、移動用の乗り物はラブドス族が用意したものをフェネクスとヤトカーンが改良したものだ。

 だが、俺はベリアルで行き来が出来る。

 海底大トンネルとでもいうか、飛行型は全てそちらを通過するようにとフェネクスが作らせたもの。

 これはどちらかというとソロモン七十二柱の奴らの都合、だな。

 一層にはルーン城があり、我が国の主要都市はここに移転された。

 もっと下の層にも行けるのだが、そっちはまた別の施設がある。

 

「一層で他の子供たちが待っている。一緒に行くのはクウとルティアだけだがな」

「クウの寝小便癖は治りやがったんだろうな。俺の背中に引っ掛けるのはもう勘弁だぜ」

「はっはっは。小便くらい許してやってくれ」

「冗談じゃねえ……それより、他のガキ共はいいのか?」

「ああ。メイズオルガ卿を迎えるにあたって、いくつかイベントを用意していてな。そっちに向けてはりきってるみたいだ。クウとルティアは興味ないって感じだったからな」

「そーいやまた数える勉強しろとか言ってたな。んな面倒なことやりたくもねえぜ」

「団子を何個食っていくらになるか。そんくらい計算出来るようになってくれよ……」

「面倒くせえ。一杯稼いで一杯食えば十分だ。飛ばすぜぇー!」


 二層を飛びぬけて巨大トンネルへ入り、グングンと速度を上げ一気に一層へ。

 ラブドス族の協力で大きく変わった海底の世界。

 これは絶対神イネービュとスキアラが残してくれた大切な遺産だ。

 一層に突きぬけて直ぐ、飛翔するベリアルに寄って来たのはラブドス族の者だと分かる。


「ボロッフォー!」

「ああ、ボロッフォー! 久しぶりだなサニダ。元気だったか?」

「元気だっす! ルインは相変わらずだっす」

「ああ、変わりない。着陸場は?」

「第三飛翔地帯が空いてるっす。そこにお子さんと女王が待ってるっすよ」

「おいおい。メルザは連れて行かないと三回は言ったぞ?」

「それはサニダも伝えたっす。見送りには行くと言って文句ばかりだったっす」

「あれだけ大きいと心配だが……はぁ。分かった。やっぱり担当がクリムゾンの時は甘くなるな」

「第三飛翔地帯か。回転していくぜぇー!」

「グルグル、楽しい。いっぱい回る。グルグル、ワクワク」

「……おい、それやると気分が……うおおおーー!」


 ベリアルはカルネを連れているとき、こうやってよく大回転する。

 差し詰めジェットコースターなわけだが、俺は基本回転に弱い。


 ――「なんで目が見えてないのに目が回るんだ。気持ち悪ぃ……」

「楽しかった。ベリベリ。もっと」

「けっ。カルネみてぇにしゃきっとしやがれ。情けねえ」

「無茶言うな……カルネがおかしいんだ」

「おそいぞルイン! 待ちくたびれてクウもルティアも寝ちまったじゃねーか!」

「これでも急いで来たんだ」

「ママ。角生えた。鬼、怖い、オニババ」

「おいカルネ! ママに角なんて生えてないだろ。オニババって言ったなー! もー、ほらこっち来い。髪の毛ぼさぼさだぞ」

「いや。ツイン、やってくれるもん」

「そんなこと言うなよ。しばらく会えねーんだから……だいじょぶか? お腹痛くねーか? すっぱむも持ったか?」

「しばらくって言っても一日二日くらいだぜ?」

「ベロベロはだまってろ! 俺様は心配なの!」

「……本当に親バカじゃねえか。これでももうじき二児の母なんだろ?」

「メルザはいつまで経ってもメルザさ。メルザ、こっちへ」

「ん? ああ。よいしょっと」


 女王は二児をお腹に宿している。

 そっとお腹を撫で、メルザの頭を撫でてやると、くすぐったそうにしているのが伝わってくる。


「メイズのおっちゃんとこはもう三人目が産まれるんだろ?」

「ああ。今回来るのは長男だけだよ。長女と次男は来ない。宿泊場所の確認はすんでるよな?」

「あ……ええと、ウォーラスとドーグルの壁作り依頼出したっきりで見てねー……」

「まぁあいつらしっかりしてるし、管轄してるのはメナスだ。女王の役目は褒めてやること。それで十分だ」

「へへっ。それなら俺様得意だぜ。みんな俺様よりずっとすげーんだもん」


 それが得意ってのはすごいことなんだ。

 誰かを称えるってのは思惑などが入りやすい。

 けなすのは誰にでも出来る。褒め称えることは誰にでもは出来ない。

 メルザのような純粋な心の持ち主が褒めるってことに大きな意味がある。


「なぁ、やっぱり俺様も……」

「ダメだ。俺がファナたちに殺されるって」

「呼、ん、だ?」


 突然背後から抱き締められた。またやられたか。


「……やられた。また変身術の腕を上げたな、ファナ」


 近くにいるのは小動物の気配だった。

 変身して小動物の振りをしていたのがファナ。

 ベルディアとサラ、レミニーニはいないようだ。

 

「うふふ。簡単に気付かれたらショックよ。修行してる意味がないもの」

「エイナは? 勉強中か?」

「うん。一番楽しみにしてるのがエイナだもの。兄弟が多いって素敵よね。はぁ、私も早く二人目が欲しいわぁ……」

「う……なんか俺様だけわりーな、ファナ」

「しょうがないわよ。私、子供出来にくい体質なんだもの。サラにだけは先を越されないようにするわ」

「そーいやクウとルティアは連れてくんだろ? あいつらどこだ?」

「……どうやら来たようだ」


 遠方から大きな機械音。

 あれは、ルインズシップ改の音だ。

 地底に存在した遺跡船。かなり破損したものを、フェネクスとヤトカーンが組み上げた最新鋭の船だ。

 今回はこれに乗ってシフティス大陸までひとっ飛び。

 ベリアルでも行けなくはないが、客としてメイズオルガ卿を連れてくる予定なので、それなりの準備をしてもらっていた。


「おーい妖魔君。待たせちゃった?」

「いや。ヤト、お前か。ベルベディシアが操縦するんじゃないのか?」

「うん。部品を仕入れたくてね。ベルシアは新しい血液支配型モンスターの飼育中。ていうか自分で操縦するつもりだったの?」

「やーだー! 私が行くのー!」


 どうやら駄々っ子はもう一名いるようだ。

 サラが飛び降りてきて、ファナを蹴り飛ばし、首の後ろに手を回してきた。


「痛いわね! 何すんのよ、このバカサラ!」

「ねえ。いいでしょぉ……連れてってぇー!」

「おいサラ。俺様だって我慢してるんだからダメに決まってるだろ!」

「後で覚えてなさいよ! それよりさっさとルインから離れなさい!」

「だってだってぇー!」

「サラ。悪いが観光じゃないんだ。カルネの王女衣装を買って、初めてのメイズオルガ卿王子と面会。どっちの妻もお腹が大きくて御目通し挨拶は出産後って約束だからな」

「うう……だって私、お腹大きくないもん」

「代わりにクウとルティアはちゃんと連れて行くから。エイナやレイン、イルナたちを可愛がってやってくれ」

「分かったわよ……クウ、いい? ちゃんと挨拶するのよ? それと美女を見繕ってきなさい!」

「うー。パパ、美女ってどういう人なのー?」

「ん? そうだな。クウが大好きって思う女性のことだ」

「それじゃ、カルネちゃんみたいな人ー?」

「ママじゃなくてカルネか……ううーん、複雑な例えだ。お前は苦労人タイプになりそうだな……おーい、ベルディアもいるんだろ? ルティアは?」

「前が見えない……パモちゃんどいてー! っしょ。ふう、これ手土産ちゃんと渡すっしょ」

「ぱーみゅぱーみゅ!」

「お父様。ルティアも抱っこして欲しいっぴょ」

「ああ、おいでルティア。パモも来てくれたのか。助かるよ、手土産やらが多くてな」


 ルティアの独特なしゃべり方は親譲り。

 きっと、ベルディア同様、しょ、と上手く言えず、ぴょ、になっている。

 カルネよりも大人っぽい雰囲気があるルティアだが、語尾で大きく緩和されている。

 ベルディア同様ブロンドの髪を持つ、人魚、オーガと妖魔の血を引く子だ。

 将来はベルディア同様人気のある美人に育つだろう。

 そしてオーガの力強さも併せ持つかもしれない。こちらの血は強くないようだが。

 ルティアは妖魔としての力が強いと感じている。将来的にカルネといい勝負をするかもとは思っているが、本人はおままごとに夢中なお年頃で武術にも興味を持っていない。

 ぴょを連発しておままごとをしている姿はとても可愛いものだ。

 ……たまに具材と言いながらお父様の武器を切断するおままごとをしているわけだが。

 子供たちの中では一番引っ込み思案。

 普段あまり一緒にいてやれない分、会ったときは甘えてくる。


 クウカーンは生まれて直ぐに空を浮かぶという離れ技をしていた。

 明らかにサラたちの一族、カーンの血が濃いという。

 妖魔として血統書付きで、純粋なる妖魔の血筋となる。

 ある意味妖魔プリンス……なんだが鼻水を垂らし、リルのようにほんわかした穏やかな性格なので、育て方を間違えなければ優しい妖魔皇子になるだろうな。


「それじゃ行ってくるよ、みんな」

『気を付けてねー!』

ルティアちゃんがしゃべるのは初めてですね。

呼び方がお父様なのに語尾がぴょです。

今回はカルネとルティア、クウカーンを連れての旅路。

もちろん子供たち全員分のお土産や衣類を用意して戻って来るのでしょう。

登場人物の多さから、大きく移動していないのにこの文字数に……。

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