第九百九十一話 エクスカリバーの技、エクス・プロージョン
ベルウッドに一騎討ちを申し入れ、ベリアルには見届けるように伝えた。
ベリアルは、貸していたコラーダを投げ渡すと、無言で外に出て飛び去ってしまった。
残ったラッピーは壁に隠れて様子を伺っている。
ベルウッド……その姿は年老いた人のようだが、背中に一本の長い剣を背負っている。
あれがエクスカリバーか。
スラリと背中のエクスカリバーに手をかけ引き抜くと、軽々と振るってみせる。
こちらもティソーナとコラーダを身構えた。
「考え直さないか、一宮君。今この時にも我々のように虐げられているものたちがいるんだ」
「無理やりどうにかしたところで、結局また同じことが起こるだけですよ。人ってのはどこまでも愚かで罪深い生き物。だからこそ、今のあなたのように力を身に着けて守っていくしかないんです。俺たちにはそれが足りなかった」
「だったら! だったら弱者がねじ伏せられて死んでいくのを永遠と繰り返し、黙ってそれを見ていろというのか!」
「手を差し伸べられる範囲でしか救ってやることなんて出来ない! 出来ないからせめて、精一杯広げられる両手を大きくして戦うんだ! 今の俺のように!」
二剣で一気に相手へ近づきながら斬撃を飛ばす。
赤星の斬撃。再度飛ばせるようになったのは何の影響なのか。
それらをエクスカリバーの一閃で弾き飛ばし、身構えるベルウッド。
あの悲しい眼は記憶にある。
前世で弱視だった俺にはぼんやりとしか分からなかった。
辛く悲しい人の顔。
この人の痛みが伝わってくる。
「同じ視覚障がい者として、君には分かってもらいたかった」
「理解はします。でも賛同は出来ない! なぜなら俺は……あんな国でも日本が好きでした。嫌な人だって沢山いる。でもそれ以上に優しい人が沢山いました。それはあなただって感じていたはずだ!」
「だからこそ作り変えるのだ。生まれ変わらせればもっといい国になる。そのための犠牲だ!」
「たった一人の都合だけで作り変えられた国なんて、いい国になるはずがない! 生罪の剣、今ここに。ペカドクルード!」
闇を打ち払う超曲刀の斬撃を、至近距離でベルウッドに放つ。
それすらも一振りで打ち払われ、その斬撃が七壁神の塔に当たり、ぱっくりと切断され壁が崩れ落ちた。
「全ての攻撃は我が意志に関係なく弾かれる。どうだ? この剣。例え核爆発であっても撃ってきた相手に自動で跳ね返すことも出来る。しかもだ。一体化すれば……この通りだ」
みるみるベルウッドの姿が若々しくなり、二十歳くらいの好青年の姿へと変貌した。
「お前に勝ち目はない。この剣と共にある以上不老不死となる剣だ。しかもそれだけではない。受けてみよ、エクス・プロージョン!」
エクスカリバーを一振りすると、その剣全体から七つの爆炎玉がこちらへ飛来する。
軽々と剣を次々に振るい、俺の正面には七百もの爆発物が押し寄せてきていた。
「ラッピー! もっと遠く離れろ! 防ぎきれないかもしれない!」
「俺の心配してる場合か! お前も逃げろ!」
「逃げない。こいつを倒しきるまで俺はどこにも逃げたりはしない」
ティソーナとコラーダを上へと掲げ、大きく息を吸い込んだ。
一呼吸の合間に地面を大きく蹴って、飛来する爆発物一つずつ破壊していく。
それ一つでも大爆発。七百もあれば町一つが消し飛ぶだろう。
だが、今の俺には叩き落せないわけがない。
「おかわりだ」
二百も落とし終わる前に、さらに爆炎玉が追加される。
俺に大技を使わせる算段だろう。
その手には乗らない。
「少し狭いか。エクス・グランフォール! 七壁神の塔、その真の姿を見よ!」
ベルウッドが地面へとエクスカリバーを突き立てると、七壁神の塔全体に光の亀裂が差し込み砕け散った。
爆発物はさらに俺を追って飛来する。
それらを斬撃で破壊しながら着地すると、辺り一帯の光景がおかしなことになった。
「ここは、一体なんだ?」
「この七壁神の塔ってのはな。いわばフタのよなものなんだよ。宇宙膨張を止めるためのな。だから破壊しても元に戻る。そしてこのフタがあるから地球へ戻れないんだ。ほら、追加だ。疲弊しながら聞け」
さらに爆発物を俺へ向けて打ち放つ。
まさか、無限に出せるのか、この威力のものを。
ここがフタだとして、破壊しても元に戻るってなら何をしても無駄じゃないのか?
「壊れないフタってのは厄介でな。それをどうにかするために随分と悩んだ。そこで浮かんだのが神兵ギルティだ。あの存在。そっくりだと思わないか? この七壁神の塔に」
「……あの状況でまだギルティが生きてるとでもいうのか!?」
「……それだけエクス・プロ―ジョンを打ち出してまだしゃべれる余裕があるか。本当に勿体無いよ、一宮水花!」
ベルウッドは何かを焦っているようにも思える。
もう少し様子を伺い、そして……。
エクスプロージョンってきくと大魔法のイメージですよね。
私の記憶の中では、アークザラッド1のゴーゲンさんが使っていたエクスプロージョンが相当古い部類に入ります。
このエクス・プロージョンのイメージは爆発魔法エクスプロージョンに近い物ですが、紫電オリジナルの要素として、エクスカリバーのエクスとエクスプロージョンを掛け合わせた合わせ技のものです。




