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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第四章 全ては我が主のために

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第九百七十七話 神の声

 深い深い水の中。

 底が見えない闇に吸い込まれていくようだった。

 俺の頭の中には、あのときの言葉が何度も、何度も響いていた。


「ごめんなさい、本当にごめんなさい。もう私には無理よ……」


 親の声。正確には母親なのかも分からない声。

 俺を育てた者。

 顔も名前も知らない。

 記憶にあるのはそれだけだ。

 全てに絶望した闇の部屋の中で、考えるのは前世での、ほんの些細な楽しい記憶。

 そんなものしか俺には無かったんだ。

 その節々にだって辛い記憶が頭から離れず、こびりついて、苦しくて。

 そして、メルザに出会った。

 世界が、自分が大きく変わるのが分かった。

 苦しいこともあるけれど、全てのものに光が灯るその様は、今まで経験したことが無いものだった。

 そんな思いに浸っていると、暗い水の中で頭の中に声が響いた。

 

「ごめんね」

「……何について謝っているんだ?」

「力になれなかった。救ってあげれなかった。約束を……果たせなかった」

「それは、カイオスのことか」

「そうだよ。再びこの地に来たら、きっと世界中の人々と幸せに暮らせる。そうなるはずだった」

「俺との結びつきが、カイオスを変えたのか」

「……辛かったよね。もう大丈夫。海へ帰ろう」

「そんな力、今のお前たちにはないだろう。絶対神、イネービュ」

「せめて最後に、君の魂を守るくらいなら出来るはずだから」

「必要ない。俺は……俺は諦めてない。約束したからな」


 目の前に広がるのは闇だ。だが、絶対神を近くに感じていた。

 流された場所。たまたまか。必然か。都合よくジャンカへ戻れる。そう思っていたのに。


「それならどうするの?」

【お前たち全員、俺へ取り込むんだよ】


 俺は即決した。

 どうなるかなんて、この際どうでもいい。

 リルやギオマ、ベルギルガたちを封印したままでいいわけない。

 再び……全力で絶魔を行使した。

 

【この世の全てヲ封印セシメル者】


 ――俺は気付いたら、ジャンカの町を見下ろしていた。

 最後の記憶が確かなら、絶対神を取り込むため異形となり、神秘のヴェールごと自分に封印した、はずだ。

 背中には相変わらず不気味な翼が生えている。

 地上は無事のようだ……やはりあの場所は、ジャンカの泉に繋がっていたのか? 

 今となってはそれを調べる術もない。

 本当に絶対神を封じたのかどうかを確認したかったが、その術もない。

 なぜなら、俺は形容しがたいほど自分の体が変化しているからだ。

 

「ギ、ア、オ、グ……」


 声もまともに出せない。

 本当の、悪魔か。

 そう思っていたら……目の前を瞬時に移動してきたと思われる神兵ギルティへ取り囲まれていた。


「さ、探しタ。最後、封印、モラ、モラ、モラウ、ソレ、ソソソ、レ世界オママ、オマ、オマ」

「ギギ、グ、グガ……!」


 ダメだ。声も出ないし、この場から一歩も動けない。ジャンカの町から離れたい。

 あいつの大切な場所を壊したくない。

 壊させたくない。

 こいつらはもしかしたら、最初から……俺はこいつらの一部として認識されていたのか。

 遠い昔の記憶を思い出せば、確か……俺はギルティに魂を移し替えられそうになっていたのを、タルタロスが阻んだとそう聞いた。

 こいつらは俺を無視していたんじゃない。

 俺を……同胞だと思っていたのか。

 動かせ。体を動かせ、動け、動け、動け、動け、動け! 動け、動けぇーーーー! 


「ギ、ガ、ガガ、ガ、ガァ!」

「もウ、全部、遅いの、ヨ。一緒ニ、安息、の地。ゲン、神族の地、へ」


 動けない俺をつかむと、神兵ギルティ本体と分体……合計十体は移動を始める。

 ひとまずジャンカからは離れられた。だが、一体どこへ連れて行くつもりだ。

 何も抵抗出来ない。

 醜い体だ。

 こんな、こんなことなら死んでおいた方が……マシだったかもしれない。

 俺は、どうなるんだ。

 ……そう思ったとき、神兵ギルティの動きが止まった。

 目の前にいるのは……ルクス傭兵団。それに、ヨーゼフか? 他にもコーネリウス、メイズオルガ卿、あれは確かヒージョやカバネ、か。

 やめろ。全員、間違いなく死ぬ。

 手をだすな。止めろ。止めろ! 


「ギ、ギ、ギ……」

「急ぎ足止めを開始しろ! 攻撃は無効。だが足止めは出来る」

「頭ァ! ここにもルインの旦那はいやせんぜ!」

「全く、飛んだ災難だよ。こんな化け物の足止めをしろなんて。頭も焼きが回ったんじゃないかい?」

「そうでもないスラ。足止め成功すればたんまり褒美がもらえるズラ。ルインさん探せば大手柄ズラ」

「だったらそっちの役回りに回りたいんだけどねえ」


 よせ。今の俺には分かる。神兵ギルティは地底にいた頃のような甘い状態じゃない。

 

「僕の最大級の重術で動きを封じる! 殿下は少し後に動いて下さい!」


 よせ。やめろーーーー! 

 そう強く思った瞬間、俺はギルティをかばうように前へ出て、コーネリウスが出した重術を体で受け止めた。

 重術は俺へ何一つ効果が与えられてはいない。

 相手からすれば恐ろしい光景だろう。


「僕の重術が効かない? こいつ、分体なのか? それとも能力か?」

「そいつから攻撃しちゃえばいいんじゃない? 殺りなよカバネ!」

「大砲撃ちこむずら!」


 これ以上、ギルティを刺激するな。

 俺がどうにかするから。頼む、頼むから帰ってくれ。


「本体が動く! なっ……」


 体は絶対動かないというわけではないのか。

 攻撃に対して反応できるのかもしれない。

 そう思い、腕が伸び始めていた神兵ギルティの腹部分を全身でふさいでいた。


「ギ、ギギ、グ、ア!」

「無駄ヨ。あなた、ヲ、拾イ、上ゲタ、私、チカラ」


 俺の体を貫通し、伸びる手が飛び回るルクス傭兵団を襲おうとしたときだった。


「燃刃斗! みんな! 助けに来たぜ。ううん、ルイン! 俺様、俺様今助けるからな!」


 それは希望の声、輝く紅色の髪をなびかせ、美しい巨大な鳥型の獣に乗るメルザだった。

水中に飲まれ……ついに地上へ。

そしてギルティとに取り囲まれた異形のルイン。

メルザはなぜルインだと分かったのでしょう? 

次号へ続きます! 

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