間話 再び小僧に修行をつけるまで
間話一話目は、ルインの初師匠であり、ウェアウルフとなった元人間。
人の頃の名前をシーザー。ウェアウルフ名をベルディス。
こちらはシーザーとライラロの馴れ初め物語でもご紹介しております。
外伝的なものを去年描いたなぁ……と今更ながら思っておりました。
全く。あいつにあってからというもの、退屈しねえ毎日だぜ。
俺がベルディスなんて呼ばれるようになって随分と立つ。
しがない奴隷のお守役が、今じゃ争い沙汰に困らねえ毎日だ。
地底ってのは地上よりぶった斬り甲斐のあるモンスターが多い。
このベレッタとかいういかれた町もそんな類の場所。
腐れ縁のハーヴァルも嬉しそうにしてやがる。
「おい! さっさと手伝えよベルディス!」
「おめえ一人で十分だろ。セフィアもいんだから、よ! っとこいつぁなんてモンスターだ?」
「知るか! ったく突然なんでこんなにモンスターが暴れだしてやがるんだ?」
「その乗り物が気に入らねえんだろ。おい! 全員乗ったんならさっさと出せ!」
……ま、今やってんのはお守の延長戦だ。
この町にゃ戦えねえ妖魔がうようよいやがった。
気のいい酒場のマスターだけでも逃がしてやりてぇ。
ルインのことを尋ねたら、ふんだんに馳走になっちまったぜ。
「でも、それじゃあんたらが……」
「うるっせえな今いいとこなんだよ。大体おめえ、あれだ。俺たちがそんな下らねえ乗り物より遅く走ると思ってやがんのか?」
「おいおい無茶言うなベルディス。乗り物に走っておいつくつもりかよ!」
「何言ってやがる。おめえはセフィアを担いでぶち抜くんだろ? そーいやイーファたちはルインを一発ぶん殴ると言いだして止めるのに苦労したぜ。何かあったのか?」
「はぁ? 俺がそんなに早く走れるか! くそ、結局また尻ぬぐいかよ」
へっ。師匠である俺が尻尾撒いて逃げるなんざ、さらさら出来ねえ相談だな。
「おいハーヴァル。片付いたら俺ぁ中央いくぞ。面白ぇ祭りが開かれてるに違いねえ」
「かー。お前な。こっちはお前と違ってウェアウルフじゃないんだぞ!」
「お前も十分化け物だろうが。それとも俺に勝てねえっていい加減負けを認めるのか?」
「ああ? 何言ってんだ、寝言は寝てから言え! 誰が負けるか! おいセフィア。回復しろ! 今すぐこいつ叩き斬ってやる!」
「わらしのせいれハヴァールとベルレスら喧嘩しれヴぃえーーーん!」
「……くっそ。せめてこれだけでもスキアラに直させるんだったぜ」
「絶対神はもういねえ。諦めてそのセフィアを嫁にでももらっちまいな」
「自分に嫁がいるからって適当なこと……冗談、冗談だって」
くそ。ライラロの奴……どこにいやがるんだ? どうにかしてあいつからは遠ざからねえと。
しっかし俺も戦いたかったぜ。ベオルブイーター。
今度空を飛ぶ修行でもしてみるか。
あいつも飛べるんだ。俺に出来ねえ道理はねえはずだ。
……ん? なんだ激しい揺れだな。
そろそろしまいにしておかねえとやべえな。
ここのモンスターは粗方片付いた。
列車も走らせたし、もういいだろ。
「おいおい凄い地震だぜ。こりゃあちっとまずくないか?」
「中央へ行く。お前はセフィア連れて冥府とやらに行け」
「俺も行くって。置いてくなよ」
「いいや。セフィアは足手まといだろうぜ。こりゃあちっとばかしやばいかもしれねえ。イビンたちのこともある。あっちはあっちで守り手が必要だろうよ」
「……分かったよ。いつもいいとこ持っていきやがって」
「ふん。弟子の後始末つけんのは師匠の役目って相場が決まってるだろうが」
「ふーん。お前がそこまで入れ込んだってのが本当に不思議だったが、あのルインなら納得だ。どうせなら俺も教える方にまわりゃよかったよ」
「けっ。あいつはそう簡単に心許さねえよ。おめえじゃ甘すぎる。厳しいくれえがちょうどいいのさ」
そうだろルインよ。
追い込まれもがき苦しんだその先に、お前の強さがある。
おめえと鼻たれ嬢ちゃんとおさげの嬢ちゃんとよ。
修行してた頃が懐かしいなぁ。
クックック。思い返してたらよ。おかしくなっちまったぜ。
「はっはっはっは。終わったらよ。またあの三人集めてちょいと揉んでやるか。今行くぜぇーー!」




