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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第三章 ベオルブイーターを倒せ! 

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第九百六十五話 志の果てに願いしは、力の誇示か尊厳か

 魂の反応というのは今まで所持していたターゲットの能力とはまるで異なる。

 いや、魂だけではない。四名の管理者より受け継いだ能力はいずれも形容しがたい力。

 

「そこ、か……」


 血の跡が点々と残る場所がある。その色は、鮮やかな紅色だ……。

 大きな湖前まで続くその近くには、息絶えた巨大な鳥と……黒づくめの鎧を身にまとう、初老の男がいた。

 こいつは……ベルドの父親? いや、違う。

 初めて会ったときのライデンそのものの姿だ。


「まだ、話くらいは少し出来るか」

「ぐほっ、げほっ……ああ。もう、長くはない、か」

「なぜシーザー師匠やハーヴァルさんたちを裏切ったんだ。バルドスをなぜ殺した」

「力が……欲しかった。ルイン。お前の、ような……力が」


 うつ伏せで這いずるように倒れるライデンを、仰向けにして両手を組ませてやった。

 かすかに目は見えているようだが、もう……死の寸前だ。


「俺の顔を見ろ……こんな顔をしなければならない。そんな力があんたは欲しいっていうのか」

「……なぜ、お前は、そんな顔をする。力が、手に入ったのだろう。うっ! ごほっ……」

「お前にも分かるはずだ。大切なものを失うと、生物は悲しむ。お前は……シラを追っていたんじゃないのか。こちらは分からないが、お前にも……娘がいたことを知って、探していた、とか」

「ぐっ……ごほっ……私に、子など……」

「ああ、それはいいんだ。あんたは一体何がしたかったんだ? 力をもとめたその先に何かしたいことがあったんだろう? アルカイオス幻魔、ヴェライよ」

「……! ……やはり、気付く者がいた、か。私は、復讐を、したかったわけでは、ない。優れた力を、負けたわけでは、ないことを……証明、した、かった。お前も……そう、だろう。ルイ、ン」

「俺は、お前の娘を何より幸せにしたい。世界で一番幸せにしてやりたい。それが叶えばもう、俺自身すら必要とはしない。シラはきっと、メルザを殺そうとするだろう。シラは、壊れてしまった」

「娘、メル、ザ? ……たの、みがある。カルンウェナンを。それと……げほっ……げほっ!」

「それ以上しゃべるな」


 そう告げたが、震える血まみれの手で俺に手をかざすライデン。

 すると、極めて小さな短剣が俺の前へと降りて来た。


「ベル、ウッド……という、男が、裏切った。あれ、も転生者、だ。私はやつを利用し……利用、され、た」

 

 ベルウッド? そいつはライデンの部下だった男か? 


「やつは……うっ! ……やつは、私のもつエクスカリバーを……おかしく、させ、契約破棄を無理やり……させ、た。その、エクスカリバーを、持ち……げほっ……あれが、あれば。死ぬ、ことは、ない」

「お前の切り札か」

「そう、だ。ただ、でさえ最強の、神話級と言われ……アトアクルーク、湖の魔女に力を……あ」

「もういいしゃべるな。俺がなんとか、なんとかするから。だからお前は……もう、休んでくれ。メルザにはお前のこと、伝えられない。お前のことは俺の心の中で弔うから。だから……もう、休んでいい。お前は悪いことをした。だが、生命は死のその瞬間には安らいでもいいんだ。ベルドの父のこと。イーファのこと。それは死後お前が償っていけばいい……安らかに、眠れ。メルザの父、ヴェライ。いや、ライデン・ガーランドよ……」


 ライデンは息を引き取った。

 その顔は少し安心したような表情を浮かべていた。

 俺は直ぐ近くを掘ると、こいつが望んでいるかは分からないが、この湖近くに黒い鳥と一緒に埋めてやった。

 

 ――アトアクルーク。俺はついにこの地へと来た。

 自分の故郷がどのあたりなのかは分からない。

 ベオルブイーターの影響を受けない地点もあったのだろうか。

 地底の中央にあるその湖は、澄んでいてとても綺麗だ。

 そして、怖いほど静寂に包まれている。

 封印内を確かめてみるが、俺の封印者は誰一人として目覚めてはいない。

 先生は……命はとりとめてくれたと信じている。

 現在感じられる魂の反応は多くはない。

 湖に浮かぶ神殿内までは分からないか。

 湖以外にもいくつか調べる予定だった場所がある。

 先導させようとしていた部隊もいた。

 だが、状況を考えるに……部隊を統率して避難させた優秀な仲間の顔が目に浮かぶ。

 俺はゆっくりとアトアクルークの湖に向けて歩み始めた。

 この湖を、少し潜ってみたくなった。 

 ……もうどれほど前だったか。本当に不思議だった。

 メルザに引っ張られて水の中に飛び込んで。

 そこから出たら見たこともないような場所に。

 それだけじゃない。

 目に映るものすべてが、俺にとっては輝かしいものだった。

 弱視から全盲に生まれ変わり、生まれ変わった世界で何も見ることができない自分。

 望みをか叶え、面白いものが詰まった宝箱。

 その宝箱で風呂に入ったり。パモという不思議な生物に出会ったり。

 三つの夜に分かれる不思議な町があり……俺はそこで弱いことを痛感した。

 海を渡る冒険ではスケルトンに襲われた。そこでシュウと出会った。

 大会ではファナが襲撃される事件もあった。ベルドはとても強かった。

 そして俺は……地底に連れていかれた。

 リルの足取りはまだつかめていないが、今の俺なら……きっと容易いことだろう。

 地上と地底。絶対神とアルカイオス幻魔。

 俺たちと、常闇のカイナ。

 ここで……終止符をつける。

 

「すべては我が主、メルザのために」

少し悲しい部分が含まれました。

ライデンの正体に気付いていた人はすごいです。

そして彼の結末はとても悲しいものでした。

こうなることは去年の今頃脳内で決めていたことです。

ですからこのシーンを書くのは辛くて……どのような者でも人の死を描くのはきつい。

それでも見える脳内ビジョンでどのルートを通っても、彼は死んでしまいました……。

ヴェライよ。どうか安らかに眠れ。

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