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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

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第八百九十話 守るべき存在のために

「よう。久しいな、元気だった?」

「いや……割と大変だったよ」


 レグナ大陸小国、レントバード国。

 本当に小国だが、美しい湖を囲うようにして造られた景色のいい国だ。

 特徴的なのは、この国が獣人だらけであること。

 鳥のような人……と言った方がしっくりくるだろうか。

 言葉は通じるようで安心した。

 現在はアビオラと共に酒場にいる。

 このおじさん、相変わらずお酒好きなようだ。

 

「それで、こんな辺鄙な場所まで訪れたってからにゃ、何か情報があるんだろ?」

「ああ。奈落に行ってきたんだが、そこで常闇のカイナ幹部の一人と鉢合わせた。

名前は何だっけな……常角の……ええと」

「アクソニスと出くわしたのか!? 良く無事だったな」

「無事というより目的を果たしたとかで、消えてしまったんだ。あいつの能力か」

「ああ。幹部の奴らにはそれぞれ特異な能力がある。特に恐ろしいのが常角のアク

ソニスだ。それで奴は今何処に?」

「恐らくは地底。どうやって冥府へ辿り着いたのかは不明だが、冥府から奈落へ入り

そこから地底へ出たはずだ」

「地底ってのは負い逸れと行ける場所じゃないだろう。何かしらのアーティファクト

を用いたのか?」

「いや……七壁神の塔って場所から俺も冥府に行ったんだ。でも、タナトスって奴の力

を……」

「おいおい、そりゃ死を暗示する神のような存在の名前じゃないのか?」

「実際は、ひねくれたことをする少し嫌な奴だよ。戦闘能力は高くない」

「……お前さん、随分と成長して強くなり過ぎたんじゃないのか?」

「俺が? 全然。今でようやく昔のベルローゼ先生位だろうな。今なら一本位取れる

といいな……」

「そのベルローゼさんっていうのは相当化け物なんだろうな。分かった、報告はまと

めておこう。レミは元気にしてるか?」

「それがさ……子供が生まれてその子供を勇者にするって言ってきかないんだよ」

「ああ……まぁ、ああいう性格だから本気でやるだろうな」

「それで、覚者っていう……」

「おい! 覚者までお前さんのところにいるのか!?」

「あ、ああ。怪我して寝込んでるところをレミが勇者にしろとしつこくて……」

「実はこの国に来て仕事をするのも悪くなかったんだがな。俺もお前さんの国に

ちょいと顔を出しに行こうと思うが、構わないかね?」

「ああ。それは構わないが、ここでのレンズの仕事はいいのか?」

「見ての通りこの国は比較的平穏だ。変わった奴らが多い。エージェも元気にし

てるか?」

「ああ。張り切って仕事をしてるよ。うちの傭兵団も大きくなったしな」

「そいつぁ良かった。んじゃ、俺も荷物をまとめて移動する支度をするか」


 そういうことなら……カバネを使おう。

 丁度今、酒を振舞ってやってる最中だ。

 ベリアルも鳥の姿のまま、食事を掻い摘んでいる。

 この国なら鳥が喋っても何の違和感もない。


「おーい、カバネ」

「何ズラ? もっと奢ってくれるズラ?」

「アビオラさんをうちの町まで運んでやってくれ」

「嫌ズラ! おじさんと二人旅なんて絶対嫌ズラ!」

「運んでクレタラアビー酒というやつより美味い酒をご馳走してやる」

「おじさんさっさと準備するズラ。秒で支度ズラ」

「いやお前。ギンって人に届け物しなきゃいけないだろ。アビオラさんゆっくり支度してください」

「あ、ああ。本当に良いのか? かなり距離があるだろう?」

「問題ないですよ。しばらくは足としてこき使ってやって下さい。こいつ贖罪中なんで」

「酷いズラ! こき使われたら壊れてしまうズラ!」

「ハンニバル空賊団が義賊団ってのはにわかに信じられなかったが、本当のようだな」

「さ、そろそろ出掛けないと。ギンって人のところに行って来い、カバネ」

「一緒に行ってくれるんじゃないズラ?」

「別にいいけど。何者なんだ、その人」

「ギンの兄貴は整備士ズラ。凄いズラ」

「技師か。そりゃぜひとも面会したいね」


 何せうちの技師といえば……紙一重でバカといえるライラロさんだ。

 ニーメは鍛冶師として天才だが技師とは違う。

 何でも作ってしまいかねないが、あくまでも装備品がメイン。

 腕が良ければうちにぜひ来てほしい存在だな。


 ここの食事が気に入ったようで、食事に夢中のベリアルは置いておいて、カバネに

案内されてギンという者がいる場所を訪れる。


 やたらとヘンテコな機械が置いてあるが……こんなところに一人で住んでるのか。


「ギンの兄貴ー! どこズラー? いないズラ? こっちズラ?」

「おいおい、勝手に入ったら怒られるぞ……」

「平気ズラ。もうろくしてるズラ。きっとボケて床にでもはまってるズラ……あいたっ!」


 大きな箱がカバネの頭に直撃する。言わんこっちゃない。


「だーれがもうろくしてるだって、このズラボウズが!」

「いたズラ。床じゃなくて壁に挟まってたずら」

「本当だ、家の上で壁に挟まってる……」

「こりゃ挟まってるんじゃない。狭いところが落ち着くんじゃ」


 この人……いや獣人だな。鳥のような顔立ちをしている。

 ここはやはり鳥人の集まりのようだ。

 しかし手も足もちゃんとある。

 

「何しにきたんじゃい」

「お頭から差し入れズラよ」

「おうおう。アビー酒か。はよもってこんかい」

「人の頭の上に物を落としといてよく言うズラ……」

「ええから! ふんふん、こりゃ……まだ若いのう」

「お頭には仕事でもってけって言われただけズラ」

「仕事で……ふうむ……そりゃ合図じゃな。ということは……そっちの兄さんが主題じゃな」

「え? えーと挨拶が遅れたな。俺はルイン・ラインバウトと言う。ルーン国の……女王

の婿だ」

「ほうほう。お前さんが……」

「俺を知ってるのか?」

「噂になっちょるからのう。その者、両腕に星の力を宿し、赤き閃光を放つ究極の力を持つ。

神の力を宿し大いなる禍を退けん……とな」

「何だそれ……」

「怖いズラ。この兄さんはやばいズラ。バカ力ズラ」

「ズラボウズにはこの男の神髄は見えん様じゃのう、ほっほっほ」

「ええとギンさん……だったな。あんたは整備士と聞いているが……」

「おお、おお! その腕の装備! ちょっと見せて貸して触らしてくれんかのう?」


 腕の装備ってルーニーのことか。これは機密情報が詰まってる塊だからなぁ。

 そうだ、いいことを閃いたぞ。


「ん? ルーニーのことか。これは……そうだな、俺の国に来てくれたら考えよう」

「お主の国ってどこにあるんじゃ?」

「トリノポートズラ。おっかない場所ズラ」

「おっかなくないって。温暖でいい気候で、獣人に優しい場所だぞ」

「ほう、ほうほう? 珍しいお酒とかあるんかのう?」

「ある。断言しよう。トリノポート以外で入手困難な酒が無数にあると」

「よし。行ってやるわい。じゃがわしは整備士。機械の整備しか出来ん」

「ほ、本当に行っちゃうズラか? ハンニバルの整備はどうするズラ?」

「そんなもん弟子何人かおるんじゃからそいつらに任せればいいんじゃい。それにハンニ

バルからの遣いじゃろう。若い酒を送ったってことはこっちは若い衆に任せて好きにしろ

という意味なんじゃ」

「そうだったズラ? 全然知らなかったズラ」

「ついでにアビオラという者も俺たちの町に来る予定だ。それじゃ後は頼んだぞカバネ」

「酷いズラ! 結局おいら頼みズラ!」

「それも贖罪の一つだ。それじゃな!」


 ギンのことはカバネに任せて酒場に戻る。

 ベリアルはすっかりご機嫌な様子で肩に飛び乗ってきた。


「おう。なかなか飯が美味いところだ。気に入ったぜ」

「いい場所だな。気候は寒いがタルタロスの言う危険さは感じられなかった」

「時期によるって言ってやがったからな。酒場の奴の話じゃ、ここには冬があるようだぜ」

「冬か……そのときは世界が変わるんだろうな」

「ああ。おめえの住んでた地域よかずっと過酷な冬のようだ」

「レグナ大陸……また来たいな」

「いつでも行けるじゃねえか。だがよ、まずは地底に向かおうぜ」

「ああ。ベオルブイーターか……手強い相手なんだろう?」

「一度対峙したことがあるんだったか?」

「いいや、かなり遠くから見ただけだ」

「そんじゃ断片だけだな。おめえがこれまで出会ったどんな怪物よりも厄介だ。だが、あ

いつを倒さねえとならねえ理由は多い。念入りに支度しな」

「分かってるさ。やれることはやる。でも、きっと大丈夫だ。また新たな冒険へ旅立つとするか、ベリアル」

「足引っ張るんじゃねえぜ、

 守るべき多くの存在と、守ってくれる多くの存在。

 それがある限り俺は前へと進める。

 全ては、我が主と守るべき存在のために。


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