薬草採取してみた。
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初の異世界人との邂逅、そしてラッキースケベ疑惑。
「す、すみません! 先ほどは大変お見苦しい所をお見せして……!!」
「いやいや! オレこそ声もかけずに申し訳ないというか……!」
慌てて答えるオレに身支度を整えた少女、ミレニアはそう言って深々と頭を下げた。
正直そんなことをされてもオレにも落ち度があったわけで、素直に受け取りずらい。
件のラッキースケベ疑惑の後、オレ達は改めて挨拶してお互いの自己紹介を済ませていた。
長い淡い黄金色の髪で青いローブの少女はミレニアと言い、冒険者で治療士を生業としているのだそうな。
一方オレとシオンと言えば、バカ正直に「異世界から転移してきました」なんて言える筈もなく。
オレがどうやって説明しようかと悩んでいたところ、
「私達は冒険者として、身を立てようと思って出てきたばかりなの。ここにはちょっと、迷って来てしまって。よかったら近くの人里まで、案内をお願いしたいの」
シオンがスラスラと出自をぼかしたまま上手く話してくれた。
……思ってた以上に対人スキルが高いんですねシオンさん。
「は、はい。それは構いませんが、ただ近くにあるのは開拓村で簡易的な冒険者ギルドがあるだけですが、いいですか?」
「構わない。なんならそこを拠点にして、腕を磨くのもいいと思う。どう? ミナト」
「オレもそれでいいぞ? ただ、服とか武器がある程度揃えばいいかな? とは思うけど」
さすがにこの格好だけで冒険者業をこなせるとは思えない。
最低限の装備は整えたいところである。
「それなら大丈夫です。開拓村には腕のいい鍛冶屋さんがいますから!
ところで、あの、初対面で不躾なお願いがあるのですが、いいですか?」
そんな上目遣いで頼まれたなら断るわけにもいくまいて!
…………シオンはなにゆえジト目で睨んでくるのかな?
「えーっと、大したことはできないと思うけど、どんな?」
「はい! あたし、治療士と一緒に未熟ですが薬師もしておりまして。
それで今日はこのあたりに、傷薬の材料であるハーウォートと解熱作用のあるファリンを採取に来たんですが……なかなか見つからなくて」
要はその二つを一緒に探してほしいというところか。
それならスキルの鑑定さんが役に立つと思われる。
「よかったら現物はあるか? オレ達も一目でわかるほど知らなくて」
「あ、はい。こちらです」
ミレニアが持っていた袋から出して見せくれたのは、どこかニラのような細長い葉と、ちょっと黄色っぽいシソの葉のようなもの。
「シオンも一緒に鑑定してみてくれるか?」
「ん、わかった」
そして鑑定してみた結果が、
<ハーウォートの葉>
傷薬の材料となり葉。色が濃いものが特に薬効がある。
<ファリンの葉>
解熱作用のある葉。色が薄い物が特に薬効がある。
オーケー。大体は掴めた。ミレニアに礼を言って薬草を返す。
「それじゃあ早速探しに…………行きたいところなんだけど」
「え!? なにか問題がありますか!?」
問題というか、問題がないのが問題というか?
シオンに目配せをすると小さく頷ずいたところをみるに、分かっているようだ。
「ちょっと言いにくいんだけど。ここらへん、その薬草の群生地みたいなんだよね」
「はい? え……ど、どこですか? 周りが雑草ばっかりで見分けがつかないんですけど……?」
オレの言葉にきょろきょろ周りを見渡すも、ミレニアはどうやら見つけられないっぽい。
するとシオンがその辺に生えている雑草の元へしゃがみこみ、少しかき分けて中に生えている葉を見やすくし、
「ほら、ここにハーウォートの葉がある。あとは、そっちの低木の根本部分に、ファリンの葉」
「あ! ほんとだ! なんでそんなあっさり見つけられるんですか!? あたしなんか、だいぶ探して一束くらいしか見つけられないのに……」
うん、ごめんね。純粋な知識や経験じゃなくて『鑑定』任せなんだけど、その分貢献するから!
「まあまあ。とりあえずこの調子で三人で探せば、けっこうな数が集まると思うし、コツを覚えれば大丈夫だって」
「そ、そうですね。あたしもコツを覚えて探せば、一束や二束なんかすぐに――――」
「ほら、集まったよ」
何気にそこら辺をうろうろしていたシオンが、両手いっぱいにハーウォートの葉を抱えて戻ってきてしまった。
「更にそんな数をあっさりと!? や、やっぱりあたし、全然見つけられる気がしません……」
立ち直りかけた矢先に、シオンに見せつけられてがっくりと項垂れてしまうミレニア。
いや、うん、仕方ないんだけど、シオン……。
「どうかした?」
「ううん。なんでもない。ちょっとタイミングがね……」
「からかうと面白いね、ミレニア」
「わざとなんかい……!」
「えへ」
それからは落ち込むミレニアを励ましつつ、そして鑑定で見つけた薬草をさりげなくリークしながら、採取活動をしたのであった。
昔、山菜取りに参加したことがありますが、似て非なるもののと山菜の区別がほとんどつきませんでした。
ゼンマイのてんぷらはおいしかった。