どうしてこうなった……!
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異世界転移の準備中、スキル構成に没頭しすぎてポイントを残したまま転移させられた!?
視界が戻った時、オレは森の中に立っていた。
オーケー。これでも異世界転生もののラノベを嗜むどころか貪るように読んでいたオレだ。
バスに乗っていて気づけば魂っぽい形で邪神という存在からスキルを与えられ、今ここにいる場所が異世界であることは把握できる。
転生先が森っていうのは割とベターだしね。
むしろ戦場や孤島とかに飛ばされたら、生産系のないオレのスキルだとそこで詰んでしまう気がする。
しかし、どういうことかわからない事がある。
まず転生した後にやることと言ったら、自分自身の姿の確認だろう。
作品によっては赤ん坊になっていたりスライムになっていたりと多岐に渡るが、邪神曰く「元の姿のままで転移させる」と言っていたので、異種族を選択していない限り姿は変わらないはず。
変わらないはずなんだけど……。
「細腕細腰って、なんでやねん……」
思わず似非大阪弁でツッコミを入れてしまっても仕方ないと思う。
筋肉ムッキムキ、とはいかなくても毎日の筋トレやランニングで腕にはそれなりに筋肉がついてたし、腰だってここまで細くはなかった。
今着ているベージュ色で膝上くらいの貫頭衣から見える手足は、どうみても男のものではないし、自分の身体が明らかに変化しているのが見て取れる。
まず一番先に目についたのが、
「なんだこの、立派なおぱーいは……」
混乱してもう口調が丁寧なのかなんなのかわからない有様である。
でも確かに自分の胸部には、巨乳まではいかないまでも立派なお胸様が、服を押し上げてそこに鎮座している。
「……うん、柔らかい。めっさ柔らかい」
試しに揉んでみたところ、ふよんふよんという感触が両手に伝わってくる。
女の子の胸ってこんな感じだったのか。でもせめて自給自足じゃなくて、彼女になった女の子のもので感じたかった……!
揉み続けていると妙な気分になってきたので、ここいらで中断。
うん。検証は後にしよう、後に。
…………別にやましい事を検証しようとしてはいない。ないったなら、ないよ? うん。
「終わった?」
「ひょわいっ!?」
後ろから突如かけられた声に、驚きのあまり思わず妙な悲鳴が出た。
恐る恐る後ろを振り向けば…………アメジストのような綺麗な髪色で、ふさふさな尻尾とピンと立つ三角の獣耳を持つ少女が一人、こちらを見つめていた。
なんだかペルシャ猫を彷彿とさせるものがある。
それとオレと同じ貫頭衣なのだが、後ろに見えるふりふり揺れてる尻尾がちょっとぷりてぃ。
「…………えーっと、どちら様?」
「むう……」
見覚えのない獣人少女がむくれてしまった!?
「クラスメイトの、稲葉 詩音……」
「!? えっ、稲葉さん!? なんか可愛いくなってる!?」
見知ったクラスメイトだったこと、その可愛さに二度びっくりである。
なぜならオレの知ってる稲葉さんは、いつも眼鏡でポニテでちょっとうつむき加減で、髪を下ろした姿や制服以外の格好をみたことがないから。
普段接しているときは言葉数少なくて、ちょっと地味な子だなっていうのがオレの印象だったんだけど。
それがまあ、眼鏡を外して髪を下ろした姿がこんなにもめんこいとは……! 女の子ってファンタジー!!
「あ、ありがとう…………冬磨君も、可愛いよ?」
見慣れたうつむき加減でちょっぴり頬を赤くして言う稲葉さん。
「それは男にかける言葉として、どうなんだろうなぁ……」
そうは言いながら稲葉さんの言葉で確信したというか、認めざるを得ないというか、やっぱり今の自分自身は女の子となっているらしかった。
いや、実はわかっていたんだよ。
それなりに主張してる胸とか、喋る自分の声が高音でアニメ声っぽいとかで感づいてたし、なにより股の間の喪失感というか風通しのよさというか、そんなこんなで9割くらいわかってた。
残り1割は最後の抵抗というか、お別れしがたい男だった頃の自分との葛藤というか……。
とりあえず女の子の身体になったのは認めて諦めるしかない、よな。まあ、心まで女の子になるつもりはないけど!
しかしまあ、今思うことは一つだ。たった一つのシンプルな事だ。
…………裾捲り上げて股の確認作業をしなくてよかった!!
自分一人の空間ならまだしも、他人が見てるところでやからしてたなら変態さんにジョブチェンジしてもおかしくないところだった。
まあ胸の揉みingだけでもアウトに近い感じがしなくもないけれど……!
「というか、よくオレだと分かったよね? 自分じゃ顔が分かんないけど、触った感じなんとなーく前の顔のままじゃないのが分かるというか……」
なんか全体的に輪郭が小さくなってるし、鼻や唇の大きさなんかも変わってる気がする。今、切実に鏡が欲しい。
「姿形が変わっても、私には冬磨君の事はわかるから」
「お、おお、ありがとう?」
真っすぐにオレを見つめて話す稲葉さんの言葉に、なんだかむずがゆいというか嬉し恥ずかしい気持ちが湧いたので、話を変えて誤魔化しておく。
「と、ところで、他のクラスメイトは…………いないっぽい、かな?」
改めて周囲を見ると、オレと稲葉さん以外の姿は確認できない。
よかった。さっきの胸揉みingは稲葉さん以外には見られていないようだ。
「? 覚えてないの? 邪神が「近くにいる魂同士は一緒に転移させる」って言ってたの」
「…………あー、そういえば、そんなことを言っていた気が、しなくもないような……?」
正直、スキル構成を熟考していてほとんど聞き流していました。
「じゃあ稲葉さんは偶然近くにいたのか」
「…………偶然じゃないのに」
呟くように言った稲葉さんが再びむくれてしまう。なぜだ……。
「それより、なんで冬磨君はそんな姿になったの? ……もしかして、中身は乙メンだった?」
とんだ風評被害だよ……!
「違うから! 純粋な男だから! オレだってどうしてこうなったか、未だに謎であるからして!?」
ほんとに謎なんだよ。選んだ種族は人間のままだったし、スキルだって魔法寄りの構成にしていた筈で性別が変わるような要素は…………まてよ?
そう思ったオレが自分のスキルを確認しようとすると、それに呼応するように目の前にステータス画面のようなものが浮かんだ。
そしてよく見てみると、
名前/トウマ
種族/人間(17)
状態/健康
スキル
【魔法の素質・氷魔法】【氷魔法 Lv3】【魔力操作 Lv3】【魔力制御 Lv3】【看破 Lv2】【鑑定 Lv2】【頑強 Lv1】【探索 Lv1】【魔操糸 Lv3】【女体化】【魅力的な外見】
「え? …………えええええ!?」
表示されたスキル名に選んだ覚えのないものを見つけては二度見して、思わず叫んでは愕然としてしまった。
女体化? 魅力的な外見? …………性別が変わった原因、絶対こいつらのせいだろう!
なんでオレのスキルに知らない子がいるの!? 拾ってきた覚えはないよ!?
「どうか、したの?」
「……取った覚えのないスキルがある。ちなみに女体化と魅力的な外見……なんでやねん……」
「…………あ、もしかして冬磨君、スキルポイント残してた?」
「……そういえば50ポイントくらい、スキルを強化するか新しいのを取るかで残してたような……」
「多分、それが原因。残ったポイントは、邪神が割り振るって言ってたから」
「それか……」
稲葉さんの言葉を聞いて納得した。
確かに今思えば「残ったポイントはなんちゃら」てなことは言っていた気がする……。
でも女体化ないだろうおおおおおっ!!
なんでよりによって女体化!? これならまだ使えないスキルとかの方がよかったんだけども!?
しかも魅力的な外見がセットになっていたのが、不幸中の幸いな気がして悔しい!
なんて心の中で慟哭していると、稲葉さんが少し安心したような声で、
「でも、そういうのでよかったと思う。【魔法の素質・全属性】とか、【英雄の才能】とか、チートっぽいスキルあったけど、アレ内容はデメリットがすごかったから」
「デメリットとな?」
確かにそんなスキルもあったのは覚えているが、オレとしては氷魔法以外に興味なかったし、英雄なんてめんどくさそうだと思っていたのでスルーしたけど。
「まさか、ヘルプ取ってないの?」
「それがあるのは知ってたけど、あれにポイント振るよりはスキルに振った方がいいかと思いまして……」
「…………冬磨君って、説明書みないでゲームしちゃうタイプ、でしょ」
「……よくおわかりで」
自力でやってどうしようもなくなったら、説明書とか攻略本に頼るスタイルです。
しかし今回はそれが裏目に出たようで、稲葉さんからいくつかのデメリットの内容を聞いて戦慄した。
もう名前に違わぬ邪神だよ。
「経験値倍増とか全属性魔法も大概だけど、英雄の才能とかってもはや完全な地雷だろう、それは…………」
経験値倍増はその名の通り、レベルアップに必要な経験値が倍増する、という名前に騙されるインチキスキル。
魔法の才能・全属性は、すべての魔法スキルが取りづらくなるという鬼畜スキル。
英雄の才能、努力と訓練次第でなれるとはあるものの、常に命の危険が伴うトラブルが起こるという殺伐としたスキル。
「ちなみに冬磨君のスキル、教えてもらってもいい? まずいのがあったら、わかるかもしれないから」
「喜んで! むしろ御覧下さい!!」
やばい、普通に見えて実は地雷スキルっぽいのを取ってたらどうしよう……。
大丈夫だろう、大丈夫だよな? とちょっぴりビビりながらそこらの棒切れで地面へと自分のスキルを地面へと書き出す。
「……うん。私が知る限りだけど、危ないスキルはないと思う」
どうやら稲葉さんがわかる範囲で、地雷スキルはなかったようだ。
よかった。ほんとよかった。転生して強いスキル取ったつもりが、実は地雷スキルで弱体化とか笑えない上に、まさに死活問題に繋がり兼ねない。
まあそれ以前に、邪神て、ほんとに邪神的だな!!
全然序章ですが、ブクマしてくれた方もいてありがたいです!
ちなみに作者の中では女の子可愛いを中心に描いていこうかと思っています。
野郎かっこいいにはあまり重点を置いていませんのであしからすΣd