新たなパーティーメンバーと依頼。
リセットとくーちゃんが仲間になった! そして手ぐすねを引くように笑顔のジュディアさんから依頼を持ちかけられる。
納品の為にリセッテと共にギルドへ向かったところ、なんとそこでリセッテとくーちゃんがパーティーに加入してくれて、ついでにいい笑顔のジュディアさんから依頼を持ち掛けれた。
依頼内容は『開拓村の品物をエルクの町へ輸送と護衛』で、本来ならリセッテ一人でやっていたことをパーティーとしてやってみないか、とのこと。
実はリセッテはマジックバックを持っていたのだけど、容量的にそれほど多く持っていくことが出来ずに開拓村からの品物が小出しになっていたところ、オレ達とパーティーを組んだことによりオレ達のマジックバックも含め、馬車よる大量輸送も可能と考えたらしい。
いや、馬車はいいけど馬がいないんだけど? と思ったところ、
「ミナトが糸で引っ張れば楽勝さね」
と、あっけらかんとジュディアさんに言われてしまった。
確かに糸というかスキルの『魔操糸』を使えばタスク・ボアーなんか苦も無く運べるけど、まさかのオレが馬の代わりだったという。
しかしシオンから『馬がいても、世話が大変』という言葉を聞いたり、ミレニアやリセッテも馬の世話をしたことがないということで、そのままオレが引き受けることになった。
「ウォンウォン<馬車馬のごとく働けー>」
「ははは、ちょっとこっちおいでくーちゃん」
煽ってきたくーちゃんにはちょっとイラっときたので、スキンシップもかねて仰向けにしてお腹をわしゃわしゃしまくってあげた。
時折『うぉふ! おんおん!?<おま、やめ、そこは男のシンボ……ああああっ!?>』なんて悶えていたけど、そんなの問答無用で撫でまくって最後には腰砕けになってぐったりしてたけど知ったこっちゃない。
それからジュディアさんを含めて依頼内容の打ち合わせをした結果、馬車の用意や持っていく品物を集めるため出発は三日後ということに決まった。
そして今、打ち合わせも終わったところでリセッテが村の広場でバザーを開く事になっているため、その手伝いでギルドを出て広場へ来ている。
ただギルドを出た際にシオンが『新しい剣が気になるから、ちょっと、見てくる』と鍛冶師のフィビオさんのところへ行くために別行動になったけど。
尚、腰砕けになったくーちゃんは嬉々として引き受けてくれたジュディアさんに預けている。
当のくーちゃんは『え、置いてくの?』とちょっと絶望入った顔をしていたけど、まあ悪いようにされないと思うのでがんばれ?
「それじゃ商品を出していきますのでぇ、皆さん代金の受け取りや品物の受け渡しをお願いしますぅ」
「えーっと、まあ頑張るよ」
「はい! 任せてください!」
オレは『普通に計算は出来る』と話したところ、いつも手伝っているミレニアと共に速攻で売り子要員として確保された。
村の有志によって用意されていたコの字にセットされた簡素な木の長テーブルの上に、リセッテの手によりマジックバックの中から次々と品物が並べられていく。
小さなツボに入った塩や小麦粉、干物っぽい魚や塩漬けの肉、加工されたナッツ類やワインといった食品系から、色付きの石で飾られた髪飾りやネックレス、簡素な服等と様々な品物で長テーブルが埋まる。
それと同時に周りで遠巻きに見ていた女性陣がわっと寄ってきて、あっという間に姦しい現場と化していく。
むろん男性陣も周りにいたのだが、バーゲンセールもかくやという現場に割り込んでこれる猛者はいなかった。
女性陣の問いかけや値切りの声にリセッテが答えていき、オレとミレニアはお金と品物の受け渡しを行っていく。
女性陣があらかたはけた頃には男性陣もやってきてワインやつまみ等を購入していき、長テーブルいっぱいだった品物はほどなくしてわずかな工芸品を残して姿を消していった。
まさに飛ぶように売れるとはこのこと。
意外と短時間で終わったバザーの後片付けをするリセッテもほくほく顔にもなるわけだ。
「いやぁ、皆さんありがとうございますぅ。稀に見る売れ行きになりましたぁ。特にお二人の売り文句がとても秀逸でしたぁ」
「ミナトさんが初めてとは思えない程手馴れてましたね!
「あはははは……」
片付け終わりリセッテから声をかけられたが、いやオレもびっくりだったよセールストークの効果。
ワインを買うかどうか悩んでいた村の人にどこかのテレビショッピングよろしく『今ならこのナッツを一袋買えば二割引き!』なんて言ってみたところ、ぽんぽんと売れていったし。
ミレニアもミレニアで売れ行きが悪かった髪飾りやネックレスなんかを『奥さんにプレゼントすればきっと喜ばれますよ?』なんて品物と一緒に手を握って言うもんだから、アイドルの握手会よろしく鼻の下を伸ばした男達が何点か購入していった。
「ふっ、チョロいもんです」
ミレニア、恐ろしい子……!
その後リセッテが『手伝ってくれたお礼にお昼をご馳走しますぅ』ということで、フィビオさんの所に寄ってシオンと合流し、くーちゃんのお迎えも含めてギルドに戻りみんなで昼食を取ったのだった。
……フォレストキャタピラーの体え、もとい素材から出来たシチューは今日もおいしかった。
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お昼、リセッテにご馳走してもらいつつもほぼ女子会のようになった昼食を取る中で誰かの『どうせなら出発までに売れる素材を増やそう』という案が採用されることになった。
いや、いいんだけどね?
一狩り行こうがちょっとお茶しに行こう、並に気軽なのは異世界クオリティーなんだろうか。
まあパーティーとしての戦い方を確認するのも必要だし、隣町に売りに行く商品を確保するのも悪くないんだけど。
昼食を終えてギルドを出ると、早速オレ達は開拓村をでて森へ向かう。
今日は時間も短いので近場のハニーツリーまで一往復して、その間までの獲物や素材を確保することにしている。
「あそこに七色鳥がいたのでぇ、獲っちゃいますねぇ」
言うが早いかリセッテが持っていた弓を無造作に構えて矢を放つ。
流れるような動作で放たれた矢を目で追うこともできず、20mくらい先の木の枝らへんがガサッと音を立てたと思ったら、鳥っぽいシルエットがドサッと音を立てて落ちた。
リセッテが落ちた辺りにテテテッと走り寄り、戻ってきたその手にぶら下がっていたのは射抜かれたであろうカラスくらいの大きさの鈍色に光る羽をした鳥。
え、すごくない?
「えへへぇ、いいサイズの七色鳥でした。この鳥の羽は加工すると明るい虹色になって飾り羽としていい値段になるんですよぉ」
「お肉も脂が甘くておいしいですよね!」
ミレニアと笑顔でお肉談義しつつ自分のマジックバックへと鳥をしまい込むリセッテって、行商人といいながら実は強いんじゃあ?
ちょっと気になったので『看破』にてスキルを覗いてみる。
名前:リセッテ
種族:エルフ
状態:健康
スキル:【弓術 Lv.3】【鷹の目 Lv.1】【気配察知 Lv.2】
【隠形 Lv.1】【短剣術 Lv.2】【交渉術 Lv.2】
【植物知識 Lv.2】【解体 Lv.2】【目利き Lv.2】
【風魔法 Lv.2】【土魔法 Lv.2】【鑑定 Lv.2】
リセッテ、普通に強くない?
弓術に短剣術に魔法、なんだったら異世界の経験値的にみればオレやシオンよりも上かもしれない。
「ねえシオン。いまリセッテを『看破』してみたんだけど、なにげに強いよね?」
「ん、森の歩き方も手馴れてる。戦ったら勝てるけど、狩りなら負ける感じ」
スキルのことはツッコまれると困るため、あまり大っぴらに話すことができないので小声でシオンと話していると、またもやリセッテが『あそこにクーラスがいますねぇ』と矢を放ち遠くの木の枝にいたであろう鳥を射ち落とす。
今度はくーちゃんが走り口に獲物を咥えて戻ってきて、それを受け取ったリセッテにいい子いい子されて尻尾がぶんぶんしてるけど、完全にそれペットだろうくーちゃん。
なんて思っているとオレの『索敵』にひっかかる反応が二つ。
フォレストキャタピラーよりは小さいけど虫系よりも大きいこの感じは、多分ゴブリンだろうと思われる。
「前方、50メートルくらい先に多分ゴブリンが二匹いるっぽい」
「ん、わかった。任せて」
今度はシオンが二つ返事で流れるような動きで駆け出し、木々の間を縫うように走る後ろ姿が遠ざかっていく。
『探索』スキルでシオンがゴブリンぽい反応と接敵したなと思った瞬間、
どごしゃ、ごめしゃあ。
ゴブリンっぽいのが一体どうなったか想像したくないような粉砕音が響いてくる……。
ほどなくして歩いて戻ってきたシオンは手に持っていた二つの魔石と、自分の靴についた汚れをミレニアに『浄化』で綺麗にしてもらう。
「ミナト、ゴブリンだった。魔石預かって」
「うん、ありがとうシオン」
シオンから魔石を受け取りマジックバックにしまいつつ、内心で感謝の念がたえない。
なぜなら異世界に転生して幾度も魔物の素材や魔石を相手にしてきたオレだけど、未だに解体というものに慣れずにいたりする。
ギリギリ獣系は我慢しながらできるけど、人型の魔物の魔石を取り出すために頭や身体をかちわったり抉ったりするのが特に苦手で、悪いとは思いつつもいつもシオンやミレニアにお願いしていたのだ。
ちゃんとお肉になった状態なら大丈夫なんだけど、あの内臓とか血とかでろでろ出てくるのがちょっと……。
「あ、こっちにはハーウォートの薬草がありますよ! あっちにはファリンが! わあ、あそこには整腸剤に使えるフェルミンの薬草があります!!」
一方で前回『観察』のスキルが生えたミレニアはまさに水を得た魚のように、次々と薬草を見つけては嬉々として摘んでいる。
こうしてみるとシオンは戦闘、ミレニアは採取と回復、リセッテは狩りと商売、くーちゃんはペット枠となんか役割が出来てる気がするけどオレは…………主に荷物持ち?
一瞬、オレだけ地味だなと思ったけども気にしない。いいんだ、荷物持ちだって大事なんだから。
気を取り直しつつ、オレは皆の後を追ってハニーツリーを目指して歩いていくのだった。
ついでに言うと無事にハニーシロップを採取でき、妙に遭遇率の高かったゴブリンの魔石にリセッテによる狩りと帰りに出会ったタスク・ボアーにより、半日の割にかなりの成果となった。
コンビニなどで可愛げある女の子から『チキンが揚げたてです。いかがでしょうか?』なんて笑顔で言われたら、思わず買っちゃう人(男共)がいるんじゃないでしょうか?
作者も修学旅行でたまたま自由時間で一緒になった可愛げある女子から急に腕を組まれ『作者君、一緒にあれ食べよう?』と、ご当地のちょっとお高めのケーキセット(二人で四千円程)を一緒に食べたことがあります。
食べた終えたタイミングで『あ、友達が呼んでる。作者君ありがとうまたね』と手をぎゅっとされて軽やかに去っていきました。
そして作者はお会計して一人お店の外に出た時点で思いました。
……集られただけじゃね? ちくしょー! だけど腕を組まれたのとやわこい感触は忘れんぞありがとーっ!!
後日『あの時はご馳走してくれてありがとね』なんて悪びれた様子もなく笑顔で言われたら男として文句の一つも…………言えませんよね。ええ。
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