ハニーシロップを求めて。
いいね、ブックマーク、感想等お待ちしております!
=====
ミレニアの家に招待され朝を迎えたものの、SAN値(尿意)ピンチSAN値(我慢)ピンチ。
朝。そう朝。
木枠の窓からわずかに差し込む朝日と、雀っぽい鳥の鳴き声からして朝なんだと思う。
その朝日の光が少し眩しくて顔に手をかざしたいのだけど、今その手が両方ともまったく動かないというか動けない状態にある。
左に顔をむければあどけないミレニアの寝顔、右に顔をむければちょっと色っぽいシオンの寝顔、そして二人の頭の下にはオレの左右の腕が挟まれていた。
これが動けない理由だったりする。というかいつの間にこんな格好で寝てしまったんだろう・・・・・・。
あと傍から見て両手に花状態だろもげろ、と思う人たちにオレから一つ伝えたい事がある。
腕枕って、長時間していると腕が痺れて感覚がなくなるんだよ・・・・・・。
今も動かそうとしても指先がかすかに震えるくらいだし、そしてなによりオレにとって重大な問題が発生しようとしていた。
「お、おトイレ行きたい・・・・・・」
思わず小声で口に出してしまったけど、そうでもしないと一気に尿意という名の生理現象がきそうで怖い。
それと同時に非常にまずいことがまた一つ。
腕枕が衝撃的で気づいてなかったんだけど、腕の他にオレの両足にシオンとミレニアの足が絡まっていたのである。
つまり、動かそうとしても動けない。
なんとか上半身だけでも起こそうとしてものの、両腕の痺れと両足に絡まる二人の脚により腹筋だけでは無理だった。
ならばそっと声をかけて二人を起こそうとするも、眠りが深いようで起きる様子がない。
そして迫りくる尿意の第一波。
・・・・・・よし、耐えた。しかし、わかりやすく言ってどうしたらいいんだこれ。
しかし緊急事態ながらも大声を出して起こすのも気が引けたので、襲ってくる第二波、第三波を内股をもじもじさせながら気合でやり過ごしながら二人が起きることを待つ。
待とうと思ったんだけど、うん、無理。五分が限界。
やってきた第四波におもらしの限界を感じつつ耐える。耐えるけど、あ、やばいなんか涙まで出てきたんですけど。助けて神様・・・・・・!
「・・・・・・え、ちょ、なんで泣いてるんですか!?」
慌てた声でがばりとミレニアが起き上がったことにより、左腕と左足が解放される。
神様ありがとう!
「泣くほど、我慢しなくても。でも、そんな姿も、見てて可愛かった」
同時にシオンも起き上がって右腕と右足も解き放たれる。
・・・・・・いやまって? その言い方からするに、もしかしなくても事前に起きてた!?
くっ、文句の一つも言いたいけど、それよりもなによりもおもらし寸前をなんとかしないと人としての何かが終わってしまう!
「二人ともごめん! ちょっとトイレー!!」
人生最速とも言える動きでオレはベットから飛び起きて、寝室からトイレへと直行する。
これでおもらしは守られた・・・・・・!
しかしここで気を緩めてはいけない! 我慢の限界時に気を少しでも緩めれば、そこから意図せず少し漏れたなと思ったら一気に決壊してしまう事があるのだ!!(低学年時体験談)
油断なく心も身体も引き締めつつ、ワンピースだから下着だけ脱げばいいのって便利だなと思いつつ、トイレのドアノブに手をかけようとした時だった。
…………腕が痺れてて肘から下が動かないっ!? うそだろーっ!!
ダメだ! 動かそうとしてもピクピクするだけで、腕が持ち上がらない!?
しかも焦ったせいか心も身体も一気に我慢のレッドゾーンに!!
くっ、こ、これはもう、男の矜持とか意地とか言ってる状況じゃない!
・・・・・・ならばやることは一つ!!
オレは心を決め、息を吸い込み、
「シオンさん! へるーぷ!!」
恥も外聞もなく、助けを呼んだのだった。
追記、間に合ったからね!?
=====
朝から些細なことがあったものの、オレ、シオン、ミレニアの『天照』のパーティー三人は森へ向けて歩いていた。
うん、トイレは間に合ったものの、腕が痺れていたままなせいでうまく下着を履くことができずにいたら、心配でやってきたシオンに後ろから半強制的に下着を履かされたのは些細なことだと思いたい。切実に。
羞恥と諦観のあまり「お婿に行けない」と呟いたところ、シオンから「可愛い、お尻だった」と言われたけどそう言う事じゃなく・・・・・・。
その後に三人で朝食を取りながら今後の方針を簡単に話し合い、とりあえず森でお互いの戦い方や連携を確認しつつ、無理なくハニーシロップを探していこうということになった。
ひとまずギルドに寄ってジュディアさんに森へ探索に出ることを伝えたところ、肩掛けタイプのマジックバックと陶器で出来たワインボトルサイズの瓶を10本、A4サイズ程の折り畳みできる木板と黒いチョークを渡され、
「簡単で良いからこの木版にどの方向になにがあるか、メモして欲しいさね」
とのことで、地図作製も兼ねることになった。
お昼は森の中で食べる事になるので、広場でやっている屋台から適当にみつくろってマジックバックへしまい込んでいる。
準備を整えていざ出発となり開拓村から一時間くらい歩いた現在、森の入口へと辿り着いてた。
しかしなんだな。厚手のひざ丈ワンピースにホワイトライノスの皮鎧とブーツ、短剣なんかも装備して元の世界の服装より確実に重い状態で歩いてるのに、ほとんど疲れた感覚がない。
シオンが魔物相手に見せた曲芸っぽい動きといい、今の身体は前の身体より身体能力が上がっている気がする。
「森に着きましたね。それじゃハニーツリーを見つけるためにがんばりましょう!」
おお、ミレニアが俄然やる気だ。
森にくる道中の世間話で、ハニーシロップのおいしさや食べ方について熱く語っていただけはある。
「ん。それじゃ私が前で、ミニレアが真ん中、ミナトが後ろで」
「りょーかい」
「はい!」
これは朝の打ち合わせで決まった『気配察知』があるシオンと『探索』があるオレが前後を警戒すれば、不意打ちなんかを防げるだろうという配だ。
最悪シオンかオレが怪我を負っても、どっちかがフォローしつつミレニアが光魔法で回復してくれる手筈になっている。
というわけで、オレ達『天照』はハニーシロップを求めて森へと足を踏み入れた。
修学旅行の時。
大部屋で寝るわけだけど、朝起きた時に作者の腕に隣にいたクラスメイト(もち男子)が腕枕されてた時の殺意。




