仲間が出来ました。
これまでのあらすじ(超簡略)
シオンとミナトの二人は異世界転生したのだが、シオンは獣人娘でミナトは男から女の子へと転性していた。
人里を目指すべく森を歩いていると、草葉の陰でお花摘みをしていたミレニアと遭遇。
ミレニアの案内でタスク・ボアーを狩りつつ開拓村へとたどり着く。
そこで受付嬢のジュディアに出会い冒険者登録を済ませ、同じ屋根のミナトはシオンと同衾をかます。
翌日には服屋のお姉さんや鍛冶屋のフィビオのもとで装備を整え、森へ狩りに出かける。
森の中ででかくてキモい芋虫を倒し、進んでいった先でハニーツリーを発見し蜜液を採取。
そして開拓村へ戻ると、上目遣いのミレニアから仲間になりたい打診を受ける。
はい、一年以上ご無沙汰してました作者です。
言い訳はしません。デスティ〇ー2やPS〇2ngsに嵌ってたとか言いません。
更新再開しますので、またぞろよろしくお願いします!
目を潤ませ縋るような上目遣いで可愛い女の子がこちらを見ている。
いやまあミレニアのことなんだけども。
そんなことされたら女子耐性が低いオレとしては心がぐらつくを通り越して、もはや射抜かれそうなんだけども。
二つ返事でオッケーを出しそうだったんだけども、それをぐっと堪えたのはオレの理性のなせる業・・・・・・ということも一因だと思いたい。
「むぅ・・・・・・」
しかしなによりも、隣で口を尖らせて不機嫌全開でオレを見ているシオンの影響が大きいのではあるけど。
「ミナト、女の子に騙されやすいタイプ?」
「違うよ!? ・・・・・・多分」
正直騙されたこともないからわかんないかなー!?
でも女の子が可愛い仕草で頼みごとをしてくるのを無下にできないのも事実ではあるけども・・・・・・!!
「え、えーっと、シオンはどう思う?」
弁解はなんか墓穴を掘りそうだったので、話をシオンへとスルーする。
「あとで、話し合おうね? 私は別に、構わない。むしろ回復役は、歓迎」
ひぃっ! なんか浮気を疑われた旦那のような気分!? で、でも話が逸れてよかった。執行猶予付きだけど・・・・・・。
「ほんとですか!? あたし回復魔法は未熟ですけど、精いっぱい頑張ります!!」
「だって。ミナトは、どう?」
やめて。その「まあ、わかってるけど」みたいな目は。
確かに可愛さに絆されかけたけど、他意はないんだよ! 信じて!?
そ、それに真面目に考えれば回復できる人がいるのはありがたい。
ただでさえ医療関係が元の世界と比べて心もとないわけだし、なによりどうせ仲間にするならむさいおっさん僧侶とかより、ミレニアのような神官系女子の方が――――。
うん、ごめん。余計なこと考えたのは謝るから、シオンはだんだんと冷たい目になっていくのはやめて欲しいかな・・・・・・。
「えーっと、オレも歓迎するってことで。よろしくミレニア」
「あ、ありがとうございます!」
「はえっ!?」
あー! なんか急に横抱きで抱き着いてくるから身体が強張って変な声出た!?
その満面の笑顔で嬉しさは分かるけど、待って待って! この抱き着かれている状態からどうしていいかわからない!!
「・・・・・・有罪」
しかも防具ごしでも柔らかい感触だし、あとなんだかいい匂いというか見下ろすポジションから見えるミレニアのゆるい服の間から胸元がって、シオンが先読み判決しておる!?
あとその脇腹を人差し指でつつかれるのは地味に痛いよ!?
「あ、すみません。つい嬉しくって。シオンさんも、ありがとうございます!」
「ん、よろしく」
ミレニアが離れたことで脇腹連打からようやく解放された。
うう、不可抗力なのに。
「あいよ! 定食三人前お待ちどおさま!!」
話がまとまったタイミングで料理が運ばれてきたので、オレ達は食事も兼ねて歓迎会をすることにした。
料理はかぼちゃのような甘味のあるとろりとした薄黄色のスープに、タスク・ボアーと思わしきお肉が入った野菜炒めと、固めのパンと果実水。
スープは元の世界の物と比べると薄味で物足りない感じがするものの、逆に肉の方は味が濃いような気がした。
「あ、そういえば、ミレニアは『ハニーツリーの蜜液』って知ってたりする?」
オークは腕肉がおいしいとか、魔物には魔石があってゴブリンは頭にあるからほじくりださないと、なんて物騒な会話が飛び交う中、さっきジュディアさんに素材を卸す時に聞きそびれたことをミレニアに聞いてみる。
「ハニーツリーの・・・・・・え!? もしかして『ハニーシロップ』があるんですか!?」
がたり、とミレニアがその場で立ち上がる。
お、おお? なんだか思った以上の凄い食いつきなんだけども。
「え、ええっと、これなんだけど・・・・・・」
そう言って『ハニーツリーの蜜液』が入っている水筒替わりの竹筒を手渡す。
ミレニアがそっと蓋を開けた竹筒には、八割くらいの量が入っている。
「うわ、こんなにいっぱい・・・・・・あの、ちょっと味見させてもらってもいいですか!?」
「別に構わないけど」
構わないんだけど、ミレニアが好物を目の前にしたチワワのように目を輝かせているのはなぜだろう。
「それでは失礼して・・・・・・・・・・・・!?」
少量をスプーンに移してそれを舐めたミレニアが、目を丸くした後にうっとりとした表情になった。
え、それってそんなおいしいもんだったっけ?
「これは正真正銘のハニーシロップ! ジュディアさーん! ちょっと来て下さーい!」
「なんさね。こっちは閉店作業してて暇じゃ――――」
「ミナトさん達がハニーシロップを見つけたみたいです!」
「なんだって!? そりゃほんとかい!」
ミレニアの言葉に帳簿みたいなのを整理していたジュディアさんが、すごい勢いでカウンターからダッシュでこっちまで来た。
「それでハニーシロップってのは本当なんだろうね?」
「ほんと。森の奥で見つけてきた。これって、価値があるもの?」
「へえ、あの森にこれが。そうさね、価値で言えばディンドルに劣るけど、加工すればそれなりのものになる代物さね」
横で「ディンドルもおいしいですよねぇ」と呟くミレニアに聞いたところ、ティンドルとは果物で生では滅多に出ない上に、乾燥したものはさらに高価なものなのだとか。
あと蜜液じゃなくて、ハニーシロップというのが通称らしい。
「ハニーツリーは群生する樹木なんだ。よかったらあんた達のパーティーで樹の群生地の調査と、ハニーシロップの採取を頼みたいんだが、どうさね?」
おっと。ここでまた新たな依頼が発生したようである。
「ちなみにそれを受けた場合、通常よりなにか違う報酬とかあったりすれば嬉しいですね」
そのついでにちょっと欲を出してみる。
依頼を受ける側とは言え、この異世界では下手をすれば生きるか死ぬかが本気で発生する場合があるので、少しはやる気が出るものを欲っしても罰は当たるまい。
「お、少しは冒険者らしい発想をするようになったじゃないか。
そうさね。まずは一定量の数を採取できたら買い取り額を二割アップしようじゃないか。
それと群生地の調査がある程度できたら、その情報を依頼料とは別に三万レアで買い取るよ」
そう言ってジュディアさんが提示してきた依頼内容は、
【ハニーツリーの群生地の調査とハニーシロップの採取】
群生地の場所と周辺の魔物等の調査:三万レア。
ハニーシロップを入れる陶器瓶(500mlくらい)が一本で500レア。
五本ごとに三割買い取り額アップ。
瓶とマジックバックはギルドから貸し出し可能。
期限は試用も含めて一週間~三週間程。
うん、なかなかいい条件になったんじゃないだろうか。
ジュディアさんに取ってきたハニーシロップを一部おすそ分け、という事で二割から三割に買い取り額を上げたのは我ながら上手い交渉だったんじゃないだろうか。
内容をシオンとミニレアに確認してもらい、二人からも承諾を得た。
そして次の瞬間にはハニーシロップはパンケーキが一番だの、ミルク漬けトーストが至高だのと語り合っているから、女子の甘味好きは凄いと思う。
「それじゃ、その内容で依頼を受けようと思います」
「あいよ。よろしく頼んださね。あ、それから――――」
ジュディアさんがなぜか意味ありげににやりと微笑んでこちらを見てくる。
「あんた達が贔屓にしてる店にお裾分けすれば、なにかお得なことがあるかもしれないよ? あたし含めてね」
大人の色気溢れるウインクありがとうございます。
でもそれって賄賂なんじゃなかろうか、とか思いつつも今までお世話になったお店の人たちを思い浮かべる。
まあ、甘味一つでお得なことがあるなら安いもんだろう。
そう考えつつ、オレは目の前で甘味について熱く語り続ける二人と共に歓迎会ともいえる食事会を再開したのだった。
ちょっとメープルシロップを調べてみたら250mlで2000円とか・・・・・・業〇スーパーで1.5kgで500円ほどのメープルシロップを愛飲してる作者としては「たっけぇ・・・・・・」という小市民的感想でした。




