女子トークに男子は混ざれない。
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虫を冷凍殺虫したら、甘い樹液を発見。
「暗くなる前には帰れたけど、今日の成果はちょっとしょっぱかったなぁ」
「こんな日も、ある」
空のグラデーションに半分ほど夕焼けの色が混ざり始めた頃、オレとシオンは無事に森を抜けて遠くに見える開拓村を目指して歩いていた。
樹木に群がる虫を討伐して素材を確保し、ついでにその樹木から染み出していた甘い樹液も調達できたのはよかったんだけど。
その後、周辺を捜し歩いたものの目的のタスク・ボア―に出会うことはできず、暗くなる前に仕方なく帰ることに。
「とりあえずギルドに行って、ジュディアさんに見てもらおうか。これの価値も気になるところだし」
オレが視線を向ける先にある腰のベルトに吊り下げている竹筒のような水筒には、入っていた水を抜いてあの甘い樹液を詰めてある。
これはシオンの提案で帰り道くらい水が無くても大丈夫だろうとのことで、他にも容れ物はなかったしみすみす甘味を見逃すのももったいない、ということでそうすることにしたのだ。
「きっと、高く売れる、かもしれない?」
どっちだよシオンさん。でもその小首傾げる仕草が可愛いです。
くっ、スマホがあれば保存したかった・・・・・・!
ともあれ、オレもラノベに習うなら甘味料というのはある程度の高値が付くと思うのでそこそこ期待はしたいところだ。
そんな思いを抱きつつ柵で囲われた開拓村の門を通り、門番のおっちゃんに挨拶をしつつギルドの建物を目指す。
それほど遠くない場所のギルドに到着し、扉を開いて中に入ると他の冒険者の姿はなく、ジュディアさんとミレニアの二人がカウンター越しになにか話し合っていた。
「やっぱりミナトさんには髪色に合わせたピンク系の下着が似合うと思うんですよ!」
「いやいや、そこはギャップを取って黒系の下着がいいと思うさね」
いやほんとになんの話してんですかこの人達!?
「紫系の下着も、捨てがたい」
シオンもそこに参加しなくていいからね!?
「おや、無事に帰ってきたようだねお二人さん」
「お二人ともお疲れ様です!」
オレ達に気づいた二人が何事もなかったように挨拶してくるけど、こちとらちょっとなんか恥ずかしいんですけども!?
「ジュディアさんもミレニアも一体何話してんですか・・・・・・」
「いやー、あたし今日たまたま会った服屋のお姉さんとお話しまして。なんとミナトさんとシオンさんが買い物していったというじゃないですか」
「そしたら『ピンク髪の女の子があまりにも下着や服に無頓着すぎる』って、嘆いていたみたいなんさね」
あー、確かに服屋のお姉さんにも『素材がいいのに、そのセンスが悲しいわ』なんて呟かれてたっけ。
「んで、そりゃミナトだろうってことで、そっからあの子にはどんなのが似合うだろうっていう話になったんさね」
「最終的に男を誘惑する時の勝負下着はどんなのがいいか、っていう話になりまして」
ならないでほしい。切実に。
ジュディアさんとミレニアは知らないけど、邪神のせいで女の子の姿とはいえ、こちとら中身は純粋な男子なんですが!?
それが男を誘惑するとか・・・・・・BLかよ。勘弁してほしい。本当に。
「・・・・・・オレにそんな時はこないんで、そういう話はやめてください。それより素材の査定をお願いします」
「うん。ミナトは私の。どこぞの馬の骨になんかに、あげたりしない」
シオンはそこで変な対抗心燃やさなくてもいいからね!?
「あはは。ま、若い頃は男を漁るより見定める目と経験を養った方がいいさね」
「そうです。でないとジュディアさんのように行き遅れにごべしっ!」
そういう余計なこと言うからミレニアは、ジュディアさんの拳骨喰らうんだよ。
けっこういい勢いがあったらしく、床にしゃがみこんだミレニアは頭を押さえて『うおぉぉぉ・・・・・・』と呻いている。
「バカな小娘は放っておいて、素材の査定をはじめようかね」
そして笑顔のジュディアさんがそこはかとなく怖かったので、オレは余計なことは言わずに持ちこんだ素材をそっとカウンターへと置く。
「すみません、今日はタスク・ボアーを捕獲できませんでした」
「なに、気長にやってくれたらいいさね。・・・・・・へぇ、こいつは珍しい。どれも難しい蟲系統の素材な上に状態が良い物ばかりさね」
「え、そんな難しかったっけ?」
オレは魔法でほぼ一発だったし、シオンに至ってはほとんど一刀両断していたんだけども。
シオンも同じよう事を思ったらしく、小首をかしげている。
「どれもスパスパ斬れて、楽しかったよ?」
・・・・・・どことなく危ない発言に聞こえるのは気のせいだと思いたい。
「ああ、確かミナトは氷の魔法が使えたっけね。シオンは多分、単純に腕がいいからさね。
これがルーキーやそれ以前の見習いの腕なんかだと、なかなかねぇ・・・・・・」
ジュディアさんに聞いたところによると、蟲系は耐久力が低い代わりに毒や麻痺もちが多いんだとか。
調子に乗ってバタフライ系の鱗粉を吸ってしまったり、ちょっと嚙まれたりしてしまうと、そこから毒に侵されて徐々に動けなくなることがあるという。
しかも間が悪いと、そこへ雑食性の蟲が集まってきたりして生きたまま齧られたりするらしい。
B級ホラーもいいとこの話である。
「そんなものでルーキーからは苦手とされ、それ以上のランクになるとオークやなんやを倒した方が稼げるってんで、敬遠されてる素材なんさね」
でもまあ、その分上手く素材を確保できればルーキーにはおいしい獲物さね、と言い残しジュディアさんは素材を持って裏手へと一度引っ込み、戻ってきた。
「こいつがその代金さね」
と、カウンターのトレーに置かれたのは金貨が十枚程。
「パープルバタフライの羽が八枚にレッドバタフライの羽が四枚、ブルーカナブンの甲殻が五枚、状態もかなりよかったし色を付けて一万レアさね」
ということは金貨一枚が1000レアで日本円にして一万円と考えて、一日で十万円の稼ぎになったのか。
巨大タスク・ボアーと比べれば少ないけど、元の世界で考えたら半日も立たずに十万円稼いだってやばくない?
一日バイトしたって一万円いかないのに。
「さて、あんた達で報告は最後さね。あたしはギルドを閉める準備を始めるけど、お二人さんは夕飯ここで食べてくなら早めにした方がいいよ」
なんでももう少ししたら、お客もいないので料理番の人が帰ってしまうらしい。
さすがにこの時間帯で食いっぱぐれたくないので、オレとシオンは急ぎ厨房にいる料理番の人に定食を頼んでテーブル席へと着く。
「あ、すいません! 私も果実水と同じ定食を下さい。
えへへ、ちょーっと失礼しますねお二人さん」
そう言って慌てた様子で椅子を持ち出し同席をしてきたのは、愛想笑いを浮かべたミレニアだった。
「あの、お二人には折り入ってご相談と言うかお願いと言うか、聞いて欲しいことがありまして」
そう言うと居住まいを正したミレニアがなぜか上目遣いでこちらを見つめてきて、
「あ、あの、私の事ってどう思いますか?」
思ってもみない発言に、思わず顔を見合わせるオレとシオン。
いや、どう思いますって・・・・・・そんな告白一歩手前みたいな風に言われましても!?
「ミナト。ミレニア、真面目に聞いてるみたいだから、素直に答えてあげた方がいい」
「・・・・・・そうなのか?」
「多分、これは、恋の相談・・・・・・!」
「そうなのか!?」
小声で囁きあっていると、シオンがこくりと自身気な顔で小さく頷く。
そっかぁ、ならこれはアレか。恋の告白をする前の他人から見た自分の魅力確認という感じなんだろうか?
うん、それならオレもミレニアのいいところを持ち上げてやるのも吝かじゃない。
オレとシオンはミレニアに向き直り、
「え、えーっと、ミレニアは小麦色の髪が明るく元気な印象で、小顔だし顔立ちが小動物みたいだし可愛いと思うぞ?」
「え、あ、そうですか? ありがとう、ございます・・・・・・?」
「うん、華奢な身体も清楚っぽくて、そっち方面に受けると思う。胸は残念だけど」
「そっちってどっちですか!? あ、あと胸はまだ発展途上なんですー!!」
オレの言葉に照れては喜び、シオンの言葉に突っ込んでは青いローブごしに主張の乏しい胸を隠しては恥ずかしがるミレニアが面白い。
もうちょっとなにか言った方がいいかと考えていると、ミレニアがバッと後ろを振り返り、
「ちょ、ちょっとジュディアさーん! 言われた通りに聞きましたけど、全っ然思ってたのと違う答えが返ってきたんですけどーっ!!?」
どうやら入れ知恵したのはジュディアさんらしいと、そっちを見れば、あ、なんかカウンターに突っ伏して肩震わせてる。
「なんで笑ってるんですか!? な、何とかして下さいよ、もーっ!!」
「はいはい。お二人さーん、ミレニアがあんた達とパーティーを組みたいんだとさ。
あとはよろしく頼んださねー」
と、そう言い残してジュディアさんはカウンターの奥へと姿を消してしまった。
そして目の前には俯き恥ずかしそうにしているミレニア。
「・・・・・・それがなんであんな言い回しに?」
「それは・・・・・・ジュディアさんが、あーして頼めば落とせるだろうって・・・・・・今になって思うとそこはかとなく違う気がしますけど」
「うん、あれは、恋する乙女の質問、だったね」
「ほらやっぱりなんか違う気がしたんですよ!」
ぷんぷん怒り出すミレニア。うん、からかわれたんだね。
ジュディアさんのあの様子を見るに、誤解されるってわかっててやったっぽいけど。
「そ、それでですね」
気を取り直して、と言わんばかりにコホンと咳払いをしたミレニアが真っすぐにこちらに向き直り。
「私を、お二人のパーティーメンバーにして頂けませんか!?」
ミレニアガ ナカマニ ナリタソウニ コッチヲミテイル !
昔、小学校の頃に同じクラスの女子からツツジの花の蜜が甘い事を教えてもらった作者が、学校に植えてあったツツジの木?の花をほぼほぼ取りつくして先生にめっさ怒られたっけなぁ。
あと、その時一緒に吸っていた同じクラスの女子は先生が近づいてきたことを知らせてくれず、トイレに行くと言い残して速攻で逃げました。




