ファンタジーサイズと金策発見?
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森で巨大芋虫と遭遇。シオンがさくっと倒してミナトが凍らせて道端に転がし、探索再開。
巨大芋虫を倒してから森の中を進むことしばらく。
物欲センサーでも働いているのか、目的のタスク・ボアーとはまったく出会えていない。
シオンの気配察知やオレの索敵をフル稼働させているものの、引っかかるのはコタスという鶉より少し大きな薄茶色の地面を歩く鳥のような小動物のみ。
開拓村へ帰る時間を考えるとここらで成果が欲しい所であるんだけどなぁ。
「ん。ミナト、向こうになんかいるっぽい」
そんなことを思っていると、シオンが足を止めて進んでいる方向とは違う場所に顔を向けた。
「え、ホント?」
オレも足を止めてその方向へ顔を向けてみるも、索敵にはまったく引っかからない。
「じゃあ、そっちに行ってみよう」
「うん」
とりあえず二人でその方向へと進んでみると、少ししてオレの索敵でも捉えることが出来た。
確かに複数の気配があり、しかも一か所に固まっている感じだった。
「でもこの感じ、さっきの芋虫と似たような気がする」
「どうする? お肉じゃないなら、やめとく?」
「いや、せっかくシオンが見つけてくれたし、オレも気になるから行ってみよう」
「わかった」
索敵で目標までの距離も近づいてきたので、木や草で音をなるべく立てないようにシオンにも指示を出して慎重に歩いていく。
いやでも、本当に一か所に固まって動かないな。
これが百足の密集地帯とかだったらドン引きする自信があるけど。
「シオン、この先に・・・・・・って、待って待って待って。まだ様子見だから剣を抜こうとしないで、なんでもはやヤる気が滾らせてるの・・・・・・!?」
「敵・即・斬?」
どこぞの新選組みたいなこと言わないで欲しい。
とりあえずシオンには剣をしまってもらい、様子見でもしヤバそうだったら離れることを厳重に伝えてから、反応が強くなったところにある近くの木の影へと一緒に身を潜めてそこから覗いてみる。
「・・・・・・なんか色んな虫が木に色々群がってるな」
「多分樹液でも吸ってる、かも?」
オレもそう思う。
元の世界で言うなら蝶々やカナブンっぽい虫が10匹ほどがまさに所狭しというように樹に噛り付いている。
しかもその樹の幹が1メートルは超えるような立派なもんで、虫も一匹一匹が30センチは超えていそうな代物で妙に迫力があるんだよね。
「ミナト、どうする? とりあえず、斬っとく?」
やめようかその辻斬り的発想。
「とりあえず鑑定しよう。もし危ない種類だったら困るし」
「わかった。私もやってみる」
ということで、出番だよ鑑定さん。
「・・・・・・おや? これは」
蝶々とカナブンを鑑定したところ、ちょっと気になる事があった。
蝶々はパープルバタフライとルビーバタフライで、カナブンはブルーカナブンという名前なんだけど。
気になったのはその羽と鱗粉、甲殻に価値があるという記載。
どうやら羽は加工してアクセサリー、鱗粉は薬、甲殻は染色剤等に使えるらしい。
値段は分からないがここまできてタスク・ボアーがない以上、見逃すのはもったいない気がする。
「シオン、タスク・ボアーは諦めてあの虫の素材を手に入れてみない? 価値はあるみたいだから、なるべく傷つけないで倒す方向で」
「・・・・・・そうすると、下手に斬れないけど。どうする?」
斬れないことにそんながっかりした顔せんでも・・・・・・。
しかしまあ、方法に関してはオレに考えがある。
「ちょうど一か所にまとまってるわけだし、ここはオレの魔法を試してみたい」
「わかった。でも撃ち漏らしたり、こっちに来たりしたら、斬ってもいい?」
「うん、目的より自分達の命が大事だし。そこは遠慮なくどうぞ」
「やった」
まあ素材の為に出し惜しみして怪我でもしたら目も当てられないしね。
そこはかとなく嬉しそうにしているシオンを横目に、オレは魔法の準備に取り掛かる。
「『凍結球』」
手の平に魔法のイメージを固めて魔力を形成すると、球状に渦巻くハンドボールサイズの魔法が生まれた。
「よし、いけ!」
放たれた『凍結球』は、ピッチングマシーンのごとく高速で飛び、樹木に群がる虫達に狙い通りに命中し、ボシュッという音と共に白い噴煙をまき散らす。
ゆっくりと煙が晴れていくと、そこには見事に白く凍り付いた虫達の姿。
あ、でも端っこにいた一匹のブルーバタフライが軽傷だったらしく、フラフラとその場から飛び立っていく。
「一匹逃げた。行ってくる」
言うが早いかシオンが駆け出す!
「あ! なるべく羽は傷つけないで!!」
「もちろん。――はっ!」
3秒と経たずに追いすがったシオンが飛び上がり閃かせた一太刀は、ブルーバタフライは見事に真ん中から両断し、二つに分断されたその身がひらひらと地面へと落ちていく。
シオンさん、かっけぇ・・・・・・。
「お疲れ様シオン。って、うわぁ、自分でやっといてなんだけど、えぐいくらいに凍り付いてる」
オレも木の影から出て魔法が着弾した樹木に近づいてみると、瞬間凍結でもされたかのように虫達が白く凍り付いていた。
しかしまだ生きているようで、ピクピクと痙攣していたりするからその生命力がすごい。
すごいとこ悪いんだけど、今回は獲物という事でしっかりととどめを刺しておかないといけない。
「とりあえず素材を回収したいから、完全に倒しておこうか」
「そうだね。ほいっと」
何の躊躇もなくシオンが剣をブルーバタフライの頭へと突き刺して、その動きを止める。
思い切りいいなぁと思いつつ、オレも短剣を抜いて手近にいたブルーカナブンの頭へと刃を突き出す。
カキン。
・・・・・・あれ? なんか弾かれた?
さっくりと刺さるもんだと思ったら、頭の甲殻の意外な硬さに阻まれてしまった。
二度、三度やってみるも、その結果は変わらない。隣のシオンはあんなサクサク突き立てているのに・・・・・・。
「・・・・・・シオンさん、へるぷ」
五度目でオレの心が折れたので素直に助けを求めることにした。
・・・・・・いいんだ。男のプライドより今は実利が大事だし、どうせ今のオレは女体化したか弱い女の子だもんね(ヤケ)。
「刃は、ただ突いてもダメ。こうやって刃筋を立てて、腕の力を剣に伝えるように突くの」
「う、うん・・・・・・」
すぐにシオンが指導してくれたのだけど、どもった答えが出てしまう。
だって後ろに回って密着してオレの手を掴まれると、その、顔が近くていい匂いだし、なにより背中に柔らかいファンタジーが当たっててね・・・・・・!?
「ミナト、ちゃんと集中しないと、危ない」
「え、あ、うん、そうだね。ごめん」
そうだよな。刃物扱ってるんだし、今はそれに集中しないと。
「・・・・・・それとも、そんなに私の胸、気になる?」
「・・・・・・ノーコメントでお願いします」
「なんで?」
「え“!? それはぁ・・・・・・」
まさか問い詰められるとは!?
これって気になるならないのどっちを答えても、失礼になる気がするんだけども・・・・・・!?
「まあ分かってて、わざと当ててるんだけど」
「わざとかい!」
「えへ」
隣でチロっと舌を出して悪戯っぽい顔をするシオンに、思わず脱力してしまう。
ほ、ほんとにこの娘はオレの心を弄ぶんだから! いやじゃないけども! 可愛いけども!!
一応そこからはシオンも真面目に指導してくれた事もあり、短剣をブルーカナブンに上手く突き立てることができた。
その後は虫達を樹の幹から剥がし、鑑定を参考に価値ある部分を切り取っていく。
ちなみに樹木自体はあまり凍結していなく、それほど苦労せずに虫達を引き剝がすことが出来た。
その結果、取れた素材は羽が七対に甲殻が六枚といったところ。
それらはオレの左手に絡めて伸ばしたフィビオさんから購入した錬成された黒い蜘蛛糸で一纏めにして、魔操糸スキルで操って傍らでふよふよ浮かせている。
重さもほとんど感じないし、地味に便利なスキルだ。
「じゃあ、今日はそろそろ戻ろうか。・・・・・・シオン?」
「・・・・・・・・・・・・」
お昼ご飯は森の中で見つけて確保した木の実や果物でも摘まんで食べようかなと思っていたら、なぜかシオンがさっきまで虫が群がっていた樹木をじっと見つめている。
そしておもむろに人差し指を、未だちょろちょろ染み出す茶色い樹液に付けてひょいぱく、ってシオンさん!?
「ちょ、なにしてるの?! そんなにお腹空いてたんなら、言ってくれればいいのに!」
「お腹は空いてたけど、そうじゃない。ミナト、これ」
「え?」
そう言ってシオンがまた指先にちょこっと付けた茶色い樹液を見せてくる。
「ミナトは、甘いもの苦手?」
「いや、別に苦手じゃないけど、むしろ好き――むぐぅ!?」
いやシオンさん!? なにゆえそのまま指をオレの口に突っ込むの!?
「どう? これ、甘くない?」
「・・・・・・ア、アマイデス」
確かに甘いけど! それよりちゅぴっと小さく音を立てて離れていくシオンの指に、オレの頭が沸騰して爆発寸前なんだけど!?
だってこれって思いっきり間接キスって、あああああっ! またその指で樹液を掬って舐めたら間接キスの二乗―っ!!
当のシオンは錯乱気味なオレの心情を知ってか知らずか、思案気な顔でじっと樹木から染み出る茶色い樹液を眺め、
「これって、メープルシロップみたい?」
「え・・・・・・? あ、そう言われれば、そんな気もする・・・・・・ような?」
さっきの指パクの衝撃的出来事を振り払い、味だけ思い出してみれば確かにメープルシロップに似たような気がしなくもない。
ただ知ってるメープルシロップよりは、ちょっと味が薄くて舌ざわりが水っぽい気はするけど。
一応【鑑定】してみると樹の名前は『ハニーツリー』で、メープルシロップみたいなのは『ハニーツリーの蜜液:天然の甘味材』と表示された。
なおシオンも【鑑定】してみた結果、同じような内容と共に『食用』の文字も表示されたので一安心である。
「ねえ、これ持って帰ったら、どうかな? ラノベの定番なら、甘味はいい値段になる、筈」
「確かに・・・・・・」
元の世界だって砂糖や胡椒なんかの調味料は、金貨と同じ重さの価値とか言われてた事もあったみたいだし。
というかラノベにも造詣があるんですねシオンさん。
まあ、最悪価値が低くても個人で楽しめばいいしね?
しかしこれが、思った以上に話が大きくなるとはこの時には考えもつかなかったオレ達だった。
異世界転生して虫の魔物がいるとしたら、作者は間違いなくスキル【サッチュウザイ】を選択すると思う。




