お肉を求めて。
『ブクマ』や『いいね』等をお待ちしてます!
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お得な装備を手に入れることができた(お揃い)。
それほど密集していない木々の間から差し込む日差しが、見通しよく先を照らしている森の中をシオンと共に歩く。
膝くらいまでの草木がちょっと鬱陶しいものの、買い揃えたばかりの白い魔物革のブーツがいい仕事をしていて素足に当たることなくそれほど気にならない。
フィビオさんの店で装備を整えた後、オレとシオンはギルドに行き簡単なお昼を済ませた後、ジュディアさんの元へ向かい夕方までに出来そうな仕事はないかと相談した。
提案されたのは、開拓村からそう離れていない場所にある山林の麓にいるタスク・ボアーという、昨日遭遇して倒した巨大猪と同種の狩猟。
ジュディアさんからはあそこまで大きいのは稀で普通はもう一回り二回り小さく、オレ達の実力なら割と危険はないと思うからお願いしたいと言われた。
ちょっと突っ込んだ事情なのだが、開拓村はまだ軌道に乗るほどでなく、畑等の作物ならまだしも狩猟する肉類となるとそれを確保できる人員が乏しいのだとか。
村の男衆でもできないこともないのだが、基本はそれぞれの仕事があり、仮に狩猟などで怪我を負うことになった場合それがダイレクトに生活に響くらしい。
なのでオレ達のような冒険者且つある程度安全に狩りが出来る者は重宝されるようだ。
「ミナト、あそこにも薬草がある」
「あ、ほんとだ。お、こっちにはビレルが生ってるな」
そしてただいま、タスク・ボアーを探しつつ片手間に二人で薬草や木の実なども採取していた。
こういうのもギルドで買い取りしていて、目下数がないという話も聞いたので副収入的な感じでこなしている。
まあ、今は手持ちの現金がないので少しでも収入は欲しい所ではあるし。
ちなみにあまり間を置かずに薬草や木の実を見つけられているのは、『鑑定』スキルが役に立ってくれている。
素人目であったなら草木に紛れている薬草や木の実なんて、そうそう簡単に見つけられないだろうし。
「ミナト、何かいる。あっちの方」
薬草採取もするならと、ジュディアさんが貸し出してくれた簡素なショルダーバックが見つけた素材で一杯になりかけていた頃。
シオンが立ち止まり、短い言葉と共に斜め右の方を見つめる。
『鑑定』と並行して『索敵』スキルも発動させてはいたのだけど、シオンの方が先に見つけてくれたようだ。
「・・・・・・うん、いるな。しかもこっちに向かって来てる。数は……一つ、だな」
タスク・ボアーにしては反応が小さ気がするけど、少なくとも兎とかそういう小動物じゃないのは分かる。
「どうする? 見逃す?」
なんて言いながらも腰の両側に下げている長剣の柄に手を置いて、やる気満々なのが雰囲気で分かっちゃうよシオンさん。
「とりあえず隠れて様子みようか。目的の獲物以外だと荷物になるし」
「わかった」
確認した後、すぐにオレとシオンは左右に分かれて木の陰に隠れて待ち伏せをする。
ほどなくして現れたは、ゴブリン・・・・・・だったらいいなと思う時がありました。
それは体長一メートルくらいで、ずんぐりむっくりした体型で全身が深緑色の・・・・・・巨大な芋虫だった。
種族:フォレストキャタピラー
状態:空腹
そしてやはりというか『鑑定』した結果がこれ。
ひぃっ……虫は苦手じゃないつもりだったけど、あそこまで巨大化したものを見ると背筋にうすら寒いものを感じる。
特に波打つように動く身体や妙にはっきりみえるトゲトゲしい体毛に、わしゃわしゃと忙しなく動く口元が妙に生々しい・・・・・・。
シオンはこういうの平気なんだろうか?
そう思ってシオンに視線を送れば、当の本人から巨大芋虫を指し首を掻っ切るジェスチャーの後、「どうする? ヤる?」と小首をかしげるという頼もしすぎる返事が返ってきた。
行動は怖いけど仕草は可愛いなぁ・・・・・・じゃなく人差し指と親指で丸を作ってOKと返す。
まあ鈍重そうだし、仕留めて経験値になればいいな、なんて思っていたら向こうにいるシオンが急に動いた!?
ちょっとまってと言う間もなく、音もなく木の影から飛び出したシオンが巨大芋虫の手前で宙を舞い、いつの間にか手にしていた二対の剣をその頭上で閃かせる。
「ピギュゥッ!?」
着地した勢いを殺さずそのまま距離を取ったシオンの後には、斬られた頭部付近から白い体液を飛び散らせ、短い悲鳴を上げた芋虫がその身を痙攣させてゆっくりと動かなくなっていった。
「た、倒したの・・・・・・?」
「ん。意外と脆かった」
なんて言いつつ刃についた白い体液を払い剣を鞘に納めるその姿は、まるでどこぞの武将のようで頼もしさしかない。
「お疲れシオン。でも、次やるときはいきなり飛び出すのはやめてね。可愛い顔に傷とかついたら心配だから」
ただでさえ病院も薬も乏しい異世界なのに、大怪我なんかしたら比喩じゃなしに命に関わるし。
それなのになぜそんな嬉しそうな顔してるのシオンさん・・・・・・。
「んふふ。わかった、気を付ける。・・・・・・可愛いって言われた」
「ん? なんか言った?」
「なんでもない。それより、これ、どうする?」
言われて見ればオレ達の前にあるこの巨大芋虫、倒したはいいけどどうしよう。
見た感じ動物みたく毛皮や牙なんていう素材もなさげだし、なによりこのぶよぶよした身体と白い体液まみれになったのを持ち運びたくない。
というわけで、
「うん、スルーして進もう。オレ達の目的はタスク・ボア―なわけだし」
「わかった」
たださすがにこのままというのはよろしくないと思い、オレの氷魔法で凍らせて草木の影に転がしておく。
氷が溶ければ自然に還るだろうし。
「それじゃもうちょっと奥まで行ってみようか」
「今度はもっと、斬りごたえがあるのがいいな」
「・・・・・・平和に行こうね、平和に」
なんだかワイルドになりつつあるシオンを嗜めつつ、オレ達は森の奥へと足を運ぶのだった。
ちょっと調べたんですが、牛や豚とかって骨や皮、内臓を抜くと可食部分が元の四割程と尻、意外と少ないんだなぁと思いました。
ちなみに作者はヤゲンや軟骨が好物です。




