初期装備を手に入れた!
『いいね!』『ブクマ』等して頂けると、尻尾振って喜びます!
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鍛冶屋でまさかのお姉系が出てきて、マワリコマレタ! ニゲラレナイ!!
ナル男に強引に店に連れ込まれたと思ったら、なぜか店の中に置いてあった小洒落たテーブル席へ案内された。
その途中で見た店内は落ち着いた雰囲気で、剣や弓等があるものの数は少なく、まるで展示会のように飾られているものが多い。
席について少しすると、店の奥へ引っ込んでいたナル男が戻ってきて、テーブルに人数分の紅茶が置かれる。
一時はナル男の衝撃的な光景と強引に引っ張りこまれた事からどうなるかと思ったけど、まともな対応で少し安心した。
「ようこそ、鍛冶屋兼武器屋のスレイブへ。あたしは店主のフィビオよ」
目の前の席に座り、そう言って優雅に足を組む姿がとても様になっている。
なんかやり手のホストみたいだな。
「あ、えーっと、オレはトウ、じゃなくてミナトで、こっちはシオンです」
「ん、よろしく。紅茶おいしい」
うーん、自分の名前の呼び方が変わったことにまだ慣れてない。
そしてシオンの感想が嬉しかったのか、笑顔を見せるフィビオさん。
「それで? どんな武器をお求めかしら?」
いきなり本題に入る清々しさ。嫌いじゃない。
「いや、よくオレ達が武器を求めてるってわかりましたね?」
「あら、ここは鍛冶屋よ? 見る限りあなた達は研ぎや修理に出すような物は持ってないし、ミナトは武器を振り回すようなスタイルじゃないし、どっちかって言うとシオンの武器が必要なんでしょう?」
確かにオレは魔法があるしスキル的にも近接武器が必要じゃないのだけど、なぜわかったし。
「驚くことじゃないわよ。さっき腕を触ったときに筋肉のしなやかさで分かるし、あと歩き出したときの体幹のブレの違いね。ミナトも悪くないけど、シオンの方が近接戦闘を行う者の歩き方だったわ」
オレの顔に疑問が浮かんでいたか、フィビオさんがすらすら答える。
すげえ。まさにプロの目線から見た言葉だよ。
鍛冶屋なんてものは前の人生で行ったことなし、分からないことがほとんどだけど、フィビオさんの目利きや話からして信用してもよさそうに思う。
「えっと、ちなみに予算は3万レアなんだけど、これでどのくらいのものが買えたりします?」
「んー、残念だけど、その予算だと鉄製の武器が精いっぱいね。ついでに言うなら、それなりの装備を整えたければ、最低10万レアは用意してもらいたいわねぇ」
げっ、最低10万レア、100万円って……。3万レアでもそこそこなものは買えるのでは? と思ってたのに……。
異世界の物価が世知辛い!
「じゃあ、予算内で装備を揃えるのは結構厳しい感じで・・・・・・?」
「そうねぇ……あたしとしてはせっかくのお客さんだし、いいわ。他人のお古でよければ今後の投資ってことで、サービスしてあげてもいいわよ?」
「おお、さすが二枚目! それでお願いします!!」
「ふふふ。褒めてもこれ以上は何も出ないわよ? それで武器はどんなのがいいの?」
「私は、長剣が二振り欲しい」
「えーっと、オレは短剣を二本と、あと丈夫な糸とかあれば欲しいです」
「へえ、シオンはその細い体で二刀使いなの? さすが獣人というところかしら。それでミナトは……短剣はいいとして、糸とか変わったものを欲しがるのね。
まあいいわ、ちょっと待ってなさい」
そう言ってフィビオさんは席を立ち、店の奥へと消えていった。
シオンと店の内装とかファンタジーだね等と雑談していると、ほどなくしてフィビオさんが両手を装備品で一杯にして戻ってきた。
「はいこれ。お古ではあるけどまだまだ使える代物よ」
お茶セットを片付けたテーブルの上に置かれたのは、乳白色の皮鎧とブーツが二セットに、シオンの長剣二本にオレの短剣が二本と木板に巻かれた黒い糸。
「皮鎧とブーツはホワイトライノスっていう魔物の皮で、そこそこ丈夫よ。脇の紐で縛ればある程度身体に合わせられるわ。
長剣と短剣は鉄製で、剣帯はサービスしてあげる。あとその黒い糸は蜘蛛の魔物の糸を錬金術でコーティングしたもので、素人の剣くらいじゃ斬れない強度があるわよ」
着てみてもいいわよ、と言われたのでその場で試着してみる。
うっすら皮の匂いがする皮鎧は、両脇の紐を調節して縛ってみると特に違和感もなく身体にフィットする。
ブーツはサイズが少し大きかったものの、これも紐で調節すれば問題なかった。
そこへ腰の後ろで短剣を差したなら……おお、まさに冒険者といった出で立ち。
隣のシオンも上手く着れたようで、なんかオレよりも様になっている気がする。
「長剣は腰の両側につけたのか。シオン、とっても似合っててカッコいいね」
「ん、ありがとう。ミナトも、似合ってる。かわいい」
「・・・・・・なにかしらね。女同士なのになぜかいちゃついてる感じがするのは」
そ、そんなつもりは全然ないんですけども!?
確かにシオンを見ててカッコ可愛いなぁと思っていたけど。
「で、この糸はどうするつもりなのよ?」
怪訝な顔のフィビオさんには実演して見せた方がいいと思ったので、オレは黒い糸を適当な長さに伸ばし、その端を手に取って『魔操糸』のスキルによりうねうねと動かして見せた。
「なによこれ? 手品じゃないわよね?」
「ええ、まあ、オレが使える魔法みたいなもんでして」
「へぇ、不思議な魔法もあったものね。まあいいわ、とりあえずこれが今のあなたたちの出せる金額プラスあたしのサービスで購入できるものだけど、どうする?」
ここに来る前は最低でも武器だけでも、と考えていたのがフィビオさん好意もあって装備一式が揃ったのである。是非もなし。
シオンへと顔を向けると、賛成らしくこくこくと小さく頷いてくれる。
というわけで、
「もちろん、このまま購入ということでお願います!」
「なら商談成立ね。装備はそのまま着てっても問題ないわ。ただしサービスついでと言っちゃなんだけど、一週間に一度くらいはあたしのところに装備のメンテにいらっしゃい。
有料だけど、土産物を持ってくるなら安くしてあげないこともないから」
「はい! その時はお世話になります」
様になるウインクを見せるフィビオさんに代金の三万レアを渡し、オレとシオンは店を後にしたのだった。
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種族は違うのにまるで仲のいい姉妹のような二人を見送りながら、鍛冶屋の店主であるフィビオは口元に不意に笑みを浮かべる。
「ふふふ。久しぶりに新鮮なお肉を持ってきてくれた子達には、これくらいサービスしても罰は当たらないわね。ジュディアの言う通り、面白そうな子達だわ」
今朝早くに肉のおすそ分けにと立ち寄り、期待の新人が来たからよろしくと言っていた友人を思い浮かべ、フィビオは店の中へと戻っていった。
剣や鎧の値段をちょっと調べてみたら「数十万~数百万」という記事を見つけて、RPG物で最初はひのきのぼうとかしか装備できないのは仕方ないよな、とか思いました。




