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エルフの村 謎の少女再び

「あ、あの…」

「君は…?」


俺は女子高生に声をかけると、向こうも俺が制服姿である事に反応した。お互いに、突然この場所に飛ばされて来た事が分かったのだ。


「俺も気がついたらこの村の近くに…」

「そう…なのね」


先程まで混乱していた女子高生は、少し落ち着いた様子を見せていた。自分と同じ境遇の人間と会えた事で、味方がいると分かったのだ。


「ここの人達の話す言葉が分からなくて…」

「それは俺も同じなんだ。何処の国かも分からないし…」


同じ言葉が通じる人に会えたのはいいが、現地の人間の言葉を理解する手段が見つからない。言葉の壁はそう簡単に乗り越えられるものでは無いのだ。


「〇〇●…」


村人達も俺達の事を不審に思っているらしく、怪訝そうに見ていた。リリィは俺の服の袖を引っ張っていて、何処かへ連れて行こうとしていた。


「この子…」

「ついて行った方が良い。君も一緒に」


リリィについて行った先は、彼女の家であろう一軒家だった。村の雰囲気に合った家で、他の家と比べて少し大きかった。


(この家の大きさ…村長でも住んでるのか、或いはただの金持ちか…)


俺はそんな事を考えながら、彼女の家に入れてもらった。玄関にあった靴箱に履いていた靴を入れて、別の履き物に履き替えた。


(中も狭くは無いな…)


家の中は落ち着いた雰囲気で、家具はどれも高級そうだった。少なくともこの村の中では、一番の金持ちなのだろう。


(あの2人はリリィの両親か…)

リリィは彼女の親と思われる夫婦と、何やら話し込んでいた。俺達の扱いをどうするのか、相談しているのだろうか。


しばらくするとリリィとその両親がやって来たので、俺は取り敢えずお辞儀をした。それを見た女子高生も、慌ててお辞儀をしていた。


(この土地の服か…)


俺達に最初に渡されたのは、着替える為の服だった。確かに、俺が着ていた制服はかなり汚れている状態だった。


俺達は、それぞれ別の個室で着替える事になった。渡された衣服の着心地は意外と悪くなく、動きやすい様に工夫がされていた。


「この服なんかチクチクする…」


一方で女子高生の方は、あまり気に入っていない様だ…そう言えばお互いに名前すら名乗っていなかった。


「俺…水無月嶺二って言うんだ。君の名前は?」

「えっと…神木仁子」


お互いに名前を名乗った後も、何処かぎこちない雰囲気だった。言葉も通じない土地で、どうしても不安になってしまうのだ。


「スマホも圏外…どうしよう…」

(本当だ…)


仁子はスマホを確認していたが、殆どの機能が使えなくなっている事を嘆いていた。俺も確認したが、やはり家族と連絡を取るのは出来なさそうだった。


(さて…これからどうするか…)


日本語が通じず、何処の国か調べる方法も見つからない。さらにはこの土地特有の病気になってしまう可能性もあった。


(このままずっとここに居る訳にも…)

「ちゃんとこっちに来れたんだね」

「きゃっ…誰?!」


家のリビングに突然現れたのは、俺がこの場所に来る事になった原因と思われる人物…涼子だった。突然現れた涼子を見て、仁子はかなり驚いている様子を見せていた。


「えっと…仁子はどうやってここに来たのかな…」

「何でって…」


涼子は仁子の名前も知っていたみたいだが、仁子の表情を見るに初対面なのだろう。俺も仁子がどうやってここに来たのか、少し気になっていた。


「家に帰って…玄関のドアをあけたら…村の入り口に…」

「あちゃー玄関ドアが歪になってたんだね。まぁ横浜は歪が多い土地だからしょうがないか…」


家の玄関を開けたら見知らぬ土地に飛ばされるというのは、随分と理不尽な話だ。そもそも何で横浜に「ひずみ」があるのかという話なのだが…


「ところで君達、こっちの言葉が分からなくて困ってるでしょ」

「それは…そうなんだが」


涼子は黒っぽい果物の様な物を2個、俺達の前に用意した。それはとても不味そうな見た目で、食欲を減衰させる物だった。


「それ食べれば、ここの言葉が分かるようになる」

「そんな訳…」


仁子はそんな事はあり得ないと言いたげだったが、俺は食べてみる事にした。この状況を打開出来るなら、涼子の言う通りにしてみるのもいいと思ったのだ。


「うぇぇっ…まっまずっ…」

「おお〜上出来だよ」


俺は果実を口に含んだが見た目からの想像以上に不味く、すぐに吐き出してしまった。それでも涼子はよく食べたと言ったコメントをしてくれた。


「××△…」

果実を食べる事を嫌がる仁子の言葉が理解できないものになっていた。彼女は先程まで、俺と同じ様に日本語を話していたはずだ。


「んぐっ…うえぇ…」

「ほらほら頑張れー」


涼子は強引に仁子の口の中に、果実を突っ込んでいた。仁子はかなり不味そうにしていたが、無理やり飲み込まされた様だ。


「何すんの‼︎」

(また聞き取れる様に…)


仁子の言葉が聞き取れなくなったのは、ほんの数秒間だけだった。先程の果実に毒が混ぜられていた訳でも無さそうだった。


「どうしたの?!」

「っ?!誰だ‼︎」

(リリィ達の声も聞き取れる…)


リリィ達の言葉はいつの間にか異国の言葉では無くて、日本語になっていた。やはり、先程食べさせられた果実が原因なのだろう。


「見つかっちゃったか…まぁまぁ落ち着いて」

「……」


リリィと父親は涼子に対する警戒心を剥き出しにしている。鍵を壊した訳でもなく、いきなり家に現れたのだから当然だが。


「今レイジとニコちゃんに食べさせのは交換の果実。日本語を忘れる代わりに、この世界の言語を覚えたの」


成程、某猫型ロボットの道具の劣化版という訳か…まて、いま「この世界」と言ったのか?どういう事なんだ…


「レイジ達にとっては、ここは異世界なの」


異世界…俺は冗談だと思ったが、恐らく本当なのだろう…


次回も世界観の説明が続きます。


登場人物 

神木仁子 

身長151cm。誕生日は6月19日。高校2年生。今時の女子高生と言った雰囲気だが、サブカルチャーの知識が豊富で、様々なゲームをプレイしている。髪を染めているらしく、黒では無く茶色の髪になっている。スマートデバイスが満足に扱えない世界に飛ばされて不満を抱き、元の世界への帰還を目指す。


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