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ヘレナとシャロンの説得 そしてアルカディアへ

「シャロン皇女、取り敢えず脱獄おめでとう」

「あんたなのね…千秋を差し向けて来たのは…」

「それはどうかしらね…」

「はぐらかさなくてもいい」


シャロンはカリドさんを押さえつけながら、千秋と会話していた。やはり彼女を手助けしたのは、ヘレナで間違いなさそうだ。


(千秋…本当にヘレナの手先だったのか?)


俺はシャロンの勘違いかも知れないと疑ったが、それどころではない。俺はカリドを押さえつけているシャロンに、ゆっくりと近づいた。


「何をしたいのかしら…へぇ」


俺が魔法を放つ構えをしている事は、ヘレナには確実にバレてる…だが、俺の異能力については、千秋もヘレナも知らない筈だ。


「頼むシャロン、落ち着いてくれ」

「それで止める人いないでしょ」


シャロンは冷静に、カリドさんの首と体に魔法で圧力をかけて押さえつけている。彼女の周りには魔法による冷気が放たれていて、少しでも敵意を示せば氷刃で攻撃される状況だ。


「これ以上俺達に攻撃するメリットは無いはずだ。ここで転移者を殲滅しても、すぐに本国に帰れる訳じゃない」


俺は解析の異能を発動させて、彼女の急所を見透かしていた。いざとなったらそこを突いて、カリドさんを助けるという算段だ。


「私と戦うつもり?」

「っ…そんな事は考えてない!」


駄目だ…当たり前のようにこちらの考えを見抜かれている。やはり、まずは彼女の待遇の改善を提案するべきだろうか…


「まずはここに閉じ込めておくのを止める。君の自由を保障する」

「そんなの当たり前。そもそもこっちは私設部隊に助けを求めても良いんだから」


シャロン皇女の考えが攻撃的すぎる…どうすれば平和的な方に持っていけるのだろうか…取り敢えず、私設部隊などを呼べば王都の人々に危害が及ぶ可能性があると告げよう。


「ここで戦いを起こせばまた王都に住む人々が傷つく可能性もある。それでも構わないのか?」

「…だったらいつまでも閉じ込めておくのはやめてよ」


シャロンの言葉の勢いが、少しだけ落ち着き始めた。彼女の方には、二度も、王都の民を無差別に傷つけるつもりは無いのだろう。


「ねぇヘレナ、千秋を助けたんでしょ?私の事も匿ってよ」

「なんでよ…あなたと千秋じゃ全然立場が違うじゃない」


シャロンはヘレナに助けを求めたが、ヘレナは嫌そうだった。まだ、シャロンは完全な優位に立っている訳では無いが…


「あの…ヘレナさん、あなたがシャロン皇女を監視するのはどうですか?」

「あなたは…」

「リリィです。シャロンの待遇を改善するのなら、あなたが責任を持ってください」

「そうね…」


割って入って来てくれたリリィが、説得の続きをしてくれている。俺としては、正直助かったという気持ちでいっぱいだ。


「私は彼女のせいで何が起きたのか詳しくは分かりません。だから、彼女の自由にはある程度制限かけるべきです」

「なるほどね…まぁ、何の理由もなく拘束されるなんてのはあり得ないからね…」


ヘレナは自分と同じ世界に住むエルフであるリリィに説得されて、考えが軟化し始めている。さらにもう一押しすれば、こちらにとって不利な方向にはいかなくなる筈だ。


「ヘレナ…シャロンの事を任せたい」

「まて、シローネ!まだヘレナの事は…」

「お前の命の危機だ。信用できるかは後だ」

「そう…私としてはどうでも良いんだけど」


その瞬間カリドさんにかかっていた圧力が消えたらしく、すぐに飛び上がってシャロンから離れた。すぐに体勢を整えていたが、シャロンやヘレナと戦う構えにはならなかった。


「シャロン皇女は王都に対して攻撃を仕掛けている。原因は俺達にもあるかも知れないが…」

「大丈夫、そんな事はしない様に監視しておく」

「あの時は焦ってたなぁ…」


ヘレナは、シャロン皇女の事を預かるという方針に決めた様だ。シャロンは急に反省しているアピールを出しているが…


ーー


(はぁ…途中からリリィが説得してくれてよかった)


途中から代わってくれて、俺は正直かなりホッとしていた。カリドさんが危なかったからシャロンの気を引こうとしたが、かなり不安だった。


「すごい気が抜けてるね」

「琴音…」


疲れ切っていた俺に声をかけて来たのは琴音だった。彼女も疲れている様子だが、俺はそんなに気が抜けた表情をしていたのか…


「リリィが割って入ってくれて良かったよ…私があれを説得するなんて無理だし…」

「そうだな…」


琴音もホッとしていた様子で、俺もしばらく何も喋らずに休んでいた。しばらくして、琴音が俺の方を気にし始めている事に気づいた。


「他の誰かに、面倒事をやってもらうのって…楽?」

「それ、当たり前じゃないか?」


何かの責任を負うってのは大変だし、面倒すぎる。そんなのは人任せにしてしまえば良い、と考えるのは普通じゃないのか…?


「でも、社会に出て、大人になったら責任から逃れる事なんて出来なくなるよね」

「それは…分かってるけど」


琴音は既に大学生であり、将来の事も本格的に決めなければいけない時期に入っている。俺は…分からない、まだ考えがフワフワしている。


「別の世界に来て、都合良く変わるなんて、あり得ないんだよな」

「どういうこと?」

「結局俺、周りに助けてもらってばかりで、何も出来てない気がするんだよ」

「そう…なんだね」


自分一人で責任を持って何かをやり遂げるという事は、改めて考えると難しい事である。元の世界にいた頃も、自分からリーダーになったが事は一度も無かった。


「確かにこんな世界に来たんだし、自分1人で何かを成し遂げる事も大事かもね」

「…ああ」


正直、俺は元の世界に帰っても何がしたいのか、全く分かっていなかった。だからこそ、この世界で自分の目的を見つけなければいけないのかも知れない…


「私はどうしようかな…こっちの世界をもっとちゃんと見るべきなのかな」

「将来はどうするつもりなんだ?」

「出版業界とか…そっちにしようかなって」

「出版…本読むの、好きだったもんな」


琴音は、ある程度方針を決めているみたいだった。俺は…どうしようか。音楽は好きだけど、よく分からない部分も多いし…


「まぁこんな状況だし、まだ決めなくても良いでしょ。何ならこっちで一生を過ごす事になる可能性だってあるし…」

「…それは、やっぱ嫌だな」


確かに、このまま元の世界に帰れない可能性も高い。そうなったら、好きなアーティストの曲も追えなくなってしまう…


「まぁ、取り敢えずこの後の事を考えよう」

「シャロン皇女はヘレナが預かるから…大丈夫だよね?」


今日は、深夜に色々とありすぎて疲れ果てている。取り敢えず、明日…これからどうするのか話し合おう…


ーー


「あなた達の事はある程度は信用しましょう…ですがまだ信頼は出来ません」


まだ信頼は出来ない、それがヘレナの出した結論という事だった。ついでにシャロンはヘレナの方にくっついて、守ってもらおうとしている。


「転移者の事をどう扱うか…それはアルカディアで決めるべきです」

「アルカディア…聞いたことない場所だけど」

「エルフ達が住まう森よ」

「千秋さん?!」


千秋もいつの間にか地下室に来ていて、桜は驚いていた。やはり千秋は、ヘレナの協力者だったという事である。


「俺達を入れていいのか?」

「アルカディアは伝承を守るエルフ達の本拠地、下手な事はそもそも出来ない」


宝玉の伝承の詳細を知る事が出来るかもしれないが…そもそもアルカディアで自由に行動できるかも分からない。


「そう言えば…」

「はぁっ…やっと帰ってこれたぞ」

「ビル!…無事だったんだな!」

「無事じゃねえよ!」


入口の方からやって来たのは、ヘレナに捕まっていたビルだった。どうやら解放された後、自力でここまで戻って来たらしい。


「せめて一緒に連れて来てもいいのに…お疲れ様です」

「ああ…俺の扱い、めっちゃ雑だぜ」


歩いて帰って来たビルの事に対しては、素直に大変だなと思っていた。彼への扱いの雑さは、後でちゃんとヘレナに突っ込んでおこう。


「で、誰が行く?流石に転移者全員を集める訳にはいかないだろう」

「俺とシローネ、千秋は当然として…琴音とレイジも来るか?」

「私は行くよ。レイジは…」

「俺も行きます…何か出来るかは、分かりませんけど…」


個人的にはエルフ達が住む森である、アルカディアへの興味も強かった。どんな風に暮らしているのか、王都とは違うのか、色々と楽しみだった。


「私も行ってみたいです。自分達の事も、満足に分かっていないので…」

「もちろんいいわよ」


リリィはこの世界の人間である以上、断られる理由は無い。それに彼女は自分達の歴史を理解できないと言って、エルフについて知りたがっていた。


「私達とリリィ、カリドとシローネ、琴音とレイジ、それからシャロン皇女とサクラ…後は…」

「仁子も連れて行きたいわ」

「あの子…ついて来るだろうか…」

「彼女の異能は物質生成。いざと言う時に役立つかも知れない」


ーー


「え…アルカディア?何それ」

「悪いけどついて来て欲しい」


俺達が使っている家で暇そうに本を読んでいた仁子は、いきなりアルカディアに連れて行かれる事になって困惑していた。流石に驚くだろうが、今回は道中で説明するしか無い。


「馬車を使うの…?乗り心地はどうなの?」

「これ…かなり良い馬車ね」


仁子は馬車の乗り心地に不安を覚える一方で、リリィは上等な馬車だとすぐに見抜いていた。長い旅になりそうで俺も不安だったが、後戻りをするつもりは無かった。


「さぁ、出発しましょうか」


俺達を王都からエルフの森アルカディアへと運ぶ馬車はゆっくりと動き出す。エルフの森はどのような場所なのか、転移者の扱いがどうなるのかは、まだ分からない。


ーー


「転移者達がヘレナと一緒にアルカディアに向かった?!」

「出遅れちまったな、涼子」


その頃、涼子は情報屋であるグーシーの元にいた。彼女はグーシーからアルカディアに関する情報を教えてもらっていたところ、転移者とヘレナが接触したという情報が入って来たのだ。


「すぐに馬車を手配してやる。値引きしてやるよ」

「ああ、頼むよ…!」


涼子はアルカディアに潜入する準備を急いで進める事にした。その目的は、宝玉の一つである「新緑」の確保だった…


次回の更新は、また少し間が空くかも知れません…


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