王城の離宮 オリヴェルの第二王子
王都の中心地はバザールとは対照的に、整然とレンガの建物が並んでいた。人口は多かったが、バザールほど騒々しくは無かった。
「ここの人達は、なんと言うか…気品があるな」
「そりゃ、王城周辺に住んでるのは金持ちばかりだよ」
様々な人間がいたバザール周辺とは異なり、富裕層が多く住んでいるみたいだ。その分、危険な人物も少なく、治安も良さそうだ。
「王城には簡単に入れるの?」
「うん、私は第二王子の友達だからね」
オリヴェル王国の第二王子が…異世界人である涼子の友達?…勝手に友達だと思っているだけかも知れないし、間に受けるのは良くないだろう。
「馬鹿でかい城じゃないけど、かなり立派だよな」
オリヴェルの王城は遠くからも見えるほど大きい訳ではない。しかし装飾は美しく防備も完璧で、王族の住まいとしての完成度はとても高かった。
やはりというか、城門には見張りの兵士が数人いた。彼らは正面から城門の前に来た俺達の姿を見て、すぐに警戒し始めた。
「エルラの友達だよ。涼子って言えばすぐに分かるはずだけど…」
「何だと…おい、身分を示せ」
不信感を露わにする兵士達に、涼子は何かを見せていた。紙のような物を受け取った兵士は特殊な道具も使いながら、それを調べていた。
「許可証が本物である事は分かった。だが、離宮以外の場所には入らないように」
「信用無いなぁ…」
許可証の確認を終えた兵士達は、俺達を通してくれた。涼子は自分の事が不信に思われている事が不服だったみたいだが。
王城の敷地内には立派な庭園もあり、種類は分からないが美しい花が多く咲いていた。俺達は庭園を眺めながら、王子が待っているらしい離宮へ向かった。
「さっきの兵士達は涼子の事を良く思っていないみたいだね」
「うーん…何がいけないのかな」
色々知ってる癖に他者には秘密にしたり、困ってる人や無関係の人を自分の望みの為に利用するからだ…と思ったが俺は黙っていた。それにしても涼子と交流を持つなんて、第二王子はどんな人物なのだろう。
(彼女が妙な事をしない様に、目を光らせているのかもしれない)
俺は第二王子であるエルラがしっかりと涼子を監視しているかも知れないと期待した。民に危害を及ぼす様な事をしてもすぐに止められる様に、準備しているのかも知れない。
「よく来てくれたね皆さん」
「久しぶり…って程でもないか」
エルラは穏やかそうな雰囲気の青年で、涼子とは柔かな様子で話していた。エルラとしては、涼子の事はただの友人として見てるみたいだ。
「あなた方も異世界から来たのですね?」
「はい、エルラ王子。あなたはどうやって涼子と知り合ったのですか?」
「いきなり現れて、自分は別の世界の人間だと言ったんです。未知の技術で作られた物も多く持っていたので、すぐに信じました」
だから友達として接しているのだとしたら、少々不用心な気はする。未知の存在だからこそ、何が目的か分からないと思いそうだが…
「そう言えば住む人が増えたから、もっと広い家を用意してくれない?」
「うん良いよ、すぐに王城近辺の空き家を探して…」
エルラ王子は困った様子を見せる事なく、涼子の頼みをすぐに聞いた。彼らのやり取りを見る限り、一度や二度では無さそうだ。
「すぐにお茶を用意させるので、待っていてください」
そう言ってエルラ王子は臣下に色々と頼み始めた。彼を待っている間に、琴音が俺に話しかけて来た。
「レイジ、あの王子は…」
「多分ただのお人好しだな…ダメ人間かは分からないが少なくとも涼子は抑えられない」
恐らく涼子はエルラ王子を使って金銭的な問題を解決して、好き放題やっているのだろう。だから地下室で生活しているシローネさん達にも、強気な態度で接していたのだ。
「エルラ王子…異世界人は俺達だけじゃありません」
「そうなのですか?どの様な方なのか教えてくれますか?」
エルラ王子はこちらの言う事を疑う事なく、詳細を聞いて来た。特に隠す必要はないと思ったので、彼にシローネさん達の事を伝える事にした。
「王都のバザールには地下室があって…」
「殿下!王城に侵入者が!真っ直ぐ離宮に向かって来ています!」
緊急の報告をしたのは、第二王子直属の兵士だった。その報告の直後に凄まじい衝撃が起きて、離宮が揺れた。
「何だ?!敵は魔法でも使っているのか?!」
エルラ王子はすぐにパニックに陥っている様子だった。敵対者に対しては、俺達と城の兵士で対処する事になるだろう。
「っ…来たか‼︎」
離宮の壁を突き破って入って来たのは、アジア系と思われる男だった。壁を破壊するのに使ったのは、恐らく魔法では無く異能だった。
「えーと、あんたは…」
「ソル・レウだ!涼子、貴様の命を貰う!」
ソルは涼子に狙いを定めていて、涼子も何かを思い出した様子だった。どうやら彼らの間には、何かしらの因縁があるらしい。
「そうそうソルね…えーと、遺跡の財宝を私に横取りされた事を恨んでるの?」
「違う‼︎それは知らん‼︎」
怒るソルが立っている場所の周囲が、突如罅割れた。完全に戦闘態勢に入っている彼との戦いは、避けられないのは明らかだった…
最後に新キャラとの戦いが始まって終わりました。戦いの決着は次回になります。
登場人物
エルラ・オリヴァース
身長165cm。オリヴェル王国の第二王子で、お人好しな性格。緑色の髪を切り揃えている。涼子や桜の味方をしていて、涼子の願いを叶える為の手伝いとして資金などを提供している。




