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邪神の眷属になったようだが私は何をすれば良い  作者: 屯田観烏之羽(ミタミ・アノウ)
騎士覚醒編
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序章

 意識をが現実に戻る。

時刻を確認すれば30分程度経過している。

丸一日訓練に充てる程度に時間をかけて30分なら、もう少し調整していてもよかったかもしれない。


 軽く体を動かして実際の身体との差異を確認する。

いきなり実戦になる可能性を考慮すると不安要素は減らしたいと思ったのだが、殆ど差異を感じない。

ますます混沌に潜っていてよかったかとも思ったが、時間ギリギリに動くのは危険だ。

多少拙かろうとも、先んじるという理で補えるのだから。


 今の私にできる事は少ない、だが普通の人に比べれば圧倒的な優位性(アドバンテージ)がある。

魔法はまだ実戦に使うには不安だ、魔術戦をするには知識の抜けが酷くて厳しい。

だが今から相手にする相手は諜報部所属が殆どだろう、まだ打てる手はある。

拾えた記憶の情報程度では、この国の仕組み全てを見抜くのは厳しいが、まず諜報部を黙らせる必要があるのは間違いない。


 少量の混沌を、自身の身体を模した人形の形にする。

張りぼてもいいところで軽く叩くだけで穴が開くような、皮だけ固めた様な人形だ。

少量と言ってもそれなりに食われて総量的には痛いが、まず自身の所在を誤魔化したい。

この空虚な人形に魔法をかける、完璧な偽装は無理だが今の私はそもそも心拍も呼吸音も用意に観測できないらしいので、隣にある生体波計さえ誤魔化せればそれでいい。

それぐらいなら今の技量でも出来る、ついでに人形に遠隔で使用できる魔術式を探知用と妨害用を足しておく。


 とりあえずの用意はこれでいい。

次はアリシア(アリス)を追いかけるべきか、それとも今動いている部隊を探すべきか。

……両方だな。


 部屋を出よう、もちろんドアは開けたりしない。

少量とはいえ現状使用できる混沌の量なら自身の身体を転移させるだけの触媒として足りる。

本来なら座標計算や転移先の安全確認等々、山のようにしないといけない確認と計算があるのだが一方通行の転送が簡単にできる。

転移先は……僅かながら思い出せた彼女(アリス)との記憶にある近くの川辺の木の下あたりが妥当だろう。

残りの混沌の4割を使い魔にして先行させる、見た目は真黒な鳥だ、もう少し造形に凝りたいところだがまずここを脱するのが先だな。

視覚情報も位置情報も情報交換すらも迅速かつ正確に取得できる使い魔が、あっさりと創造できると聞いたら世の魔術師達は嫉妬するだろうか。

この部屋は病棟内部の中庭に面していて、あちらこちらの部屋から漏れ出る光のせいであまり暗くは感じないが既に夜中だ。

とはいっても普通の鳥を弄って作った鳥ではないので何も問題ないし月明りも雲が隠しているおかげで真黒な鳥の姿を視認するのは困難だろう。

直ぐに目的地についた使い魔が黒い門を開けてきたので間髪入れずにくぐる。


 この方法は先程ミラがついでとばかりに情報だけ頭の中に送り付けてきた方法だ。

今の状態で直ぐに使用できる移動手段を用意してあるというのはいろいろと勘ぐってしまうものだが今は後回しだ。

情報につけられた簡単な解説による利便性(メリット)不便性(デメリット)は、転送先に送った使い魔と位置交換を行う事による魔素消費効率の高さであり、転送先に利用した使い魔分の混沌が転送元に置き去りになり一時的に混沌の総量が減る事だ。

だが使い魔にはそのまま空中から街全体を見下ろせる高度で空中待機するよう命令しておく。

残りの混沌の総量は約半分だが、ナイフ一本分には足りる、それで十分だ。


 周りを見渡すがどうやら既に彼女(アリス)は移動した後の様だ。 

この辺りに街灯の類は無いがそれでも光量は十分だ、混沌の中に比べれば明るすぎるくらいだ。

そもそもこの目は光で物を見ていないな、彼女(アリス)も問題は無いのだろう様が足跡から見て取れる。

足跡の方向を使い魔に探らせれば遮蔽物がなく空から確認できた。

位置がわかれば十分だ、そのまま目の一つは離さないようにさせる。

どのみち今会っても怖がられるだけだ、何か対策を考えなければいけないだろう。


 まずは私もこのまま闇に紛れるか。

予想通り諜報部が動いているようだ、使い魔の目の一つが街を組織的に移動する灯りをいくつか捉え、先程までいた病棟にも人の出入りがある。

諜報部なら連絡は密にしている筈だ、動きが見えているなら連絡を傍受出来る場所も探せるだろう、街中を動いてる部隊に近づくのもありだな。


 街に戻る、街並みを見ながら歩くだけでも記憶の整理には役に立つのだが今は片手間にしておく。

建造物のほとんどが新しく升目状に規則正しく配置されたこの街で身を隠すのは難しい。

だが同時に、相手の動きが見えているなら隙間を抜けるのも容易い。

夜間でも人はいる、人混みがあれば確認せざる負えない、その僅かな時間差(タイムラグ)が左右の道を探る隊員との動きに隙間を作る。

その隙間を縫って諜報員の後ろを取る、そうして諜報員達が報告を行うのを盗み聴く。

殆どは異常なしという連絡だが、今必要なのはそこではない。


 通信機は波を発する、特殊な魔力の波だ。

その波に乗った情報はわからないが今は波自体はどうでもいい、波が向かう先が重要なのだ。

彼ら諜報員が使う通信機は新しい、そもこの国で古いものはそうそう使われないが。

古い通信機は球状に発していた波を、専用の機械で傍受、解読できる弱点から波に指向性を持たせる対策が取られた、それが彼らの使う通信機だ。

魔力波を撒き散らしていた古いそれらと違い、通信機が使われているという事自体は察知されにくくなり傍受も難しくはなった。

だが初めから察知されている現状で指向性を持った魔力波は、そのまま司令拠点がどこにあるかを指し示してしまう弱点でもある。

数回に分けて魔力波が向かう先を確認する。

()から視た情報と合わせて司令部を特定することのなんと容易い――――


『オオカミらしき痕跡を確認、南部の川辺から西へ移動した模様。』

『街を離れているのは好都合だ、それからはタカは現在面会謝絶らしい。

オオカミさえ押さえればタカの確保に関する障害はなくなる、逃がすなよ?』

「了解」


――――オオカミとタカ?

この手合いは呼出符号(コールサイン)だろう、オオカミ(アリス)タカ()か。

街外れの部隊は明かりをつけて動いたりしないから見落としたな。

さて何人くらいがオオカミ狩りに動いているか……30人くらいか。

彼女も万全ではないだろう、司令部は後回しだな。

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