78話 転生うさぎとシャドウ戦(常夏の領域編)
常夏の領域の主であり四季姫の一人でもある夏姫。夏風 向日葵さんと共に領域の海岸沿いにある洞窟に向かうこと二日。初めて行く場所なので転移が使えず、向日葵さんの速さに合わせて移動していたので時間が掛かってしまいましが、ようやく目的の場所まで到達しました。
「・・・ふむ。この真下辺りから反応がありますね。・・・いっそ地面を掘りますか?」
「それはとっても面白そうだけど、洞窟が崩壊したら結界石が壊れそうだし、出来れば遠慮して欲しいかな」
わざわざ入り口から行くのが面倒になったわたしが洞窟まで穴を開ける方法を提案しましたが、真下の状態がどうなっているのかわからないので結界石のことも考えて却下されました。向日葵さんならば許可してくれるかななんて思いましたが、意外と常識的なところもあるのですね。わたしに常識が無い訳ではありませんよ?
となると、海に出て外から洞窟に入るしかありませんね。
「・・・足場を凍らせても満潮になったら海の中に沈みますし、ここは普通に水の上に立ちましょうか」
「君はさらっと非常識なことを言うね。普通に飛べば良いんじゃないの?」
「・・・それもそうですね」
普通ならば船を使って入るのでしょうが、ここは魔法がある世界ですからいくらでも侵入方法があります。魔法って便利ですね。
わたしは重力魔法ふわふわと浮かび、向日葵さんは恐らく風魔法で空気の足場を作りながら跳ぶように降りていって、それぞれやり方で崖の下にある洞窟の入り口まで移動しました。すでに足場は無いのでここからは常に浮いていないといけません。水中戦も面白そうですけど、面倒なのでやりません。
海の波で削られて長い年月をかけて作られた洞窟の入り口は、かなり奥の方まで続いているようで、先が真っ暗で見えません。たしかこういうのって海蝕洞って言うんでしたっけ?
「満潮までおよそ鐘一つ分、だね」
向日葵さんが洞窟の入り口の壁を触りながら呟きました。わたしはふと疑問に思って首をかしげて向日葵さんに質問してみます。
「・・・ちなみに、向日葵さんは水の中でも活動出来ますか?」
「まぁ、何とかなるかな。でも、出来るならば水に沈む前に用事を済ませておきたいね」
向日葵さんは水の中に沈んでも大丈夫みたいなので、いざという時にわたしがフォローする必要は無いようですね。わたし?わたしは何とかなりますよ。魔法でちょちょいとやれば良いだけです。あ、もちろんスライムちゃんのことも守ってあげますからね。まぁ、スライムちゃんは水に沈んでも生きていそうですけどね。
「さてさて、鬼が出るか蛇が出るか・・・楽しみだねぇ~♪」
向日葵さんが楽しそうに洞窟に入って行きます。・・・ところで、そのことわざって異世界でも通じるのですね。どういう経緯でことわざや四文字熟語が生まれたのでしょうか?
四文字熟語と表現しましたが、文字が地球のとは全然違うので正確にはこの世界では四文字熟語では無いのですけどね。そもそも漢字だって無いですし。
しかし、そんな呑気にしていられたのは入り口近くまででした。
入り口に入って少し進むと、別の領域に踏み込んだような感覚を感じます。思わずその場で止まって向日葵さんの方を見ると、同じ違和感を感じたのか、彼女も戸惑ったような顔をしていました。
――この感覚はダンジョンでしょうか?
前に入ったことのあるダンジョンになんとなく雰囲気が似ているような気がします。しかし、話を聞いていた限りではここはダンジョンでは無かったはずです。
ということは、ダンジョン化する何かがあったということでしょうが・・・考えるまでもありませんね。例のアレですか。しかし、ダンジョンコアが無ければダンジョンは作れないはずですが。まさかと思いますが、結界石を呪いが取り込んだのでしょうか?領域の能力がある石ならば可能だとは思いますが・・・。
「この感覚、僅かだけどあたしの力を感じるね。あたしの結界石の力を使ってダンジョンを作ったのか・・・」
向日葵さんが不機嫌そうに呟きます。本当に結界石を取り込んでシャドウ化したダンジョンコアもどきになったのだとしたら、あの呪いはわたしが思っている以上に危険なものかもしれませんね。
「・・・ダンジョン化しているとなると、ここはもはや普通の洞窟と思わない方が良いでしょう。ちなみに、魔物は元から居ましたか?」
「稀に海から流れついてくる魔物が居るみたいだけど・・・そこまで強くないかな。冒険者ランクだっけ?あれで言うとⅮ~Ⅽくらい」
「・・・なるほど、では、水の中の反応はその魔物のなれの果てですか」
わたしの言葉が言い終わるのと同時に、水の中から影のように黒い魚の形をしたシャドウが飛び出して襲いかかってきました。わたしは即座に薙刀を取り出して切り刻みます。
向日葵さんの方に突撃した魚型のシャドウも、いつの間にか持っていた向日葵さんの小太刀で滅多切りにされたのか、跡形も無く消えています。
「死体が残らない?これが君の言っていたシャドウってやつ?」
「・・・そうですね。どうやら、このダンジョンから生み出されるものは全てシャドウのようです。一体一体に呪いがあるでしょうから、囲まれないように注意してください」
「まぁ、あたしが呪いに取り込まれない可能性はないからね。精々気を付けることにするよ」
ここに来るまでにシャドウという存在について詳しく説明しておいてよかったです。おかげで手短に話が済んで先に進めました。
その後は、わたしが背後の敵を倒し、向日葵さんが正面の敵を倒すという役割で洞窟の奥へと進んで行きます。向日葵さんの話ではそこまで深い洞窟では無いらしいのですが、ダンジョン化して空間がゆがめられているのでしょう。まだまだ先が見えません。
ただ、普通のダンジョンとは違って一本道な上に、トラップ等が無いのがありがたいですね。恐らく、結界石の領域の力を用いてダンジョンコアに似た力を使っているようですが、ダンジョンコアでは無いので、罠設置や地形変更が出来ないのでしょう。せいぜいが空間を引き延ばすぐらいが限界だったようですね。階層も無いようですし。
向日葵さんについてですが、やはり四季姫の一人ということで凄まじい強さです。飛び出てくる魚型のシャドウの群れを一息で細切れに倒しています。身体能力は恐らくSランク冒険者のグレンというおじいさんよりも上でしょう。
それに、あの小太刀もどうやらただの小太刀ではなく、魔剣に該当するもののようです。刀なので妖刀と呼んだ方が良いですかね。わたしが秋姫さんから貰った十六夜の大刀と同じ区分です。最も、恐らくは魔剣としての格は向日葵さんの小太刀の方が圧倒的に高いでしょうけど。
少なくとも、獣王国の王様なんかよりは全然頼りになるので、このまま前は任せてしまっても良いでしょう。わたしは時折背後から襲ってくるシャドウを切り落としながら、水中の奥で隠れているシャドウも魔法で消滅させます。
「さすがに、神獣と聖人が一緒に組めば、これぐらいの敵で進みが遅くなることはないね」
「・・・油断は禁物と言いたいところですが。否定はしません」
――同じ聖人でも、その辺の聖人よりは断然向日葵さんの方が強いですよ。
心の中でそう思いつつ、向日葵さんが魚の形のシャドウを細切れにしたのを見ていました。
向日葵さんが勝手に先走らないようにするためにやっていませんが、雷系の魔法で水中の敵を一掃すればもっと楽に進めます。先走られて何かあってもわたしのせいではないので気にしすぎだとは思いますが。まぁ、雷魔法に興味を持たれてあれこれ聞かれるのも面倒ですからね。このままでも特に問題ないのですから別に良いでしょう。
全く面白みのないダンジョンもどきの一本道な洞窟を進んでいくと、やがて広い円状の空間に出ました。少し高台になっているせいか、水位は洞窟の一本道の時に比べてとても低く、恐らくは足首ぐらいまでしかないでしょう。その広場の中心には禍々しい黒い色をした人の頭ほどの大きさの石があります。あれが結界石のようですね。見事にシャドウ化しています。
そして、広い空間内に足を踏み入れた瞬間に、シャドウ化した結界石を守るようにシャドウ化した魔物が現れました。
サバキンと呼ばれる半魚人の魔物が多く、ざっと見た感じ三十ほどでしょうか。それと、見た目は大きな亀のタイラントタートルという魔物が四体。更に、一番厄介そうなのが、三つ首の首長竜のような見た目のヒュドラと呼ばれる魔物が一体、結界石の前に鎮座しています。もちろん、みなさんシャドウ化していて、黒い影のように揺らめいています。
「ひゃー。ヒュドラも居るのか~。あれは海の結構遠くまで行かないと会えないような希少種なのに」
「・・・一応、魔物大全には乗っていましたね。亜竜扱いで、討伐ランクはSでしたか」
「うちの領域ではたまにはぐれが海岸にやってくるんだよ。あたしが対応することもあれば、あたし専属の近衛達や巫女が集まって討伐することもある。再生力の高い面倒な魔物」
今の話からすると、向日葵さんの近衛達や巫女は、全員が冒険者ランクでいうBランクの高位以上に位置する実力のようですね。詩乃さんとかSランク冒険者並みに強そうでしたし、別に変には思いませんけど。
――大体実力のある人は国が囲って取り込みますからね。好きで冒険者をやっているのは少ないでしょう。
それに、公国は色んな意味で特別な環境にある国です。恐らくは戦闘能力の質においては世界一なのではないでしょうか?まだ魔国を見ていないのでなんとも言えませんけど。
周りを見ながら呑気に会話をしていると、じりじりとサバキン達がわたし達を囲むように近付いてきていました。
「・・・わたしが一掃しても良いですが、どうします?」
「ここはあたしに任せて貰っていいかな?さすがに、あたしの結界石をいい様に扱われてむしゃくしゃしてきたから、ここらで暴れておきたい」
「・・・わかりました。では、万が一の場合はフォローしますので。ご自由にどうぞ」
正直な話、わたしが魔法でちょちょいとやってしまった方が断然早く終わるのですが、個人的に四季姫の実力も見て見たいですし、ここは素直に傍観者になることにしました。
――でも、あの結界石のシャドウには警戒しておきましょうか。何が起きるかわかりませんし。
〈全知の瞳〉で鑑定すると、結界石の中に確かに例の石板の欠片が入り込んでいるようでした。一体どうしたらこのような状態になるのでしょう?不思議ですね。
わたしが結界石を鑑定している間に向日葵さんが動き出しました。それに合わせて周りを囲むように近づいていたサバキンの群れが一斉に飛び掛かってきます。
向日葵さんは危なげなく襲ってくるサバキン達を一体一体切り刻んで倒していきます。シャドウなので倒すと死体が残らないのがいちいち処理しなくて済むので楽ですね。
二分ほどでサバキンを倒し終えた向日葵さんは、今度は大きい亀、タイラントタートルに向かって行きました。
タイラントタートルはとても防御力の高い魔物で、甲羅部分はミスリル装備でも傷付けるのが難しいほどの硬さです。なので、基本的には頭や手などが出ている時に一気に攻撃するのが良いみたいですね。
しかし、タイラントタートルも馬鹿ではないので、こちらが攻撃する意思を向けると、すぐに顔を引っ込めて甲羅の中に入ってしまいます。その間に狙われていないタイラントタートルが口から水球を吐いて攻撃してきました。
向日葵さんは、タイラントタートルが首を引っ込めて何もない空間を数度斬った後、後ろにジャンプして水球を避けます。離れたことを察したタイラントタートルが首を出したのと同時に、何故かいきなりタイラントタートルの首がスパンと斬れました。そのまま息絶えたようで、シャドウ化した影響で体が消滅します。何が起きたのでしょう?
気になったわたしは、向日葵さんの持つ小太刀を〈全知の瞳〉で鑑定してみることにしました。鑑定を始めた途端に頭が痛くなりますが、それを必死に耐えて必要な情報を抜き出していきます。
向日葵さんがタイラントタートルを殲滅し終わる頃にようやく鑑定が終わります。ふぅ。と長く溜息を吐きました。相変わらず負担の激しいスキルですね。鑑定結果はこうでした。
妖刀・立花・・・夏風 向日葵専用の妖刀。この刀で斬っても傷が残らず、使用者の任意のタイミングで一気に傷を与えることが出来る。
う~ん、つまりは、先ほどの攻撃は、あらかじめ空間を斬っておいて、タイラントタートルの首が出てきたタイミングで空間に傷を与えて首を斬り落としたということでしょうか。説明文だけではいまいちな能力な感じがしますが、使い方次第では随分とえぐい能力ですね。
さて、ここまでは特に手こずることもなくシャドウ化した魔物を倒し続け、残りはヒュドラを残すのみとなりました。この調子ならば、わたしの手助けはいらなそうですね。
ヒュドラが三つ首からそれぞれブレスを吐きます。それを躱した向日葵さんは一気にヒュドラの前まで肉薄して小太刀で切り刻みます。ですが、妖刀・立花の能力を使ってダメージは与えていません。ヒュドラが鬱陶しそうに体を回転させて向日葵さんを吹き飛ばそうとしますが、向日葵さんはひらりと距離をとって攻撃範囲外まで移動し、回転攻撃の終わりを狙ってまた肉薄して切り刻みます。
どうでもいいですが、改造された着物の短いスカートが激しい動きと共にひらひらと動いて中が見えそうで非常に危ういです。というか、角度によって見えてますよね?ホント、気を使うかスカート丈を延ばしてください。
ヒュドラの攻撃は一切当たらずに、向日葵さんがひたすらヒュドラの三つ首を切り刻むという一方的な展開を数度繰り返し、最後に向日葵さんが大きく距離を取って小太刀を鞘に仕舞いました。すると、今まで与えた傷が一気にヒュドラに襲い掛かり、再生不可能なほどに細かく切り刻まれて消えていきます。
「魔物のヒュドラの方が知性があって強かったね。なんかつまんない」
向日葵さんはそう呟くと結界石の方に近付いていきます。そして、ある程度の距離まで近付くと結界石の黒い影が大きく揺らめき、膨らんだ影が触手のように伸びて向日葵さんに襲い掛かりました。
「うへっ!?きもっ!!」
――気持ちはわかります。
獣王国の時の触手よりかもはマシですが、得体の知れないものの攻撃は気持ち悪いですよね。
慌てて距離をとった向日葵さんは一瞬で小太刀を抜刀してその場で斬る動作をしました。すると、結界石のまとわりついている影が真っ二つに斬れましたが、結界石は無傷です。それを見た向日葵さんは苦々しい表情をします。
「影が衝撃を和らげているのか。やっぱり近付かないとダメかな」
「・・・面倒ですし、わたしがやりますよ」
向日葵さんでは時間が掛かりそうだと判断したわたしは、手に持っていた槍を〈神足〉スキルで素早く投擲します。わたしの槍は向日葵さんのすぐ隣を一瞬で通り過ぎ、結界石の影を難なく突破して結界石を貫いて穴を開けます。狙い通り、結界石の中にある石板の欠片を撃ち抜き、砕くことに成功しました。それと同時にダンジョンの中のような妙な空間が無くなります。向日葵さんの隣に槍が通りすぎた時に「ひゃ!」とか聞こえた気がしましたが無視です。
最終的に残ったのは、影もなくなって穴の開いた結界石だけになりました。そして、ダンジョンの力で明るかった洞窟内が真っ暗になっています。まぁ、わたしはすぐに魔法で暗闇の中も見えるようにしたので特に問題はありませんが。
向日葵さんが何やら光るお札のようなもの持って結界石に近付いていきます。あれって陰陽術なのですかね?気になります。わたしも投げた槍を回収してから向日葵さんの隣に来ました。見事に穴が空いていますね。割れなかったのが不思議です。
結界石に札を貼った向日葵さんは、しばらく、「うーん」とか「むー」とか唸りながら結界石の周りをぐるぐると見てまわり、最後にはぁっと大きく溜息を吐きました。
「ダメだ。もう結界石としての力は残っていないみたい。シャドウ化とやらになった時に能力の全部を奪われたせいかな。あーん、この石作るの大変なのに~」
結界石自体は魔鉱石で出来ているのですが、かなりの大きさの魔鉱石なので手に入れるのが大変らしく、さらに結界石として改良するのにも大変手間がかかるそうです。
「・・・とりあえず、一旦ここから出ましょうか。水位も上がってきたようですし」
広場の中は足首ぐらいの水位だったのが、いつの間にか膝のあたりまできていました。洞窟の通路の方も半分近くが水で埋まっています。
「はぁ。まぁ、放置していたらどんな悪影響が出ていたかわからないし、とりあえずはよしとするか・・・。よし!海水で沈む前にここから出よう!」
「・・・ですね。社まで転移しますので近付いてください」
「えっ?なわ!!」
変な悲鳴を上げた向日葵さんを連れて、常夏の領域にある向日葵さんの社の裏庭にまで転移してきました。ちょうど見知らぬ巫女が裏庭にある向日葵畑の手入れをしていたのか、突然現れたわたし達に驚いて尻餅をついています。
「な、な、夏姫?」
「や、やっほー、海里」
しばらく呆然とわたしと向日葵さんを交互に見ていた巫女は、突然我に返って「し、詩乃さんを呼んで来ます!」と言って走り去ってしまいました。どうやら、転移に不慣れなようですね。転移には兆候があるので、空間魔法に慣れている人にはわかるのですが。
「いやー突然でびっくりしたぁ~。しかし、転移って便利だねー。うちらの中では桜しか使えないからねー」
「・・・それはちょっと意外ですね」
「あはは♪そもそも、あたし達の国は魔法よりも陰陽術とかのほうが一般的だからさ。陰陽術に転移は無いんだよ」
「・・・なるほど」
わたしとしては陰陽術の方がとっても気になりますけどね。まぁ、それは置いておきまして・・・。
わたしは収納からドスンと結界石と同じくらいの大きさの魔鉱石を取り出して向日葵さんの前に置きます。それを見た向日葵さんの目が点になりました。
「・・・これ、協力してくれたお礼ということで差し上げます。必要でしょう?」
「あたしとしては助かるけど、良いの?」
「・・・どうせ余りものですし、どうぞ」
「うわー!助かるー!ありがとー!大好きー!」
嬉しさのあまりか、わたしの手をとってぶんぶんと上下に振り回す向日葵さん。わたしは彼女の気が済むまでそのままされるがままになっていると、先ほどの巫女が呼んだのか、詩乃さんが走ってやってきました。
「うわっ!ホントに帰ってきてるよ・・・。目的は達成したの?」
「・・・滞りなく」
「っで?何この状況」
「・・・見ての通りです」
結局、一向にわたしの手を放そうとしない向日葵さんを詩乃さんが引きはがしました。詩乃さんに結界石のことを話して、わたしが手伝ってくれたお礼に魔鉱石をあげると言うと、詩乃さんにも感謝されます。
戻ってきたばかりということでお茶のお誘いを受けましたが、わたしはそれを丁重に辞退しました。魔国に向かわないと行けませんからね。
「それで、もう行くの?今日一日くらい休めばいいのに」
「・・・休むほど疲れていませんし、先を急ぎたいので」
「そっか。何かあったら言ってよね。あたしが協力出来ることなら協力するからさ」
「・・・機会があれば」
常夏の領域のシャドウを討伐してここでの目的を終えたわたしは、次の目的地である魔国を目指すことになります。向日葵さんと詩乃さんに手短に別れの挨拶をして、わたしは再び転移してその場から去りました。
わたしがお茶を断って先を急いだ理由には、四季姫や巫女という独特な居場所に混じるのに少しだけ気後れしたということもあるとは言えませんでした。今更な気もしますけどね。




