表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生うさぎは異世界でお月見する  作者: 白黒兎
第四章 居場所
86/106

75話 転生うさぎは再びの公国へ

 クーリアさんを領域へと届けてから、わたしはすぐに転移で公国まで移動しました。



 クーリアさんを領域に帰した理由は、弥生達からわたしに連絡とる手段が未だに無い為、通信の魔術具を持っているクーリアさんに連絡係を任せようと思ったからです。弥生達に通信の魔術具を持たせると〈思念伝達〉を覚えるのに弊害になる可能性があるので持たせていないのです。わたしの月の領域は滅多な事では魔物が入ってくることは無いそうですが、今の時勢では何が起こるか分からないので連絡をとれる手段があった方が良いでしょう。何かあればすぐに転移で戻れますからね。



 そうして月の領域に帰ってから直ぐに再転移したわたしは、公国の春姫さんが治めている常春の領域にやってきました。相変わらずあちこちに桜の花が咲き乱れていて綺麗な場所ですね。わたしの頭の上に乗っているスライムちゃんも興味深そうに周囲を見渡しています。・・・ごめんなさい。目が無いのでわかりません。そんな気がしただけです。



 春の都から少し離れた場所で桜を鑑賞しながらのんびりと待ちます。わたしが向かうまでもなくそのうち春姫さんの方からやってくるでしょう。



 せっかくだからと少なくなってきたお団子をいくつか取り出してお花見を始めます。もぐもぐと団子を咀嚼して、たまにスライムちゃんにもお団子をお裾分けしていると、突如嫌な予感に襲われて慌てて跳び退きます。



「あー!逃げられちゃった・・・」


(・・・相変わらずですね、春姫さん)



 気配を隠して忍び寄っていた春姫さんが、うさぎのわたしを捕まえようと両手を前に出してにぎにぎとしていました。まぁ、こんな予感はしていましたけどね。



「むぅ~・・・もうわたしでもトワちゃん捕まえられないか~。ホントに神獣なんだね」


(・・・そういえば何度か会話はしていますが、こうして会うのは久しぶりですね)



 正式な名前は春風 桜(はるかぜ さくら)でしたね。桜色の髪と同じく桜色の目をしたやや幼い顔立ちをした少女が感慨深げにわたしを見詰めています。



「それで、神獣さんがどんな用件なのかな?」



 春姫さんが親しみやすい笑顔を浮かべてながら小首を傾げて問いかけてきました。なんだか、ちょっと警戒している感じがしますね。わたし、何かしましたっけ?



 うさぎの耳を揺らしながらちょっと振り返ってみますが、わたし自身が何かした記憶はありません。ですが、前にフェニさんが春姫さんに会いに行っていましたね。その時に何かあったのでしょうか?



(・・・フェニさんと何かありました?随分と警戒しているようですが)


「フェニさん?」


(・・・前に来ましたよね?不死鳥のフェニックスさんです)


「あーうん。まぁ、いろいろと、ね・・・」



 春姫さんがその時のことを思い出したのか苦虫を嚙み潰したような顔になると、フェニさんが来た時のことをぽつぽつと話し始めました。



――フェニさん、そんなことしてたのですね。それにしても、春姫さんが勝てなかったって凄いですね。さすがです。



「言い訳かも知れないけど、今のところ倒す手段がわからないから負けちゃっただけで、わたしが弱い訳じゃないんだよ?ホントだよ?本気出してもたぶん勝てないけど、そうそう簡単に負けないんだから!」


(・・・そうですか。・・・ちなみに、今のわたしには勝てると思いますか?)



 ちょっと気になったので、言い訳している春姫さんに聞いて見ると、春姫さんは「う~ん」と顎に手を当ててじっとわたしを見詰めて、やがて首を横に振りました。



「正直、分からないかな。単純に魔力や身体能力が上がっただけならばどうとでも出来るんだけど、不可思議な魔法や超常的な力を持つ固有スキル次第では厳しいかも」


(・・・勝てない、とは言わないのですね)


「これでも公国、ううん、常春の領域の主で守護者だもの。勝てないとはそうそう言えないよ」



 それにしても、身体能力と魔力の差程度ならばどうとでもなると言っていますね。本来ならばその二つが隔絶しているだけで勝敗のほとんどを決するのですが・・・。



 常春の領域の主という単語でふと疑問に思いましたが、公国の領域はどのようなシステムなのでしょうか?わたし達神獣の領域と近いと思っているのですが、ちょっと気になりますね。



(・・・四季姫の領域はどのようにして作っているのですか?わたし達と同じで世界魔法を使った魔術具を中心にしているのでしょうか?)


「世界魔法なんて聖人であったとしてもおいそれと使えないよ・・・。わたし達の場合はスキルの力でそれぞれの領域を創っているんだよ。わたしの場合は〈四季神・春〉のスキルの〈常春の世界〉って能力をちょっといろいろとやって領域みたいにしてるんだ。だから、厳密に言うとここは神獣で言う領域では無いんだよね」



 ほう。スキルでも領域と似た効果のものがあるのですね。てっきり同じなのだと思っていましたが、ここの領域はわたし達のとは根本的に違うようです。



(・・・では、礎の核のようなものは無いのですね)


「礎の核?っていうのはないけど、この領域のあちこちに〈常春の世界〉の領域を維持管理するための結界石っていうのならあるよ」


(・・・まあ、スキルの力だけでここまでの広さがある手の込んだ領域を維持管理するのは生身だけでは不可能ですよね)


「そうそう。本来は領域を出すだけでとっても魔力減るんだよね~・・・。まぁ、わたしのはスキルの力が大きいから世界魔法よりは消費魔力少ないんだけどね~」


(・・・それは羨ましい限りですね。・・・ではそういうことで)



 いい感じに雑談を終えたわたしは、夏姫の治める常夏の領域へと・・・



「ちょちょちょっと待って!?何がそういうことなの!?何しに公国に来たのとか言ってかないの!?」


(・・・別にこの領域に用事は無いですし・・・。あ、後で和菓子を補充しに街に行ってもいいですか?もちろん、きちんとお金は払いますので)


「それくらい全然良いけど・・・。まさかそんな理由でここまで来たとか言わないよね?」



 そんなこととはなんですか。お月見用の団子の確保は優先度の高いことですよ?ストックも少なくなってきたので遠慮なく買い占めてしまいましょう。



「じ~~~~」



 言葉に出してじ~なんて言う人初めて会いました。春姫さんがやると不思議と似合いますね。



 ・・・まぁ、夏姫さんとはまだ会ったこと無いですし、仲介をしてもらう代わりに事情を少しだけ話すとしましょうか。でないとずっとこの視線を浴びながら団子を買う羽目になります。



(・・・事情は話しますが、春姫さんには人間界側・・・表舞台と表現しましょうか・・・そちらで動いていて欲しいので、あまり干渉はしないでくださいね)


「表舞台ねぇ・・・。それじゃあ、さしずめ神獣達が裏でこそこそと動き回っているのは裏舞台ってこと?」


(・・・そういうことです。あまり公にしてほしくないことですね)


「ふ~ん。まぁ、他の神獣達ならばともかく、トワちゃんならばまだ信用出来るか。分かった。関わらないようにはするから情報ちょうだい」



 わたしはもう何度も説明した、天使と悪魔についての話、神獣達の粛清という名の人類の絶滅を定期的に行っている目的、今回の帝国の件のことなど話していきます。



 そこそこ長い話を終えると、春姫さんが深く溜息を吐きました。



「なるほどねぇ~。地脈の管理をして世界中の魔力を管理するのが仕事だと思っていたけど、実際はこの世界に必要以上の影響を与える異世界の存在を殲滅するのが仕事だったんだねぇ~。それならそうと教えてくれれば良かったのに・・・」


(・・・そういえば、フェニさんと話したのですよね?教えてもらえなかったのですか?)


「あの鳥さんはトワちゃんの扱いについてしか言ってなかったよ。わたしがトワちゃんのことを利用することしか考えていないみたいな言い方してさ!も~!思い出したら腹立ってきた!!」



 がおー!っと両手を上げて怒りの声を上げる春姫さん。水と油というやつでしょうか?お互いに悪い性格はしていないはずなのに何故か合わない人というのは居るものです。こればっかりは仕方ありませんね。



 しばらくがおーがおーと雄叫びを上げていた春姫さんは、いきなり素に戻って「ところでさ」と話を続けました。感情の起伏の激しい人ですね。素なのか計算なのかはわかりませんが。



「その頭に乗っているスライムって、ひょっとして眷族?」



 そう言って春姫さんがわたしの頭の上に乗っているスライムちゃんを指差すと、スライムちゃんはぷるんと震えて答えました。



「え?無視?」


(・・・今スライムちゃんが答えたではないですか)


「え?今のぷるんっていうの?そんなの分かる訳無いじゃん」



 何故分からないのでしょう?わたしが疑問に思って首を捻ると、春姫さんは「え~?むしろ分かる方がおかしくない?眷族と主だからかな?」とぶつぶつと言っています。別に眷族とか関係無しになんとなくスライムちゃんの意思は分かりますけどね。そういうことにしておきましょうか。



 なんだか関係無い話ばかりしている気がしますね。話を元に戻しましょう。



(・・・スライムちゃんのことはいいので、この後の話をしたいのですが。少しだけ常春の都に寄ったらそのまま常夏の領域に向かっても問題ないですか?)


「うん?うん。大丈夫だと思うよ。一応わたしから向日葵ちゃんに連絡はしておくね」


(・・・向日葵ちゃん?)


「あぁ、えっと、夏風 向日葵(なつかぜ ひまわり)。夏姫のことだよ」



 名前呼びされると途端に誰の事だかわからなくなりますね。でも、今のは話の流れ的に察するべきでしたか。それにしても、向日葵ちゃんですか。名前的に春姫さんよりも幼そうなイメージですね。きちんと話が伝われば良いのですが。



「あ、話はしておくけど、向日葵ちゃんはわたし以上に面白そうなことに首を突っ込むタイプだから、絶対に絡まれると思う。その辺りはまぁ、頑張ってね♪」



 主にその辺りを何とかして欲しいものですね。でも、予め話をしてくれるだけ手間が省けます。それ以上の高望みはしないでおきましょう。



 その後は、予定通り常春の都で和菓子店を巡り(当然ですが、人里の中に入る時は人の姿になりました)団子をメインに様々な和菓子を買い漁りました。途中までは春姫さんも居たのですが、買い物の途中で怖い顔をした見覚えのある巫女服の女性に連行されていきました。



 減っていた団子を補給したわたしは、その日のうちに常春の領域を西に出て常夏の領域へと向かいました。しかし、常夏の領域ですか。やっぱり暑いのでしょうか?春や秋に比べるとあんまり見栄えのある環境では無さそうですね・・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ