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48話 転生うさぎとスキル確認

 話し合いが終わりフェニさん達が帰ると(フェンリルさんはフェニさん連れていかれました)、話し合いを始めた頃は真上にあった太陽がかなり傾いていました。思っていたよりも長い時間話し合っていたようです。



 弥生(やよい)が少し遅めのお昼ご飯を作りにキッチンに向かうと、卯月(うづき)如月(きさらぎ)も手伝いに向かいました。わたしはその間にスキルの確認をすることにします。



――まずは新しく覚えたスキルのピックアップからですね。



 コモンスキルは〈潜伏〉、〈舞操術〉、〈武具生成〉の三つですね。エクストラスキルが〈聖魔混成体〉のひとつ、最後に固有スキルですが、〈月の女神〉と〈全知の悪魔の加護〉の二つが新しいスキルになります。



 いくつかは、統合されて上位スキルになったりしているスキルですね。舞操術なんかは、恐らく武器系スキルと舞踊が混ざったものでしょう。



 ちなみに固有(ユニーク)スキルが進化するのはかなりレアケースらしいですが、全く無いわけではないそうです。魂に大きな変化があった場合に起こる時があるのだとか。魂を見ることが出来るフェニさんが言っていたのですから間違いは無いでしょう。



――魂に変化があった場合という条件ということは、固有スキルは魂に根付いているものなのでしょうか?ま、固有スキルの仕様については興味無いのでこれ以上考える必要もありませんね。そういうものだと考えておきましょう。



 それでは、コモンスキルから詳しく効果を見ていきましょうか。



 わたしはギルドカードのスキル欄をタップして詳細を確認していきます。コモンスキル三つの効果は以下になります。



 〈潜伏〉・・・〈気配遮断〉の上位派生スキル。今までの気配を消す能力を備えつつ、物陰に隠れている場合、相手の視界に入りにくくなる。



 これは〈気配遮断〉が普通に強力になっただけですね。新しい効果の視界に入りにくくなるがどの程度の効果なのか分かりませんが、隠れている時に見つかり難くなることは間違いないはずです。かくれんぼなら負けません。



 〈舞操術〉・・・〈舞踊〉と〈武器術〉の複合上位スキル。あらゆる動きが洗練され、優雅に見える補正が上がり、あらゆる武器を扱うことが出来る。



 え~っと、つまり、踊りながら戦えばどんな武器でも扱いやすいように補正してあげますよってことですかね。これで、今まで槍術のスキルが高かったので槍をメインに戦って来ましたが、他の武器でも同等レベルの補正が入るようになったので、戦況に合わせていろいろ武器を使えますね。ところでこのスキル何て読むのでしょう?ぶそうじゅつ?まいそうじゅつ?あと優雅の補正とか無用でしょう。なんですか、これ。



 〈武具生成〉・・・武器や武具を魔素で生成した際に補正。



 えっと?わたしの普段使っている武器は魔力で作っているわけではないのですが・・・あれ?これ魔素って書いてありますね?何のことでしょう?分からないのでとりあえず今はスルーしましょう。



 コモンスキルの確認を終えると、キッチンで料理をしていた弥生がやってきて声を掛けてきました。



「主様、お食事の準備が整いましたよ。これをお召し上がりになったら、お部屋でゆっくり休んで下さいね」



――食べたら部屋でスキルの確認をしろというわけですね。



 丁寧な言葉を使っていますが言葉の中の真意はそういう意味でしょう。わたしの身の安全のためならばわたしの意思に逆らってでも意見を言って行動するのが弥生ですからね。フェニさんが言っていた力に呑まれないようにという言葉を重く受け取っているようです。わたしの新しいスキルはきちんと把握していないと、危なそうなものが多いですからね。弥生を心配させるわけにはいきませんし、食事を終えたら集中してスキルの確認をしましょうか。



 弥生達と一緒に昼食を食べたわたしは、弥生の無言の笑顔の圧力もあってさっさと部屋に帰ります。おかしいですね。わたしが主のはずなのですが、何故か逆らってはいけない威圧感を感じます。あれが母親の力なのでしょうか?分かりませんけど。



 そんなことは置いておきまして、次はエクストラスキルの〈聖魔混成体〉ですね。



 〈聖魔混成体〉・・・聖なる魔力と魔なる魔力が混ざり合った体。



 まず、聖なる魔力と魔なる魔力の説明をプリーズです。これが分からなければ、混ざり合ったから何?で終わってしまうのですよね。



 分からないものはとりあえず後で考えましょう。次は固有スキルですね。これが一番のメインディッシュでしょう。



 〈月の女神〉・・・月が出ている時に身体能力と魔力量が大きく上昇し、以下の能力を得る。月光の量で上昇量変化。


 〈月光浴〉・・・月光の当たる量で魔力自動回復量増加。


 〈血月の狂化〉・・・ブラッドムーンが出ている時、身体能力が更に増加。


 〈蒼月の進化〉・・・ブルームーンが出ている時、魔力量と回復量が更に増加。


 〈闇月の神化〉・・・新月の時、身体能力と魔力量と魔力自動回復量が更に増加。〈月魔法〉の性能変化


 〈月魔法〉・・・月魔法と重力魔法が使用可能になる。


 〈月神覇気〉・・・月の魔力の強力な威圧を発することが出来る。魔力の多さで威圧の威力上昇



 やはり、〈月の加護〉が純粋に強化されたもののようですね。さらに別扱いだった〈月魔法〉が統一化されています。まぁ、もともと、同じようなものだったのでそれは些細な変化ですけどね。



 それに、新しく新月の状態での強化が出来るようになったようですね。血月や蒼月と同じで、月魔法で月の色を変えることで使えるようになるみたいです。性能的には全体的な強化と月魔法の変化みたいですね。どこかのタイミングで試し打ちする必要がありそうです。更に威圧が出来るようになりましたね。今まで持っていなかったのですが、これからは神獣らしく強キャラ感が出せるようになってちょっと嬉しいです。



 この世界では相変わらず常に満月なので、新月にしたい場合は血月や蒼月と同様に月魔法を使う必要があるみたいです。なぜ満ち欠けしないのでしょうね?不思議な異世界です。



 〈全知の悪魔の加護〉・・・ラプラスの悪魔の加護。以下の能力を得る。


 〈全知の瞳〉・・・全てを見抜く魔眼。あらゆく隠蔽を見抜き、あらゆる物質、物体を鑑定することが出来る。


 〈因果予測〉・・・あらゆる因果から結果を導き未来を予知する。


 〈魔素体〉・・・魔力の元素から構成される体。心が破壊されない限り存在が消滅することはない。


 〈魔力活性化〉・・・魔力を活性化させて、魔力を変異させることが出来る。



――全知の悪魔・・・ラプラスの悪魔のことだったのですね。



 地球でいうラプラスの悪魔とは物理学分野で提唱された超越的存在の概念で、ラプラスという人が提唱したその存在を、後の人達がラプラスの悪魔という名前で呼ぶようになったことで、広くこの名前で定着したと聞いたことがあります。ただ、このラプラスの悪魔は古典物理学という分野での概念の話で、後々になって出てきた量子学という分野が主流になって来ると、量子学との矛盾からその存在が完全に否定されています。



 なんか、前世の記憶のどこかで聞いたのですけど、どこで聞いたのかは覚えていないのですよね。まさか、授業でこんなこと習ったのでしょうか?そうじゃなくてもっと近しい誰かが話していたような・・・。



 ズキっと頭が痛みました。これ以上過去のことを思い出そうとするのはやめましょうか。今は、スキルの確認が優先です。



 まずは、〈全知の瞳〉ですね。これは簡単に説明すると、〈鑑定〉スキルの超強化版です。〈鑑定〉スキルはレベルを10まで上げても他人のコモンスキルまでしか見れないらしいですが、この眼は他人の固有スキルまでばっちり見ることが出来るようです。それも、〈隠蔽〉スキルとかの妨害も見抜いてしまう超性能です。たぶん、このスキルのせいで折角手に入れた〈鑑定〉スキルが無くなったのでしょうね。



――この魔眼があれば、今後は調べ物がとても楽になりますね。



 試しに収納から秋姫さんから貰った十六夜の大刀を出して〈全知の眼〉で鑑定してみます。



「・・・っ!!!?ぅ、ぁ!!!?」



 いきなり処理しきれないほどの情報量が頭の中に無数に入ってきて、脳が燃える尽きるのではないかと思うほど熱く、そして凄まじいほどの激痛がわたしを襲いました。慌ててスキルを切りますが、思わず両膝を床に付いてしまい、片手で床に倒れないように体を支えて、もう片手で入念にこめかみをもみほぐします。



「・・・っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



――まだズキズキします。ほんの数秒だけだったのに・・・これは、スキルの能力を上手く調整できるようになるまでは封印ですね。



 目的の鑑定だけをするようにスキルの力を弱めなければ、これは常人が扱えるようなスキルではありません。視界に入ったもの全てのあらゆる情報が一気に脳に詰め込まれるのがあれほどまでに苦痛だとは思いませんでした。元々この力を扱っているラプラスという悪魔はどんな化け物なのでしょうか?少なくとも正気では無いですね。



 結局、三十分以上休憩することでようやくまともに思考が出来るぐらいまで痛みが無くなりました。〈痛覚遮断〉スキルも全く働いてくれませんでしたね。恐るべし固有スキルです。



 次は〈因果予測〉ですね。もう名前からしても〈全知の瞳〉と同じ末路を辿りそうな感じがしますね。試しに使う時には注意しないとです。さて、〈因果予測〉ですが、恐らくは〈攻撃予測〉というスキルの上位、〈未来予測〉に近いものだと思います。〈未来予測〉はあらゆる現象の起こり得る未来のひとつを予測するスキルで、持っている人はほぼいない超強力なスキルです。それで、〈因果予測〉の効果を読む感じでは、この未来予測の精度が上がったという認識で良いでしょうね。むしろ、それ以外分かりません。



 はい次、〈魔素体〉ですね。魔力の元素ですか・・・世界の純粋なエネルギーが生物になる時に染められて出来るのが魔力だと予想していたのですが、ちゃんとした(もと)があったのですね。それとも、悪魔の世界での魔力の素ということなのでしょうか?どちらにせよ、この世界でわたしの肉体が消滅させられても心は生きていることが出来て、体さえあれば復活出来ますよってことですよね。



――これって、この世界の天使スキルとか悪魔スキルみたいになるってことですか?わたし、死んだらスキル化しちゃう?



 さ、最後に〈魔力活性化〉ですね。これは、悪魔スキルの説明をした時にも話しましたが、魔力に干渉することで魔力を変質させて、魔法を強化したりとか、浄化に対抗できる魔力にしたりとか、いろいろ魔力をいじることが出来るようになるスキルですね。これで、浄化対策はバッチリです。・・・さすがに上位天使のスキルが相手では無力化するのは難しいと思いますけど。



 これでスキルの確認は終わりですかね。折角、〈全知の瞳〉という強力な鑑定スキルを手に入れたので、練習も兼ねて、自分のスキルを鑑定してより詳細な能力を見ていきましょうかね。



 では、わたしの持っているスキルを〈全知の目〉で鑑定していった結果をずらりと並べましょう。



【コモンスキル】



 〈原初魔法レベル7〉・・・全ての魔法行使に補正(小)。使用者のイメージであらゆる現象を魔法として行使出来る。レベルで補正量増加。


 〈潜伏レベル1〉・・・気配遮断の上位派生スキル。今までの気配を消す能力を備えつつ、物陰に隠れている場合、相手の視界に入りにくくなる。レベルで性能強化。


 〈精密索敵レベル5〉・・・索敵スキルの上位。周囲索敵時により詳しい情報を得ることが出来る。また、隠れている生き物を看破する能力が上がる。レベルで性能強化。


 〈神足レベル2〉・・・俊足スキルの上位。俊足より行動速度を速めることに補正(大)。レベルで補正量増加。


 〈空間跳躍レベル1〉・・・跳躍スキルの上位。跳躍より高く跳ぶことに補正(大)レベルで補正量増加。レベル応じて空中でもう一度跳ぶことが出来る。


 〈魔力自動回復レベル6〉・・・魔力が自動で回復する(極小)。レベルで回復量増加。


 〈料理レベル4〉・・・料理を作る際に手際や品質に補正(小)。レベルで補正量増加。


 〈舞操術レベル1〉・・・舞踊と武器術の複合上位スキル。あらゆる動きが洗練され、舞うように見える補正(中)。あらゆる武器を扱うことが出来る(中)。レベルで補正量増加。


 〈体術レベル6〉・・・体を使った戦闘術に補正(小)。レベルで補正量増加。


 〈柔術レベル4〉・・・攻撃を受け流す技術に補正(小)。レベルで補正量増加。


 〈投擲レベル6〉・・・物を投げた際の命中と威力に補正(小)。レベルで補正量増加。


 〈痛覚遮断レベル1〉・・・痛みを軽減する(小)。レベルで軽減率増加。


 〈武具生成レベル1〉・・・武器や武具を魔素で生成した際に補正(小)。レベルで補正量増加。



【エクストラスキル】



 〈人体変化〉・・・人族の体に変身することが出来る。


 〈魔力返還〉・・・あらゆる物を魔力として体に取り込むことが出来る。


 〈聖魔混成体〉・・・聖なる魔力と魔なる魔力が混ざり合った体。


 〈魔力感知〉・・・周囲にある魔力を感知出来るようになる。


 〈魔力眼〉・・・魔力を視覚で見ることが出来るようになる。


 〈魔力物質化〉・・・魔力を物質化させて、直接物に干渉させることが出来るようになる。


 〈魔力操作〉・・・魔力が操作出来るようになる。


 〈並列思考〉・・・複数のことを同時に思考出来るようになる。


 〈念話〉・・・周囲に自身の言葉を伝えることが出来る。


 〈思念伝達〉・・・互いの魔力を通じて自身のイメージを伝えることが出来る。



【ユニークスキル】



 〈異世界からの来訪者〉・・・異世界から転生し、異世界の知識、技能を持つ。コモンスキルの成長が早くなる。スキルを覚えやすくなる。



 〈月の女神〉・・・月が出ている時に身体能力と魔力量が大きく上昇し、以下の能力を得る。月光の量で上昇量変化。


 〈月光浴〉・・・月光の当たる量で魔力自動回復量増加(極大)


 〈血月の狂化〉・・・ブラッドムーンが出ている時、身体能力が更に増加(極大)


 〈蒼月の進化〉・・・ブルームーンが出ている時、魔力量と回復量が更に増加(極大)


 〈闇月の神化〉・・・新月の時、身体能力と魔力量と魔力自動回復量が更に増加(中)。〈月魔法〉の性能変化。


 〈月魔法〉・・・月魔法と重力魔法が使用可能になる。


 〈月神覇気〉・・・月の魔力の強力な威圧を発することが出来る。魔力の多さで威圧の威力上昇



 〈全知の悪魔の加護〉・・・ラプラスの悪魔の加護。以下の能力を得る。


 〈全知の瞳〉・・・全てを見抜く魔眼。あらゆる隠蔽を見抜き、あらゆる物質、物体を鑑定することが出来る。


 〈因果予測〉・・・あらゆる因果から結果を導き未来を予知する。


 〈魔素体〉・・・魔力の元素から構成される体。心が破壊されない限り存在が消滅することはない。


 〈魔力活性化〉・・・魔力を活性化させて、魔力を変質させることが出来る。



 以上です。大きく変わったことといえば、補正の強さとかが分かりやすくなりましたね。



――意外と原初魔法の補正って弱いのですね。イメージ力に効果が依存するからでしょうか?



 それと、今まで称号じゃないかと思っていた〈異世界の来訪者〉ですが、ちゃんと能力があることが判明しました。コモンスキルの成長補正とスキルの習得がしやすくなるみたいですね。知らず知らずの間にとてもお世話になっていました。使えないスキルとか思っていてごめんなさい。



 でも考えてみれば、今までのスキルの成長の速さは確かに異常でしたからね。こんなものかと思って気にしていませんでしたけど、わたし、まだこの世界で産まれて一年も経っていないですからね。すでに上位スキルをこれだけ持っているなんて変ですよね。・・・まぁ、手に入れてしまったものは仕方ありません。これからもどんどんスキルを成長させていきましょう。



 更に、意味不明だった〈聖魔混成体〉の説明にある、聖の魔力と魔の魔力について鑑定することが出来ました。



 聖の魔力・・・魔を払う聖なる魔力。唯一魔の魔力を消滅させることが出来る。一部の生物、植物が保有している。


 魔の魔力・・・世界を造る構成物のひとつ。あらゆる物体、現象に変質出来る。世界の核から常に世界中に供給されている。



 あ~・・・鑑定の更に鑑定は体にかなり負荷がかかるみたいで、とても頭が痛くなるのですよね。初めて〈全知の瞳〉を使った時の痛みに比べればまだ鈍痛ぐらいで済みますけど。



 さてと、魔の魔力とは、普段からわたし達が魔力と呼んでいるものみたいですね。元々わたしが持っていた〈魔力体〉というスキルは肉体が全て魔力のみで構成されたもので、とても聖属性・・・つまり浄化能力に弱い体だったわけです。ですが、聖の魔力もわたしの体の魔力と混ざり合ったことで、浄化に対して多少の耐性を得ることが出来るようなったということですね。ですが、〈魔力活性化〉をして耐性を付けた方が強力なのでおまけ程度に考えておいた方が良いでしょう。



 ちなみに聖の魔力と魔の魔力が混ざり合ったら対消滅するんじゃないって思いますよね?わたしはそう思いました。でも、何故か大丈夫みたいです。どちらもわたしの魔力だから大丈夫なのか、何かスキルの補正が入っているのか、原因は謎ですけどね。



 この体の副産物的な効果としては、聖樹のように魔物が近づきたく無くなる魔力を発することが出来るようなったことですね。これで、わざわざ隠れたりしなくても戦闘を避けることが出来るようになります。一部の変異種とか魔人クラスになると無意味ですけどね。そもそも、威圧すればほとんどの魔物が寄ってこないと思うので、これもおまけみたいなものですね。



 そういえば、魔素の正体がわかったので〈武具生成〉スキルの効果もなんとなくわかりましたね。もっとも、結局は魔力の素で作る=魔力で作るのと大して変わりませんから何故こういう表現なのかは謎ですけど、恐らくは〈魔力物質化〉ので武器や防具を実体化させる時に性能が上がるような能力だと思います。滅多に使わないのでレベルが上がらなさそうですね。



「あるじさま~?ご飯なのですよ~。だいじょうぶなのです~?」



「・・・ええ。今行きます」



――気付けばもうそんな時間だったのですね。



 わたしが部屋の扉を開けると、卯月が満面の笑みで出迎えて抱き着いてきました。前の体から身長が伸びたせいか、抱き着かれるとちょうど撫でやすい位置に頭が来るようになったせいでついつい撫でちゃうんですよね。我ながら、甘やかしているような気がします。そのうち弥生から苦情がくるかもしれませんね。・・・前から結構撫でていたとか聞こえません。



「・・・そろそろ行きましょうか。弥生に怒られてしまいますからね」



「はいです!」



 気持ちよさそうに目を細めていた卯月が、元気よく挨拶をしてわたしから離れて行きました。そのまま先にダダダっと階段を駆け下りて下の階まで戻っていきます。わたしはそれを一通り見送ってからのんびり歩いて後を追いました。



 夕食を食べ終えて卯月と如月が食器を片付けている中ひとりお茶を飲んでいると、キッチンの方に居た弥生が近付いてきました。



「主様、スキルの確認は終わりましたか?」



「・・・そうですね。とりあえず一通りは終わりましたけど、どうかしたのですか?」



「はい。少しご相談したいことが・・・」



 一度言葉を切った弥生はわたしの湯呑みにお茶を足してから、向かいの席に座ると、言いにくそうに口を開きました。



「実は、わたくし達も自分の持っているスキルを正確には把握していないのです。固有スキルだけは魔物になった際に分かったのですが、それ以外は感覚的にしか・・・」



――わたしが魔物になった時には、固有スキルについても何も分からなかったのですけどね!



 普通の魔物ならば本能的に自分の持っているスキルを使うことが出来るそうですが、弥生達はもともとただの動物でしたからね。固有スキルだけは特別で、その人の心に刻まれているらしいので、後天的に手に入れたものでも普通はすぐに理解出来るらしいです。わたしのようにギルドカードで見て初めて認識するパターンはほとんど無いのだとか。



――今はわたしのことはいいですね。弥生達はまだ自分のスキルが分からないのですか。



「・・・それならば、わたしが鑑定して教えてあげますよ。わたしのギルドカードのようなものは作れないですけどね」



「よろしいのですか?是非お願いいたします」



「・・・弥生達はわたしの眷族なのですから、わたしが面倒を見るのは当然のことです。これからもそういうことは遠慮せずに言ってくださいね」



「はい!ありがとうございます、主様!」



 弥生が嬉しそうに頬を緩めるのを見ながら、わたしはお茶を一口飲みます。なんというか、今のやりとりに少し既視感を感じるのですよね。恐らく前の世界での記憶なのでしょうけど。



 その後、食事の片付けを終えた双子がわたしに甘えてきたので頭を撫でて褒めてあげたら、弥生から「あまり子供達を甘やかさないでください」と、苦言を言われてしまいました。やっぱり甘やかしていますかね?わたしはそんな気は無いのですが。



 弥生達の鑑定をすることになりましたが、わたしの〈全知の瞳〉はひとつ間違えるとわたし自身にとても負荷がかかる危険な鑑定です。万が一弥生達の鑑定でわたしが頭を痛めるような仕草をしたら、もう二度とわたしに鑑定を頼まなくなってしまうでしょう。



――弥生達に心配かけさせるのはナンセンスですね。さらっとやって危険なスキルだということを悟られないようにしましょう。



「・・・では、弥生からさくっとやっちゃいましょうか。・・・正面に座ってください」



「かしこまりました」



 弥生が緊張した面持ちで対面に座りなおすと、わたしを金色の目でじっと見詰めてきます。月のような瞳がとても綺麗です。



「・・・では、はじめます」



 わたしはその目をしっかりと見据えて、〈全知の瞳〉を発動させます。



――見るのはスキルだけ見るのはスキルだけ見るのはスキルだけ見るのはスキルだけ見るのはスキルだけです!



 呪文のように必死に言い聞かせながらわたしは弥生を鑑定して、その情報が頭に直接流れてくるのを感じます。



【コモンスキル】


〈火魔法レベル1〉〈水魔法レベル2〉〈風魔法レベル3〉

〈土魔法レベル2〉〈重力魔法レベル1〉〈生活魔法レベル3〉

〈索敵レベル4〉〈気配遮断レベル4〉〈俊足レベル2〉

〈跳躍レベル1〉〈料理レベル3〉


【エクストラスキル】


 〈人体変化〉〈魔力返還〉〈聖魔混成体〉


【ユニークスキル】


 〈月兎の加護〉



 ほとんどは知っているスキルですね。ついでに〈月兎の加護〉の詳細も見て見ますか。



 〈月兎の加護〉・・・月兎の加護を得る者。月が出ている時、魔力量、身体能力が上がる。以下の能力を得る。


 〈月光浴〉・・・月光の当たる量で魔力自動回復量増加(中)


 〈血月の狂化〉・・・ブラッドムーンが出ている時、身体能力が更に増加(中)


 〈蒼月の進化〉・・・ブルームーンが出ている時、魔力量と回復量が更に増加(中)



 と、こんな感じですね。やはり、わたしの持っていた〈月の加護〉の劣化バージョンと考えて問題無いでしょう。



――しかしまぁ、なんというか・・・



 言い難いですが、非常に弱いですね。一応魔人にまで進化しているので身体能力は少しはあるのですが、それもせいぜい魔の森の熊といい勝負といったところでしょうか。今後はわたしの領域の管理の手伝いや侵入者の迎撃もやってもらうわけなのですから、これはもう本格的に戦闘訓練をやらせて鍛えないとヤバイレベルですね。



 とりあえずは収納から適当な紙を取り出して鑑定結果を書き出すと、それを弥生に渡します。弥生がそれを受け取ると「ありがとうございます」と言って席を立ち、後ろの二人に譲ります。二人を鑑定している間に目を通しておくみたいですね。



「次はボクです!よろしくおねがいします、あるじ様!」



 次は双子の男の子、如月ですね。普段はとてもおとなしくて影のうす・・・こほん、目立たない子ですが、わたしと二人きりの時はすごく甘えてくる可愛い子です。わたしは席にぴょんと座った如月をさっそく鑑定します。



【コモンスキル】


〈闇魔法レベル2〉〈生活魔法レベル1〉〈索敵レベル5〉

〈気配遮断レベル6〉〈俊足レベル2〉〈跳躍レベル1〉

〈刀剣レベル1〉


【エクストラスキル】


 〈人体変化〉〈魔力返還〉〈聖魔混成体〉


【ユニークスキル】


 〈月兎の加護〉



――ふむふむ。〈索敵〉と〈気配遮断〉のレベルはやや高いですね。それと、弥生と違って基本四属性と〈重力魔法〉が無い代わりに〈闇魔法〉が扱えるみたいです。後は・・・〈刀剣〉スキル?なんでこんなもの持っているのです?



「・・・如月は剣を扱ったことがあるのですか?」



「フェンリルおねえちゃんが小さいナイフを貸してくれて遊んだことがあります!」



「・・・そうですか」



――フェンリルさん、うちの純粋な眷族に何で刃物を貸し出しているのですか?怪我したらどうするのです?



 ま、まぁ、お陰でスキルとして体得しているようですし、今後の成長させる傾向としてはいいかもしれませんね。感謝はしませんけど。後で小一時間説教してやります。フェニさんに頼んで。



 如月の鑑定結果を紙に書いて手渡すと、最後に卯月の番になりました。金色の目をキラキラとさせて期待の眼差しでわたしを見てきます。文句なしにただただ可愛いですね。ずっとそのままのキミでいてください。



「あるじさま~!おねがいしますなのです!」



「・・・あ~はい。では、さくっと始めますよ」



「さくっとなのです~♪」



 楽しそうな卯月に癒されながら、わたしは卯月を鑑定していきます。



【コモンスキル】


〈身体強化魔法レベル1〉〈生活魔法レベル1〉〈索敵レベル1〉

〈気配遮断レベル2〉〈怪力レベル2〉〈強固レベル2〉

〈俊足レベル3〉〈肉体強化レベル1〉〈跳躍レベル3〉

〈体術レベル1〉〈棍術レベル1〉〈投擲レベル1〉


【エクストラスキル】


 〈人体変化〉〈魔力返還〉〈聖魔混成体〉


【ユニークスキル】


 〈月兎の加護〉



――・・・・・・はい?



 思わずもう一度鑑定して再確認してしまいますが、結果は変わりませんでした。



――わたしのかわいい卯月のスキル構成おかしくありません?元うさぎ要素が少ないのですが?



 まぁ、ちょっとアホの子な片鱗は感じていましたが、スキル構成が完全に親子で違うのはどうなのでしょうか?というか、草食動物だったのならばもう少し〈索敵〉と〈気配遮断〉が高くないとダメでしょう?あ、出来ないからダンジョンに間違って入ってしまったのですね。なるほど理解してしまいました。そのままのキミでいるのはちょっと危険かもしれません。教育してもらいましょう。弥生に。



 それにしても、眷族の全員が〈聖魔混成体〉のだったのですね。わたしのお守りが原因で魔物になったからでしょうか?



「あるじさま~?卯月はどうでしたか~?」



 そういえば、ここ最近卯月は一人称が自分の名前になったのですよね。可愛くてとても良いと思うのですが、なんでしょうね、アホの子のレベルが上がったように感じてしまいます。



「・・・とても元うさぎとは思えない個性的なスキル構成でしたよ」



「わ~いなのです♪あるじさまに褒められたのです~♪」



「・・・」



 思わず弥生を見てしまいましたが、弥生は諦めた様に可愛い子を見る目で卯月を見ていました。親が諦めないでください。まだ幼いから矯正出来ると信じていますよ?というかしてください。今後が心配でなりません。



 現実逃避気味に紙にスキルを書きなぐって卯月に渡すと、満面の笑みで「ありがとなのです~♪」と受け取って弥生の下へ見せに行きました。



――でも、あれはあれで可愛いから良しとしましょうか。



 こうして、全員分の鑑定が終わった頃には夜も大分深まり、わたしは連続して鑑定した疲れと精神的な疲労を感じて、今日はベットで普通に寝ることにしました。




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