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転生うさぎは異世界でお月見する  作者: 白黒兎
第二章 人間世界
34/106

30話 転生うさぎとスタンピードの予兆

 情報を持ち帰って、宿屋で借りている部屋に集合して、酒場で得たそれぞれの情報に関して話し合います。



 手に入れた情報をまとめたものを上から順番に考察していきます。皆さんとの話し合いの結果はこうなりました。



 ①普段よりも魔物の数が少なくなっている。

 →度重なる変異種の発生により、魔物が変異種、または上位の魔物に乱獲されている。


 ②普段よりも高ランクの魔物が出現する割合が増加した。

 →①の結果、生き残る術を持った一部の特殊な個体とより高ランクの魔物が生き残った。


 ③ここ三ヶ月で普段はあまり見ない魔物が付近に現れるようになった。

 →①の原因のひとつ。隣のより人の寄り付かない地域から魔物が流れてきている可能性が高い。


 ④ここ三ヶ月で変異種が三体も出現した。

 →もともと強力な魔物が多く生息していて、魔力溜まりが多く、変異種が発生しやすい環境ではあったが、一ヶ月に一体のハイペースは異常である。


 ⑤変異種は三体とも北側から出現した。

 →③である魔物は北にある山脈から流れてきている可能性が高く、また、その魔物によって生態系が乱れて変異種が発生しやすい環境になってしまったのではないかと思われる。


 ⑥北側含め、国境門付近は魔力溜まりが多いが、事前に警戒している魔力溜まりから変異種は生まれていない。

 →一般的な魔力溜まりから自然発生する変異種では無く、現存種が様々な魔物の魔石を取り込んで変異種に進化した可能性が高い。これは①~③の状況を見てもほぼ間違いないと思われる。



「う~ん。この辺りで変異種が出る原因の目星は付けられたけど、根本的な原因までは分からないね」



 セラさんが話し合いの結果を書き込んだ紙を見て唸ります。クーリアさんも考えるように顎に手を当てると、テーブルに広げてある地図のわたし達が居る国境門を指さして北側にずらしていき、山脈にぶつかったところで止めます。



「北・・・北ですか。魔国を囲むようにあるアードワール山脈から来ているのでしょうか?」


「山脈地帯でちょうど四つの国の境界線上には、古龍の領域があったはずよ。あそこから魔物が漏れてくることは滅多にないと思うわ。そこを避けるとなると・・・」



 エルさんが地図の王国、公国、帝国、魔国の四つの国が交わる境界線上に丸を書きこむと、そこを避けるように指を辿ります。必然的に、帝国側か魔国側から魔物が来ていることになります。



「帝国に魔国か。どちらも現地に行かなければ情報を得るのは難しいな。帝国は戦争が囁かれていて厳戒態勢のようだし、魔国は言うまでも無く他の国と交流を持たない国だからな」


「む~。いっそ古龍の領域の手前まで行ってみる?」


「Aランク以上の魔物が蠢いている森を抜けていくのですか?セラさんとトワちゃんなら行けそうですが、私達には難しいですよ」


「・・・わたしとセラさんで行けるのなら、行きましょうか?」



 わたしの言葉に皆さんが顔を見合わせます。セラさんも最初は冗談のつもりだったようですが、顔が少し本気になりました。サイドテールを揺らして首を少し傾げると、わたしをじっと見詰めてきます。



「トワちゃんが本気で協力してくれるならば行こうかな。どうなの、トワちゃん?」


「ちょ!?本気なのですか!?いくら二人が強いと行っても流石に危険ですよ!」


「ん~。正直な話をすると、私一人でも領域に入るのでなければ余裕なんだよね。でも、満足に調査をするとなると時間がかかるかもしれないから、トワちゃんに協力してもらえると助かるんだけど」


「・・・構いませんよ」



 高ランクの魔物が多く居る危険地帯というものがどのような感じなのか、少し興味もありますからね。魔人になりたての頃だったならば危なかったかもしれませんが、今の様々なスキルや知識を得て、限界まで魔力を蓄えたわたしならばそうそう遅れは取らないでしょう。



――それに、領域というのも見てみたいですからね。



 こうして、わたしとセラさんの二人で、古龍の領域手前までの調査をすることになりました。他のメンバーは国境門を渡ってくる公国からの来訪者から話を聞いて情報を集めるそうです。



 そして、国境門を囲む頑丈な外壁から外に出て森に入り、北上すること数時間・・・



「トワちゃん!そっちに二体行ったよ!」



 セラさんの声を聴いてわたしは即座に魔法を使います。氷の氷柱を数十ほど召喚して撃ち出します。加速の魔法陣を使って飛んで行く氷柱の速さを倍増させて威力も高めます。わたしに向かってきた影のように黒い大きな狼二体に全て突き刺さりました。ですが、一瞬こちらに向かうスピードが遅くなるも致命傷にはならなかったようです。構わずわたしに向かって走り続け、ほんの数秒で手前まで来ると一斉に飛び掛かってきました。



「・・・」



 わたしは手にハルバードタイプにした槍を持つと、空中に居る二体の狼を同時に薙ぎ払います。最近は使っていなかった身体強化も使います。二体の狼は大きく吹き飛ばされ、近くに木にぶつかって地面に落ちます。まだ息のある二体の狼の心臓部にわたしが追撃で投げた槍とセラさんが放った光の矢が貫き、ようやく狼たちは絶命しました。



「ふぅ。ごめん。こっちも思ったより手こずっちゃった」


「・・・いえ。それよりも早く移動しましょう。既にかなりの魔物が近づいています」


「そのようだね。魔石だけ取り出したら行こうか」



 わたしに向かってきた狼から魔石をそれぞれ取り出し、セラさんも向こう側で戦っていた大きな猪から魔石を取り出します。そして、早々に移動を開始します。血の臭いと先ほどの戦闘音でこの辺りに大量の魔物が集まってくるでしょう。その前に距離を離さなければいけません。



「・・・魔物の数が減っているのではないのですか?ずっと囲まれているぐらいには大量にいるのですが」


「明らかにおかしいよね?私もびっくりだよ。これじゃあまるで・・・」



 途中で言葉が途切れたのでセラさんに顔を向けると、真剣な表情で何か考え込んでいます。そして、顔を上げるとわたしを見下ろします。



「トワちゃん、一旦調査は中止にして街に戻ろう」


「・・・まだ森に入ってからそんなに経っていないですよ?」


「この森の状況、もしかしたらスタンピードかも」


「・・・それはダンジョンで稀に起きるという魔物が溢れかえって侵攻してくるという現象の話ですか?」



 ダンジョンが活性化してダンジョン内のどこかの階層が魔力で満ちた状態でなり、その階層に居る特定の魔物が大量発生して、ダンジョンから湧き出てくるという現象が、この世界での一般的なスタンピードです。



「確かに一般的にはダンジョンで使われる言葉だけど、魔物が多くいる地域でも極稀に起きる現象なんだよ」



 セラさんの説明によると、魔物が生息する地域に少し強い程度の魔物が現れるだけならば、少し生態系が乱れるだけなのだが、明らかにその地域の魔物よりも逸脱した強さを持つ魔物が現れると、元々その地域に居た魔物たちが一斉に逃げようとするらしいです。それが生息地域から大量にあふれ出ることでスタンピードになるのだとか。



「・・・北から魔物がやってきているのですよね?まさかですが」


「トワちゃんも気づいたみたいだね。最初はそこまで多くの数の魔物が北から来なかったから、少し生態系が崩れている程度で魔物の数も減っていたんだと思う。けれど今は大量に溢れてこの辺り一帯に集まってきているってことは」


「・・・魔物たちを北からこちら側へ追いやっている元凶が、この国境門に向かってきているということですね?」


「当たりだよ。このまま行くとそいつと鉢合わせになる可能性があるからね」



 わたしはセラさんの言葉に頷きつつも、疑問に思って首を傾げます。



「・・・多くの魔物がこの周辺に集まって来ていて、スタンピードが起こりそうなのは分かりましたが、わたしとセラさんでその元凶を倒した方が早いような気がしますけど?」



 わたしの言葉にセラさんは首を横に振ります。



「確かに倒せるかもしれない。ううん、間違いなく倒せるよ。だけど、その戦闘でスタンピードを早めてしまうことになる。なんの準備も無しにこの辺りの魔物が一斉に突然襲い掛かってきたらどうなると思う?」


「・・・なるほど。国境門が陥落することは無いでしょうけど、被害は多く出ますね」


「いくらわたし達でも、これだけの数の魔物を外に出さない様にして、このランクの魔物が逃げ惑うような強力な魔物の相手をするのは、無理だと思うな」


「・・・そうですね」



 厳密にいえば、この辺一帯の魔物を根絶やしにしてしまえば出来なくはないのですが、あまりにも数が多いので一体一体倒すのでは時間がかかりすぎますし、かといって、地形を変えるような大規模魔法を使ってしまうと、その後の言い訳とか後始末が大変になってしまいます。そもそも、セラさんでさえ警戒するような危険な魔物が近づいてきているのにそんな魔力の無駄使いは出来ません。



「私達が報告する前にそう遠からず気付けたとは思うけど、早ければ早いほど対策の幅も広がるから、急いで街まで引き返そうか」


「・・・街に帰る頃には暗くなっていそうですね」


「魔物は出来るだけ無視して時間短縮しよう」


「・・・それなら良い魔法があります」



 光学迷彩の魔法で姿を消すと、セラさんは驚いたようにきょろきょろとした後、見えないわたしに視線を下ろします。



「そういえば、前にお風呂に入った時にも使っていたね。それは私にも使えるの?」


「・・・なんとかなるでしょう」



 この魔法は身体強化のような持続魔法では無くて、場所を移動した時に自動で光の屈折を調整して姿を消すという継続魔法ですからね。姿だけを消していても気配でバレてしまいますし、魔力感知系のスキルを持っている者にも気付かれてしまうので、中々使いどころさんが難しいのですよね。一般人を欺くだけならば重宝しますけど。



 わたしは出来るだけ魔力の消費を抑える為に、うさぎの姿になってセラさんに抱きかかえてもらいます。この状態で光学迷彩を使って気配遮断をしながら森を歩きます。何度か気付かれそうな場面もありましたが、一度も戦闘することも無く、まだ日が出ている内に森を抜けることが出来ました。



「・・・セラさん?もう離してくれても良いのですよ?」


「もうちょっとだけ。このもふもふ癖になりそう~。しあわせ~」



――まさかこのまま街の中に入ろうとたりしませんよね?



 結局、外壁近くまで来ても離そうとしなかったので、じたばたと暴れて強引に抜け出して人間の姿に戻ってから光学迷彩を解除しました。



 宿屋まで戻ると、ちょうど全員が揃っていました。わたし達が帰って来たのを見て皆驚いたように目を見開きます。



「帰って来るのが早かったわね。何かあったの?」


「うん。それがね」



 セラさんが森に入ったら事前情報と違って森の中に大量の魔物が居たことと、その原因が強力な魔物が来たからこちらへ向かってきているのではないかという推測、そうした場合、今の状況はスタンピード一歩手前なのではないかと思い調査を中止して街までトンボ帰りしたと報告しました。



 セラさんの報告を聞いて他の三人も顔色を悪くします。エルさんが諦めた様に額に手を当てて顔を横に振ると、深く息を吐きます。



「変異種の次はスタンピードね。厄介なことは立て続けに起こるものね」


「こ、こんな場所でスタンピードですか?どの魔物もBランクオーバーの危険なものしか居ないのですよ?そんな無茶苦茶な・・・」


「しかし、兆候としてはスタンピードが起こる可能性は高い、か。どうする?今なら逃げることも出来るぞ」



 冒険者は常に死と隣り合わせの生活をしています。だからこそ、生きる為に誰かを見捨てて逃げることは決して恥でもなんでもありません。危険を避けることが出来ない者に冒険者は長く務まらないのです。リンナさんの言葉にセラさんは興味深そうに皆さんを見回します。恐らく、たとえ一人になってでもセラさんは戦うのでしょうね。それが、力を持っている人の宿命というやつなのでしょう。



 最初に口火を切ったのはエルさんでした。艶やかな金髪を揺らし、藍色の瞳は強い意志を感じて揺らめき輝いていてとても綺麗です。



「愚問ね。私はここに残って戦うわ。これぐらい、あの災厄に比べれば児戯に等しいわ」


「エルの気持ちは嬉しいけど、無理はしないでよ?当時のことは知らないけど、今と昔ではいろいろと違うんでしょ?」



 セラさんの言葉にエルさんは苦笑交じりに「そうね」と呟きました。その時、俯いていたクーリアさんが顔を上げます。その黒い瞳には悲壮感ではなく、キラキラとした高揚感が見えます。



「それだけ高ランクの魔物がうじゃうじゃとやって来るならば、魔法打ち放題ではないですか!!今まで考えていたけど中々使えなかった魔法の良い実験が出来ます!!私ももちろん参加です!!」


「はは。クーリアはぶれないな。私ももちろん参加だ。久々に血がたぎるな。以前のスモアネスの時には使う余裕が無かったが、今回は『鬼化』出来そうだ」



――クーリアさんの魔法実験も気になりますが、個人的にはリンナさんの『鬼化』も見てみたいのですよね。



 リンナさんは魔族である鬼と人間の間に生まれた半魔族というハーフで、普段は人間と変わらない容姿をしていますが、基礎身体能力は人間よりも非常に高いですし魔力も多いです。さらに、『鬼化』することによって元々高い基礎身体能力を更に向上させることが出来ます。ただ、この『鬼化』は人間の体も持つリンナさんにはかなり負担がかかるらしく、発動までに少し隙ができる他、長時間の維持できないそうです。



「確かに大勢で戦うのならばフォローもしやすいから、『鬼化』の訓練にはちょうど良いかもしれないわね。だけど、セラは恐らく回復まで手が回らないだろうから、私の目の届く範囲で暴れてちょうだい」



「分かった。気を付けるよ」


「うん。皆の意思は確認出来たかな。・・・トワちゃんはどうする?」



 皆さんの目がわたしに向きます。わたしは目を逸らしながら、長い髪をいじりつつ答えました。



「・・・わたしは・・・森で大人しくしていましょうかね。たくさんの人が居る中で目立つわけにはいきませんし、うさぎの姿で隠れていますよ」



――皆さんがやる気なのは構わないのですが、わたしは立場的に大っぴらに参加出来ないのですよ。



 わたしが今回のスタンピード対策に不参加を表明して理由も説明すると、皆さんも納得するように頷きます。



「トワちゃんが危険を冒してまで戦う理由もありませんからね。仕方ないです」


「戦力的にはかなり痛いけれど、この国境門にはもともと屈強な騎士達がいるものね。私達でなんとかしましょうか」


「王国側の国境警備隊と公国側の国境警備隊で協力し合えればそれだけでも防衛戦力としては十分だろう」


「それだけじゃないよ。この門に居る高ランクの冒険者だって私達以外にも居るはずだからね。呼びかければそこそこの数は集まるんじゃないかな?」



 それからは、わたしを除いたメンバーで日が落ちるまで話し合いました。日も沈んだ八の鐘が鳴った頃に、セラさんは話し合った内容を伝える為に国境門の警備隊詰所に向かい、他の皆さんもスタンピードに備えての武具や魔術具の確認と手入れ、他に必要な物の確認をしています。わたしはそれを横目に見ながら、窓の縁に腰かけて夜空に浮かんだばかりの月を見上げました。



 次の日から本格的に国境門全域が準備で慌ただしくなりました。国境警備隊と話し合いながら、国境門防衛戦に参加の冒険者達の配置を決めていきます。



 近くの森から外壁までの平野が主戦場になります。北側から魔物の群れがやってくるため、北側に防衛ラインを敷き詰めていくのですが、激しい戦闘音に釣られて南側からも魔物がやってくる可能性を想定して、全体の六割の戦力を北側、二割の戦力を南側、残りの二割を予備戦力として待機させることに決まりました。



 この国境門には偶然訪れていたAランクパーティーが全部で三組、Bランクパーティーが五組、商隊の警備依頼で国境を越える予定だったBランクパーティー二組とCランクパーティー三組が居ることが確認出来ました。今回の防衛戦に全員が参加することを表明しているそうです。今から逃げてもスタンピードから漏れた魔物が後ろから襲ってくる可能性が高いので、そんな危険を冒すくらいならば、Sランク冒険者と一緒に戦った方が良いと判断したようです。



 基本となる作戦はこうです。北の森から溢れてきた魔物の群れを警備隊と冒険者で排除する。セラさんは本命であるスタンピードの元凶の魔物を倒すために極力魔力を温存するために、危険な状態にならない限りはあまり手出ししないことになりました。



 国境門に訪れていた商人は、今回の事態に格安で商品を冒険者や警備隊の騎士達に売りさばくようになりました。国境門から出られない以上は、彼らが守り抜かなければ自分の命は無いのです。当然といえば当然ですね。



 ごく一部の人達は国境門から早く距離を離すための手段を持ち合わせており、背後からの襲撃の危険性を承知の上で早々に立ち去りました。それも、警備隊や冒険者達の斥候による調査により、スタンピードまで残り二日と予想された時点で、完全に内外からの行き来が遮断されてせいで国境門から出る人は居なくなりました。



 スタンピード予想二日前。クーリアさん筆頭の下、高ランクの魔術師達が知恵と道具を出し合って、外壁の硬化の魔法陣を強化するのに加えて、魔術具を用いて結界を張り巡らせて防御を固め、外壁付近に使い捨ての魔術具を使ったトラップを大量に設置しました。



 スタンピード予想前日。最前線で戦う人達は一足先に平地まで出て簡易テントで過ごします。剣や槍などの前衛だけでなく、外壁から攻撃出来ない弓使いと一部治療のための魔法使いが前線に出ることになります。エルさんは弓使いですが、今回は魔法を使って戦うのと弓でも外壁から届くらしいので外壁組です。それと同時に斥候の命がけの調査で、元凶の魔物の確認は出来なかったものの今回のスタンピードでのおおよその魔物総数が試算されました。



 スタンピードによる魔物の総数およそ一万体。このうち割合でいうと、Cランク以下が二割、Bランクが五割、Aランクが三割が予想される魔物の数だそうです。



 それに対して人間側は国境警備隊王国公国混成でおよそ五百人、冒険者総数およそ六十人、合わせても六百人にも満たない数になります。



 およそ絶望的ともいえる数字が叩き出されながらも、誰一人として恐怖に錯乱するでもなく、逃げようとするでもなく、生き残ることだけを信じて仲間たちと最後の一日を過ごしました。



 スタンピード予想当日。北の森からは明らかに今までと違う魔力の揺らぎを感じます。今日で間違いなく来る。魔力感知もない人でさえそれを察して、陣形を組み、作戦を確認しあいながらその時を待ちます。



 そして、ついに森から半狂乱にこちらへ向かってくる大量の魔物達が現れました。数多の種類の魔物達が雄たけびを上げながら平地を走ります。前衛との接触まで残り半分の距離で魔物の最前線を横一列に眩しい光が切り裂き爆発しました。



 セラさんが六枚の天使の羽根を広げて境界門の上に浮かび、その手に持つ白く輝く聖剣を一振りします。すると、今度は公国側の方から大爆発が起きました。これがきっかけとなり、それぞれ配置についた魔術師達の詠唱が始まります。



 ついにスタンピードが始まり、人間達による国境門防衛戦が始まりました。




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