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2話 転生うさぎと平原生活

 わたしの視界になにか動くものを見つけました。上手く草に隠れているようですが、僅かに違和感があります。



 目を凝らしてよく見ると、立派な牙がちらりと見えました。意識すると、微かに息遣いが聴こえます。



 反射的に回れ右してダッシュしました。わたしが行動したことで、相手も気が付かれたことに気付いたのでしょう。追いかけてくる気配を感じます。



 右も左もわからずに、ただ直観だけで逃げ惑いなんとか振り切ることに成功しました。あともう少し気付かないでいたら、危なかったかもしれません。



 よく姿を確認する余裕がありませんでしたが、恐らく狼のような生き物でした。先程までのように無警戒で目立つ行為をしていればすぐに狼の食糧になってしまうでしょう。



 まずは、この世界を生きるための心構えをつけなければなりません。幸い、逃げ足は速いのである程度距離を離していれば逃げることができるでしょう。



 今度はしっかりと周囲の警戒をするために、集中して辺りの気配を探ります。丈の長い草に隠れて周りを見ることは出来ませんが、狼以外にも様々生物の気配がしますね。どれが安全でどれが危険な気配なのかも、これから知っていかなくてはなりません。



――いずれは逃げるだけではなく、自衛できるように戦う方法を考えなくては。



 重要なことに気付いてしまいました。わたしは起きてから何も食べていません。不思議なもので、意識してしまうと動くのも億劫なくらいお腹がぺこぺこです。



 といっても食料は豊富なのですよね。なぜかって?ここは草原です。周りは草ばっかりです。そして、わたしはうさぎ。つまり草食動物。・・・もうわかりましたよね?



 しかし、これが結構曲者でした。草といっても種類も沢山あります。当然ですよね。よく見なければ分からないものから、見るからに他と違う色形しているものもあります。そして、草にも毒性があるものもあります。むやみやたらに食べていたら毒に当たって死ぬかもしれません。



――あれ?これ思っていたよりハードモードなのでは?



 気にしたら負けです。とりあえず、わたしが伏せ状態で隠れて食べることが出来て、臭いや色が普通なものを食べてみましょう。お腹も空きましたしね。



――ではさっそくもぐもぐと・・・うむ。なかなか美味ではありませんか。



 もちろん嘘です。でも、そう思い込んで食べないと心が折れそうです。ちなみに味は苦いですし青臭いです。決して食べられなくはないのですが、全く美味しくはないです。というか美味しい草ってあるのですか?天ぷらとかにすれば美味しいのでしょうか。野草の調理をしていた番組を思い出します。



――うさぎのわたしには料理なんて出来ないので、関係ないですけどね!



 しばらく大丈夫そうな草を何種類か吟味して今後の食糧を覚えました。というわけでわたしの食糧たちを紹介しましょう。いらないって?だめです。嫌でも教えちゃいます。



 まずは主食。味はふつう。苦くて青臭くて普通に不味いです。このあたりでは最も数が多く見分けやすく、安全な草でした。ちなみにわたし以外のうさぎ達も食べています。



 わたし以外にもうさぎは居ますよ?希少動物では無さそうで、あちこちに居ます。別に会話出来るわけではありませんが、出会い頭にきゅいきゅいと挨拶(?)をして別れます。可愛いですね。うさぎになりたいとは思いませんが。



 最後に・・・え?早いですか?見分けやすくて、安全で、群生している場所が多い草って意外と無いのですよ。



 というわけで、最後の草は、味は相変わらず青臭くて苦いですが、食べると体力が回復して少し元気になります。カ〇リーメイトのような栄養補給食ですね。おそらく何かの薬草でしょう。



 主食は食草。栄養食は薬草と呼ぶことにしましょう。



 食料の確保に成功したわたしは、次に安全な寝床探しもかねて周囲の調査をするためにあちこち散策することにしました。もちろん、最初と同じ過ちをしないように、周囲の気配を探りながら安全第一で行動します。



 一面草ばっかり(たまに岩)の草原ですが。進んでいればどこかの道にでたり、森や川などがあったりするかもしれません。とりあえず明確な目印を見つけるところから始めましょう。



 目標は、頭の中である程度の地図が出来ればといったところでしょうか。



 そんなわけで、わたしは今草原を歩いています。今更ですがきちんと気を張って気配を探っていれば、生き物の気配や僅かな物音を聞くことが出来ますし、生き物の近くを通らざる得ない時には音を立てないように静かに移動し、丈の長い草に身を隠して姿が見えないように意識することで時間はかかりますが安全に通ることが出来ます。風上なんかにも気を配れば、嗅覚の鋭い狼系でもやり過ごせそうですね。



 意外と厄介なのがヘビですね。熱源感知のため近くを通るとほぼ確実に襲ってきます。姿は草に隠れて見えません。気配もほとんど感じないです。おまけに移動する時の音も小さいため、わたしの耳でも集中して音を聞いていないと事前感知が難しいのです。草原の忍者といっても過言ではないでしょう。ただ、狼よりは動きが遅いので、不意打ちで噛みつかれなければ逃げることは簡単です。



 そんな移動中に今までと毛色の違う奇妙な気配を感じました。草に紛れて姿は見えませんがずるずると移動している感じがします。気配はしますが音はほぼしないですね。狼ならば草に紛れても僅かな違和感で見えますし、何より移動時に草を踏んだり当たったりした時に音がでます。うさぎも狼より気配が分かりにくいだけで、移動時の音で分かります。



 強いていうならば、ヘビに近いでしょうか?でもヘビよりも気配が強く感じるのですよね。隠れている感じではなく、目的もなく動いている感じです。



 遠目に見る分には逃げられると思うので、この謎の存在を見に行ってみましょう。



 というわけで見にきたのですが、半透明な緑のゼリーが動いています。ゼリーの中に丸い球体が見えますね。これは、ファンタジーでは王道と言っていい存在のスライムというやつですか。よく見ると、薬草だけを選別して食べている(溶かしている?)みたいです。ファンタジーな生き物を初めて目の当たりにして感動していましたが、ふと気になることが出来ました。



 某ゲームでは、スライムといえば最弱のモンスターですが、この世界のスライムはどうなのでしょうか?気になったわたしは、予定を変更して、しばらくこのスライムさんを観察することにしました。



 スライムさんと一定の間隔を保ちながらついていくこと、しばらく・・・いや、時間がわからないのですよ。陽がかなり傾いている気がするので、わたしが起きてから数時間はたっていると思うのですが。



 そんなことより、わたしの気配察知ではこの先少し行くと狼がいる感じがします。これ以上近づくと私も危険なのですが、今は好奇心の方が上です。うまく気配を消しながらスライムさんを見ていましょうか。最悪スライムさんがやられてしまっても全力で逃げれば逃げられる距離にいるようにしましょう。



 とか考えているうちに敵を見つけました。やっぱり狼ですね。長草に伏せて姿を隠しているようですが、わたしの気配察知と観察力を持ってすればわかります。最初に襲われた時はちょっと気を抜いていただけなのです。



 あ!狼さんがスライムさんに飛びつきました。スライムさんはゼリーのボディで受け止めます。そのまま何事もなかったかのように、狼の体を取り込んで溶かしていきます。ものの数十秒で骨も残らず溶けました。



 結論。この世界のスライムさんはとっても強いみたいです。生半可な物理攻撃は無効化してしまうみたいですね。しかも不用意に近づくと取り込まれて溶かされる。こちらからちょっかいを出さなければ襲ってこなさそうなのが救いですね。



 スライムさんの観察はもう良いでしょう。散策に戻りることにします。



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