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ELEMENT2020冬号  作者: ELEMENTメンバー
2/10

闇に烏(作:SIN)


 大晦日の裏山では今年もカウントダウンイベントが開催され、例年の如く参加した俺、セイ、シロ、モモさんはマイク越しにされる大音量のカウントダウンに合わせて声を張り上げる。

 パーン。パパパーン。

 年が明けた。

 「明けましてー」

 「おめでとぉー」

 「今年もー」

 「よろしくー」

 4人で一文を完成させたのはその場のノリではあったが、上手くいくとなんだか楽しい。

 そんなテンションの高さも手伝い、このまま帰るには惜しくなってしまった。

 「なぁ、今日このまま初日の出も見ようや」

 だからこんな提案が出来たんだと思う。

 普通に考えれば寒いし、徹夜になるし、家には無断外泊って事にもなるし、まず間違いなく俺からは提案しなかった筈で、大体こういうのはセイが言うものと相場は決まっているんだけど……仕方ないじゃないか、このまま皆と一緒にいたいなーって思ったんだから。

 「おっ、えぇで!」

 真っ先に返事をくれたのはセイで、シロにも同意を求めるように笑顔を向けている。

 そんなシロが気にするのはモモさんだ。

 「私もえぇよ。カイロめっちゃ持ってきてるし!」

 モモさんはそう得意げにポケットの中から2つのカイロを出し、それらをポケットに戻した後、未使用のカイロをカバンの中からごっそりと出して見せてくれた。

 「向こうに甘酒とか生姜湯とかあったし、飲んで温まろっか」

 的確且つ冷静なシロの提案でゾロゾロと飲み物を貰いに行き、喋りながら飲んで、すっかりと冷えてしまった各自飲み物を一気飲みして、そうしてから向かった裏山の頂上には既に沢山の人が集まっていた。

 立ち入り禁止と看板が立っている場所にもおかないなく進入し、スマホ片手に写真やら動画を撮っている人達が、沢山。

 秩序が失われたこの空間の残念さたるや……。

 「ここ人多いし、小川の方行けへん?」

 裏山には通常の登山道の他にも獣道があって、その道からしか行けない小川がある。その獣道を登っていくと、表道よりも少し低いけど、それでも小高い休憩所に出る。そこからでも初日の出は見られる筈だ。

 ただ、獣道の先にある休憩所はあまり手入れが行き届いていないから自動販売機のような近代的な物もないし、売店もないし、実はベンチすらなくて、単なる開けた場所ってだけの、まぁまぁ完全な大自然の中。

 なので余程の事がない限り地元民の俺達でさえ行く事はない。

 雪男や雪女を探しに来た時ですら小川周辺までしか行ってないのだ。

 夏は蛇とかマダニとかが怖いから絶対に行きたくはないけど、幸い今は冬真っ盛りで分厚い服を着込んでいるから安全だろう。

 「行くのはえぇけど、一旦下山してコンビニまで食料調達しに行こーや」

 確かに。

 日の出は7時だからまだ6時間近くもあるし、食料は必要かも知れない。

 カウントダウンイベントが終わって片付けなどが始まっている横を通り過ぎ、コンビニ目指して下山しつつ、シロとモモさんの邪魔をしないようにとセイと2人でゆっくりと歩く。

 なんとなく2人きりにしてあげないとなーって。

 とか言っても、5歩位の僅かな距離なんだけどさ。

 「なぁ、コウにはアレ見える?」

 前を歩くシロとモモさんには聞こえないような小さな声でセイが耳打ちをしてきた。

 あのラブラブカップルならばさっきからズット見えているけど?なんて答えようとしてセイの視線に気が付く。

 明らかに生い茂っている木々の方向を見ているのだ。

 何があるというのだろう?と目を凝らして木を見るが特に変わった所はないし、木々の間に何かがいるのだろうか?と目を細めて見ても何も見つけられなかった。

 「アレって?」

 観念して尋ねてみるが首を傾げられた。

 「何か分からんから意見を聞こうと思ったんやけど……見間違いかなぁ?」

 何と見間違えたというのだろう?気になってきた。

 「何処って?」

 目をこすって立ち止まり、木々の方向を真っ直ぐに見るが、やっぱり俺には何も変わった物は見えない。

 「もうおらんねんけどな」

 おらんのかい!

 「枝とか葉っぱとかが風で大袈裟に揺れた影とかちゃう?それかカウントダウンイベント会場からのライトで照らされてる葉っぱの反射とか影とか」

 「あぁー。それだ」

 自分で言っておきながらなんだけど、なんとなく違う気もする……けど、折角セイが納得してくれたんだし良いか。それに正月早々謎があるなんてモヤモヤするし。

 こうして無事にコンビニに着き、各自それぞれ好きな物を購入して、イザ獣道へ!って所で行き成りシロが歩みを止めてしまった。

 何があるのか分からないのか、モモさんも困惑気味だ。

 「どーしたん?」

 5歩の距離しか開けていなかった俺達はアッと言う間に追い付き、まだ歩き出そうとしないシロに声をかけ、その視線に気が付く。

 なんかさっきもこういう事があったような気がするわ。とかなんとか思いつつその視線の先を追っていけば、そこにはちゃんと俺にも分かる原因があった。

 何かを追いかけるように足早に裏山の獣道へ入って行く、登山するには少しばかり薄着のお兄さんがいたのだ。

 「マジか……目的地が同じやったら嫌やなぁ」

 ボソリと呟いたシロだが、家に帰るという選択肢はないようで安心したよ。

 「シロの兄ぃちゃんって黒猫と一緒におる事多くない?」

 え?黒猫?

 お兄さんが何かを追いかけている風だったのは間違いないけど、黒猫がいたのか。というか、この暗い中で黒猫を目視出来るなんてセイの目は本当に良いんだな……羨ましいよ。

 さっきまでは俺とセイがやっていたように、今度はシロとモモさんも一緒になってお兄さんの後をつける。

 後姿が完全に見える程度の距離しか開けていないのだから、まぁスグにばれるのだと思っていたのに、お兄さんは一向に俺達に気が付かないのかチラリとも振り返ってこない。

 それとも気が付いて?

 あ、そっか。シロ達兄弟の仲は良くないんだった。

 1年前、図書館に行った時に仲が悪くなった原因を尋ねた事はあるんだけど、結局詳しい事は聞けなかったんだよなぁ。

 「シロ君って、なんでタケシ君の事嫌いなん?」

 突然のモモさんの質問にシロは完全に足を止めてしまった。そして俺とセイも自然と立ち止まる。

 タケシって誰だっけ?

 そんな些細な現実逃避をしながら。

 「……アイツと名前で呼び合う仲やっけ?」

 軽く、嵐の予感。

 「直接本人には呼びかけた事ないけど、シュウと話す時はだいたい“タケシ君”やで」

 シュウって誰!?しかもこっちは呼び捨てだし!

 「……元彼と連絡取り合ってんのや?」

 元彼!?

 え?大きく嵐の予感なんだけど、え?ちょっと待とうじゃないか。リラックスが大事だ。そうそう、心を穏やかにしようぜ☆

 って、出来るか!

 新年早々俺は何故カップルの間に突然巻き起こったギスギスした空間に遭遇してしまってるんだ?

 「元彼のあだ名決めたよな?なんやったっけ?」

 そしてセイはどうしてそうノンビリ出来るんだよ。

 はぁ、まずは俺が落ち着かなきゃならないのかな?

 えっと、元彼のシュウさん。そのあだ名……1年前の図書館に人形を持って本を読んでいたんだ。

 あれは、確か……そうだ。

 「腹話術の人。じゃなかった?」

 「あぁー。それだ」

 自分で言っておきながらなんだけど、なんとなく違う気もする……けど、まぁいっか。それに今はそれ所でもないし。

 「言って良いか分からんけど、シュウの運命の人ってタケシ君らしいねん。で、私はシロ君が運命の人やろ?やから兄妹みたいな感じかなぁ?」

 あまりにもモモさんがシロの事を運命の人だとサラリと言うもんだから、シロの毒気はスッカリと消えてしまったのだが、また別の感情が芽生えたらしく、拗ねた風に口を尖らせた。

 言いたい事はなんとなく分かるさ……。

 「今からシロって呼んで」

 おぉっと、遠回しに言うかと思ったら直球だったか。男らしいぞ!

 「え?は、恥ずかしいから……ちょっと無理……かな」

 ブッ!

 なんだよもぅ、嵐が巻き起こるような要素が何処にもなかったわ。

 「んでさ、結局の所なんで兄弟仲悪いん?」

 綺麗にバッサリと話しを元に戻すセイは、少し目を細めて先を行くお兄さんの姿を探しているようだ。

 ここからじゃあ木が邪魔して見えないと思うんだけど……それに暗いし。

 恥らう彼女を前に長い溜息を吐いたシロは、セイと同じように目を細めて獣道の先を眺めながら、

 「アイツは俺の事なんとも思ってへんと思う」

 と、ポツリ。

 ここまでなら去年にも聞いた事だから、今日はそれ以上の事も話してくれるんだよな?でも、ここまで聞いたら想像するのは簡単なんだし、無理して言わなくても……

 「シロが一方的に嫌ってるだけ?けど、そんな嫌いならなんで1人暮らしとかせんの?」

 ガッツリと聞く気満々のセイが畳み掛けるかのような質問をしているが、高校生の身の上じゃあ仕送りがあったとしても1人暮らしって結構ハードルが高いと思う。

 セイの質問の答えを考え込んでしまったシロは、無言のまま足早に歩き出した。

 俺とセイとモモさんはそんなシロの邪魔をしないよう5歩程の距離を開けて後をつけたが、程なくしてお兄さんの後姿が見えて来た事でシロの歩みは一気に遅くなり、

 「嫌いなんじゃなくて……分かるやろ?アイツ、気味が悪い」

 と。

 確かに俺もお兄さんに対して、不思議な雰囲気の人。怖い人だ。と、そう漠然としたイメージを持っていた。それが一緒に住んでいるシロなら、もっと具体的に思う事はあるのだろうけれどもだ、気味が悪いってのは少々言い過ぎじゃないだろうか?

 「俺はいつも猫とか犬とか追いかけてるメルヘンチックな人って思うけどなぁ」

 「メルヘンチック!?」

 「メルヘンチック!?」

 「メルヘンチック……フフッアハハッ!」

 不思議は不思議でも、そっち方面なのね。ってか、モモさんのツボに入ってしまって大笑いし始めちゃったよ。

 これはもう元の空気には戻せないだろうから、シロへの質問もここまでになるのかな?

 全く、質問を始めたセイが自分で雰囲気をぶち壊すとは思っていなかっ……いや、結構予想通りかな。

 「猫とか追いかけてるから気味が悪いん?」

 質問を続けるとは予想外だよ!

 「それも含めて。なんて言うたらえぇんか分からんけど……気味が悪い」

 そしてシロは自分の身内をどれだけ気味悪がってんだよ!猫を追いかけてるのはメルヘンチックで……フフッ。

 だけどシロの説明はなんとなく的を射ている気もする。

 お兄さんの不思議な雰囲気は……なんだろう?宇宙人でもないし、幽霊でもないし……近くにいると怖いんだけど安心できるって言うのか……あ、超人?うん、なんか1番しっくり来た。

 なんにせよ得体が知れないから、不気味って事にはなるのかな?

 ♪テロロローン♪

 軽い電子音が少し後ろから聞こえて、振り返るとモモさんがスマホを手に取り、

 「はーいもしもし?あけおめー」

 と、明るく話し出した。

 親御さんからだろうか?と静かにする俺達の耳にも微かに聞こえてくるのは明らかに若い男の声で、

 「おめでと。な、今何処?」

 との事。

 途端シロの顔面が不機嫌そうに……恋人が出来るって、結構大変そうだな。

 「今彼氏と裏山。なんで?どーしたん」

 モモさんはそんなシロの嫉妬心を知ってか知らずか、とても良い笑顔で彼氏とデート中だとアピールをする。

 うん、やっぱり羨ましいわ。

 「彼氏と代わって」

 「え?」

 「え?」

 「え?」

 「え?」

 綺麗に4人でハモった1文字の後に流れるちょっとした間。その間にもお兄さんはドンドンと先に進んで、前方に人の気配がなくなってしまった。

 「もしもし?」

 そして聞こえる男の声に、モモさんからスマホを受け取ったシロが、

 「もしもし」

 と返した。

 「お前の兄ぃちゃん今何処!?知ってる?知ってたら教えて!」

 切羽詰った男の声は終始お兄さんの事を尋ねているから、多分これはモモさんの元彼氏で、お兄さんの運命の相手で、腹話術の人だ。

 「教える?」

 小声でセイが首を傾げる。

 別に隠すような事でもないから教えてあげるのは良いと思う。けど……

 「説明難しくない?」

 裏山でのカウントダウンイベントと言ってしまっても良いんだろうけど、そう教えた後に会場に行ってもお兄さんも俺達ですらそこにはいない。だからって小川の辺りと言っても実際はそれより奥に進む訳で……この腹話術の人が小川の更にその奥にある広場を知っているのかどうかなんて分からないし……。

 「……裏山の獣道歩いてる。アイツも一緒……ではないけど、いる」

 そのままこの状況を説明するって方法ね!

 「頼む、代わって!」

 何でそんな切羽詰っているのか不思議だし、お兄さんに話があるなら直接お兄さんにかければ良いだけの話しだし。

 「どうする?」

 と、セイが率先して意見を述べれば、

 「私は別に良いと思うんだけどな?」

 と、モモさん。

 スマホの持ち主であるモモさんが良いと言ったのだから、後はもうシロの気分次第だ。

 「お願いやから、頼むわ……」

 スマホからは今にも泣きそうな腹話術の人の声が聞こえてくる。

 何か、余程の事がある?余程の事があった?

 「ハァ────」

 白い息を長めに吐き出したシロは、スマホを持ったまま獣道の上を睨みつけるとトントーンと跳ねるような軽快な足取りで走り出すから、俺達はその姿を見失わないように追いかけたんだけど……セイもシロも良くこんな真っ暗な道を明かりも無く自信満々に歩けるよね。

 獣道だよ?窪みとかに足を取られたり、横を流れる小川に着水とか、そんな危険もあるんだからね?

 それを思うとお兄さんも明かりを持ってなかったっけ。しかも軽装だった。

 全く、俺から言わせると全員人間離れしてるように感じるよ。

 「良いから、出ろ」

 道の先からシロの声が聞こえる。

 思ったよりも近くにいてよかった。

 「……もしもし」

 スマホを受け取ったらしいお兄さんの声。

 流石に腹話術の人の声は聞こえて来ないけど、

 「え?初日の出見ようと思って……あ~、家に忘れた」

 とか焦った風な口調で言うから、なんとなくの会話内容が分かり、態々モモさんのスマホに連絡があった理由を知る事が出来た。

 とは言え、モモさんのスマホを介してまでお兄さんと話したいなんて、一体どんな用事なんだろう?

 ここからじゃあもう腹話術の人の声は全く聞こえないし、お兄さんも相槌しか打たなくなってしまったから内容を想像する事も出来ない。

 「なに話してんねやろ?」

 「妙に切羽詰ってたし、大事な事なんは確かなんやけどなぁ」

 ヒソヒソとセイとモモさんが言い合っているうちに会話を終えたお兄さんはスマホをシロに返却しつつ、

 「こんな所で何してんねん。危ないやろ?帰れ」

 と、結構なブーメランを投げた。

 俺達はちゃんと厚着だし、食料だって用意してるし、スマホも持っているからイザと言う時にも助けを呼ぶ事が出来る。対するお兄さんはどうだろう?軽装だし、スマホだって家に忘れてるんだよね?

 「お前の方が危ないやろ」

 冷静な突っ込みをありがとう。激しく同意だよ!

 それにお兄さん自身も同意したのだろう、罰が悪そうに頭を掻きながら何か言葉を捜している風だったが、特に何も思いつかないのか長い溜息を吐いている。

 「携帯取りに帰るわ。あ、小川には近寄るなよ」

 小川の方を指差しながら最後の忠告をするお兄さんに、

 「こんな寒い中で水辺に近寄る訳ないやん」

 小川の方を指差しながら言い放つシロ。

 そうですか。と両手を軽く挙げたお兄さんは、その手を振って獣道を登り出した俺達を見送ってくれている。

 振り返ろうともしないシロと、物珍しそうにキラキラとした目で何度も振り返るセイは対照的だ。そしてモモさんは最後に忠告を受けた小川の方を興味深く眺めていて、そんなモモさんの手をシロは引いて歩いている。

 何だろうな……険しい獣道を更に登らなければならないんだから、むしろここからが危険な道のりの筈なんだけど、恐怖感のピークは過ぎた気がする。

 いや、道のりは確かに険しいし危険なんだろうけど……恐怖の種類が違うって言うのかな?ゾワゾワと落ち着かない雰囲気が消えた感じがするんだ。

 それって、やっぱりお兄さんの気配が怖かったって事なのかな?今はもう姿も見えないから、それで怖くなくなったと?

 だとしたら、確かにシロの言う通り、ちょっと不気味だな……。

 それからどれ位歩いただろう、パッと視界が開けたので、頭上に広がる夜空を4人で見上げたんだけど、少しだけ違和感があって何気なく時間を確認してみれば、日の出予定時刻1時間前の6時だった。

 「え?」

 「え?」

 「え?」

 「え?」

 これはハモって良い所だ。

 だって、カウントダウンイベントに参加して、そこから初日の出見るんだーって話をして甘酒飲んで、コンビニ行く為に一旦下山した。

 1時間もかからずに下山出来るような初級な山だし、山道だって階段だから迷う事も無いし、その時点でいくら時間をかけていたとしても2時とかその辺の筈だ。

 で、獣道を歩いてここまで来たから……2時間かかったと大きく見たとしても4時前後。

 後の2時間どうしたんだ?

 「そんな長い時間お兄さんと話してたっけ?」

 お兄さんと。と言うよりも電話で話しているお兄さんを待っている時間。の方が正しいけど、そんな間違いなんか2時間の空白を思えば些細だ。

 「コンビニで時間くったんかもなぁ」

 何でもなさそうにシロが言うと、コンビニで過ごした時の風景なんかが脳裏によみがえってきた。

 確かにセイは店の前で肉まんを食べ始めていたし、モモさんは本の立ち読みを始めてたし、俺とシロも新商品について語ったっけ。

 「あぁー」

 「うん」

 「それだ」

 俺達は自分達でそう言っておきながら、多分なんとなく違う気がしているのだろう……けど、折角の落とし所を見つけたんだから誰も指摘はしない。

 それで良い。

 他に説明しようがないんだから、深く考えたって無駄なんだ。正月早々そんな無駄な考案なんてしてもしょうがないしね!

 こうして俺達は何よりも長く感じた1時間を過ごし、神々しい初日の出を見たのでした。

 「うわぁ~、なんかめっちゃ黄色いのがキラキラしてる」

 歓喜の声を上げるセイだが、恐らくそれは寝不足による目の異常だと思う。

 「ホンマやね。心なしか景色も黄色く見える」

 同じように感動しているモモさんには悪いんだけど、それは恐らく寝不足による目の異常だと思います……。

 「元旦は太陽も光強めなんやな」

 そんな訳ないだろ!


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