第4話 冒険者ギルドで
ストックを全て吐き出してやる。('・ω・')
アスタントの街へ入ると、大通りが目に入り、人々の活気で賑わっていた。道沿いには屋台が立ち並び、そこかしこから美味しそうな匂いが漂ってくる。
人々の髪は色とりどりで、改めて異世界に来たことを実感した。
シンヤは先程の門番の兵士を思い出すと、感慨気に呟いた。
「……あんな奴もいるんだな」
思い出されるのは、地球で暮らしていた頃の苦い記憶。親からは虐待をされ、それを見た他人からは手を差し伸べられることは無かった。
学校にも満足に通わせてもらえず、昼間は家に居るのが嫌で近くの図書館で勉強していた。
そこでもちゃんとした対応はして貰えず、ぞんざいな扱いを受けた。
そのため、あそこまで丁寧に対応してくれる兵士がシンヤは珍しかったのだ。
シンヤは、今までに無い不可解な思いを胸に抱えながらも、フードをもう一度深く被り、マップに表示される冒険者ギルドと呼ばれる場所へ向かった。
大通りの突き当りを右にある大きな建物が冒険者ギルドだ。看板には剣と杖が交差した絵が描かれている。
両開きの木製の扉を開くと、中からの無遠慮な視線が飛んできた。
ギルドの1階は酒場も兼用しているようで、昼間からでも酒を飲んでる輩は、何人かいるようだ。
その視線を無視して、シンヤは受付へ向かう。
みんな依頼へ出向いているのか、誰も受付には並んでおらず、どこも空いていた。
シンヤは、扉から真っ直ぐの受付に行く。
「冒険者ギルドへようこそ。依頼の発注でしょうか?登録でしょうか?」
「登録を頼む」
受付嬢は、笑顔を少し引きつらせるが、何とか声には出さず話を続ける。
「あの、冒険者とは魔物や盗賊を狩る事を主とした危険な職業です。確かに安全な採取依頼や雑用の依頼もありますが、生半可な気持ちで登録されては困るのです」
「大丈夫だ」
「本当に危険なんですよ?」
「覚悟はある」
何を言っても聞かないシンヤに、受付嬢はため息を付いて、諦めたような顔をした。
(モンスターって魔物って言うのか。覚えておこう)
当のシンヤは、受付嬢の気苦労を知るまでも無く、呑気な事を考えていた。
そんなところに、後ろの酒場の机から怒声にも似た声が掛けられた。
「こんなお子様が登録なんて、冒険者ギルドも落ちたもんだなあ!!」
後ろを振り向くと、スキンヘッドの筋肉隆々とした大男が酒で顔を赤くしながら叫んでいた。
「ガンドさん……」
受付嬢がそう呟く。おそらくこいつの名前だろう。
ガンドと呼ばれる男を見つめていると、ステータスが表示された。
―――
名前:ガンド LV31
年齢:36
種族:人族
職業:剣士LV30 大剣使いLV15
HP:245/245
MP:62/62
筋力:156(+20)
耐久:142
敏捷:92
知力:41
魔力:43
器用:65
運命:5
スキル
剣術LV2
大剣術LV3
無属性魔法LV1
筋力増加LV2
ユニークスキル
なし
―――
シンヤでは敵わない程の圧倒的ステータス。しかしシンヤには、それを上回る技術があった。
一度、戦ってみるのも良いかも知れない。
そう思ったシンヤは、あえて煽る事にした。
「昼間から何もせず、ただ酒を飲んでる輩に言われたくは無いな」
「んだとテメェ!!」
ガンドは酒で赤くした顔を更に赤くして、シンヤに憤怒の表情で近寄って来る。
「おいガキ!!俺と決闘しやがれ!!」
後ろにいる受付嬢に視線を向けると、困ったようにシンヤに説明をする。
「決闘とは、本来冒険者間で行われるモノです。賭けを行い、その掛けたものを勝者に渡します。殺しは厳禁で、相手が降参するか気絶するまで行います。見届け人はギルド職員が行うので、そこに心配はしなくても良いのですが。
本当に決闘を受けるんですか?今なら間に合います。謝ってください!」
受付嬢はシンヤを心配してか、必死にそう告げてくるが、あまり頭に入ってこない。
ガンドはニヤニヤしながら、机に立て掛けてあったシンヤの身長ほどある大剣を振り回していた。
他の冒険者達も面白がって、机を端に避け、観戦ムードになっている。
(……どの世界でもクソ野郎はいるんだな)
少し安心した。これで心置き無く潰す事が出来る。
「分かった、ガンドとやら、賭けはどうするんだ?」
「お前の剣だ。新人にしては良い剣使ってやがるじゃねえか。俺が代わりに使ってやるよ」
「良いぜ、その代わりにお前の全財産を貰おうか」
「んな、それは――」
「まさか自分から仕掛けて来たのに無いとは言わないよな?」
「……ああ、良いだろう」
有無を言わせず、この条件を納得させる。これで勝てば暫くお金の心配はしなくても大丈夫だろう。
「じゃあ受付嬢!!見届け人をやってくれ!!」
ガンドが受付に向かってそう叫ぶ。
皆、一様に顔を見合わせ、誰もやりたがらなそうにしていたが、結局シンヤの対応をしていた金髪の受付嬢が行うようだ。
「本当に行うんですね?大丈夫なんですね?」
「ああ」
受付嬢は最後の最後に小声で聞いてきたが、シンヤが無愛想にそれを返す。
その対応に受付嬢は諦めきれないようだが、見届け人は行うようだ。
一階の酒場の真ん中に立つと、手を下げた。
「では、両者とも準備は良いですね。
……始めッ!」
受付嬢はそう言うと、勢い良く手を上げた。
ああ、外は地獄だ。
太陽の光浴びると頭痛くなるの分かる人居ますか?