第1話 異世界に訪れて
なるべく失踪しないよう心掛けます。ポイント評価、感想などなどよろしくお願いします。
神は実在するとしたら、その存在は無能の一言に尽きるだろう。人々の命が散っていく中、救いの手を差し伸べずただ傍観するだけ。
「あ…はは…はははッ!悪く思うんじゃねえぞ!!」
醜い笑みでシンヤを見て来る『父親』だった男。その手には血の付いた包丁が握られていた。
そしてシンヤの腹部からは、血がとめどなく溢れていた。その出血量から、もう助からない事が伺える。
『母親』だった女は何を言うでも無く、ただ『父親』だった男に怯え手を出してこない。自分は関係ないと言わんばかりだ。
「これで保険金が手に入れば…やり直せるんだ……」
その男の目には狂気が浮かんでおり、自分が行っている事を正しいと信じて疑わない目だ。
その目を、シンヤは倒れながらも冷めた目で見つめる。
(……どいつもこいつもクソ野郎ばっかりだ)
意識が段々と遠のいて行く。
今までの人生が、走馬灯のように頭に過ぎっていた。
日常的に虐待を受け、男が仕事に失敗してからはそれが激化した。満足に学校に通うことすら叶わず、挙げ句の果には保険金目当てで殺されている。
こんなロクでもない人生に、一体何の価値があるのだろう。
自分の無力さを実感しながら、シンヤは死んだ、筈だった。
◇◇◇
―――
神永シンヤは世界を渡りました。
ステータスが設定されます。
スキルが設定されます。
ユニークスキル:メニューが贈られます。
―――
目が覚めると、森の中で倒れていた。
視界に入り込む髪は伸び放題になっており、いつの間にかストレスで色素が抜け落ち真っ白になっていた。
当のシンヤは、知らない森に倒れていたにも関わらず落ち着いていた。取り乱す事なく、周囲を見渡し、状況を確認しているようだ。
しかし、そんなシンヤにも疑問に思っている事がある。
視界には、緑色のバーと青色のバーが表示され、メニューと書かれたアイコンと地図と思われるドットで表示されたマップがあった。
まるでゲームのような。
「何だこれ?」
思わずシンヤはそう呟いた。
とりあえずメニューを開いてみた。意識を向けるだけで操作が出来るようだ。
するとこんな項目が現れた。
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・ステータス
・装備
・ストレージ
・キャラ
・ガチャ
・ショップ
・課金
・設定
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まるで本当にゲームのようだ。
今まで遊ばさせて貰った事はないが、ゲームの知識は一応ある。
とりあえず、ステータスを確認してみた。
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名前:シンヤ=カミナガ LV1
年齢:13
種族:人族
職業:なし LV―
HP:12/12
MP:3/3
筋力:4
耐久:4
敏捷:5
知力:16
魔力:2
器用:5
運命:999
スキル
なし
ユニークスキル
メニューLV1
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どうやら、自分の能力を数値で可視化したモノのようだ。
シンヤはそう納得した。
ユニークスキルの欄にある《メニュー》の効果も、視界に表示されているウィンドウだろう。
項目が他にもあったから、効果がこれだけではない筈だ。
そしてステータスだが、大体は分かるのだが最後の運命とは一体何だ?
そう思い、シンヤは運命の項目を見つめながら悩んでいると、もう一枚のウィンドウが現れた。
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【運命】
運命を操れる力を数値化したもの。幸運にもなれば不運にもなる。
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なるほど、見続ける事で詳細が確認出来るのか。
それにしてもこの数値はある意味あっているかもしれない。勿論、幸運などでなく不運という意味だが。今までの人生に、幸運などあったものではない。
他の欄も念のため確認しておく。
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【職業】
職業に転職する事でその能力に補正がかかる。初回は初期職にしか転職出来ないが、極める事でその上位職へ転職出来る。
転職は教会のみ可能。獲得済みの職業には任意で転職可能。
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【HP】
生命力を表す。これが0になると死亡する。
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【MP】
魔力量を表す。スキルや魔法を行使する際減少する。これが0になると酷い精神的疲労が襲う。
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【筋力】
力の強さを表す。しかし、見た目には反映しない。
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【耐久】
身体の強靭さを表す。しかし、皮膚の硬さには反映しない。
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【敏捷】
どれだけ素早く動けるかを表す。
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【知力】
記憶力・処理能力を表す。
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【魔力】
魔力の質を表す。高ければ高い程魔法の威力が上がり、消費魔力が軽減する。
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【器用】
器用さを表す。生産をする際の品質にも繋がる。
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「……へー、なるほど」
シンヤはそう呟いた。
それと同時に、気付いた事がある。
ここは夢で無く、地球でも無い。おそらく、別の世界だと思われる。本来、地球でステータスや魔法など存在しない。ここが夢だという選択肢も無いわけではない。しかし、感覚があまりにもリアルだ。
確かにあの時、シンヤは『父親』だった男に殺されたはずだ。だが、何故ここに自分が生きているのかは理解出来ない。
試しに頬をつねってみるが、ちゃんと痛い。つねった箇所が軽く赤くなった。しっかりと生きている実感がある。何故自分が生きているのかは分からないが、シンヤはその疑問を頭の隅へ追いやる。考えても答えが出ない不毛な事を考えても意味がない。
別の世界だと思うと、笑みが込み上げてきた。もう二度とあの世界には帰れないだろう。それが嬉しくて堪らない。
「……この世界ではオレは、自由に生きてやる」
そう言い放った。
そうなるためには強くならなくてはいけない。力が必要だ。レベルが存在する世界だ、モンスターも居るだろう。レベルを上げれば強くなるはずだ。
この世界で、レベルを上げて最強になってやる。
不定期更新です。