見つけた
「大佐~、ヴェゼル大佐~」
ハァハァと息を切らせながら、廊下を走る男
年齢は40~50代だろうか、ドタドタ、ノタノタと、今にもコケそうな走り方である
ノックもせずに、いきなりドアを開けて部屋に飛び込む
「騒々しいぞ、マロー軍曹」
「また、キッチンで火事を出したか?」
「鍋を空焚きしたか?」
「それとも・・」
「マシュマロですっ!」
「は?」
何を言っているのか、この男は?
呆れ顔のヴェゼル大佐は、もう帰れと、手を振る
「マシュマロでも、なんでもいい。 趣味の話を職場に持ち込むな」
「あと1時間で日付も変わる、今日はもう帰れ」
「まったく・・ 暇があれば、基地のキッチンでスイーツ作り。 女性職員の機嫌ばかり取りおって・・」
某、米の国の、五角形の、軍事施設の中での出来事である
しかし、マロー軍曹は、急に真面目な顔つきになり
「SNSで、光るマシュマロの話題が・・」
バンバンバンッ
イライラが頂点に達し、真っ赤になった大佐は、机を叩きながら
「うるさいっ! 出て行けぇぇ」
「・・・・はい」
「待て」
「はい?」
「さっき、何と言った?」
「光るマシュマロの話題が拡散・・と」
椅子をはねのける勢いで立ち上がり、小走りに部屋を出ていくヴェゼル大佐
「何をモタモタしている? お前は、マシュマロ担当者だろう?」
「は、ハイッ」
二人は笑みを浮かべ、研究室に向かう
この出来事から、遡ること6ヶ月
ゴロゴロと、リビングで寛ぐ2人と2体
「冬はイイねぇ」
「イイよねぇ」
「暖炉サイコー」
「夏のバトルを思い出すなぁ」
「管理が面倒だから要らない、って言ってたのは誰でしたっけ?」
「誰かさんが、ネットで暖炉なんかを見つけたせいで・・」
「蝋燭マニア、暖炉にハマる~、合掌」
コロコロ笑っている雪奈
「雪奈、あまり近付くと火傷する・・」
「大丈夫でーす、私の髪は焦げませんからぁ」
2300℃耐熱仕様の女子の発言、さすがに説得力がある
ルーモとネルモは「雪奈の中」で、暖炉を堪能できているようだ
「ねえ、健一郎?」
「ん、ルーモ何?」
「冬だけでなく、夏も暖炉炊かない?」
「・・・・・・」
目が点になる健一郎
「君たちは、ナニを考えとるんだ?」
「暖炉とゆーものはだな、読んで字のごとく、冬場に使うモノである」
「でもでも、私達には寒暖は関係ないもん、楽しいお食事なの~」
「アホかーい! その食事に付き合わされたら、こっちの身がもたんわぁ」
「やっぱり?」
「ですよねー?」
ルーモとネルモは、健一郎の反応が楽しくて、ワザと言っているのだ
少し間をおいて、健一郎は真面目な顔つきで
「雪奈、中学校・・ どうする?」
「僕としては、普通の生活が出来ればいいなと・・ なかなか、吹っ切れないとは思うけど」
「嫌なら・・ 無理しなくていいんだ・・」
「行きたい」
「だって、元気だもんっ」
「病気じゃないもん」
「歩けるし、走れるし・・ 体育の授業だって」
雪奈の声が震えている
「・・出来るもん」
「学校、行きたいよぅ」
雪奈は、健一郎にすがり付くように、訴えてきた
「そう、だね。 お母さんも、今の雪奈の声を聞いていたら、喜んでくれるよ」
「そうだと思って、ネットにて早速、取り寄せました」
ルーモとネルモの代理ロボが、2台がかりで書類を運んできた
「君たち、対応速すぎ」
あまりにも嬉しくて、健一郎は泣きそうになっていた
「で? どこがイイかな?」
「中学校は義務教育だから、公立ならフリーパスだけど」
「雪奈の諸事情を考えると、私立で情報セキュリティのしっかりしたところが、イイのかな?」
「ナニかあっても、金でウヤムヤに出来るし」
「ネルモくん? そーゆー物騒な発言は止めようね」
「共学だけでなく、女子校とかも、選択肢に入れる?」
「受験勉強しなくても、スパコンがバックについてるし」
「だから、そーゆーコト言わないの」
「寮生活はリスクが高いから、全寮制はダメだね」
なんだか、健一郎は学校選びに参加させてもらえない模様である
「見つけた!」
『私立えだまめ学園』
「ここに行くよ!」