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003 ヒャッハー! 解体の時間だー!

 





 というわけで何とかグリーンオーガを倒した私は――


「どういうことだ、何をやったらオーガを一撃で倒せるんだ!?」

「村人なのにどうしてあんなことができるの!? 普通じゃないわよね!?」


 二人に質問攻めに遭ってました。

 うひー、勢いがすごいよー! 怖いよー!


「そ、そんなに興奮するようなことですか?」

「するに決まっている。いいか、グリーンオーガなんて上級モンスターを倒せるのは、ごく一部の冒険者だけなんだ!」

「そうよ、そんな簡単にオーガが倒せるなら、一瞬で億万長者になれるわ!」


 そんなにすごいことだったんだ。

 でも、チュートリアル程度の知識しかない私にもできたんだし、みんなにもできる……と思うんだけどなあ。


「どうやったんだ?」

「どうやったの?」

「どう、と言われても……」


 うまく答えられるか自信がない。

 だって、武器を装備したらスキルは身につくはずだし、それを使うだけの話だよね?

 そんなの、二人とも武器を持ってるんだから、当たり前にできるはずなのに。

 ……とりあえず、ここは最終兵器を使って誤魔化そう。


「ワタシ、キオクソウシツ。ヨク、ワカラナイ」

「そう……だったわね」

「記憶喪失なら仕方ないな……」


 うわ、記憶喪失強い。


「しかし、オーガにはどうにか勝てたが、これではもうスライムを運ぶことはできそうにないな」


 ジンさんは、荷車を見ながら悲しそうに言った。


「そうねえ、幸い荷台は壊れてないから後で取りに来るとしても、手で引いていくにはちょっとね」

「最低限、オーガだけでも村まで運ぶか。牙や爪は高く取引されるはずだ。モミジ君の滞在費としては十分すぎる価値はある」

「待ってください、別に諦める必要は無いですよ」

「方法があるって言うのか? さすがの君でも、この量のモンスターを運ぶことはできないだろう」

「大丈夫です、インベントリに入れたらいいだけですから」


 私はグリーンオーガに触って、その死体をインベントリに収めた。

 するとジンさんとレナさんは、目の前から消えた巨体を探してきょろきょろと周囲を見回す。

 そして最後に私を見て、


「……?」

「……??」


 同時に首を傾げた。

 にっこりと笑う私。


「あ、すぐに出せますよ? こんな感じで」


 インベントリからドロップすると、ズシーンッ! と大きな音を立てながら、オーガの死体が投げ捨てられた。

 そういうシステムだから仕方ないけど、雑すぎると思う。


「……?」

「……??」


 やっぱり首を傾げる二人。

 ニコニコと笑い続ける私。

 うーん……もしかして、インベントリのこと、知らないの?


「えっとですね、インベントリっていう、見えない袋みたいなところに、死体を収納してるんです」

「ま……待ってくれ、わけがわからない」

「その袋には、限りは無いの?」

「ありますよ。36個までしか入りません。でも同じブルースライムの死体だったら255個まで重ねられますし、大きなオーガの体でも1個は1個です」

「重ねる? それはどういうことだ、まさか、ブルースライムの死体を255体まで持ち運べるとでも?」

「255個が36枠なんで、頑張れば9000体以上持ち運べます」

「きゅ、きゅうせんっ!?」


 深夜の通販番組並にのけぞって驚くジンさん。

 いや、大げさすぎますって。


「私、そんな大それたことやってます?」

「やってるわ! そんなことができるなら、リザード車だって必要ないじゃない!」

「それは……君の、超能力かい?」

「わかりません」


 記憶喪失だし。

 いや、そうじゃなくても、逆になんで他の人がゲームシステムを利用できないのかがわかんないし。


「そうか、記憶喪失だったね……」


 やっぱり強い。


「いや、しかし、それはとんでもない力だ」

「そうね、簡単に運べるようになれば、私たち冒険者の仕事は劇的に変わるわ」

「俺たちとしては、今日の収穫を運んでもらえるのは非常に助かる。だが、村人がどうしてそんな力を……」

「じゃあとりあえず、さっき倒した分と、荷台に載ってるブルースライムは私が運びますから」


 戸惑う二人をよそに、荷台のスライムに近づく私。

 いちいち手で触っていくのは手間だったけど、無事全てを収納。

 三人で協力して荷車を道の端に寄せると、私たちは徒歩で町に向かうことにした。




 ◇◇◇




 幸い、その道中でモンスターに出会うことは無く、無事にたどり着くことができた。

 インベントリに収納したモンスターの死体は、町の外で一旦出して、あとはジンさんとレナさんが手分けして解体屋まで運ぶらしい。

 スライムの横には、オーガの巨体も横たわっている。


「すまない、本当に助かったよ」

「いえ、こちらこそ。でも倒したオーガ、買い取ってもらって本当に良かったんですか?」

「もちろんよ、むしろこの値段で買い取らせてもらってよかったのかしら。解体屋に頼んで、素材として売ればもっと高くなるわよ?」

「構いません、できるだけ早くお金が欲しかったですから」


 二人はオーガを解体した後、その素材の売上を私に渡そうとしてたみたい。

 でも私はオーガの死体そのものを二人に売却することを選んだ。

 どうやら私が譲った値段はかなり安価だったみたい。

 でも、二人にだって生活がある。

 ブルースライムの売却ができなくなり、リザードまで失ったとなれば、かなりの痛手だ。

 生活もままならなくなるかもしれないし、オーガの素材が少しでも足しになれば私も嬉しい。


「あなたがスライムを運んでくれたおかげで、私たちの生活はどうにかなりそうなの。気を使わないでいいのに」

「命を救ってもらったようなもんだからな、むしろスライムだって全て渡すべきなんだろうが――」

「私だって、お二人に助けてもらいましたから」


 おかげでこうして町にたどり着くことができた。

 実はお礼として、こっそり私が狩った分のブルースライムもおすそ分けしてあったりする。

 言ったら遠慮されそうだから、黙っておくけど。


「しかし、さすがに町長への紹介ぐらいはした方がいいんじゃないかな?」


 ここにたどり着く途中、私はそれを断っていた。

 オーガ狩りだけで余裕で生計が立てられるなら、人の手を煩わせずとも生きていけると思ったからだ。


「いえ、ギルドの位置さえ教えてもらえれば十分です。ありがとうございましたっ」


 私は簡素に別れを済ませると、二人とは別に町へと足を踏み入れた。




 ◇◇◇




 大陸の北側に存在する町、ノルン。

 田舎町だが、その規模は中々に大きい。

 というのも、現在この世界では、小さな村が減り、大きな町の規模がどんどん拡大しているらしいのだ。

 およそ10年前に、特別な力を持つ戦士たちが消えてから、人類はモンスターに抗う手段を失った。

 以降、人間は“結界”に守られた場所の中でのみ生きるようになり、生まれついて戦士としての才能を持った一部の人間だけが、町の外に出てモンスターを狩るようになったらしい。

 けれどそれもジリ貧で、じわじわと人間の生活圏は狭まり、仕方なく大勢で身を寄せ合って生きていくしか無くなったんだとか。

 うーむ、世知辛い。


 まあでも、そんな壮大な話をされても、私は今日を生きるのに精一杯なわけで。

 まずはギルド――ではなく、町の武器屋に向かうことにした。

 さっきのグリーンオーガとの戦闘で、ブロンズダガーの熟練度は最大になってしまった。

 器神武装の効果はまだ不明だけど、ひとまず新しい武器を調達したいところなのだ。


「いらっしゃい」


 無愛想なおじさんが私を迎えた。

 壁にかけられた武器と値札を凝視する私を、彼はじっと眺めている。

 こんな子供が武器を見に来たから、おかしいと思ってるのかな。


 所持金は大金貨1枚。

 この町なら2週間は滞在できるって言ってたから、10万円ぐらいの価値があると思う。

 目当てのアイアンダガーは、大銀貨5枚。

 大金貨1枚が小金貨10枚分。

 小金貨1枚分が大銀貨10枚分だから、お釣りが面倒なことになりそうだけど、あんまり無駄遣いはしたくないし。

 と、他に何か無いかと店の中を見回すと――“チョッパー”が壁に飾ってあった。

 私の目がきらりと光る。


「こ、これはいいものだ……!」


 ゲーム中で、武器屋に並ぶラインナップはランダムだ。

 とはいえ、上位の装備が武器屋に並ぶことは無いので、キャラが育つと立ち寄らなくなる店ナンバー1らしいんだけど……このチョッパーだけは別だった。


 このゲームにおけるチョッパーは、屠殺用の包丁である。

 包丁ってより斧に近い見た目なんだけど、これが何で大事なのかと言うと、パッシブスキル[解体]を習得することができるから。

 この解体、攻略サイトの“初心者の心得”を見ると必ず、『武器屋でチョッパーを見つけたら必ず買え!』と書いてあるほど重要なスキルなのだ。

 武器屋でしか手に入らないくせに、滅多に並ぶことはないから、初心者は足繁くここに通うことになる。

 運が悪いと、レベル300を超えても手に入らなかったりと……基礎スキルのくせに、やたら入手し辛いのが特徴なんだとか。


 それが今、目の前にある!

 これに興奮せずしていつ興奮しろと言うのか。


 値段は大銀貨18枚。

 アイアンダガーより高いけど、それだけの価値がある。

 私は迷わずにそれを取ると、短剣と一緒に店主に差し出した。

 彼は不機嫌な表情で私をにらみつけると、口を開く。


「おつかいかい?」


 おつかい、ではない。

 でも『自分で使う』って言ったら色々と角が立ちそうだ。

 そういうことにしておこう。


「そうなんです、おか……ママに頼まれて」


 わざとらしく、幼い口調でそう言った。

 我ながらちょっと厳しい。

 すると店主の表情がふっと緩む。


「そうかい、なら少し負けてやるよ」

「へ?」

「全部で小金貨2枚だ」


 ……めっちゃ優しい人だった。

 私は店主に感謝しながら、大金貨1枚を差し出した。

 すると彼は嫌な顔一つせずに、わざわざ余っていた布袋に入れて小金貨8枚のおつりをくれる。


「ありがとうございますっ」


 私が深々と頭を下げると、さらに彼は微笑んだ。

 人は見た目で判断しちゃいけない……私は改めてそう痛感するのだった。




 ◇◇◇




 そして私はインベントリに収めたチョッパーを“装備”し、真っ先に町の外を目指す。

 さっきのオーガを見て不安だったけど、少なくとも町の近場には、だいたいレベル10にも満たない雑魚しかいないみたい。

 ただし、チョッパーはカテゴリ“片手剣”。

 だから短剣スキルである[シャドウステップ]や[暗殺者の心得]は使えない。

 仕方ないので、徒歩で近づき、真正面から、刃物さえ装備していれば使える[ダブルスラッシュ]で、敵を狩っていく。

 グリーンスライムに、ブルーコボルト、そしてブルーボア。

 もちろん死体は回収した。

 かれこれ20体ほど倒したところで、システムメッセージが表示された。


【キャラクターレベルアップ! 28→29】

【“チョッパー”武器熟練度レベルアップ! 0→1】

【特殊スキル[解体]を習得しました】


 よし、解体ゲット。

 これでインベントリに収納した死体を、素材に分けることができるようになった。

 ちなみにチョッパーの熟練度を上げると、




 --------------------


 MASTER 特殊スキル[解体]習得

 Lv.2 片手剣適性上昇+1

 Lv.3 料理適性上昇+1

 Lv.4 片手剣適性上昇+1

 Lv.5 料理適性上昇+1


 --------------------




 こんな感じで適性を上げることができる。

 でもLv.2以降はすっごく上がりにくいし、今のところ片手剣や料理を習得する予定は無い。

 ひとまず装備は外して、インベントリに収納しておこう。

 そして今度は、先ほど購入したアイアンダガーを装備。




 --------------------


 Lv.1 短剣適性上昇+1

 Lv.2 短剣適性上昇+1

 Lv.3 アクティブスキル[ダブルスラッシュ]習得

 Lv.4 短剣適性上昇+1

 Lv.5 アクティブスキル[アサシンスティング]習得


 --------------------




 熟練度はこんな感じ。

 ブロンズダガーと同じダブルスラッシュがあるけど、同じスキルを習得すると“スキルレベル”が上がることになっている。

 つまり、ダブルスラッシュの性能があがるってこと。

 具体的には、威力が+10%されて、クールタイムも0.1秒減少する。

 取っておいて損はない。

 とはいえ、チュートリアル武器であるブロンズダガーと比べると、かなり熟練度は上がりにくいんだけど。

 そこは気長にやっていくしかない。


 さらに私は、そのままインベントリを開き、まずスライムの死体に意識を集中。

 するとアイテムアイコンの横に新たなメニューが現れた。

 そこには上から順に、『ロックする』、『捨てる』、『解体する』と表示されている。


 ロックをすると、そのアイテムを売却したり、解体できなくなる。

 ミスで捨ててしまうのを避けるための機能だ。


 二番目は、言うまでもなく当該アイテムを捨てる。

 実際は、自分の足元に落ちる、と言った方が正しいかもしれない。


 そして最後の『解体する』は――先ほど習得したスキル[解体]によって現れる選択肢だった。

 私はそれを選び、解体を実行する。


【“ブルースライムの死体”1個を解体しました】

【“ブルースライムの体液”3個を入手しました】

【“ブルースライムの核”1個を入手しました】


 するとこんな感じで、モンスターの死体がインベントリ内でバラバラの素材になった。


「かーいたいっ♪ かーいたいっ♪ 死体をバラバラきりきざーんでかーいたいっ♪」


 今度は同じように、スレイブウルフの死体を7体一気に解体する。


【“スレイブウルフの死体”7個を解体しました】

【“スレイブウルフの肉”18個を入手しました】

【“スレイブウルフの牙”23個を入手しました】

【“スレイブウルフの爪”11個を入手しました】


 またもや大量の素材がインベントリになだれ込んできた。


「かーいたいっ♪ かーいたいっ♪ 生命の尊厳を踏みにじってかーいたいっ♪」


 しかし我ながらひどい歌詞センスだよねー、はっはっは。

 そんな調子で、他のモンスターの死体も同じように解体していく。

 すると私のインベントリは、あっという間に様々なモンスターのパーツで埋まっていった。

 基本的に、死体のままよりは、解体して素材にした方が高く売れる。

 これはNPCのショップに売却するときもそうだし、他のプレイヤーと取引するときも同じなんだとか。

 この世界でも同じかは知らないけど、ジンさんたちはわざわざ解体屋に持っていくって言ってたし、きっと同じなんだと思う。


「かーいたいっ♪ かーいたいっ♪ 自分の手を汚さず綺麗にかーいたいっ♪」


 しかし、MMOって、こうやってやれることが増えた瞬間が楽しいよね。

 まあ、ここは異世界なんだけど!


「さーて、ギルドに納入しにいきますかっ」


 納入依頼は、受ける前に集めておいて、受託と同時に納入してもいいらしい。

 私は足取り軽く、ジンさんに教えてもらったギルドの場所に向かうのだった。






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