カクヨムはなろうに勝るのだろうか?
貴方はタイトルを読んでどう思っただろうか。
「なろうが勝っているだろ?!馬鹿言うな!」
あるいは
「また批判か、うざったい」
または
「何言い出すの?」
だろうか?他にも色んなご意見があるだろう。
いずれにせよ覗いていただきありがとうざいます。というのが私の本心だ。
さて、偉そうなタイトルを態々つけたのだが、筆を執った理由は2つある。
1つ目は純粋に疑問だった。
2つ目はなろう批判とか批判の批判の流れを何故だろうか考えてみたら辿り着いた。
まず、一連の批評の流れを見て感じたのは時の流れだ。思えばなろうって長いこと続いてるなぁ。
つい最近登録したと思ったら、いつの間にやらID100万台かと驚くばかりである。
これだけ大きくなればそりゃアンチが生まれるのは必然。にこにこ動画、youtubeとかも同じだったし……としみじみと思っていた時に浮かび上がってきた言葉がある。
そういえば、なろうって当たり前に呼ばれてるけど、昔一部のアンチに小説家になろうじゃなくてライトノベル作家になろうだろ!と呼ばれてなかったか。
なろう批判やネット小説の歴史については多くの実力者の皆様が余すことなく書き上げてくださっているので語るつもりはない。
しかしながら、ネット小説と検索してみて欲しい。まず最初に出てくるのはどこだろうか?広告を除けば小説家になろう!(読もう!)なのである。
これまで当たり前に使ってきた世代にとってなろうといえばライトノベルというのは骨身にしみているわけで、今更態々いう必要はないわけである。
だが、最近知った方々はどうだろうか?小説家になろう!なんだから色んな小説があるはずと思うはずである。現に、君の膵臓を食べたいの様な名著を生み出しているのであるからそんな勘違いが生まれるのは仕方ないのではないか。そう思うのだ。
知っての通りランキングで一世を風靡しているのはライトノベル系ファンタジーか悪役令嬢物が多い。無論、多くのファンを作った偉大な先駆者達が他のジャンルで書き上げてランキングに乗ることはある。だが、基本は変わらないわけだ。当然、初めて利用する人は困惑するわけである。
いや、なろうにはなろうの流儀があるし従うのは当然だろ。
そう言われてしまえばそれまでである。確かにネット小説界隈で力を持ってブームをけん引してきたのは間違いなくライトノベルだ。正しくその通りである。
だが、一旦その常識を脇に置いて書店の売り場を思い出してほしい。ライトノベルの売り場は全体のどれくらいを占めるだろうか?
貴方が思い入れのある書店がどこかで大きく変わると思うが、虎の穴でも思い浮かべない限りは基本的には推理小説やサスペンス、ノンフィクション、自伝、児童書などなど小説というジャンルで見れば一部に過ぎないことに同意いただけるのではないだろうか。
さて、本題に入ろう。2年ほど前に出版界の大御所角川が自社サイト「カクヨム」を立ち上げた。これを読むくらいだから皆さんご存知のことだと思う。
カクヨムはなろうに勝るのだろうか?
当初のごたごたはさておき、単にランキングだけ見た場合どのように思うだろうか?
「受ける作品も似通ってるしなろうの後追いじゃん」
そう感じる人も多いのではないだろうか。違っていたら申し訳ないが私は素直にそう感じた。
ならば、なろうの大勝利!完。ハイハイ終了!……本当に?
疑問に思った私が注目したのは企画ものだ。コンテストという一覧がある。2018年5月10日段階で確認できたのは以下だ。
・サイバーセキュリティ小説
・スニーカー文庫<俺のラノベ>コンテスト2
・ウォーカーpresents「地元のいい話」
・スマートニュース×カクヨム「連載小説コンテスト」
報酬、題目どれもユニークでかつ、書き手にとって魅力的だ。流石出版界の王者角川というべきか。
その中でウォーカーpresents「地元のいい話」の募集要項を一部抜粋した。
“” 現代の日本で実際に起こった、地元の心温まる話、泣ける話を小説にしてください。
あなた自身の経験はもちろん、家業や友人・知人から聞いた体験orエピソードなどをもとに、地域活性化のために奮闘する話、企業や学校などの団体が知名度を得た話、不可能と思われていたことを達成した感動秘話など、面白さ、大変さ、楽しさ、難しさなどを物語にしてみませんか。“”
ネット小説ではあまり見かけない分野ではないだろうか?
無論、そういった方々向けのサイトやコミュニティもあるだろう。
だが、地元の心温まる話、泣ける話を書いてなろう受けるだろうか?
ジャンルの幅を越えてうける名作が生まれる可能性もあるが、高い確率で受けないと思う。
さて、こちらの大賞であるが報酬が実に素晴らしい限りだ。
賞金100万円+ウォーカー編集部から書籍化。
出版社がやってんだから当たり前だろ!とかなろうは関係ない!と言う声が聞こえそうではあるが、少し思い返してほしい。
カクヨムのランキングってなろうとそんなに違っただろうか?
私が言いたいのは、ネットで最も成功しているのはラノベで間違いないが、書籍とはそれだけではないということだ。
それぞれの分野にそれぞれ流行がある。なろうやカクヨムランキングで当たらない作家でも素晴らしい書き手はいたことは「君の膵臓を食べたい」で証明されているわけで、コンテストは単にメディア展開をうまく使うというだけではなく、そういった現行のランキング制度で埋もれている作家を掘り起こしも兼ねているのだろう。
では小説家になろう!はどうだろうか。
第6回ネット小説大賞を見てみよう。募集要項には下記の様にある。
小説家になろうに投稿している作品(完成・未完は問わず)において「ネット小説大賞六」または「ネット小説大賞六感想」のキーワードを設定していただくことでコンテストの応募は完了いたします。
投稿作品は小説家になろうの規約に即している限り、ジャンルは不問といたします。ファンタジー、SF、ミステリーほかあらゆるジャンルを問いませんが、日本語以外で書かれている作品、過度な性描写・残虐描写が描かれている作品は選考から除外いたします。
この文面を読む限り、実に幅広く、手軽に参加できるコンテストに思える。
では気になる受賞のご褒美を見てみよう。
大賞100万、金賞30万、受賞作10万。受賞作は全作品書籍化。成程素晴らしい。
(ところで、コンテスト参加作品はどこで見るのだろうか?TOPページにコンテスト作品の一覧へのリンクが見当たらないのだけれど。。。そこはなろうさん運営さん、頑張ってと思う次第だ。)
そして、SF、ミステリーほかあらゆるジャンルを問いませんとあるが、現在のランキングに好まれない分野の作家の方はモチベーションが持つだろうか?出版側としてもランキングの芳しくない作品をどう思うだろうか?
いや、それを言うならカクヨムもそうだろう。だが出版はそれぞれ専門の違う編集部だ。読者層は間違いなく選んでいる。ネット受けではなく、出版受けをよくわかっているはずだ。出版社直営の強みだろう。
それよりも気になったのは選考期間だ。
なろうコンは2017年10月20~最終選考結果が6月。出版は夏から秋。
カクヨムは先ほどのウォーカーpresents「地元のいい話」では2018年4月20日~最終選考が8月。選考期間は半分。
スニーカー文庫俺のラノベコンテスト2に至っては、公募が2018年4月2日(月) 12:00 〜 2018年5月31日、最終選考結果は2018年7月頃。圧倒的に早い。
カクヨムの方が、出版も早いし、手も広い層も熱い。仕方のないことだが。
では、なろうは劣っているか?といえばそんなことはないと思う。ネット小説界隈では間違いなく成功者で、利用者数も膨大だ。読者が多く、ここで当たった小説は出版しても採算が見込める可能性が高い優良作品なのは間違いない。
だが、現在のランキングに受けない作品をサイトとして掘り起こせているか?といえば出版サイドが上手く掘り当てたが正しいように思える。
現状はライトノベル系を好む層がネット小説読者の主流であるのは間違いないが、今後はそれ以外の分野もネット進出が進んでいくのは流れとして自然だと考える。
現在ネット小説の大手と言えば小説家になろう!だし、検索して初めに引っかかるのもなろう!なのだ。
新たにネット小説に参入してきて小説家になろう!の読者層にそぐわなかった人もいるだろう。
新たな流れを望む人もいるだろう。
然るべきレーベルで出版すればファンが生まれるだけの力量がありながら埋もれている作家の方もいるだろう。
なろう批判にはそうした思いを持つ人も混じっているのではないだろうか。
私はなろう!は小説家になろう!という看板が大きくなり読者層も複数抱えられるだけの登録人数がいるのに小説を求めてやってくる人々と住み分けが上手くできていない事が批判という形で表れている様に感じる。
そうした小説家なろう!にそぐわない人の受け皿はカクヨムが果たそうとしているのではないだろうか。。
一方でスニーカー文庫主催の俺のラノベコンテストをweb公募始める等、ラノベサイドにおいても着々と存在感を増している。看板である電撃文庫も参入することは十分考えられる。
小説家になろう!はネット作家読者によって発展してきたいわばユーザーサイドが欲しいものを運営が目敏く実らせた結果だと思う。だから個人としては出来れば10年、20年先も存続していって欲しいと願っている。
作家への報酬では巨人たる角川に勝つ道はない。
であれば、今ある読者層が作家に魅力的と思わせ続けられるかがカギとなっていると思う。だが、十分に生かせているだろうか?
なろう!自体の批評が出てくるのは大きくなって自然にアンチが生まれただけでなく、そうした変化の岐路に漫然とした危機感を感じる人がいるからではないだろうか。愛着のある人ほど何となく感じているものがあるのではないだろうか。
「小説家になろう!」は真の意味で小説家になろう!の道を選ぶのか。ライトノベル作家になろう!を選ぶのか。
個人的にはそれによってカクヨムに負けない2大サイトとして君臨するのか、統合されて消えていくのか決まるように思えてならない。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
小説家になろう!というサイト名とランキングの違いについて私は自分の家族の顔を浮かべて考えてみましたが、彼または彼女達にサイト名をそのまま伝えたらどう感じるかと思った時に疑問に思いました。
では、出版業界がインターネットを活用していく中でこのサイトはどう映るか?
批判も交えて、色々と考えていたらいつの間にか書き上がっておりました。
しがないユーザーの妄言ですが、何か思い浮かぶものがあれば幸いです。