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短編集 星新一風

世の中には電波を受信できる人間がいるらしい。

作者: 燈夜

 君は知っているだろうか。

 世の中には電波を受信できる人間がいるらしい。


 ピー! ガー! ピー! ガガガー!


 と、ラジオのようにである。

 

 また、電波を受信している者の特徴として、


・宙に向かって妄言を呟く

・虚空に向かって三度手を振る

・勝手に三国志の戦いを自力再現している


 などという事例が見られるようだ。


 え? ム○? ○カナ? バカを言ってはいけない。これは深刻な、そして我々自身に今も迫り来る危機なのだ。

 巷では○ーガチャというものが流行っているらしいがあれは笑える……じゃ無くて!

 まぁ「世界は滅びる!」と書いてあるのに年間購読の案内が付いていたりするし、一ページ目と冊子中ほどで言ってる事が違う事にも目を瞑るべきだろう。

 なぜならば、我々三次元世界の住人には理解できない高次の次元の話が書かれているのだ。こちらのステージに下りてくるときに受信者によってそれ相応の誤差や齟齬が出るのは当たり前だからだ。


 で、君は知っているだろうか。

 世の中には電波を受信できる人間がいるらしい。


 おかしいな、周囲には電波を発信している人間なら良く見かけるのだが……。

 

「博士、お疲れなのですよ」


 おお、助手君か。まったくどこに行ったのかと思っていたら。

 

「コーヒーとお茶、どちらになさいますか?」

「カフェインの入っていないものを頼むよ」

「では、暖めた桃果汁に檸檬の輪切りを添えて」

「うん、それで頼む」


 助手君は優秀だ。

 アンドロイドだというのに電波を発信したりはしない。

 それに比べて私ときたら。


「話は聞かせてもらった! 世界は滅亡する!」

「あ、博士。飲み物のご用意が出来ました」


 おや、いつもより早いねぇ。

 さすが助手君だよ。いつも痒い所に手が届く。


「博士、少しお休みを取られてみてはいかがでしょうか」

「何を言っているのだね。私が休むということ。これすなわち即、世界の損失だよ? わからないかなぁ……君の人工知能はもう少し柔軟だと思っていたのだけれどな」

「申し訳ありません。私が至らないばかりに」

「いやいや、君は実に良くやってくれているよ」

「ありがとうございます」


 助手君はそう言って私に飲み物を差し出す。

 桃の香りが室内を満たす。

 ああ、香りというものも良いものだ。

 リラックスできる……うん? リラックス?


『博士、少しお休みを取られてみてはいかがでしょうか』


 助手君の先の言葉が思い起こされる。

 そうか。

 私は疲れているのか。


 ならば仕方が無い。

 優秀な助手君の言葉はありがたい。実に私は優秀な助手君を持ったよ。


 桃の香りと檸檬の酸味。

 果たしてそれは美味いのか。どうなんだ?

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