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Yの消失 -プロット-

作者:sunset
本小説はプロット段階です。
多くの部分が未完成と言える状態のさなか、ここに置かれています。
また、意図的に物語を中断させています。
完成品は、後日投稿予定です。

登場人物-------------------------------------------------------------------------------------
主人公  本編では名前を呼ばれません
       ロストであり、そのことで心を閉ざした性格をしています。
綾瀬 光 (あやせ ひかり)
       過去にロストの友人がノーマルの友人とうまく仲良くできなかったことを
       きっかけに「ロストが遠慮しなくて良い世界」のために
       イベント研究部を作る
志賀しが 拓海たくみロスト
       長身で体育会系だが、やさしさや礼儀にあふれる男。
       主人公とは中学からの付き合い

橘 友斗  (たちばな ゆうと)
        童顔で低身長  主人公とは小学校からの付き合い
        並外れた観察眼で、適切なアドバイスを送ってくれる
        友達思いの男
五十嵐いがらし さくら
        おっとりしていて、おとなしい女の子。
        厳格な父に大切に育てられた箱入り娘。
1999年7月----

ノストラダムスの予言によると、人類は滅亡する運命だったらしい。
結論から言うと、人類は滅亡しなかった。
だが、平穏無事というわけにもいかなかったようだ。

Y染色体の消失した男性を確認

世界をこの見出しの新聞が駆け巡った。
人間は2つの性染色体の組み合わせで性別が決定される。
XXの組み合わせなら女性、XYの組み合わせなら男性だ。
つまり、Y染色体が消えたということは、男性が生まれることがなくなった。ということだ。

どうやらこの出来事は一瞬で滅亡することすら覚悟してたはずの人類を
震え上がらせたらしい。まあ、当然といえば当然だ。
その後、事態の深刻さを重く受け止めた各国政府は成人男性諸君の
作り出せる性染色体を調べ始めた。
そして、人数こそ少なかったが、現象が世界各地で起こっていることが確認された。
そう、日本も例外じゃない。

ここで一つ引っかかった人もいるだろう。
「成人男性を調査して性染色体がないなら、事態は1999年7月の20年以上前に始まったのでは?」と。
そんな野暮なことをいってると、流行においていかれるぞ。

ともかく、人類は滅亡へのカウントダウンを知ってしまった。
当然大騒ぎになったし、それこそ「世紀末」の様相を呈していたらしい。

しかし、時が経つと事態は一変する。
Y染色体を生み出せない男性を「ロスト」と呼称することに
世間が慣れ始めた頃、ある一つの発表がまたも世界を賑わせた。

ロスト、減少傾向

当初、ロストは1979年から増え続け、男子を作ることができる男性は減っていると思われていた。
しかし実際はそうじゃなかったらしい。
ロストの出現は突然変異的なものであり、人類全体に蔓延する変化ではなかったようだ。
それを知った世界は水を打ったように静かになった。

それどころか、今まで「滅亡の引き金」として迫害を受けることもあったロストを
「滅亡を防ぐための救世主」として扱いだした。
Y染色体を生み出せない男性に男子を産ませる手段を人類が持てば、
人類は滅亡のリスクを減らせると考えたわけだ。

そんなどんでん返しがあったのも今から10年以上も前のことだ。
いまとなっては「ロストだから」という理由で迫害されたり崇拝されることはほとんどなくなった。

さて、俺の話をしよう。
実を言うと、俺もその「ロスト」に当たる存在だ。
運動神経がいいわけでもなく、学力が飛び抜けてるわけでもない。
普通の人間だ。
そんな俺も、今年で高校2年になる。
時の流れとは早いもので、これといった青春をする暇もなくやってきてしまった。
だけどそんなことに「青春ってなんだろう」みたいな甘酸っぱいことを思ったりする
普通の青春だったわけだ。

それが音を立てて崩れ始めたのは始業式の日だった----
桜並木、パリパリの制服、
始まりを予感させる景色の中、俺らは歩いていた。

志賀「なあなあ、駅前のゲーセンに新作きたらしいぜ。帰りいこうぜ」

隣を歩く身長の高いこいつは「志賀 拓海」だ。
付き合いは中学からだが、いつの間にかいつもつるむようになっていた。

友斗「えー、今月もうお金ないよー」

それに反論するこいつは「橘 友斗」。
童顔で、身長が未だに小さい。小学校からの友達だが、あの頃から成長が
止まってしまっているみたいだ。

志賀「げーっ、マジかよ!今月あと何日あると思ってるんだよ~!」

橘「ごめんね、ほしいゲーム買っちゃったら残らなくって」

「それなら、友斗の家にいこうか」

志賀「おっ!そうだな!じゃあ今日は友斗の家で決まりだ!」

始業式が終わって教室の席に着く。
残念ながら、二人とは別のクラスになってしまったらしい。

教師「おーいみんな静かにしろー。はじめるぞー」

ゆったりとした調子で担任の教師が入ってきた。
心なしか、いつもよりも楽しそうだ。

教師「えー、今日は転校生が来てる。おーい!はいってこい!」

扉を力強く開け、堂々とした調子で教壇に立つ。
予期せぬサプライズに教室は大盛り上がりだ。

教師「じゃあ、自己紹介を」

光「東山からきました、綾瀬 光です。よろしくお願いします」

彼女の透き通った声と、凛とした態度に場は一瞬静まるも
次の瞬間には倍以上の盛り上がりを見せていた。
それもそのはずだ。
彼女はかなりの美人さんだった。
整った顔とスタイル、この毅然とした態度に教室の男性はおろか、女子すら心を射抜かれている様子だ。

どうやら、教師はこの大騒ぎをみれるとおもって上機嫌だったんだな、と。
俺は少し他人事みたいな気分で座っていた。

教師「じゃあ、席は・・・そこの所に座っとけ」

ぶっきらぼうに指は俺の隣を指していた。
つかつかと近寄ると、「よろしくね」と一言言ってから座った。

教師「じゃあみんな、プリント配るぞー」


そんなことがあり、彼女・・・というか、綾瀬は隣になった。
正直なところをいうと、もしかしたら少しうれしかったのかもしれない。
その日から彼女に少しずつコンタクトをとっていった。
「おはよう」とか、「なんでここにきたんだ?」みたいな無難なものから入り、二週間もする頃には

「昨日のあの番組見たか?」

みたいなそれなりの世間話を話すようにはなっていた。そんな日の帰りのHRの時だ。

教師「じゃあ今日はここまで、みんな気をつけて帰るんだぞ」

ぞろぞろとみんなが帰り始める中、綾瀬は俺の目の前に立って
いきなり顔を寄せると

光「ちょっと放課後残って」

と言い放ってさっさといってしまった。
俺は呆然としながらも、「いい匂いだったな」なんて少し気持ちの悪いことを思いながら
席から立てずにいた。

教室から人がいなくなって、夕日が教室を照らしている。
あれから2時間位は待ってることになる。
正直途中で帰ろうと何度か思ったが、自分の中に「青春」の文字が輝くと、
もう少し待とうか・・・なんて思ってしまう。
そう、俺はきっと青春をしたいんだ。
以前俺は言ったかもしれない。
「ロストの迫害はなくなった」と。
あれは嘘じゃない。だが、差別はなくならないものだ。
俺は自分を「普通の人間だ」といったが、ロストという事実は揺るぎない「異常」だ。
そしてその異常は少ないが、大きな制約を俺に背負わせている。

ロストは男子を産めない

このことは、今の世間においてはそれほど問題視をされる事柄ではなくなった。
中には娘欲しさにロストと結婚した。なんていう女性もテレビでみたほどだ。
しかし、それをよく思わない人間がいた。
特に高齢の男性にその傾向は多く、昔気質の男社会を生きてきた人にとって
女子しか生むことのできないロストとの結婚は許しがたいものらしい。

さらにそれに拍車をかけるのが「ターナー症候群」だ。

ロストとの子供は染色体欠失が起きやすく、通常より遥かに高い確率で
ターナー症候群を発症した女子ができてしまう。
この症候群を発症した女子は治療さえすれば普通の女子とほとんど変わらずに
育つことができるが、それでも頑なに受け入れない人間もいる。

ロストに対してあたりの厳しい人間は少ないが、確実に存在している。
俺は自分がロストだと知ってから、多くのことを調べた。
どんな悪いことがあるのか。他のロストにはどんな人がいるのか。
その時、多くの敵意ある情報を見てしまった。

それからというものの、俺は恐れていた。
青春を謳歌するロストに敵意を向ける存在がいるんじゃないかと。
ある時、例えば恋をして、その子と付き合った時
俺が「ロスト」だと周りや相手の親が知った時、どうなってしまうんだろうか。
きっと男気のあるやつ・・・拓海みたいなやつならそんな障害はねのけて
突き進んでいけるかもしれない。
けど、俺は・・・・

「やっぱ、無理だよな・・・」

そんな、どんどんと暗い思考に溺れていく中、扉が勢い良く開いた。

和田「あーっ、ダリィー」

一気に現実に引き上げられると、すかさず考えが巡った
「このまま教室にいるとまずい」
この男・・・和田はかつて、一つ大きな問題を起こしたことがある。
あるロストが同級生の女子と付き合いたての頃だ。
和田は仲睦まじい二人を見るなり、ロストに殴りかかったらしい。
「ロストの野郎は良くてなんで俺はだめなんだよ!」
と声を荒げていたそうだ。
もしかしたら和田は「ロスト」なんて関係なく、
振った女と付き合ってる男を許せなかっただけかもしれないが・・・

俺がこれから話題の中心である綾瀬に呼び出されてると知ったらどうなるだろう。
正直、殴られるのはごめんだ。
綾瀬は清楚な感じがするし、きっとからかってるなんてことはないんだろうな。
綾瀬なら俺が帰っていても「待たせすぎちゃったからごめんね」なんて
可愛らしく言って許してくれるだろう。

そんな考えつく限りの言い訳をしながら、家に帰った。

目覚めの悪い朝だ。今日が土曜日じゃなければ、仮病を使いたいくらいだ。
きっと、昨日あんな帰り方をしたからだろう。
俺の中で輝いていた青春を、ちっぽけな障害にびくついて投げ出したわけだ。
例え和田に絡まれたとしても、あの場にい続けるべきだったかもしれない。
けど、綾瀬が来たなんて保証はどこにもない。

そんな過ぎた事を思っていると、また暗い思考に沈んでしまいそうになる。

「気分変えるために映画でも借りるか・・・」

そう考えてまずは朝食を食べに一階に降りる。

母「あらーそうなの。それはひどいわねえ」

母さんが電話で話し込む声を聞きながら、漠然となにを借りるかなんてことを考える。
朝食のトーストを頬張りながら、TVから聞こえるアナウンサーのハツラツとした
様子を見ていると、なんとなく居心地が悪く感じ、早々に出ることにした。
急ぎ足で準備を終わらせて、また一階に降りる。

母「ちょっとー!どこかいくのー?」

「駅前までいってくるよ」

母「お昼までには帰ってらっしゃい!」

「わかった、いってきます」

なんかあったっけ?
素朴な疑問を浮かべながら、大好きなアクション大作を借りて、丁度お昼頃
家にたどり着いた。

「ただい・・・まー・・・」

玄関に見知らぬ靴がある。若い女性の靴みたいだ。
まさか母さんが・・・ちょっといやだな。
考えててもいいことがなさそうなので、早速居間に行くことにした。

光「遅いじゃない、あんた」

ちょっとまってくれ。
色々言いたいことはある、いやあるのか?
だめだ、混乱しすぎて考えがまとまらない。

「なんで綾瀬がここにいるんだ?」

結局一番最初に思ったことを聞いた
それを遮るように母さんが入り込んでくる

母「立ち話なんていいから!まずはお昼ごはん食べましょ」

光「ありがとうございます、お言葉に甘えさせていただきます」

三人だけのお食事会が始まったわけだが
いいだしっぺの母さんはTVを一人で楽しそうに見ている。
綾瀬とは真向かいに座っていて、見る人が見れば、なんて青春だと思うことだろう。
いや、こんな気まずい青春なら願い下げかもな・・・

「ごちそうさま、じゃあな綾瀬」

光「何いってんの、ちょっと部屋で待ってなさい。すぐにいくから」

「そ、そうか。じゃあ、映画見ながら待ってるな。」

綾瀬ってあんな言葉遣いだったか?
そこはかとなく嫌な予感を感じながら、部屋に引き返すことにした。
映画を見ようにも、気になることが多すぎてまったく情報が入ってこない。
結局寝転がりながら携帯を意味もなく眺めていたら綾瀬が来た。

光「ずいぶんと暇そうね」

「あの・・・綾瀬?ひとまず聞きたいことがあるんだが」

光「なによ」

いままで女子を部屋に上げたこともないのに
綾瀬の声で毅然と話されると、心なしか怒られてる気さえしてくる。

「とりあえず、2つほど聞いていいか?」

光「さっさとしてよね」

「まず、綾瀬ってそんな喋り方だったか?双子とかなのか?」

今一番胸に引っかかっていることを聞いてみた。
学校のイメージとは似ても似つかない喋り方だ。
おれが知ってる綾瀬はお嬢様だと言われても「そうだろうな」と
疑うことなく納得できるような清楚、清廉、清純・・・なんていえばいいかわからないが
とにかく非の打ち所のないような感じだ。

光「なに?まさかあんた学校の私が本当の私だと思ってたわけ?」

「そりゃあ、学校でしか会わないからな」

光「かーっ、子供というかなんというか、あんなのすぐに馴染むために
  当たり障りのないようにしてただけじゃない。」

「そ、そうか。偉いな~。」

こういうのに愕然とするのが青臭いっていうんだろうな。と
客観視することで動揺を隠そうと試みたが、このときは大層愕然とした。
そしてまた一つ疑問が浮かんだ。どうして今、学校の喋り方をやめたんだ?

光「で、もういっこはなんなのよ」

「あ、ああ。なんでウチに来たんだ?」

光「あんた、ロストでしょ」

「・・・は?・・・・・・母さんか?」

ロストだということは言ってないはずだ。
そもそもロストだということに喜んでいない俺を知ってる
母さんが漏らすとも思えなかったが、そうとしか考えられなかった。

光「ちがうわ。あんないいお母さんがあんたのいやがること、するわけないでしょ」

「じゃあ誰が・・・」

拓海か?友斗か?桜・・・は絶対にないな
教師だろうか?だけど、わざわざ綾瀬に言う意味もないはずだ
どれもそれらしくもあり、ありえないようでもある。

光「カンよ」

「・・・・・・カンって、あの勘か?」

光「そ。その勘よ」

刑事みたいなことを言い始めた。それとも女の勘とかいうやつだろうか。
どちらにしろ末恐ろしいものだ。

「勘って、そんなもんでわかるものでもないだろ」

光「まあ、ちゃんと証拠になるようなこともあるわよ」

光「たとえば、私が転校してきた初日ね」

まさかあの人生でもなかなか楽しかったと思えるあの時間から、
いま刑事ドラマの尋問のような事を繰り広げられるなんて思いもしなかった。
けれど、思い返してもあの瞬間、俺は綾瀬と会話すらしていない。
あそこから証拠となるなにかを見つけ出した。
だなんて、どれほどの洞察力を持ってしたらそれが可能になるんだろう。

光「あの時、私みたいな美人が来たのにリアクションしてなかったのなんて
  あんたくらいなものだったわ」

前言撤回
どうやら刑事ドラマじゃなくてコメディだったみたいだ。

「おいおい、馬鹿言わないでくれ。単純に興味がなかっただけとか、
すかしてるだけとか考えなかったのか?」

光「そこらへんの可愛い子ならまだしも、私レベルよ?
  興味がなかったなら、男として終わってるわね。」

とんでもない言い草と自信だ。
ここでようやく気づいたが、どうやら俺のしっていた綾瀬は
徹頭徹尾作り物だったらしい。

光「ほかにもあるわ。あんた、学校で毎日話しかけてきてたでしょ」

「まあ、そうだな」

光「あんときだって、全然遊びに誘ったりしなかったでしょ。普通ならありえないわね」

ここまでくると自信家を通り越して、というよりは飛び越している。
そして綾瀬の言う「証拠」とはこんな感じのいわゆる
「ナンパしなかったから」みたいなもので共通していた。

「わかった。つまり俺がお前を誘わないで草食だったからっていいたいんだな?」

光「まっ、まとめちゃうとそうなるわね」

光「で、結局どうなのよ」

正直俺は迷った。ここで嘘をついて誤魔化すことは簡単だ。
だがどこかで、昨日の負い目を感じていたんだろう。
そうじゃなきゃ、自分で言ったりなんてそうはしない。

「ああ、そうだな。ご名答だよ」

光「やっぱりね!よかったわ」

「よかったってどういうことだ?」

光「やっと本題に入れるのね、じゃ説明するわ。」

光「私ね、部活作りたいのよ!」

「へー、いいじゃないか。」

これは本心からのセリフだ。部活なんて、青春らしくていいじゃないか。
それに既存のじゃなくて、自分で作るなんてのはもっといい。

光「そうでしょ!だからあんたに入ってほしいのよ」

「そうか、だけど俺はずっと帰宅部でやってるから今更やるってのもな」

これは本心からでたセリフじゃない。
だけど、それをやったときに悪目立ちするんじゃないかと思うと
どうしてもブレーキを掛けてしまう。

光「まー聞きなさい。あんたがそうやってウジウジやるのも想定内だわ!」

「ははは、さすがだな名探偵」

光「この部活はただの部活じゃないわ。青春をするための部活よ!」

本当に名探偵なのかコメディなのかわからないやつだ。

光「私はね、ロストがちゃんと恋をできてないのって、おかしいとおもうのよ!
  だから、あんたみたなロストに青春を謳歌してもらうような部活を作るわ!」

「そうか、まあいいんじゃないか?俺以外のやつに言ってやってくれ。
正直、俺は悪目立ちするくらいならこのままでいいさ」

光「あんたねぇ・・・そうね、いいわ。」

なんだ、意外と物分りがいいんだな。

光「あんた、あの日私をおいて帰ったの忘れたとは言わせないわよ。
  あんたがその気なら、私にも考えがあるわ」

「ちょっと待ってくれ。それは悪かったとおもうが、綾瀬が遅かったからからかわれてるだけ
かとおもったんだ」

光「何いってんの!?あんた、あんなに清楚な可愛い子が嘘ついてると思ってたわけ?」

・・・思ってなかった。思い返すと、なんてウブだったんだろう。
いくら避けてきた青春に免疫がないとは言え、情けないというよりは猛烈に恥ずかしい。

光「とにかく!あんたにはやってもらうわ。断ったらあることないこと、言いふらすわよ」

段々とあぶない事をいいだしはじめたが、思えばむしろよかったのかもしれない。
後に退けないからこそ、俺はこのとき渦中に飛び込むことができたんだろう。
願ってもない出来事ではある。
いままでのモヤモヤした日常を一気に晴らしてくれるかもしれないチャンスだ。

「わかった、負けたよ。やるからないことないこと言いふらさないでくれ」

光「なによそれ」

「あることなんて、なにもないだろ」

光「こうしてあんたの部屋にいるじゃない」

「だからなんだ?」

光「あんたに連れ込まれたって言えば、既成事実になるわね」

刑事ドラマでも見てるつもりだったがどうやらこいつは
刑事や名探偵というよりは頭のいい犯罪者のほうがしっくりきそうだ。
意見は綾瀬から俺への一方通行が原則らしい。

「わかったよ。あることないこと言われたくないから、やらせてもらうよ。」

光「ところであんた、友達いるの?」

直球でえぐりにくるやつだ。

「さすがにな、それほど多くはないけどいるよ」

光「じゃ、そいつらも部員になるように言っといて」

「ちょっと待て、「ロストに青春をさせる」のが目的だって今さっきいってただろ。
どうして俺の友達までもが部員になる必要があるんだ?」

光「あんたの友達が一緒のほうが、あんたもやりやすいでしょ。」

根がまともなのかどうなのか掴みどころのないやつだ。

「そうだな、じゃあ一応誘っておくよ」

光「オッケー!じゃ、私は帰るわね!月曜までに連絡でもしときなさいよ!」

そう言い残すとスタスタ帰ってしまった。
階下から丁寧な帰りの挨拶とすこしのやり取りが聞こえたあと、
冷たい風が少し吹いてきた。

後に続くように階下に降りると、丁度綾瀬を送り出したばかりの母さんがいた
ニコニコした様子で「いいこねえ」なんて上機嫌でいたが、
一通り褒め終えると少し訝しげな顔になってポツリと言った。

母「それにしても、最近の子はずいぶんと早いのねぇ」

・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・セクハラだぞ」


心が浮いているような、不思議な感覚ですごす休日はなにも手につくことがなく、
とりあえず借りた映画を見て、部活の事を拓海と友斗に伝えたところで
いつのまにか月曜日が訪れていた。

教室にはいると、綾瀬は数人の女子に囲まれながら談笑していた。
きっとひとりも綾瀬の本性を知らないんだろうな、と思うと
本来なら二人だけの秘密といわれ持て囃されるものだが、
あまりに面倒な秘密は持て余すということがわかった。

「ういーす」

目立たないような挨拶を済ませ、席につこうとすると綾瀬と目があった。
一瞬だったが、ハッキリと見据えたその目は「土曜の事忘れてないでしょうね」
とかなんとか言ってきてるみたいだった。

そしてどうやらそう言ってたみたいだとわかったのが放課後だ
いつかのように目の前まで来ると控えめに机をバンと叩き、「ちゃんときなさいよ」
と俺にだけ聞こえるように言うといつかのように去ってしまった。
机に視線を落とすと、紙が一枚置かれているのに気がついた。
そこにはこう書いてあった

紙『別館202まで急いできなさい!部員の友達も連れてきなさい!
   もしまた来なかったら許さないわよ』

脅迫も板についてきたな。
変にしみじみとしながら、急ぐことにした。

教室の外に出ると、二人はもういた。

志賀「おう!いこうぜ!」

友斗「綾瀬さんっておとなしいイメージあったけど、意外とアクティブなんだね~」

「アクティブというか、アグレッシブというか・・・まあ揃ったし、いくか」

友斗「あ、ちょっと先行ってて。靴紐が解けちゃったみたい」

志賀「すぐこいよー」

そういって歩き始めると、後ろから声が聞こえた

桜「あ、あの、友斗くん、一緒に帰ろ」

彼女は「五十嵐 桜」だ。
高校一年からの付き合いで、実は俺の唯一の女友達になる。
名字とは裏腹におっとりとした雰囲気で、可愛らしい印象だ。
一年の頃に友斗が連れてきて、それ以来一緒いる。
はじめはロストとしての引け目からかどこか壁一枚を隔てた桜との付き合いも
いまではちゃんと友達と呼べるそれになっているとおもう。
それは桜の人を安心させるような人柄が成せる技だろう。
自分でも、これほど異性と関わることで起きるかもしれないゴタゴタを恐れていながら
一緒に肩を並べてるのには驚いている。
と、ここまでは比較的付き合いたての頃の感想だ。
今では本音の話、好きになってしまっている。
だが告白どころか、仄めかしたこともない。これには俺自身の問題とは別の問題がある。
それは友斗とのことだ。はじめに「友斗が連れてきた」といったが
それから俺が顔を合わせるたびに、桜と友斗は一緒にいた。
これは傍からみてもお似合いのカップルで、イチャイチャしてる様子はないが仲睦まじい感じだ。
実際に付き合ってるかはさておいて、この間に割り込むほどの度胸を俺は持っていなかった。
それは周りの男子も同じだったようで、最近では桜が告白されたといった話すら聞かなくなった。
そういった理由があって俺は青春を待ち望んでいる。
要はもっとリスクのない恋をして、青春をしたがっているわけだ・・・
我ながら言ってて情けなくなる臆病ぶりだが、事実だから受け入れるしかない。

友斗「ごめんね、これからちょっと用事があるんだ。」

桜「そ、そっか。じゃあ、今日は帰ろっかな。」

立ち止まってそんな会話を聞いてると拓海が話しかけてきた

志賀「なあ、友達ならいいっていってたんだろ?」

「ああ、まあな」

志賀「じゃあ、桜がダメな理由なんてないよな」

「そうだな」

志賀「よしっ、じゃあ誘ってくるわ」

拓海の言うとおり、桜を誘わない理由はない。問題もない。
ただ桜がいると新しい恋をできないんじゃないかという不安があった。
そうこうしていると三人が歩いてきた。

桜「あの、ごめんね。気づかなくって。」

「いや、いいんだ。俺も桜を誘い忘れてたしな。」

志賀「よし!それじゃあ行こうか!やっぱいつものメンバーのほうがしっくりくるぜ」

友斗「そういえば僕達行き先聞いてなかったけど、どこにいくの?」

「別館の202 らしい。部室棟だな。」

別館。またの名を部室棟と呼ばれている。
旧校舎だったらしいが、設備が古く、規模も小さかったため
新校舎を建てたあとはもっぱら文化系の部室だけのために活用されている。
毎年わけのわからない部活が幾つか発足されては、消えているらしい。
去年もツチノコ研究会とかいう馬鹿げた部活が立ち上がってたはずだ。

志賀「それにしても、綾瀬って段取りがいいんだな」

友斗「ほんとだよ。いくら部室が余ってるからって、もう部室を抑えてるなんて早業だよね」

確かに言われてみればそうだ。
ツチノコ研究会なんていったから信じてもらえるかは疑問だが。
名誉のために言わせてもらうと、うちの学校は馬鹿なわけではない。
ちゃんと顧問が必要だし、部員も一定数必要だ。
それにいくつかの書類審査に加えて、発足者の評価も関係しているとか。
つまり、一朝一夕ではなかなか無理だという話なわけだが。

「まさかあの日、俺が待たされてたのはそういった準備だったのかもな」

ひとりポツリと呟く頃には、202の前についていた。
そういえばこいつら、綾瀬の猫かぶりをしらないんだったよな・・・

「気を引き締めろよ」

志賀「なにいってんだよ、綾瀬なんて桜並におとなしいっていうじゃんか」

「いつまで言ってられるかな」

ガチャリ・・・と木でできたドアを開ける。スライド式じゃなくノブ式のドアは
なんとなく古めかしさを感じさせる。

光「おそーーーい!!急げってちゃんと書いてたわよね!!」

志賀「・・・・双子か?」

ノックアウトまで早かったな

友斗「なんとなくそんな気はしてたけど、綾瀬さんって元気な人だね」

友斗は逆に思いの外冷静だ。

桜「あ、あの、おは、こんにちわ」

桜は気が動転しきっている。いや、桜はいつもこんな感じだったか?

光「まあ来ただけでも上出来だわ!さ!はいってちょうだい!
  ここがこれから私達があんなことやこんなことをする部室よ!」

部室内はガランとしていて、机と椅子以外なにもない。
去年まで使われていたのだろうか、ホコリはそれほど気にならない。

「まあまずは入らせてくれ。そう威圧されると怯える子もいるしな」

光「そんな子いるの?あんたのくせに?」

失敬だ

ぞろぞろと中に入ると、ようやく桜が目に止まったらしい
拓海の後ろにいたから被って見えなかったんだろう。

光「ちょっとー!なんでこんな可愛い子がいるのよ!
   ・・・あんた、実は幸せですとか言わないわよね?」

「それなりにな」

光「まあいいわ。じゃ、自己紹介しましょっか。」

こうして俺から順番に、友斗、桜と自己紹介をしていった
ちなみに俺の自己紹介は名前を言った時点で「あんたは知ってるから端折って」
といわれたことは話しておこう。
そして順番は拓海に回ってきた。

志賀「俺の名前は志賀 拓海。見ての通り身長がでかいから、運動とかスポーツがだいすきだ。
   あと、ロストだ。よろしく!」

光「えー!あんたもロストなの!?やるじゃないあんた!」

そういって俺の背中をバシバシ叩いてくる
拓海は俺と違って、ロストだということに負い目や引け目を感じていない。
いや、感じてるかもしれないが、それを感じさせない。
こうした拓海の態度をみていると、いつも羨ましくなる。
いつかこんな風に堂々と生きてみたいものだ。

光「じゃあ最後はこの私!綾瀬 光っていうわ!これから部活を発足するにあたって、
  当然私が部長になるわけだけど、
  部長とか、そういうかしこまったのは嫌いだから名前で読んでくれていいわ!」

友斗「じゃあ光ちゃん、早速なんだけどさ、この部活って何をする部活なの?」

光「お!いいわね橘くん!」

お前は名字呼びかい!

光「この部活は・・・オホン。ロストを青春させる部活よ!」

今聞くとやたら恥ずかしい。

友斗「へー、いいね。面白そうだし。」

志賀「お、てことは俺も青春させてくれるのか」

桜「あ、いい、と、思います。」

そして受け入れの早い我が友人たち。俺はいまだに聞き慣れないというのに。

「ちょっとまってくれ。俺はそれを聞いてたが、具体的には何をするんだ?」

光「あんた、青春に定義でもあると思ってるわけ?」

ごもっともである

「いや、それでも方針ぐらいはわからないとだな」

光「相変わらずのビビりね。まあもったいぶってもしょうがないし、発表するわ。
  活動内容は・・・青春を謳歌することよ!」

誰か助けてくれ。無限ループの選択肢にハマったみたいだ。

「いやな・・・」

光「だーもう、うるさいわね。わかってるわよ具体的なものでしょ」

光「つまり、季節ごとの行事とか、学校のイベントをみんなで全力でやって、
  楽しみましょうってことなのよ!
  いままで過ごしてきた東山でも、その前のところでもロストはみんな
  毎日遠慮してるみたいに過ごしてたわ。
  けどね、おんなじ人間なのに、遠慮してるなんてバカらしいとおもわない?
  だから私は、ロストに青春を謳歌してもらって、一緒に楽しめる世の中にしたいのよ!」

なんというか、綾瀬節全開。といったところだろうか。
ロストにはロストの辛さがあるわけだが、どうやらそれを理由に奥手になっている
いわゆる俺みたいなやつがいることが許せないらしい。

志賀「おー!いいと思うぜ俺は!」

友斗「ぼくも賛成だな。」

桜「あの、いいと思います」

光「よーし!満場一致で可決ね!」

いつのまにか俺は賛成票を投じていたらしい。
強行採決だ、異議を申し立てる。

光「それじゃあ、早速なんだけど活動してもらうわ!
   部活を作るにはどうやら色々と面倒な手続きがいるらしいのよね。
   それを分担して終わらせましょ」

「ちょっと待て、部活を作るにはって、じゃあどうやってこの部室を借りたんだ」

光「空いてたから使わせてもらったわ。」

光「この前あんたをまたせてる間に、探したにしては上出来でしょ」

不法占拠の片棒を担がされ、更には早業のような手腕もなかったわけだ。
つくづく予想を斜め上の動きをする。

光「じゃあ役割を決めるわね!あんたとあんた!二人で顧問見つけてきて!」

この「あんたとあんた」は友斗と拓海を指している

光「それで桜ちゃんは私と一緒に先生の審査を受けに行くわよ」

桜「えっ、あ、あの、わかりました」

光「で、あんたは」

この「あんた」は俺のことだ

光「必要な書類全部書いといて!ノルマは今日中ね!じゃ、はじめ!」

そういうとほらほらと桜の背中を押しながら外に出ていった。
後には男三人、嵐の後のように立ち尽くしていた。

友斗「思った以上に元気だね、光ちゃんって」

志賀「ほんとだよな。俺はてっきり桜みたいなかんじを想像してたから面食らったぜ」

「まあ、おれも初めはそんな感じだ」

志賀「だけど、ロストのことをああやって考えてくれてるなんて、ちょっと嬉しくなっちゃうよなー」

友斗「確かにめずらしいよね」

二人の言うことはもっともで、ロストというのはいわば現代ではタブーみたいなもので、
悪く言う人も、良く言う人もいない。
なかったことにして、関わらないようにするのが世間の大きな流れだ
臭いものに蓋をしているだけのその行いは、意外とロストにとっても辛いものがある。
だからこうして曲がりなりにもロストを良くしたいと純粋に思う気持ちは
珍しくもあり、嬉しくもあるわけだ。

友斗「それじゃ、僕たちは顧問の先生見つけに行こっか」

志賀「俺に任せてくれ。たしかお世話になった陸上部の顧問の先生がいたから、頼んでみよう。」

そういって出ていってしまうと、残された俺はそういえば一人だと気づいた。
あまり一人でいるとむなしくなるので、早々に職員室で書類をもらうことにした。

もらった書類をみていると、発足の理由、活動内容、展望、構成など
どうみても光が書くべきような内容が目白押しだった。
けれど「活動内容:青春」なんて書いていいものだろうか。
いいわけがない。つまりは俺がやるしかないということだ。
しょうがないから、適当なことをでっちあげることにしよう。


そうして出来上がった部活は「ツチノコ研究会」だった

ちょうど書き終わった頃、四人が帰ってきた

光「帰ってきたわよ!ちゃんとできてるんでしょうね?」

「ああ、できてるよ」

光「どれどれ・・・って何これ!?ツチノコ研究会ってどういうことよ!」

「いやな、流石に青春部なんてかくわけにいかないだろ。気を遣ったんだ」

光「は~!?なんで気を遣ってツチノコ研究会なのよ?
  こんな馬鹿げた部活、認められるわけ無いでしょ!」

まさか意見があうことがあるとは。人生は発見の連続とは本当らしい。

光「とにかく、こんな馬鹿げた名前はやめてちょうだい。
  それじゃ!私達の結果発表と行きましょうか!まずは私と桜ちゃん!」

桜「あ、あの先生の適正審査なんですけど、綾瀬さんってすごく頭がいいみたいで合格しました」

光「そういうことよ!さすが桜ちゃんいい感じよ!」

実は一番の関門と呼ばれる審査をこうやすやす通過するってことは、
学内でもそうとう上の成績なのだろう。
にわかには信じがたい事実だが、今更驚くこともない自分の適応力の高さにもまた驚かされる。

友斗「それじゃあ次は僕達だね。僕達の方も、拓海のお陰で顧問をゲットできたよ」

志賀「へへ、陸上で助っ人に何度かでたことのあるコーチが、快く引き受けてくれたぜ。」

光「先生はどれくらいの頻度で顔をだすわけ?」

志賀「それが掛け持ちになって陸上を疎かにさせてしまうのは気が引けたから
   名前を貸してもらうだけなんだ」

友斗「けど、活動内容的にそのほうがいいかなって思ったんだ」

光「いいわねふたりとも!ここまで一人を除いて最高よ!」

こればかりは反論する余地もない。

光「あんたはその書類をあしたまでに書いてくること!そしたらいよいよ始動よ!」

そうして好調な滑り出しをみせたわれわれツチノコ研究会(仮)は
翌日の放課後再度結集することになった。


光「ちゅうもーーーく!」

光「まずはみんな!正式に部活が承認されたことを報告するわ!」

結局ツチノコ研究会は棄却され、無難にイベント研究部になった。
地域や学校のイベントの意義を考える部活ということにした。
あながち嘘をついているわけでもないので、我ながらいいセンスだと思っている。

光「まあ、名前の方はしょっぱい感じになっちゃったけど、今日からガンガン活動するわよ!」

腕をブンブンまわしながら意気込んでいる光に、素朴な疑問を友斗が投げかけた

友斗「でもさ、夏までこれといったイベントってないよね。」

そう。そのとおりである。
夏なら夏祭り。秋なら文化祭。冬はクリスマス。
季節ごとの催し物はあれこれ思いつくが、春のイベントは思い当たらない。

志賀「たしかにな、夏になればやれることは多そうだけどよ、今ってなんにもないよな」

光「もーーまんたいよ!私が考えてないとでも思ったの?」

すまん、思ってた。

光「確かに春はイベントがないわ。でも、なにもイベントだけが青春じゃないわ!
  第一回の活動内容は、ショッピングよ!」

えーみなさま。我々はどうやら巧妙な詐欺の手口に引っかかったようだ。
まさか部活と称して買い物をさせるとは。

「ショッピングなんて、普通にすればいいじゃないか」

光「なにいってんの!私たちはまだお互いのことを全然知らないじゃない。
  そんな状態でいきなりイベントに行って、楽しめるわけ無いでしょ」

相変わらず考えがあるのかないのかわからない

志賀「いいんじゃないか?俺もそのくらいからのほうが、桜の負担も少なくていいと思うぜ」

ふと桜が発言してないことに気づく。

桜「あの、私、はい、そのほうがいいかな」

光「そうでしょそうでしょ!それじゃけってーい!」

友斗「あの、水を差すようで悪いんだけど、僕実はお金ないんだよね」

そういえばゲームを買ってお金がないと言っていたのも忘れていた。

光「えー!ちょっと他にもいないでしょうね!」

志賀「実は俺もあんまり・・・」

「俺もだ」

桜「あの、わたしは大丈夫です。」

光「さすが桜ちゃん!それに引き換えあんたたちって用意が悪いわね」

用意するほどの時間があったのだろうか

光「仕方ないわね。もうちょっとあとの予定だったけど、
  繰り上げてこっちを最初にやっちゃいましょう」

「こっちってのは、何のことだ?」

光「アルバイトよ!ほんとは、夏にみんなでやろうと思ってたけど、
  まあ前倒しになってもいいわ!」

光「わかるかしら、みんなで一丸となって汗を流して、
  対価として活動資金と友情を得るわけね!これほど手っ取り早いものはないわ!」

志賀「いいじゃねえか!それにいままで俺たちも一緒にバイトなんてやったことないかもな」

友斗「ほんとだよね。ちょっと楽しみだな。」

一回目の活動内容がアルバイトだなんていうのもおかしな話だが、内心俺もワクワクしていた。

それこそ本当に青春という感じがしたからだ。
だが、物事が簡単には進まないというのはよくある話で、我々の場合も例外にはならなかったらしい。

桜「あの・・・すみません、わたし、お父さんがちょっと過保護で、
  アルバイトとか許してくれるか・・・」

桜は見ての通りおっとりしていて、箱入り娘と言った感じだ。
たとえ父上が過保護になったとしても、推して知るべしと言ったところだ。

光「ちょっとちょっと!今度は桜ちゃんがいけないわけ!?」

桜「ごめんなさい、あの、お金はだいじょうぶだから、みんなでいってきてもらっても・・・」

光「なにいってるの!誰かが欠けてる状態で楽しめるわけ無いでしょ
  桜ちゃんも黙ってくればいいじゃない」

「おいおい無茶言うんじゃない。それぞれの家庭には
それぞれの事情ってもんがあるんだ。それはお前だってわかってるだろ」

光「だからって、べつにバイトくらいでどうこうなるわけないじゃない!」

光の気持ちもわかるが、こればかりは仕方がない。
ここで無理に連れ出したことがわかれば、桜の親との関係にヒビが入りかねない。
そうなると今後桜は俺達と友達でいられるかもわからない。
俺は正直、そのほうが耐えられない。

友斗「まあまあ、桜ちゃんはお買い物とかはできるわけだし、
   僕達だけでアルバイト終わらせちゃおうよ。」

友斗が俺の心を読んだかのように、すかさず言いたかったことを
さらりといってくれた。しかし、もうひとりは別意見だったようだ。

志賀「いや、ちょっと待て」

志賀「桜がアルバイトに行きたくないんじゃなくて、
    親が止めるから行きたくてもいけないって話だろ?」

桜「あ、簡単に言うと、そう、なのかな」

志賀「それだったらよ、第一回の活動内容は
    『桜の親に桜のアルバイトを許可してもらう』にしようぜ」

俺は拓海のこういうところが、本当にすごいと思っている。
言いたいことをハッキリ言って、納得出来ないことには反発できる度胸。
おなじロストとは思えない歴然とした差をみせつけられているような、
はたまた自分の可能性をみているような、複雑な気分だ

光「ちょっとー!なに勝手に活動内容決めちゃってんのよ!部長は私よ!」

「なんだ、それじゃあ反対なのか?」

光「そんなわけないじゃない!第一回の活動内容は
   桜ちゃんの親にアルバイトを許してもらいに行くに決定よ!」

どうしても自分が決めたかったらしい。どこぞのガキ大将みたいだ。

桜「え、でも、あの、たぶん許してもらえないし、みんなにも迷惑かけちゃうし」

志賀「大丈夫だって!それにきっとわかってくれるって」

友斗「こう言い出しちゃったら拓海は止まらないからね。
    桜ちゃん、無茶しそうになったら僕らが止めるからさ。ダメ元でやってみようよ」

桜「うん、そうだね、拓海くんだもんね」

志賀「おい!まるでおれがワガママみたいないいかただなー!」

ケラケラ笑いながらじゃれる三人とは裏腹に、むすっとした顔でこちらを睨む
本当のワガママがいた。目を合わせないでおこう。

光「ちょっと、どうして私があんたみたいにのけ者にされてるのよ」

いつのまにか隣りにいた光がひそひそと話しかけてくる。
どうも自分を介さずに盛り上がってる三人が許せないらしい。
俺までのけ者扱いにされてることにしたのは大目に見ておこう。

「段々仲良くなってくのも、この部活の目的なんだろ」

光「そうだけど・・・・!」

いきなりグループの中心になれないという常識はわかっているがどうにも納得出来ないと言った様子だ。

「いいじゃないか。そのヤキモキしてる感じも青春ぽくて」

光「そういうもんかしらね」

かくして、イベント研究部の記念すべき第一回の活動は
『桜の親にアルバイトを許可してもらう』に盛大に決まった。
このときは適当にアルバイトの話をして、ダメそうならすぐ引き上げる
お気楽なものを想像していたが、
物事が簡単には進まないというのは、本当によくある話のようで------


イベント研究部一同は最寄り駅より電車に乗車。現在桜の家に向かっているわけだが、
ここでひとつ、ある発見があったことを、皆さんにもお知らせしておくべきだろう。

志賀「そういや、勢いでいっちまったけどよ、桜の親とか家っていままで見たことなかったよな」

友斗「ほんとだ、なんかいつも一緒だったし、知ってる気でいたよ」

そう、俺達は桜の親どころか家すら知らない。
雰囲気からして、裕福な家庭で豪邸に住んでいても不思議はない。

光「えー!あんたたち友達だってのに家もしらないの?」

桜「お父さんが厳しいから、あんまりお家とかじゃ遊ばないからね」

「そんなに厳しいのか?」

桜「うん・・・昔、男の子の友達とか連れてった時があって・・・
  あっ、小学生とかのときだよ?あの、そのときもお父さんが怒っちゃって」

変なところで気を遣う桜もまた可愛らしいものだ。
それにしても、男子を連れてきただけで怒るなんて、よほど過保護なんだな

友斗「結構難しそうだね」

志賀「だなー」

光「なにしょぼくれちゃってんの!私がバーーン!といってあげるから安心してついてきなさい!」

バーーン!と、というか、そのまま砕け散りそうな気もしなくもないが、
こんな無策に電車に揺られていていいものだろうか。
そんな風に救いのないことを考えていると目的の駅についたようだ

桜「あ、ここでおります」

ついた駅は学校からそれほど遠い場所じゃない、住宅街だ。
緑が比較的おおい閑静な通りは、いかにも桜が育った場所というイメージだ。

桜「ここがお家です」

駅から更に10分、家の前についていたようだ。
大きくはないが、純日本と言った瓦屋根の日本家屋だ。
これはこれでイメージ通りと言える

光「はー、結構古そうな家ねー」

桜「確か、100年以上昔ものだってことだけは知ってるんですけど・・・」

志賀「どうりで風情があるわけだ」

友斗「大きくないけど、威厳がある感じだね」

「ところで、親父さんにはなんて言うつもりなんだ」

志賀「そうだな、率直に一緒に働かせてください!とかかな」

そんなことを言おうものなら、つかみ合いの喧嘩になりそうだ

友斗「ちょっとちょっと、それじゃまるでお父さんに娘を譲ってもらいに来たみたいでドキドキ
しちゃうよ」

志賀「そうか?じゃあ桜を任せてください!とかどうだ」

友斗「もっと挨拶に来たみたいだよ」

志賀「かーっ、むずかしいな」

そんな様子をみてもじもじする桜、そしてそれを見てニヤニヤする光、
どうやら青春できているらしい。楽しそうで何よりなことだ。

結局「桜さんと一緒にアルバイトをさせてください」と全員で声を合わせて言う
というのが一番効果的じゃないかということでまとまった。
ポイントは光いわく「申し訳なさそうに、だけど元気な感じで」だそうだ
映画監督になったら役者に嫌われそうな注文だな

桜「あの、それじゃお父さん呼んでくるね」

家に入った俺達は、桜に促されるまま居間に通された
畳に座るのなんて久しぶりだなと
危機感のない顔で待っていると、親父さんをつれた桜が帰ってきた。
光直々のお願い演出に乗っ取り、まずは全員で立ち上がり、声を揃えて挨拶だ。

一同「お邪魔しています」

親父さんは見た目は気難しそうだったが、意外に物腰は穏やかだった。

桜父「ああ、ようこそ。桜のお友達だってね」

桜父「まあ立ち話も何だ、どうぞ遠慮せず座ってくれていいよ」

その言葉を受けると、各々お礼を述べながら座っていく
穏やかな言葉の奥に、確かな貫禄が感じられる存在感に、
思わずみんな自然と正座をしていた

桜父「さて、さっそくでなんだが、桜から話があると言われたのだが、どういったご用件かな」

さあ、今だ!ポイントは忘れてないな?

一同「桜さんと一緒にアルバイトをさせてください」

これが成功するとは、俺は思っていなかった。
そもそも急だということもあるし、この作戦自体も小学生が
ガラスを割ったときに謝りに行くみたいな感じだ。
ただ、俺は忘れていたんだ。

桜父「わざわざ来てくれてありがとう」

桜父「こんな素晴らしい友人に頼まれて、私が嫌といったら、
    私がわがままみたいになってしまうな。」

志賀「それじゃあ!」

桜父「むしろ、私からもお願いするよ。そろそろ桜も社会を知ってくる年齢だろう」

光が関わると物事は頭上を飛び越えて、予想外の展開を見せることを
そして

桜父「私もいままでロストと桜が関わることを恐れて過保護にしすぎたのかもしれない」

物事は簡単には進んでくれないということを

桜「ぱ、パパ・・・あの・・・」

桜父「何だ?桜にもいってあっただろう?ロストとはつきあうんじゃないと」

桜父「ただな、今後社会でロストと仕事をすることになるのも、避けられない現実だろう。
    そろそろ慣れていかなきゃいけないことなんだぞ」

一気に雲行きが怪しくなってきた
だけど、この流れなら俺や拓海がロストであることがバレている様子はない
このまま余計なことが起きずにやり過ごせればいいが・・・

光「・・・・・・・」

問題は光だ
あいつは言った。「ロストがロストだからとなにかを遠慮している世の中が許せない」と。
光さえ爆発しなけりゃ、ここはやりすごせるはずだ・・・と、思っていた矢先だった

志賀「すみません、俺実は、ロストなんです」

友斗「ちょ、拓海」

志賀「いいんだ、友斗。嘘は良くないし」

なんてことだ。光の思考パターンは伝染でもするのか。
拓海のことはわかってるつもりだったが、これには驚かされた。
そんな発言を聞いた桜の親父さんは、はじめ一瞬眉を動かし驚いた様子を見せたが
みるみるうちにその眉に力がこもり、眉間にしわが寄った。
見ての通り、状況は絶望的となった

桜父「どうしてそれを?」

志賀「嘘は良くないと思いましたし、僕は自分がロストであるということを
   かくす必要もないと思ったからです」

背筋が凍る思いだ
あまりに綱渡りな、というよりは、そもそもしらを切っていれば
乗り越えられた状況がこれほどの修羅場に変貌するとは思わなかった

桜「あの、お父さん、拓海くんも他のみんなもとってもいい人でね、それに」

桜父「いいから黙ってなさい」

桜「あっ・・・はい・・・」

さっきから友斗は俺と似たような感じに、ひたすら成り行きを見守っている感じだ。
問題の光も、自分の出る幕じゃないことがわかっているのか
射抜くようにひたすら見つめているだけだ。

桜父「誤解があったなら謝らせてもらおう。私は何もロストを嫌っているわけではないんだ」

志賀「それなら」

桜父「ただ」

遮るように言葉を切ると、続ける。

桜父「私は桜がロストと交際することに反対しているんだ。
   ロストは男児をもうけることができない。
   それはつまり、私の後を継ぐ者がいなくなるということだ。
   桜には後を継がせることはできない。仕方がないことなんだ」

桜父「君たちのように、誠実に頼み込んできたから私も話している。
    頭ごなしに否定しているわけじゃないんだ。わかってくれ」

最後にはやわらかで、諭すような口調になっていた。

志賀「それなら・・・」

志賀「何かあった時。ぼくが責任を取ります」

桜「えっ」

聞き間違えか?いま、プロポーズをしたように聞こえたのは。
アルバイト一つでどんどん話が大きくなっている感じだ

志賀「大丈夫です、お父さん」

志賀「桜さんは、必ず幸せになります」

なんてこった。親父さんの目の前でプロポーズをしているのか?
いや、それ以前に桜は友斗と付き合ってるからありえないことじゃないのか?
だれかこの状況を説明してくれ。

桜父「桜」

桜「えっ、あっ、は、はい!」

桜父「彼は信用できるのかね」

桜「う、うん。拓海くんは嘘もつかないし、いい人だよ」

桜父「・・・・・・そうか」

桜父「拓海くんといったかな」

志賀「は、はい!」

桜父「君の心意気に免じて、許すことにしよう。」

なんてこった・・・

桜父「ただし、すべてを許したわけじゃない。これからの行いを見て、
    君のことをしっかり見定めさせてもらうよ」

志賀「わかりました。ありがとうございます」

桜父「少し疲れてしまったよ。申し訳ないが、今日はもう帰ってもらってもいいかな」

志賀「はい、失礼します」
もし読まれた方がいるなら、すみません。
中途半端な上に、くそみたいな文章です。
くそみたいな文章は治るかわかりませんが、中途半端なのは直します。
後日完成品ができ次第投稿します。

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