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詩「客席」
詩 「客席」
役者は揃った
雄大な物語はある場面では壮絶に
ある場面では緩やかに展開する
ふと落雷で照明が切れた
観衆のざわめきは外部から聞こえる途切れない雨音で
掻き消されていく
再び点いた時
影の役者は数十人道連れにしたようだ
一向に空の座席で観衆はどよめく
だが どうしようもない
舞台は移り変わっていく
彼らはその壇上に目を向けず
遠くで人影を探しているというのに
不安が波紋を作っていく
そして終盤 影が皆を連れて袖から登場したではないか
エキストラは帰り 無事に元通り
拍手の数時間後に扉は開き
人々は語りながら歩いて行った
道端に雨粒で重くなった布団で光を遮るねぼすけを避けて
家族と謳った生首が浮かび通り過ぎる