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詩「ライチョウ」
詩「ライチョウ」
狩りを終えて巣に戻ると
雛がいなくなったようだ
森は透けている
一つの時間が
その時間のうちに終わろうとしているのだ
それは自ら落ちることはしないだろう
それはまた頑丈に巣を建て直した
険しい息吹が世界を駆け巡っている
それは恨むことを知らないだろう
それは諦めることも知らないだろう
私たちの選択した時間が
私たちが受け入れられない時間だとするなら
最初から時間は切り離せないのかもしれない
私たちがまだ私たちでいるなら
私たちのための時間が
私たちの中で過ぎていくのかもしれないが
私たちに襲い掛かる出来事は
私たちの結晶ともなるのだろう
そうして寄せ集めたガラクタが
やがて私達の巣箱になるのだろうか
だが私たちは落ちないと言い切れない
それが巣のなかに潜んでいるとしても
私達は巣を手放さない
なぜなら巣はガラクタでできたのだから
それごときに落とされるとは
誰も思いはしないだろう
ところが至る所に冷酷な風は吹いている
いつかこちらにも吹くのだろうか