詩「蕗の葉の下で」「アタラクシア」
詩「蕗の葉の下で」
蕗の葉の下に
雨蛙が避難して一晩
厳かな地面のうねりと
いたずらな突風から
一滴丸々と落ち
「痛い」と叫ぶ雨蛙
振動は信号になり
存在を否定する睨みがちらほら
存在を結びつける蛙も幾つか
弾けばらけた滴の未来は無関心
立たされるのは雨蛙
去らねばならぬ蕗はひと時の安らぎ
詩「アタラクシア」
雲は途切れなく記憶も絶え間なく
降り積もる落ち葉に暖められる
私というものを
何かの到来を
対立するものとして
また通過する
この平静が万全ならば
している物事は何のためだろう
意味の見つけられなくなった
生ける意志を
押し出して空に突き出した
空っぽの空から日の光が照らし
答えもろとも徴になった
「この光はまだ生きているから」
見つけられない命とともに
怖れのなかに成し遂げたい物事と
幾つもの人々の顔が
凝縮されていた
その詩が移ろい淋しくなることに
私は落ち着いていられるのだろうか
丁寧に重ねた落ち葉の一枚一枚が
発酵し気泡となり
その泡から誰かの顔が伏せているなら
もう私から声を掛けられない
今はただ
拡がるあいだを
意志が自然に行き来している