pierrot
「ピエロって馬鹿だよなー。」
サーカス観覧が終わり。
会場を後にする人混みの中。
出演者と手を振ってお別れした少年達が
ケラケラ笑いながら、無邪気に毒づく。
少年達は気付いていない。
彼の頬には涙のマークがある事を。
派手な格好に身を包み、
挑戦しては失敗を繰り返す。
馬鹿にされながら観客達を笑わせる。
でも本当は。
その奥に悲しみを抱えている。
馬鹿にされてもおどけて見せる、
いつも笑った顔のメイクの下に
本当の気持ちを隠している。
知られたくなくて、隠したメイク。
気づいて欲しくて、記したメイク。
笑わせたい。〈笑われたくない。〉
わざと失敗。〈どうして僕だけ。〉
涙は見せない。〈ホントは泣きたい。〉
皆に夢を。〈僕が夢を?〉
矛盾の種が渦を巻く。
舞台で無理に上げていた口角が
肩と共にずり落ちる。
観客からの野次。罵声。
今まで何度となく言われた言葉達。
顔はメイクで誤魔化せても、
剥き出しの心はどうやっても隠せなくて。
いつも肩を震わせる。
でも、それでも。
「面白かったねー。」
「ママ。ピエロさん、転んで痛かったみたい。」
「どうして?」
「だってね。泣いてたの。ほっぺにおっきなナミダ、あったの。」
本当の僕を見てくれる人がいる限り。
僕のメイクは笑うのだ。