ある少年と聖人の日
投稿するかどうか悩んだんですが、ノリで投下する事に。
日を跨いでますけどね!(吐血
「あ、おにーさんおにーさん」
「? 何だ?」
ある日。俺は何時もの様に管理なぞをやっている訳だが、
次の処理を行おうとしたその時に、鷹深ちゃんに呼ばれ。
……はて? 彼女の勤務時間は終わった筈だが………?
「酷いですねー。折角におにーさんにわたしの心意気を丸投げしようとしてますのに」
「丸投げなんですか」
「丸投げなんです。では、これをどうぞ」
鸚鵡返しに聞き返す俺に頷きつつ、鷹深ちゃんが差し出して来るは、
彼女の掌に納まるぐらいの大きさのラッピングされた箱。
「ぷれぜんとふぉーゆー、なのです」
「? ありがとう?」
「……反応が薄いですねー。そんな貴方の姿にわたしのガラスのハートはリミットブレイク寸前なのですよー」
「いや意味が分からんから」
いやマジで。
そんな俺の言葉に鷹深ちゃんはあからさまに肩を落とすと、カレンダーを指差す。
ん? かれんだー・・・?
今日は、2月14日。……………そうか。
「恐ろしく察するのが遅いですよおにーさん」
「面目次第もない」
ヴァン・アレン帯……もとい、聖バレンチノの日か。
「微妙に違う気もしますが、大筋では間違ってはいないので、気にしない事にします」
「そうしてくれ。――ふむ。だから、セリカさんもチョコレートケーキを備え付けの冷蔵庫に置いて帰ったのか。
ライアちゃんとの合作ですよー、とかなんとかとも言っていたな」
何故にチョコレートだったのかと悩んでいたのだが、これで謎は解けた、と続けて呟く俺に、
む、と一瞬だけ唸り無表情をほんの少しだけ歪める鷹深ちゃんであり。
「どうしたんだ?」
「なんでもないですよ、ええ、なんでも」
一体なんなんだろうか。
良く分からんが、今の彼女に触れるのはなんか怖そうなので、更に声を掛ける事はやめておく。
と、そんな微妙な空気をブチ壊すように、突然部屋の扉が開け放たれ――
「瑠伊耶くーん。これ私の愛の篭った贈り物だよーっ☆……っと、お邪魔だった?」
「――アリエルさん……。助かりました」
「?」
とりあえずこの空気を払拭してくれたのは有難いですよ本気で。
そんな俺の内心に気付かず、疑問の表情を浮かべているアリエルさんである。
「このKYおねーさんめー」
「???」
何故か恨めしそうにアリエルさんを睨みつけ(ているのだろうか? 無表情だから分かり辛い)ている。
その少女に更に疑問顔のアリエルさんであり。
まあそれは兎も角。
唐突に彼女はちょっとばかり苦い表情を浮かべると、肩をすくめる。
「まあでもちょっとこれからウリエル様の手綱を握って来ないと際限なく拙い事になりそうなのでこれにてっ
瑠伊耶君、あいしてるー」
「はいはい冗談はそれ位にして行って下さいな」
「酷いよ瑠伊耶君ーっ」
先の登場と同じように慌しく去って行くアリエルさんである。
―――そして、机の上には綺麗にラッピングされた箱が。
何と言う早業。
暴風が過ぎ去った後には、なんとも間抜けな空気が満ち満ちており。
………と、鷹深ちゃんは一つ溜息を吐くと無表情の顔をこちらに向けた。
「A☆RA☆SIでしたねー、本当に」
「……まあウリエルを物理的に黙らせれるのはあの人だけだし仕方ないだろうな」
「まあそれは兎も角です。受け取ってください、おにーさん」
「あ、ああ。有難うな鷹深ちゃん」
「はいな」
どうにか重々しい雰囲気を払拭できたので、ほっと胸をなでおろしていると、控えめなノックの音が。
……今の一連の件で何となく誰が着たのかは悟れる。いやもう直ぐにでも。
「どうぞー」
「あの、その。瑠伊耶さ……あれ? 鷹深、ちゃん??」
「をや、亜摩おねーさんじゃないですか。おにーさんに御用ですか?」
そんな事を言いつつ何故か“御用”とか書かれている提灯を何時の間にやら持っている鷹深ちゃんであり。
……何時の間に取り出しやがったんですかキミは。と言うかどこの時代劇ですかその提灯。
「それは企業秘密という事で一つ」
「だから相変わらず思考を読まないでくれ」
「それは出来ない相談ですねー?」
相も変わらずのやり取りの中、ふと視線を感じ……とは言っても、その視線の先はどうやら俺の手の上の様で。
「あのえっとその……」
「亜摩おねーさん。とりあえず逃げるのは無しですよー?」
「ぅ。な、何で……」
「わたしは何でもお見通しですー」
何を見通しているんだ鷹深ちゃん。
そんな内心の突っ込みなど関係なく俺を置いてけぼりにしつつ、
鷹深ちゃんは亜摩さんに近づくと、ぼそぼそと内緒話。
一体何を話しているのだろうか。
と言うか、亜摩さん、鷹深ちゃんの内緒話に耳を傾けつつもぴくぴくと動かさないで下さい。
後尻尾もぱたぱた動かさないで下さい。なんとも言えずラブリー過ぎますから。
とりあえず、鷹深ちゃんの入れ知恵? が済んだのか、亜摩さんは意を決した顔を俺に向けると―――
「えと、その……ぉ。―――こ、これ受け取って下さい~っ!」
そう言って両手で差し出されたのは自分でラッピングしたのだろうか。
微妙に形が崩れてたりなんなりしている箱。
勢いが良すぎるその行動に面食らいつつも、その差し出された箱を受け取ると俺は一言。
――ありがとう、ございます、亜摩さん。凄く、嬉しいですよ。
……そこ、無表情の癖にニヤニヤしない。きゃっ、とかいって頬を押さえない。
ああもう何か色々と台無しだっ!
耳まで真っ赤になっている亜摩さんとニヤニヤな鷹深ちゃんに凄まじい居心地の悪さを感じる俺であった。
それから夜勤に来たスタッフの全員からもチョコレートの進呈をされた俺で。
凄く有難いんだが…………来月のお返しが大変だなとか思い、途方に暮れてしまったのはまあ余談だ。