◆プロローグ◆
主人公の山本百合は、音楽がめっちゃ好きです。読み進めていくと、たまにパソゲーの曲も出てきます。ちなみに、話題にさせていただいく音楽はこちらからお借りしています→http://musmus.main.jp/
あまりにも中身のない一日だった。
外の公園ではおそらく汗だくの子供たちが遊ぶくらいの時期。ビルの影にすっぽりと収まるくらい小さく、人気のない涼しいアパートで、一日中ピアノを弾いていた。休日は陽が昇ると同時に黒猫のネオが目を覚まし、私も目を覚ます。そして、朝ごはんを食べて、午前中少し勉強をして、飽きてくるとピアノに向かう。ネオはドビュッシーの「アラベスク」がとにかく好きだ。昼ごろにこれを弾くと、ピアノを弾く私の足元に近寄り、嬉しそうな顔をする。そして、この曲を弾き終わり、お昼ご飯を食べて、それが終わったらまた勉強を少しして、飽きたらまたピアノに向かって…。
もう、西日が降りるころになった。…ご飯の準備でもしよう。
もう冷蔵庫にはしおれそうな野菜しかなかったので、買い物に行かなければなにも食べられない。仕方なく、私は今着ているくたくたのズボンをはきかえ、らしくないミニスカートで外へ出た。もちろん、ネオは留守番。
「行ってくるね。」
私は少しずつ暗くなる空の下で、スローペースで自転車をこぐ。都会へ出てから、自転車を使う頻度は減ったものの、やはりあったほうが便利だ。しかし、この辺ではあまり自転車を使う人は少ない。ただ自分は楽をしているだけなのだと、ここへ来て気づかされた。―ふと思う。不況という社会的な問題を抱えるこの国で、ここまでのんびりした高校生があるだろうか。バイトも一応週4は行っているが、そこまで必死じゃないし、ご飯が食べられればそれでいい訳だ。しかしバイトだけじゃ限界がある。なのでなにか資格を持って稼ぎたいという理由で高校へ行くことにした。とはいえ、まともに学校へは行ってないし、大して成績もよくない。いつまでものんびりした生活は送ってられないだろう。
「あ……」
一番星が見えた。はじめに見えた小さな輝きは、時間ごとに数を増すだろう。人も多分、よくわからないけど、一度輝くともっと輝き始める気がする。もっとも、本当に綺麗な星というのは現代の街ではなかなか見えないのだと、小学校のときに聞いたことがあった。
それでは本編へどうぞ★