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第29話 かくて勇者は呪われた剣を握りしめた

 天空の塔。


「行くぞ」


 緊張した様子で、スリモドキが塔の中へと、1歩、踏み込む。

 同時に響く爆発音。


 ズキュゥゥゥーン!


 実際に聞くと、それはまさに銃声だった。

 俺はすぐさま盾を投げつけた。


「ふんっ!」


 イグニスの鱗で作った盾。

 それを通路の床に対して斜め45度に、設置する感じで投げつけた。

 直後に甲高い金属音が響き、弾丸は空へ飛び去った。


「どうだ?」


 スリモドキが尋ねる。

 俺はうなずいた。


「予想通りだ。何もかも」


 見えない攻撃の正体も、爆発音の正体も。

 そして攻撃の防ぎ方も、その問題点も。


「跳弾が危険だ。照れ屋」


「任せるだよ」


 照れ屋が前に出る。

 その巨躯を、あえて誇るように歩くと、通路のほぼ全体が照れ屋の巨体に塞がれ、正面が隠れてしまう。

 つまり、照れ屋の後ろにいる俺達には、銃撃が届かない。


「支援する」


 狂信者が強化魔法をかけた。

 照れ屋の防御力が大きく上がった。


「俺のも追加しておこう」


 衝撃を分散する魔法。

 これも防御力を高めるには効果的だ。

 照れ屋の攻撃力まで下げないように、封印魔法を組み込んで効果を制限しておく。


「ありがたいだよ。

 それじゃあ進むだ」


 照れ屋が進む。


「待て!」


 スリモドキが叫んだ。

 だが、遅かった。

 直後、左右の壁から無数の槍が飛び出した。


「いてっ。

 ちょっとチクっとしただよ」


 照れ屋は、邪魔なヤブを払うように両手を動かし、飛び出した槍を破壊してしまった。

 古典的な罠。

 だが、ドラゴンを苦労させるほどの防御力を誇る照れ屋には、ちょっとつつかれた程度にしか感じないようだ。


「……いまのは大丈夫だったか。

 慎重に行こう。この通路、罠だらけだぞ」


 スリモドキが言った。

 スリモドキに学んでスカウトとしての技術を身につけたはずの俺でも、この通路に罠があるのは分からなかった。

 床や壁の模様に偽装されて、どこがスイッチなのか、どこが射出口なのか、まったく判別できない。


「どうして分かった?」


「……正直、ただの直感だ。

 けど、『ある』と思って見てみれば、それっぽい場所ばかりだ。本当に罠なのか、ただの模様なのか、分からねー所が多いがな」


 スリモドキは後ろを振り返った。

 入ってきた場所から、わずかに外が見える。


「一文無し。てめー、できるだけ多くの土をゴーレムにして運び込め。

 ゴーレムを先行させて、罠を全部起動しながら進もう。丁寧に調べて、見つけて解除しながら進むには、時間がかかりすぎるだろーからな」


「ゴーレムは罠にかかるから、その補修用の材料として『できるだけ多くの土を』ということか。分かった。そうしよう」


 言われた通り、新しくゴーレムを作って――荷物持ちとは別に――先行させる。

 ゴーレムは次々と罠にかかった。

 刺突武器が飛び出したり、壁や天井が動いて押しつぶそうとしてきたり、炎や電撃が飛び出したり、毒ガスらしきものが吹き出したり。

 2階や3階にも罠は広がっており、俺とほっぺちゃんと狂信者が魔法でその余波を取り除く。毒ガスとか、直撃しなくても危ないからな。

 そして4階まで進むと、面倒なことになった。何時間もうろうろして、いっこうに上へ行く階段が見つからない。


「……なんか、やたら広くねーか? このフロア」


「一文無し。俺達はどうやら何度か転移の罠を踏んだようだぜ。

 くそっ……そのための小部屋か。転移の前後で風景が変わらないから、気づくのが遅れたぜ」


 スリモドキが悔しがる。

 小部屋から小部屋へ移動しまくるフロアだったが、知らないうちに転移の罠を踏んでいたようだ。内装がまったく同じ小部屋ばかりなので、転移しても気づかなかった。

 たしかに、してやられたって感じだ。


「そういう事か……。

 しかも、見ろよスリモドキ。どうやら、いつの間にか5階に飛んでいたようだ」


 先行させたゴーレムが落とし穴にかかった。

 だが、落ちた先も、同じ小部屋だ。


「いやいや、それどころじゃあねーよ、一文無し。俺達は今、6階から5階へ落ちる罠を見ているのかもしれねーんだぜ? 人類の最高到達階層が10階ってのも、怪しくなってきちまった」


「やべーな……。

 スリモドキ、どうする?」


「どうもできねーよ、畜生め……これじゃあ戻る道すら分からねーじゃあねーか。

 マッピングもクソもねーよ。俺達はこの危険なダンジョンで、遭難したってことだぜ」


 しばし沈黙が訪れた。

 そして、ほっぺちゃんが口を開く。


「あの……じゃあ、今から全力で撤退ですか?」


 不安げに言うほっぺちゃん。

 俺はスリモドキに視線を送ったが、スリモドキは処置なしとばかりに首を横に振った。

 ならば俺の決断は――


「撤退はしない。

 進む方向は『前』だ」


 引っこ抜く、呪われた剣。

 魔王から鹵獲したものだ。呪いが強すぎてヤバいので、普段は使わないようにしている。

 だが、これも封印魔法で呪いの悪影響をかなり――完全ではないが――抑えることに成功している。


「スリモドキ。階段を探せ」


 ひと声かけて、剣を振る。

 周囲の壁がまとめて破壊された。


「おおっ!? 我が神は、破壊不能といわれるダンジョンの壁すら壊すのか!」


 狂信者が歓声を上げる。

 ほっぺちゃんと照れ屋も驚いている。

 だが、そんな中でもスリモドキの目は冷静に周囲を探っていた。


「見つけた。2時の方向だ」


「了解。行くぞ」


 呪いに蝕まれ、腕が腐った。

 だが、そんなのは、切り落としてまた再生すればいい。

 もうすぐ帰る方法が分かるかもしれないのだ。今の俺は、この程度の痛みなど気にする余裕がない。

 こうして俺は呪われた剣を握りしめ。

 俺達は、次の階層へ進んだ。

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