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第23話 かくて勇者は新しい仲間を得た

「うへへへへ……」


「おい、スリモドキよぉ……いい加減に正気に戻れ、てめー」


 半月後。酒場にて。

 俺はうんざりしていた。

 数日前、スリモドキは風竜の素材から作った新しい武具を受け取って。

 それからずっと、新しい武具を眺めてはデレデレニヤニヤし続けている。

 ……まあ、嬉しいのは分かるけども。


「うへへへへ……」


「……ダメだこりゃ……」


 さっさと試し切りにでも出かければいいのだが。

 目下、俺達の課題はそこではない。

 天空の塔に挑むための、新しい仲間を探すことだ。

 闇雲に出かけたところで、たまたまちょうどいい人物と出会って仲間にするなんていうミラクルが起きるわけもなく、冒険者ギルドを通して募集するのが現実的かつ効率的だ。ギルドには冒険者の情報がすべて集まっているのだから、誰がどれほどの実力だとか、誰がパーティーに入りたがっているとかの情報も握っている。

 問題はその募集条件である。それをスリモドキと話し合いたいというのに、コイツと来たら……。


「あの~……」


 ニヤケ顔のアホにため息をついていたら、知らない女が声をかけてきた。

 緊張しているのか、ほっぺが真っ赤だ。あと背が低い。子供かと思うほどだ。しかし装備は使い込まれ、表情は大人びている。小人系の種族なのだろう。


「ドワーフ? いや、ホビットか?」


 魔術師の格好をしている。ドワーフは魔法が苦手だが、ドワーフの魔術師がまったく居ないわけでもない。ただ、ドワーフにしては筋肉が少ないようだ。

 ではホビットか? ホビットは魔法が得意だ。しかしホビットにしては筋肉が多いようだ。


「その混血です。

 あなた方は、魔王城でドラゴンを倒してきたというお2人ですよね?」


「そうですよ。そう言うお姉さんは?」


「私をパーティーに入れてくださいっ」


 女はぺこりと頭を下げた。

 三角帽子が床に落ちて、慌てて拾っている。

 その手には、身の丈ほどもある杖が握られているのだが、背が低いので人間サイズで見ると短い杖だ。

 小人系の種族は、こうした日常的な部分がやたら可愛らしい。動く人形のようだ。


「魔術師か……」


「役割的にはちょうどいいんじゃあねーか、一文無し?」


「お、おう……いきなり復活したな、スリモドキ。

 しかし、なんで俺達の所へ?」


「私って極端に攻撃特化なので、他のパーティーだと色々と具合が悪くて。

 それで今までソロだったんです」


「なるほど。

 それなら、ほっぺちゃんの実力の程はどうかな?」


「ほっぺちゃんて……てめーのネーミングセンスはどうなってんだ、スリモドキ」


「うっせーわ、一文無し。てめーのネーミングセンスもたいがいだからな」


 スリモドキをスリモドキと名付けたのは俺だ。

 スリを働こうとして何もスれなかったから。

 確かに何のひねりもないネーミングだった。


「それにしたって、ほっぺちゃんはないだろ」


「じゃあてめーの案は?」


「ん~……リンゴちゃん?」


「結局ほっぺ赤いからじゃあねーか」


「ぐぬぬ……決めるのはリンゴちゃんだ」


「そうだな。ほっぺちゃん、どっちがいい?」


「えっと……ほっぺちゃんで」


「ダにィィィ!?」


「ケッケッケッ。ほらみろ」


「どぉぉぉしてだよォォォ!」


「ご、ごめんなさい……リンゴは苦手で。

 酸っぱいし渋いし、固いし……お酒は私、あまり飲めないので」


 原種に近い状態なのだ。多少は品種改良されているのだろうが、地球のようにそのまま食べることはほとんどなく、リンゴ酒の材料に使われることが多い。

 なんてことだ……くっそー……! こうなったら、爆発オチで雑に締めてやる。


「お、おい、一文無し! こんな所で何の魔法を使うつもりだ!?」


 ははは。吹き飛べ。

 ちゅどーん!



 ◇



 草原。


「というわけで、ほっぺちゃんの実力を試してみよう」


「よろしくお願いします」


「おいコラてめー! 一文無し、この野郎!

 なんつーバカな真似をしやがって! 酒場から出禁くらっちまったじゃあねーか!」


「はっはっはっ。さあやるぞ」


「笑って誤魔化してんじゃあねーよ!」


「私も、アレは良くないと思います」


「おいおい、スリモドキ。何をそんなに怒ってるんだい? 俺達はただ酒場を出禁になっただけだぜ?

 だが、ほっぺちゃん。たしかにアレは良くなかったな。どうもごめんなさい」


「大問題じゃねーか。宿屋も別々の俺達が、他にどこで集まるってんだ?

 てか、俺とほっぺちゃんで態度ちがいすぎじゃね!?」


「はい、許します。

 私はお酒はあんまり飲めないので、別に困らないですし」


「ありがとう、ほっぺちゃん。

 そしてスリモドキよ。なんだ、そんな事か。

 どうせ俺達は町の外での活動が中心なんだ。集まる場所なんて、現地集合・現地解散でもいいだろうに。

 まあでも、安心できる場所で酒と料理を楽しみながらってのがいいなら――」


 土魔法を発動。

 家の形をしたゴーレムを作る。これの便利なところは、建材の加工とか組み立てとか強度の計算とかをしなくていい。ゴーレムだから全体がひとつの塊だ。家として機能するために、中空構造にするだけだ。

 そしてゴーレムの基本機能として、こいつは歩ける。つまりハ〇ルの動〇城だな。

 さらにいくつかの魔法を追加して、内装を整えれば完成だ。


「どうだ。これで大型の獲物も持ち帰れるし、移動しながら話も休憩もできるぞ。

 しかも、寝室・浴室・トイレ完備で、空調もバッチリだ」


 水道関係は高低差を利用した単純な方式だ。最上部に浄水貯水槽、最下部に下水貯水槽がある。

 水魔法と火魔法で冷水からお湯まで自由に出せるし、風魔法との組み合わせで空調も管理できる。


「すっごーい! なんですかコレ!? えっ? めっちゃ便利では?」


「こ……こんなのがあるなら、魔王城のときに出せや、てめー……」


 はしゃぐほっぺちゃん。

 ――とは対象的に、スリモドキががっくりと崩れ落ちた。


「俺もあれで思いついたんだ」


 帰り道で構想をまとめて、帰ってきてから開発したからな。

 まさに必要は発明の母ってやつだ。なお必要なときには存在しないで、必要なくなってから誕生するまでがセットである。


「というわけで、ほっぺちゃん。

 こいつの安全性テストを兼ねて、思い切り攻撃してくれ」


「はいっ」


 ほっぺちゃんが魔力を練り上げ。

 力の形を定めて、発射した。

 あー……これはちょっとマズイかも。

 ちゅどーん!


「……わーお。凄いな、ほっぺちゃん」


「ダメじゃねーか、一文無し」


「ご、ごめんなさいっ」


 見事に破壊された家型ゴーレムを見て。

 俺は改良を余儀なくされ。

 スリモドキは非難の視線を向けてきて。

 ほっぺちゃんは慌てて謝ってきた。


「ドラゴンの突進にも耐えられるはずだったんだが……。

 とにかく攻撃力は十分だな」


「マジか。じゃあ十分じゃあねーか。即戦力だ」


「ふうっ……疲れました。

 もう魔力がすっからかんです」


「お、おお……あからさまな欠点があったな。

 なるほど、これじゃあ並大抵のパーティーには参加できねーわけだぜ」


 ドワーフらしい豪快さと、ホビットらしい大魔力。確かに混血だ。

 性能はピーキー。しかし、これは有用だな。


「ドラゴン肉を貯蔵しとこうぜ、一文無し。

 あれ食えば、ほっぺちゃんも回復できるだろ」


「そうだな。そうしよう」


 そう。俺達なら解決できる問題だ。

 こうして俺達に、新しい仲間が加わった。

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