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第13話 かくて勇者は予感した

 スリモドキの案内で、天空の塔というダンジョンを目指す。

 町を出て、平原にのびる街道を進む。

 だが俺は、イライラしていた。


「前から思ってたけどよー……スリモドキ、てめー歩くの遅すぎじゃあねーか?」


「言うなよ。

 義足なんだから仕方ねーだろ」


 スリモドキが、しょんぼりして答えた。


「そのせいで他にパーティー組んでくれる奴が居ないんだからよぉ……」


「あー……」


 それでソロなのか。

 そしてソロでもまともに稼げず、スリに走る、と。

 なんだよ、こいつも貧乏じゃねーか。


「うー……! えぐっ、えぐっ……」


「…………」


「……えぐっ……えぐっ……」


「…………」


「慰めろよ! もしくは励ませ!」


「え? あ、うん。まあ頑張れ」


「てきとーすぎる!?」


 ガビーンとするスリモドキ。

 けどなぁ……。


「いいじゃねーか、生きてんだから。

 だいたい手足がない兵士なんて珍しくもねーよ」


「住んでる世界が違いすぎる!?

 畜生め! この退役軍人が! てめーは手足があるからって……畜生め!」


「あー……まあ、たしかに?」


「なんで疑問形!?」


 そういう場合はすぐ敵に殺されるから、そのあと五体満足で復活してたな。

 考えてみたら、手足がないとかの状態でしばらく過ごした経験はない。

 でも晩期には強力な回復魔法を覚えたから、すぐ再生していたな。


「スリモドキは、どこから脚がないんだ?」


「ここからだが?」


「よし」


 剣を抜いて、スパッと斬ってやった。

 ボロっと脚が落ちた。義足だけど。

 ついでに勢い余って、後ろの地面まで切れた。やはり加減ができない。


「ぎゃあああ!? いきなり何すんだよ!? 殺す気か!?」


「再生」


 回復魔法をかけると、斬り飛ばした脚がまた生えてきた。

 もちろん生身の。

 骨が生えて、神経が生えて、血管が生えて、筋肉が生えて、皮膚が生えた。


「……マジかよ」


 信じられない、という顔でスリモドキが再生した脚を触る。

 そして泣きだした。


「分かる……! 触ってるのが分かるぞ……!」


 さらに、足首を動かし、膝を動かし、驚きに目を見張る。

 足の指も、曲げたり伸ばしたりしている。


「こいつ……動くぞ!」


「当たり前だろ。お前の脚なんだから」


 もう義足ではないのだ。

 スリモドキは恐る恐る立ち上がり、具合を確かめるように歩いた。

 そして俺の前まで歩いてくると、ひしっと俺の手を握った。


「俺、今ならお前に抱かれてもいい」


「やめろ! 気持ち悪い! キス顔してんじゃあねーぞ、てめぇぇぇ!?」


 ぬるっと迫ってきやがったので、全力で逃げた。

 そのあと落ち着かせるのに30分かかった。

 くそ……無駄に疲れたな……。


「とにかく、これで速く歩けるだろ」


「もちろんだ。今なら無限に走れそうだぜ」


 スリモドキは嬉しそうに走り出した。


「あはははは! あたしを捕まえて――ぶべらっ!?」


 全力ダッシュですぐ捕まえてやった。


「ムカつくからヤメロ」


 時速30kmかそこらなんて、音速で走れる俺からすれば赤ん坊のハイハイみたいなもんだ。


「ぐぬぬ……! なんてロマンのねぇ奴だ……!

 ははぁ~ん? さては、てめー……モテねーな?」


「ぐふっ!?」


「図星か」


「ま、まあ……そうだな……今のは、モテないな……」


 決してモテない時ばかりではない。

 ないったら、ない。


「けど、いくらロマンが分かってよーが、てめーと『浜辺で追いかけっこ』みたいな事は絶対やらねーよ。気持ち悪い。あとせめて白いワンピースと大きい帽子でも装備してこい」


「装備て。それがロマン分かる奴の言い方かよ」


 鼻で笑われた。


「なんだァ、てめェ……?」


「あ? やんのかコラ?」


「あ?」


「あん?」


「お?」


「おん?」


 ガンを飛ばし。

 メンチを切って。

 おでこがぶつかるほど接近して睨み合う。


 ちゅっ


 唇に触れた感触に、俺は即座に飛び退いた。

 こいつ……!


「いとも容易く行われるエゲツない行為……ッ!

 この野郎……なんて恐ろしい事を……!」


「や、やっちまった……ぽっ」


 口元に手を添えて、顔を伏せるように背けるスリモドキ。

 えぐっ……!? お嬢様かよ?


「ぽっ、じゃねーよ! てめーこの野郎!」


「次にお前は『ただではおかん!』と言う!」


「ただではおかん! ……はっ!?」


 しっかりバッチリ先読みされてしまった。

 いい加減コイツとの付き合いも長く――というか「深く」なってきたな。


「はぁ~~~……」


 なんだか毒気を抜かれてしまった。

 俺はがっくりと項垂れた。


「おい、一文無し」


「なんだよ?」


 気力が抜けて。

 面倒くさい気分で顔を上げると。


「ありがとう。マジで。感謝するよ」


 スリモドキの目には、涙が光っていた。

 深々と頭を下げるスリモドキ。


「ケッ……言ってろよ」


 そうならそうと最初から言えばいいものを。

 なんだか気に入らなくて、俺も素直じゃあない態度をとってしまう。

 結局は似た者同士なのだろう。

 なんだかコイツとは、長い付き合いになりそうだな。

 なんとなく、俺は予感した。

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