表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/35

第二十八話 タケルにも衣装

 この数日、第六試合の入電がなく、ラボの空気は緊張感のかけらもなくなっていた。

 モニターが並ぶ壁際で、タケルは椅子にだらしなく座り、携帯ゲームに没頭している。


 タケルの服装はいつもの通り。

 色あせた赤いTシャツに、カーキ色のハーフパンツ。

 そのどちらも、バトルの激しさを物語るかのように、裾や肩口がところどころ破れている。


「……タケル、また同じ格好なの?」


 その背後で端末を操作していたユレルが振り返り、じろりと睨むように言った。


「え? 別にいいじゃん。動きやすいし、慣れてるし」


 タケルは気にした様子もなく、笑って肩をすくめる。


「でもボロボロだよ。竹馬バトラーなんだから、もう少し見た目も気を使いなさい」

「そーだウマ! ちゃんとしたバトラー装束を着るべきウマ!」


 竹丸もトコトコと近づき、タケルの裾をつまみ上げた。


「いやいや、俺、兄さんの代わりに竹馬闘戦に出るって決まったの急だったからさ。そういうの用意してなかったんだよ」


 タケルが手を広げて答えると、ユレルはため息をつく。


「だったら、作るしかないわね」

「えぇー。面倒くさそう……」

「見た目って意外と大事よ。神々の歓声って、実力だけじゃなくて印象にも左右されるんだから」


 ユレルが鋭く指摘すると、タケルは一瞬「うっ」となり、口を閉じた。

 彼女の言うことに一理あるのは、さすがにタケルもわかっている。


 そこへ、ラボのドアがウィーンと音を立てて開いた。


「ヘイヘイ! バトラー装束、いるデースカ?」


 ジョニーがサングラスをキラリと光らせながら、軽やかに登場する。


「えっ、あるの?」


 タケルが身を乗り出すようにして問うと、ジョニーは親指を立ててにやりと笑う。


「モチのロン! ジョニーの秘密倉庫に、バッチリ完備ダヨ! 実用性とカッコよさ、兼ね備えた、夢のバトラー装束デース!」

「おおっ!」


 思わずタケルの目が輝いた。


「ちょっと待って。ジョニー兄さんが選ぶってことは……」


 ユレルが眉をひそめるが、タケルはもう聞いていなかった。

 ジョニーが持ち込んだ大きなキャリーケースがラボの床にゴトリと置かれる。


「フフフ……ついに日の目を見たデス! ジョニー特製、次世代型バトラー装束・第一号ッ!」


 得意げな笑みとともに、ジョニーがケースを開けると、中から現れたのは艶やかな黒を基調とした、ダイビングスーツのようなタイトな装束。

 肩と胸、そして膝にはメカニカルな意匠のプロテクターが装着されており、どこか近未来の戦闘服を思わせる。


「え……意外と……まとも?」


 ユレルが目を細め、まじまじと装束を見つめた。


「ジョニー兄さんが、変なコスプレ衣装じゃなくて……ちゃんとしたの持ってくるなんて……」

「失礼な! これは実戦用デース!」


 ジョニーは胸を張り、タケルたちに説明を始めた。


「表面素材は、衝撃吸収ジェル繊維を内包した多層構造! 耐熱・耐圧・防水・さらには通気性もバッチリ! 肩と胸部のプロテクターは内部にアシスト機構があって、竹馬の操作を加速する補助力を……」

「うおー! すっげーじゃん、それ!」


 タケルが目を輝かせて飛びついた。


「これ着たら、タケルはパワーアップ間違いなしウマ!」


 竹丸もピョンと跳ねて装束の上に飛び乗る。


「よっしゃ、さっそく着てみようっと!」


 タケルは勢いよく装束に手をかけて持ち上げ――


「うっ……ぐっ……お、おも……」


 装束はびくともしなかった。


「え? 動かない……?」


 両手で持ち上げようとしても、装束は床にへばりつくようにびくともせず、タケルは顔を真っ赤にしながらふんばった。


「ちょ、ちょっと待って……これ、マジで重い……!」

「そ、そんなに!?」


 ユレルが慌ててタブレットで計測を始めた。


「これ、乾燥重量で42キロ超えてるわよ! 12歳のタケルが着て動けるわけないじゃない!」

「そんなはずないデース! 重量分散用のナノスタビライザーも内蔵してるのに……あっ、壊れてマース」


 ジョニーが頭をポリポリ掻いた。


「……いつも通りだったウマ」


 竹丸がぺしっと装束を叩いてため息をついた。


「仕方ないわね……」


 ユレルは少し迷ったあと、奥のロッカーを開いた。


「私が以前、気まぐれで作った装束があるから、使う?」

「えっ、ほんとに?」


 タケルが駆け寄ると、ユレルはそっと取り出した――


 ひらひらと揺れる、極端に布面積の少ない紐のような装束。

 露出が多すぎて、どこをどう着るのかわからないそれに、タケルは顔をひきつらせた。


「うわっ……これって、どこが前?」

「アダルトすぎるウマ!」


 竹丸が慌てて装束を奪い取り、ロッカーにしまい込んだ。


「いや、ちょっとセクシーにしようとは思ったけど、そこまでは……」


 ユレルが頬をかきながら照れ笑いしたその時、


 ラボのドアが、静かに開いた。


「何やら……騒がしいようですね」


 スーツ姿の夏雄が、落ち着いた足取りで現れた。


「おおっ、夏雄!」


 タケルが振り返って手を振る。


 タケルに激甘な夏雄。果たして彼は何を提案するのか――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ