第二十四話 セクシー・ビーム
「コメオさま、あの爆発でも全然動じないなんて……やっぱりすごいお方ですわ!」
金髪巻き髪のマリアが、恍惚とした表情で頬に手を添える。
「にぃに! ランね、にぃにのこと、やっぱり一番だと思ってたっ!」
ランがパタパタと袖を引っ張りながら見上げる。
「な、何よ……別にアンタを庇いたかったわけじゃ……ないし……」
スズカは顔をそむけながらも、視線はしっかりとコメオを捉えている。
「……私、ずっと……この瞬間を、夢見てました……」
トモヨが潤んだ瞳で、コメオの手をそっと握った。
美少女たちが次々に愛を囁き、場の雰囲気は甘ったるいイチャラブシーン。試合のはずが、ピンク色のオーラが漂っているようだった。
「な、なんだよこの展開……バトル中だろ?」
タケルは目を見開き、竹馬の上でグラつきながら呟いた。
「攻撃できねぇよ、こんなの!」
動揺するタケルを見た天馬雷鳴号が、静かに語りかける。
「落ち着け、タケル。彼女たちは神技が具現化した存在。生命ではない。情に流されるな」
「だ、だけど……言ってることも仕草も、リアルすぎ! 俺、あんな風に言われたことないし!」
顔を真っ赤にしながらタケルが後ずさると、サポート席の竹丸が口を尖らせる。
「ここでひるんだら、ラブコメ敗北者ウマ! タケル、自分に勝てウマ!」
「いや、そんな敗北の分類あるの……?」とユレルが隣で小声で呟く。
ラボのジョニーが胸を張って一歩前へ進む。
「ラブコメにおいて、美少女のタイプがハッキリ分類されているのは、王道展開デース。コレを“ジャンル構造の可視化”と言いマース!」
「うんちく始めた!」とユレルがさらに眉をひそめる。
天馬雷鳴号がそれに続くように静かに言う。
「タケル、神技とは神の期待に応える力。お前が今試されているのは、心の弱さだ」
タケルはぐっと唇を噛んだ。
長く深呼吸してから、心を奮い立たせるように天馬雷鳴号の柄を握る。
「よし、覚悟を決めるしかない!」
タケルは竹馬の両脇に広がる光の翼を強く羽ばたかせた。
「天馬の翼、展開――ッ!」
眩い光がほとばしり、左右の翼から羽根が無数に放たれる。それらは軌跡を描き、一直線にコメオへと向かっていく。宙を滑るその動きは、まるで意志を持つ追尾ミサイルのようだった。
「いけっ、これで勝負を決める――!」
だが。
「させませんっ!」
突如、コメオの前に四人の美少女が飛び出した。ふわりと宙に浮かびながら、彼女たちはそれぞれのポジションに展開し、両手からバリアを発動させる。
羽根はバリアに触れるたび、ドン、と音を立てて空中で炸裂した。
「こいつら、また……!」
タケルが驚く間にも、羽根の嵐は完全に遮断され、ひとつとしてコメオには届かなかった。
爆煙の中から姿を現したのは、まったく無傷のコメオと、軽やかに空中を舞う四人のヒロインたち。
そのうちの一人、マリアがくるりと宙返りし、唇に指を添えて囁く。
「次はこちらから行く番ですわね?」
突然、口を大きく開ける4人。
喉の奥がポゥと輝き始める。
「セクシィィィ・ビィィィィム!」
四人が同時に、口元からピンク色の光線を放った。細く鋭いそのビームが交差しながら、一直線にタケルへと迫る。
「くっ……!」
タケルはとっさに竹馬を滑らせて机の陰に飛び込み、寸前で回避。
だがビームの余波で、机と椅子が次々と焼け焦げ、フィールドが破壊されていく。
宙に浮かぶ四人は、再びコメオのもとに戻ってじゃれついた。
「今の私のビーム、どうだった?」
「べ、別に守ってあげたわけじゃ……ただの任務だし……」
「ねえねえ、次はどこ攻撃すればいいの?」
「……見てて、トモヨの全力……」
女の子たちの声に、コメオは困ったように笑いながら頭をかく。
「……誰が一番かなんて、僕は決められないよ。みんな、可愛いと思ってるから」
その言葉に、四人の美少女たちは一斉に顔を赤らめてうなずいた。
一方のタケルは、机の陰から顔を出しながら歯を食いしばった。
「な、なんなんだよ、このラブコメ……!」
その声は、戦場に似つかわしくない甘ったるい空気に、ぽつんと取り残されたように響いていた。




